せっしょういん

【牡丹皮(ボタンピ)】 ボタンPaeonia suffruticosaの根皮
【川キュウ(センキュウ)】 センキュウCnidium officinaleの根茎
【芍薬(シャクヤク)】 シャクヤクPaeonia lactifloraの根
【桂皮(ケイヒ)】 Cinnamomum cassiaの樹皮又は周皮の一部を除いたもの
【桃仁(トウニン)】 モモPrunus persica又はP.persica var.davidianaの種子
【当帰(トウキ)】 トウキAngelica acutiloba又はホッカイトウキA.sugiyamaeの根
【延胡索(エンゴサク)】 Corydalis turtschaninovii formayanhusuoの塊茎
【牛膝(ゴシツ)】 ヒナタイノコズチAchyranthesfauriei又はA.bidentataの根
【紅花(コウカ)】 ベニバナCarthamus tinctoriusの管状花

 折衝飲は「産論」を原典とし、循環障害に用いる桂枝茯苓丸と循環・水分代謝障害に用いる当帰芍薬散を合方し、利水薬の白朮・茯苓・沢瀉を除き、活血薬の延胡索・牛膝・紅花を加えた処方と考えられます。また、桂枝茯苓丸と産婦人科疾患の基本処方である四物湯の合方から茯苓・地黄を除き、延胡索・牛膝・紅花を加えた処方とも考えられ、これは牛膝散の加減方といえます。主に血流改善・鎮痛作用を気滞して用いられます。
 この処方は、腹痛・下腹部痛・腰痛を伴う月経の異常や子宮および付属器の炎症などに適応します。
 中医学的には下腹部痛および抵抗圧痛、月経不順・月経困難・不正性器出血など(下焦の血於)でとくに血於による痛みの強いものと考えられますが、一般的な循環障害(血於)にも用いられます。


折衝飲の解析

折衝飲の特徴
 折衝飲は、桃仁・紅花・当帰・川キュウ・芍薬・地黄からなる桃紅四物湯から地黄を除き、牛膝・牡丹皮・延胡索・桂皮を加えた構成と理解すると記憶しやすい。その他、活血剤の代表とされる種々の処方を組み合わせて加減した内容と解釈することもできる。この構成から、いくつかの特徴を挙げることができる。

[活血に特化]:まず、養血剤の代表とされる四物湯の構成から、とくに養血の意義を持ち、性質の重い地黄を除いてあることから、処方の意図が養血よりも活血に比重を置いていることが窺える。血の運行をスムーズにする為には、地黄などの量的増強を図る養血薬を多く用いると、血の動きの邪魔になることもあるからである。地黄をなくすことで、養血の意味合いは芍薬・当帰・紅花に僅かに含まれる程度となり、活血に特化した構成であることが本剤の一つの特徴といえる。

[理気止痛]:次に延胡索・桂皮・紅花が配合されることで、理気の作用を介して止痛への配慮を強めている特徴を持つ。活血そのものが止痛に作用するのはもちろんであるが、気を巡らせることによって、脹痛などの気滞による痛みを軽減できるだけでなく、気の誘導により陰血の働きはさらに効率がよくなり、血於による痛みも軽減する。また、気に働きかけることによって、止痛の効果を迅速に発現することが期待できる。延胡索は活血と共に、肝、脾のほか肺にも帰経するともいわれ、肺気を介して気分に入り、行気に優れるため、止痛効果が高い。桂皮は活血に加えて、温陽通路して経絡の気血の通行を順調にするため、止痛に作用する。紅花は大量に用いると辛温の性質のために発散性が強く現れて破血通経に作用し、少量用いると和血養血の作用が血海を潤して●肝するため、肝気が暢びやかになり、腫脹を解消して止痛する。

[温の性質]:牡丹皮・芍薬にやや寒性が見られるだけで構成生薬の大半が温性である特徴を持つ。しかし、桂皮を除いては積極的に温めるという程の構成ではなく、血が巡るのに有利な温性の条件を提供すると考えるとよい。このことは、冷えや陽虚を原因とする血於の病態に適していることはもちろんだが、強すぎない温性のため、多少の熱証の血於に対してもその熱証を強めることなく、活血を効率よく行う条件を与え、あらゆる血於の病態に対して迅速な効果を期待することができる。痛みを伴う血於の場合、不通則痛の原則からいえば通じさせるためには動きが必要であり、涼性に偏らず、穏やかな温性を持つ活血剤は止痛を目的として使いやすいといえる。

[昇降理血]:一般に本剤は下腹部の血於に適応するように表現されるが、活血作用のベクトルを見ると昇降のバランスがとれており、必ずしも下焦にのみ対象を限定する必要はない。川キュウ・桂皮・紅花は血を上方に導き、牛膝・桃仁・芍薬は下方に導くと考えることができる。このことにより、陰血は全身を巡り、身体随所に見られる血の滞りを解消することに役立つと考えられる。

[通便作用]:活血剤には大黄が含まれることが多いが、時にその作用が強すぎたり、便秘がない症例には使いにくかったりする。本剤は大黄が含まれていないことも一つの特徴であるが、桃仁・紅花・当帰に潤腸作用があるので、便秘のある症例にも穏やかな通便作用を期待することができる。また、延胡索による肺気の調節によって●降が順調になり、腸の動きが整えられる機序も期待できる。


適応と注意点
 折衝飲は、以上の特徴から迅速な活血止痛の効果が期待できるので、慢性的な血於の根本的な解決だけでなく、血於による急性の痛みに対して、頓服的もしくは短期的な服用法で即効性を期待することもできる。寒邪や陽虚を背景とするものに適しているが、寒熱にかかわらず用いることができる。
 見方を変えると、血於の原因を解消する生薬をあまり含まず、血を強制的に動かそうとする標治的な方剤と位置づけることもできる。それゆえ血於の原因に応じて、補陽剤、理気剤など種々の方剤と組み合わせて用いることが効果をより高めると考えられる。
 養血の生薬が少ないことから、本剤は血於によって血が実質的に滞る状態に適している。動きを盛んにさせる働きかけは、流れの本体が不足している状態ではいわゆる空回りの状態になり、機能失調を引き起こすことがある。したがって、血虚を背景とする病態には養血薬を併用するか、単独での使用は慎重に行うことが望ましい。
 また、血於を生じる病態では津液も滞りやすいので、活血の目的でも利湿を必要とすることが多い。本剤は利湿の生薬を含まず、燥性の生薬も少ないことから、病態によっては効果を高めるために利湿薬を併用することが望ましい。
 こうした他剤との併用や注意点を意識することで、あらゆる血於の病態に対して効果的な活血作用をもたらす核となる方剤として、本剤の応用範囲は広いと考えられる。


折衝飲の構成生薬解説
 折衝飲は、補血活血、健脾利水、調経止痛の薬能を持つ当帰芍薬散と活血キョ於、消チョウの桂枝茯苓丸の合方から、健脾利水を担う白朮・茯苓・沢瀉を除いて、活血薬の延胡索・牛膝・紅花を加えており、活血化於を強め、さらに理気止痛の薬能を加えた構成になっています。または、補血活血、調経の四物湯と桂枝茯苓丸の合方から、滋陰補血の地黄および利水の茯苓を除き、延胡索・牛膝・紅花を加えた構成ともなっています。つまり構成生薬の大半が活血薬であり、これらの生薬は現代薬理学的に血管拡張、鎮痛、抗炎症、子宮収縮調節、抗凝固作用などを有しています。

処方鑑別
 折衝飲は、桂枝茯苓丸に準じて応用されますが、血流改善、鎮痛作用が強められており、女性の微小循環障害による腹痛、骨盤腔内の疼痛、腰痛などの痛みのあるものを目標に、妊娠、出産、月経時の異常や不調に用いられます。

*折衝飲の臨床応用例
折衝飲はこのような症状の方に応用されています。
[月経痛]
月経前から痛みがあり月経が始まると和らぐもの、経血に血塊が混じるものに適している。
当帰芍薬散、桂枝茯苓丸が無効であった症例が軽快する場合もある。
また、月経開始とともに通常月経痛のある期間のみの頓用でも有効が得られており、鎮痛剤的に用いることも可能と考えられる。
[不妊症]
月経痛を強く訴えるもの、性交痛のあるものに適している。
[その他]
各種痛みにも応用される。
痛みのほかに月経不順、流産、婦人科疾患術後などの於血症状と、その慢性化による血虚症状を伴うものに適している。










牛黄

牛黄 ゴオウとは、牛黄と書き古くから中国で高貴薬として用いられている牛の胆嚢中(胆管等)にできる結石です。
成分 ビリルビン、コール酸、アミノ酸、酸性ペプタイトなど多くの有効成分を含有しています。
働き 赤血球新生促進作用、鎮静作用、強心作用、解熱作用、血圧降下作用、利胆作用、抗炎症作用、心収縮亢進作用、解毒作用な     どが報告されています。
 ゴオウは、次のような症状をとりのぞきます。
  めまい・むくみ・どうき・いきぎれ・不眠・のぼせ・肩首のこり・疲れだるさ・手足のしびれ感・手足の冷え・のどなどの痛み・風邪などの微  熱・二日酔い・貧血・立ちくらみ・腹痛・消化不良


鹿茸 ロクジョウとは、鹿茸と書き古くから中国で高貴薬として用いられているシカ科アカシカなどのまだ角化していない幼角のことです。
成分 パンクトリンやホルモン様物質を含有しています。
働き 強壮作用、産後の滋養、健脳安神作用 、骨折後の癒合促進作用、肉芽組織増進作用などが報告されています。
 ロクジョウは、次のような症状をとりのぞきます。
  精力減退・疲れ・だるさ・骨折・けがによる傷の治りの悪いもの・鼻血・歯齦出血・めまい・頭痛


蟾酥 センソとは、蟾酥と書き古くから中国で高貴薬として用いられているヒキガエル科シナヒキガエル、ヘリグロヒキガエルの耳線及      び皮膚腺から分泌するものを集めたものです。
成分 レジブフォゲニン、シノブファギン、ブファリン、などの強心性ステロイド他多くの有効成分を含有しています。
働き 強心作用、局所麻酔作用、胆汁分泌促進作用、抗炎症作用、などが報告されています。
 センソは、次のような症状をとりのぞきます。
  どうき・いきぎれ・癰疔の痛み・はれ・暑気当たりによるはきけ・のどの痛み・歯痛

牛黄・鹿茸・蟾酥の応用
次のような方におすすめします。
ストレスが多く又忙しい生活の現代人には、消炎解毒作用のゴオウと滋養強壮作用のロクジョウと意識の覚醒作用、解毒止痛作用のセンソは理想的に働く薬です。
仕事に追われてストレスの多い方に、ゴオウの安静作用とロクジョウの神経衰弱、疲労回復作用とセンソ強心作用で翌日に不安を持ち越さず頑張れます。
肝臓を酷使している方に、ゴオウの消炎解毒作用とロクジョウの赤血球増加作用とセンソに解毒作用があなたの肝臓を守ります。

疲れが溜まりやすい方に
精力に自信のない方に
病後の体力増強に
二日酔いに成りやすい方に
何となくやる気の無い方に
なばりが無くなったという方に
夏ばての予防に


[牛黄]
久しく服すれば身を軽くし、天年を増し、人をして忘れざらしめる。

[牛黄とは]
牛の胆嚢中に生じた結石です。「不老長寿のくすり」「命を養うくすり」として古来より珍重されてきました。牛1000頭に1頭の割合でしか発見できない希少価値や、その薬効の重要性について、現代医学的な解析も進み、今なお高貴薬として大切に受け継がれています。
その姿は、1〜4pの不規則な球形、または角の取れたサイコロ状で、赤みがかった黄褐色、断面には年輪のような層があります。口に含むと、はじめ苦みがあり、後にほのかな甘味があります。

[牛黄の品質]
牛黄は、オーストラリア(豪州)、中国、南アメリカ、北アメリカ、ヨーロッパ、インドなどで生産されています。なかでも豪州産牛黄の品質が最も優れていると言われてます。
牛黄製品は海外で比較的安価に購入できますが、場合によっては混ぜものがされていたり、偽物であったり、日本では認められない成分などが含まれている可能性がありますので、安易に求めることは避け、産地管理や成分含量などの品質管理を行っている国内メーカーの製品を求めることが望ましいといえます。品質の高い牛黄にはコール酸、デオキシコール酸、タウロコール酸、タウロデアキシコール酸、タウリンなどが豊富にかつバランスよく含まれています。また、舌で味わうとき、はじめわずかに苦く、後にやや甘く、何となく香ばしくふわっとしているものが良品といわれています。

[牛黄の主な働き]
牛黄は、血液の循環をよくするなどの働きを持ち、血圧異常、脳卒中、心疾患などの予防、肝障害の改善、認知症の予防改善などに広く応用されています。

心臓の働きを強め、息切れ、胸苦しさ、動悸、むくみなどを改善します。
血圧を下げ、高血圧に伴う肩こり、頭痛、疲れ、めまい、のぼせを改善します。
肝臓の機能を高め、二日酔いの防止、疲れやすさやだるさを改善します。
炎症を抑え、感染症によるのどの痛みや、関節痛、傷に伴う症状を改善します。
ウイルスによる感染(インフルエンザ)などを抑え、回復を早めます。
発熱を抑え、回復を早めます。子供の発熱にも有効です。
血栓をできにくくし、認知症や脳梗塞などの脳血管障害、心筋梗塞などの虚血性心疾患を予防します。
貧血や立ちくらみを改善します。血液を作る働きを高め、血行不良を改善します。
しびれや手足のふるえ・ひきつれ、脳血管障害の後遺症や、腹痛・さしこみなどの症状く改善します。
ストレスによるイライラやそれに起因する不眠、疲労、体のしこりなどの症状を和らげます。子供の疳の虫なども静めます。

[牛黄のお薬]
牛黄の働きを最も効果的に発揮する剤型は、加熱滅菌された100%純粋な粉末といわれ、この純末を舌の下でゆっくりと溶かして飲むのがよいとされます。この服用方法ですと、舌下の口腔粘膜から吸収され、直接血管へ運ばれるため、即効性が高く、胃腸での消化吸収を受けず、効率的に吸収されるという利点があります。
一方、牛黄と他の生薬を配合し、それぞれの薬効を加えた伝統薬や生薬製剤もあります。有名なものに「六神丸」、「牛黄清心丸」、「人参牛黄散」などが挙げられます。

六神丸(ろくしんがん):真珠、蟾酥、沈香、●香などが配合されています。牛黄の持つ心臓に対する効果を蟾酥が、また動悸などの症状を和らげる効果を●香が助けます。

牛黄清心丸(ごおうせいしんがん):人参、甘草、芍薬、羚羊角、当帰、川キュウ、桂皮、防風、シベットなどが配合されており、滋養強壮の働きに優れています。

人参牛黄散(にんじんごおうさん):人参を配合。古来より「牛黄は人参が使となす」といわれ、人参が牛黄の薬効を増強することから、最も相性の良い配合とされています。

[牛黄の服用量]
100%の粉末の場合、成人1日100〜200ミリグラムが適量です。動悸による不安感やのどの痛みなどの症状には粉末10〜20ミリグラムを頓服します。他の生薬と配合する場合や通常の健康維持を目的として服用する場合は、数ミリグラムから数十ミリグラムを用います。
牛黄は水には溶けにくいのですが、唾液には溶けやすく、舌下での吸収率が高いという特徴があります。
できるだけ、舌の下に含み唾液でゆっくり溶かすように服用すると効果的です。




生薬製剤二号方
中医学式体質セルフチェック
あなたの証を徹底分析 六つのタイプに合わせた食養生

 「昔の日本人は、体もよく動かし、食事も今ほどぜいたくではないけれど、体にいいものをとっていました。だから、日本は世界一の長寿国になれたのでしょう。でも、現在の日本人は果たして大丈夫でしょうか」
 18年前に来日した高橋楊子中医師は、日本人の健康について、そう心配する。食事や運動などのライフスタイルがあまりに変化し、「未病」の人が増えているからだ。
 「中医学では、まだ病気にはなっていないが、健康でもない。その中間の病気に向かっている半健康状態を未病と呼んでいます。本格的な病気になると大変ですから、できればこの未病の段階で病気の芽を見つけ、摘み取っておきたい。そのためにも、自分の体質が今どんな状態なのか、チェックしておくといいでしょう」
 中医学の診断法には、顔色や肌、舌の状態などを見る「望診」、声や呼吸の強弱に着眼する「聞診」、患者の話を聞く「問診」、脈などを調べる「切診」がある。医師はこれらを駆使して、総合的に患者の状態や体質を見極める。もちろん、セルフチェックとなると、脈診など厳密な診断は無理だが、日ごろの体調などから、大まかに体質を把握することは可能だ。
 そこで高橋中医師が考案したのが、「風邪をひきやすい」「疲れやすい」といった特徴に応じて、6タイプの体質に分ける方法。上海中医薬大学医学部附属病院で中医診断学を研究していた実績と、日本で中医学アドバイザーをしてきた経験をもとに編み出した、日本人の体質に即したセルフ診断法だ(表)。
 これは健康を支える3本柱として「気」「血」「水」をとらえ、さらにそれらを「虚」「実」との組み合わせで見ていくというもの。虚とは、簡単にいうと「充実していない、足りない」状態であり、一方、実とは「流れが悪く、滞ったり余ったりしている」状態。たとえば、気が足りない状態が「気虚」で、気の流れが悪い状態が「気滞」となる。
 「反対に、足りないものも滞ったものもなく、気血水のすべてが充実して、スムーズに流れている。そんな状態が、健康なのです」
 と高橋中医師。質問表は、「気虚」「血虚」「陰虚」「気滞」「於血」「痰湿」という項目ごとに用意されている。それぞれの質問に答え、各合計点を出してみよう。もちろん、複数の体質を併せ持っている場合も少なくない。


体質セルフチェック表
それぞれの質問に答え、合計点を出してください。

【虚症の体質チェック】
「気虚」
 @疲れやすい                 5
 A風邪をひきやすい             5
 Bよく息切れがする              5
 C声が細く、大きい声が出ない      3
 D胃がもたれる。食が細い         3
 E軟便や下痢をしやすい          3
 F冷え症                    3
 Gむくみやすい                2
 H頻尿や夜間尿がある
 I舌の先が淡く、大きくむくむ。
  舌の縁に歯の跡ができることもある  5

「血虚」
 @顔色が白く、つやがない         5
 Aめまいや立ちくらみがする        5
 B手足がしびれる。
  こむら返りが起こりやすい         5
 C抜け毛や白髪が多い           3
 Dかすみ目、疲れ目がある         3
 E皮膚がカサカサする            3
 F爪が白っぽく、薄くて割れやすい    3
 G動悸がする                 2
 Hよく物忘れをする              2
 I舌の色が淡く、小さい           5

「陰虚」
 @のぼせ、ほてりがある           5
 A寝汗をよくかく                5
 B顔色が赤い                  3
 C空咳が続く                  3
 D目が乾きやすい               3
 E耳鳴りがする                 3
 F口やのどが渇き、冷たいものを欲しがる 3
 G便が硬い。コロコロして出にくい      3
 H夕方以降になると微熱が出やすい    3
 I舌の色が赤く、表面に裂け目があり、
   苔(たい)がほとんどない          5


【実証の体質チェック】
「気滞」
 @不安や憂うつがある。
  またはイライラして怒りっぽい          5
 A胃やおなかが張って、ゲップやガスが多い 5
 B月経の周期が不順、または月経前に
  乳房や腹部が張る(女性の場合)       5
 C両わきのあたりがつっぱる感じがする
  (男性の場合)                   5
 Dよくため息をつく                  3
 E偏頭痛がよく起こる                3
 Fのどにものが詰まったような不快感がある  3
 G下痢と便秘を交互に繰り返す          3
 H眠れない。夢が多い                3
 I口の中が苦い味がする              3
 J舌の両側が赤い。苔(たい)がある       3

「於血」
 @月経痛がひどい。レバーのような血痕が
   混じる(女性の場合)                5
 A下肢の静脈瘤が目立つ               5
 B皮膚の毛細血管が浮き出ている
  (男性の場合)                      5
 C顔や唇の色が暗い                   3
 Dよく肩こりや頭痛がある                3
 E慢性的な関節痛がある                3
 F体におできやしこりなどができやすい        3
 G動悸がする。よく不整脈がある            3
 Hシミやソバカスが多い                  2
 I便が黒っぽい                       2
 J舌が紫っぽく、黒いシミのような斑点がある。
  または舌下静脈が張って膨らんでいる        7

「痰湿」
 @太っている。または水太り                5
 A血中コレステロール値、中性脂肪値、
  または体脂肪率が高い                  5
 B体が重だるい                        5
 Cよくめまいと吐き気がする                 3
 D痰が多い                           3
 E軟便、下痢をしやすい                   3
 Fむくみやすい                         3
 G肌が脂性。または吹き出物ができやすい       2
 H頭が重い                           2
 I舌の表面に白や黄色のベトベトした苔が
   厚く付着している                      5


 さて、あなたの体質はどのタイプだろうか?それぞれの体質の解説と食養生などの注意点についても、高橋中医師に聞いた ―。

 【気虚】気血水は互いに影響し合っているが、なかでも主導的な役割を担っているのが、生命エネルギーである気だ。気虚はこれが足りない状態で、疲労や冷え、胃腸の弱さ、さらには花粉症などのアレルギー疾患や免疫力の低下なども起こりやすい。
 以前、こんなことがあったという。ある女性は舌の状態から明らかに気が足りないと思われたが、本人はその自覚がまったくなく、「私は元気」と言っていた。ところが、3ヵ月後に乳がんが見つかり、「思えばあれがサインだったのかもしれない」と、高橋中医師に報告に来たという。「舌は内臓の鏡」といわれるが、それを裏づけるようなエピソードだ。
 さて気虚の場合は、疲れをためないことが第一。また元気の気を補うためには、朝の散歩など適度な運動もいい。食べ物は冷たいものを避け、気を補う豆類や芋、キノコ、ゴマ、牛肉、ウナギ、エビなどを積極的に。

 【血虚】血が足りない状態。西洋医学でいう貧血とは必ずしも同じではなく、貧血の一歩手前の状態や栄養不足なども含む。めまいや動悸、目の疲れ、肌や毛髪のトラブル、月経不順、不妊症などを招きやすい。
 血虚は、朝食抜きや無理なダイエット、夜更かしなどの不規則な生活が原因になっていることが多いので、まずはライフスタイルの改善を。散歩などの適度な運動もいい。
 食べ物は、甘いものや辛すぎるものは避け、血を増やす働きがある黒色の食材(黒ゴマ、黒豆、プルーンなど)と赤色の食材(ニンジン、トマト、ナツメ、クコの実など)を積極的に。牡蠣やレバー、烏骨鶏(地鶏でもOK)、ホウレンソウ、小松菜などもいい。

 【陰虚】体を潤し、悪い熱を冷ます働きをしている水が、不足している状態。「陰陽」で分類すると、水は陰に属する。この陰が足りないから、陰虚という。のぼせやほてりのほか、肌や目、口などが乾燥することも。更年期の女性は陰虚に傾きやすい。
 夜は陰を補うときなので、夜更かしは禁物。日付が変わる前には寝るようにしたい。酒やたばこ、辛いものも陰を消耗するので、控えるように。食べ物は、キュウリやユリ根、ナシなどの潤いのある食材のほか、豆腐、豚肉、スッポンなどもいい。

 【気滞】気の流れが悪い状態。西洋医学でいう自律神経の失調に近い。ストレスがたまりやすく、イライラや憂うつなどの精神症状が出てくる。ガスやゲップも多くなりがちだ。
 ゆったりした時間を過ごしたり、趣味を持ったりして、ストレスを遠ざけることが大切。すっきりした香りの柑橘類やハーブなどは、気の流れをよくする代表的食材だ。

 【於血】血が滞って、めぐりが悪い状態。新陳代謝も低下している。顔や唇の色が暗く、肩こりや頭痛、関節痛、月経痛などに悩まされやすい。
 血行や新陳代謝をよくするためにも、適度な運動や入浴で汗をかこう。また女性は月経中、ミニスカートやヘソの出る服などで体を冷やしてはいけない。アイスクリームなど冷たいものも控えよう。食べ物は肉より魚、とくに青魚がいい。ほかにタマネギやニンニク、ラッキョウ、黒酢などが血液の流れをよくする。

 【痰湿】余分な水分や脂肪分がたまりやすい状態。肥満で血中コレステロール値などが上がり、いわゆる血液ドロドロになりやすい。だるさやむくみ、吹き出物なども現れやすい。
 暴飲暴食や間食を控えることが大切。とくに脂っこいものや甘いもの、酒、水分のとりすぎに気をつける。たばこも吸わないこと。運動をして汗をかき、体内の余分な水分や老廃物を排出しよう。食べ物は、玄米や雑穀、海藻、根菜、キノコなど食物繊維の豊富なものがおすすめだ。
 「自分の体質に合った食養生を心がけ、ライフスタイルも改善する。必要ならば漢方薬の力も借りる。そうやっていけば、未病の状態を健康の方向に引き戻すことも可能です。さあ、今日から始めてください」
 と高橋中医師は話している。



中国での糖尿病治療の実際
中国でも増えている糖尿病
於血の改善で合併症を予防

 日本の糖尿病患者数は約740万人で、予備軍も含めると約1620万人にもなる。さらに今後ますます増えていくことが予測されている。
 経済が急速に成長している中国でも糖尿病患者は増えている。路京華氏は言う。
 「食生活が豊かになっただけではなく、ストレスも多くなりました。昔の中国人は欲がなく、のんびりしていたものです。それが今では、頑張ればだれでも裕福になる可能性があります。競争が生まれ、時間に余裕がなくなっているのでしょう」
 糖尿病は現代の生活習慣病とされているが、約2500年前に出された中国最古の医学書である『黄帝内経』に、「消渇病」という病名で、口が乾く、尿量が多いといった症状に対する治療が書かれている。これが今の糖尿病にあたると考えられている。
 ただし、当時は血糖などの検査法がなく、典型的な症状が出てきて初めて治療を行ったため、現在の中国での治療法とは異なるようだ。

倦怠感を改善し水分代謝を調節する
 「西洋医学では、血糖値を抑えることが治療の中心になりますが、中医学では、それだけではなく体を総合的に診て治療していきます」
 糖尿病になるとエネルギー源である糖分をうまく使えないため、疲れやすくなる。これを気虚の状態という。同時に水分代謝が滞って、体内の水分量が不足している。これを陰虚という。
 このため中医学では糖尿病を気虚と陰虚の症状を併せ持つ気陰両虚ととらえる。気陰両虚には生脈散(人参、麦門冬、五味子からなる。日本では「麦味参顆粒」の名で販売)が使われる。主成分の人参は、気を補って倦怠感を改善し、麦門冬、五味子には体の水分代謝を調節する働きがある。
 さらに、気陰両虚は血液循環が停滞する於血を引き起こす。血を動かすのは気の力と考えられ、気虚だと血流が停滞しやすくなる。また、体内の水分不足により血液が濃くなり、流れにくくなる。
 「中医学では3大合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)を於血が原因の血管病ととらえます。このため、気陰両虚と同時に合併症予防のために於血を改善することも重要視しています」
 於血を改善する活血剤には、丹参や紅花などが含まれている冠心U号方(日本ではこれを改良して「冠元顆粒」の名で販売)がある。これは、ラットによる実験で糖化蛋白量を下げる作用があることが、わかっている。中国ではさらに作用が強い動物性の水蛭(ヒルの一種)製剤を使用することもある。
 「西洋の血糖降下薬は、血糖値を下げることが目的ですが、活血剤の場合、それだけではなく、血管拡張、血管内膜保護、血液の粘度低下などの総合作用があります。
 気陰両虚を改善する漢方薬に活血剤、さらに個人の体質や症状に合わせた処方を組み合わせ、漢方薬だけでも治療しています。ただし進行してきたら、血糖降下薬と併用していくのが一般的。中国ではこのように中医学と西洋医学のメリットを生かした中西医結合医療が中心になっています」


活性酸素やフリーラジカルを消去
動物実験やヒト線維芽細胞の培養で証明

 その日、横澤隆子助教授は研究室のスタッフとともに、地元でとれた魚の干物などをつまみにして、富山の銘酒「立山」を心ゆくまで味わっていた。素晴らしい研究結果が出たときなど、しばしばスタッフと祝杯を上げるという。
 「アルコールが入れば、日ごろの上下関係は抜きにして、ざっくばらんな議論に花が咲きます。それが思わぬ研究のきっかけやエッセンスにもなるのです。」
 と横澤助教授。銘酒を味わいつつも、仕事のことは片時も忘れていないようだ。

主成分の丹参に血液サラサラ効果

 その日、祝杯を上げたのは、冠元顆粒という漢方薬を使った動物実験に成功したからだった。この薬は中国から輸入され、日本でも医薬品として薬局・薬店で販売されている。丹参、川キュウ、芍薬、紅花、木香、香附子と六つの生薬から成る。
 主成分の丹参はシソ科の中国産サルビアの根。日本には自生しておらず、なじみが薄いが、中国では古代から薬として使われてきた。とくに、血液をサラサラにし、血管のつまりをなくす効果が高いという。
 「もともと私は、腎不全の治療に使う薬を探していました。あるとき中国人留学生から丹参のことを聞き、動物実験に使ってみたところ、腎機能を劇的に改善することがわかり、以来、丹参について詳しく研究しています」
 と横澤助教授は言う。
 丹参を使った製剤は、「冠心T号方」として、1969年に中国で開発された。中国では狭心症や心筋梗塞など心臓の病気を冠心病と呼ぶ。冠心T号方には丹参をはじめ10種の生薬が含まれている。74年に、これが「冠心U号方」として改良された。当時、心臓病だった毛沢東のために開発が急がれたともいわれている。
 冠心U号方は血栓溶解作用があることから、中国では現在、狭心症や心筋梗塞の特効薬として使われている。この処方には降香(ミカン科のコウコウという植物の茎)という生薬が含まれているが、これを木香と香附子に置き換え、予防薬として使いやすくしたものが冠元顆粒だ。この置き換えによって降香にはなかったストレス緩和作用や、胃腸の働きをよくする作用が加わった。
 とことで、祝杯をあげた冠元顆粒の研究は、少し横道にそれたところから派生したのだという。当時、大学院の学生だった佐藤亜紀子さん(現在、横澤助教授の研究室で技術補佐員を務める)が、生薬の紅花を使って抗老化作用の研究をしたいと相談してきたことがきっかけだった。「佐藤さんの出身地、山形県の県花がベニバナです。その管状花が生薬の紅花。そんな縁もあって着目したようです。ただし長年の研究から、紅花単独よりも紅花を含む漢方薬で研究したほうが、良い結果が得られると考えました。そこで、紅花を含む漢方薬にどんなものがあるか探してみたところ、冠元顆粒にぶつかったのです。その主成分は丹参で、研究してきたデータの蓄積もあり、良い結果が期待できると思いました」
 抗老化はアンチエイジングとも呼ばれ、現代の医療では大きな関心を集めている。老化がなぜ起こるのかについては、さまざまな学説があるが、横澤助教授は「フリーラジカル説」に着目している。これは56年に米国のD・ハーマンが提唱した学説で、活性酸素やフリーラジカルと呼ばれる反応性の強い化学物質が、細胞の遺伝子を傷つけ、それが蓄積することで老化が進むという考え方だ。
 活性酸素には過酸化水素やヒドロキシルラジカルなどいくつかの種類がある。過酸化水素の薄い水溶液はオキシドールと呼ばれ、傷口を消毒するときに使われる。ばい菌をやっつける力も強いのだ。
 フリーラジカルは、不対電子を持つ分子や原子団のこと。ふつう、電子は二つで一組だ。不対電子は、対になっていない電子のこと。いわば、つねに恋人募集中の独身電子で、他の電子とくっついてカップルになろうとする。このため、フリーラジカルは化学変化を起こしやすい。
 活性酸素やフリーラジカルは、ふつうの呼吸でも発生し、人体にとっては殺菌作用など有益な働きもする。だが、なんらかの原因によって体内で過剰に発生すると、細胞の遺伝子を傷つけてしまう。
「冠元顆粒は活性酸素やフリーラジカルを消去して老化の進行を妨げるのではないか、という仮説を立てました。それを検証するため、私たちはまず、老化が早く進む特殊なマウスに冠元顆粒を与え、冠元顆粒を与えないマウスと比較する実験をしたのです。すると、還元顆粒を与えたマウスでは、活性酸素の一つである窒素酸化物やヒドロキシルラジカルの生成が減ることが分かりました。冠元顆粒に抗老化作用があることを示す証拠を見つけたわけです」
 と横澤助教授は説明する。冒頭紹介した祝杯は、このときのことだ。
 次に横澤助教授らは、ふつうに育っているラット(加齢ラット)を使って同じような実験をした。ここでも、冠元顆粒が酸化ストレスに関係する蛋白の発現を抑えたり、活性酸素やフリーラジカルを消去したりする働きがあることを確認した。
 また、ひと線維芽細胞という人間の細胞を使っても、冠元顆粒の働きを調べた。ヒト線維芽細胞に冠元顆粒を添加して培養し、その後過酸化水素を添加して培養する。これで、冠元顆粒の予防効果を調べる。
 冠元顆粒は5、10、50、100(単位はいずれもマイクログラム/ミリリットル)と分量を変えて調べた。細胞に直接、過酸化水素を添加すると、活性酸素が大量に発生するが、事前に添加する冠元顆粒の分量を増やすと活性酸素の産生量が減った。

脳卒中予防や認知障害にも効果を示す可能性
 また、冠元顆粒が細胞の中でエネルギー代謝を担う器官であるミトコンドリアの働きを正常化し、酸化ストレスによって発現する蛋白を抑えることや、細胞の生存率を高めることなどもわかった。
 さらに、活性酸素やフリーラジカルの影響を受けると細胞を包む脂質が過酸化脂質に変化するが、冠元顆粒を事前に添加しておくと、脂質があまり過酸化を起こさないことも示された。
 横澤助教授はこう説明する。
「冠元顆粒はさまざまな経路で、活性酸素やフリーラジカルの悪さを抑え、結果として抗老化作用を示すと考えられます」
 ほかにも、冠元顆粒の研究に取り組んでいる医師や研究者がいる。基礎研究では脳卒中の予防に、また、臨床研究では血管性の認知障害やそれに伴う不安、パニックに効果があることなどが示されている。
「冠元顆粒は高血圧、糖尿病、高脂血症といった生活習慣病の予防や治療にも効果があると考えられるので、医師の方々にさらに臨床データを積み重ねてもらえれば」
と横澤助教授は話している。
 なお、冠元顆粒についての問合せは日本中医薬研究会(03-3273-8891)へ。

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