(5)食事は規則的に、バランスよく、よくかんで楽しくとりましょう。
アトピー性皮膚炎と食事は非常に密接な関係があります。食事は規則的に、バランスよく、よくかんで楽しくとりましょう。暴飲暴食を避け、腹八分目にします。肥満にならないようにしましょう。
 大学生、単身赴任など一人暮らしの方はバランスのとれた食事をとりにくい場合が多く、皮膚炎が悪化することがよくあります。また、ダイエットなどをきっかけに皮膚炎が発症することがあります。
 重要なことは、幼少の時から「正しい食習慣」を身につけることです。大人になってから食習慣を改善するのは大変難しいことです。
 朝食を摂っていない人も多く、また摂っている場合でもパンとコーヒー、ハムだけまたは、ごはんとみそしる、漬け物程度という人が結構あります。ビタミン、ミネラルや蛋白質の不足が目立ちます。昼食は一般に野菜不足になりがちです。三色とも栄養のバランスのとれた食事が必要なことはいうまでもありません。皮膚に必要な栄養分を摂らなければ皮膚炎は絶対に良くなりません。皮膚炎のなおりが悪い人は必ず食事に問題があります。どうしてもビタミンやミネラルが不足する時は、サプリメントさえとれば野菜などをとらなくても良いというわけではありません。あくまでも補助食品と考えてください。事実、皮膚科診察において、ビタミン剤はアトピー性皮膚炎を含む湿疹に処方して、かなり効果があることがあります。
 また、寝る前に水分を多くとると、夜間汗をかいて全身、特に背部や腰部などの汗のたまる部位の皮膚炎が悪化します。
 ある特定の食物を摂って明らかに皮膚炎が悪化する場合や、じんましんがでる場合は、それを避けます。必ず下血液検査で抗体価(IgE−RAST)が高いものが原因とは限りません。抗体価は参考程度として、食物負荷、除去の結果で判断します。つまり、あるものを食べると皮膚炎が悪化し、食べないと皮膚炎が改善する場合は食物アレルギーと考えられます。
 食物アレルギーの原因をみつけつには、血液検査よりも”アトピー日記”のほうが役に立ちます。毎日の三度の食事、間食などを日記や家計簿のように記録しておくと、どの食物を摂った場合に症状が悪化するかが、わかる場合がよくあります。また同時に、症状、使用している薬、石けん、シャンプー、洗剤、体調(風邪、生理、胃腸の具合、他の疾患など)、ストレスの有無、日時、天候なども記録しておきましょう。診察の際に持参されるととても役に立ちます。
 乳幼児、小児で食物アレルギーの原因がみつかった場合は、数ヶ月経てから少量食べてみて、皮膚炎が悪化しないか様子をみながら徐々に食品の数を増やしていきます。血液検査の値のみで食事制限をすると、からだの発育に悪い影響をおよばしたり、親のストレスがたまったり、経済的負担が増えたり、保育園や学校の給食が食べられなかったりするので、食事制限は身長に行わなければなりません。明らかなアレルゲン以外は、避けるより慣れるのが良いと考えます。
 妊婦本人や家族にアレルギー性疾患がある際の妊婦の食事制限については、どちらかが良いか結論はでていません。妊娠6ヶ月以降は卵(特に卵白)や牛乳の摂取を控えたほうが極端に控える必要はないと思います。むしろ栄養のバランスのとれた食事のほうが大切だと考えます。むしろ栄養のバランスのとれた食事のほうが大切だと考えます。また、乳児の離乳食(特に卵、牛乳)の開始は遅らせたほうがよいと考えます。
 次に食物アレルギーとは関係なく、アトピー性皮膚炎の際(妊婦も含む)、皮膚炎の原因・悪化因子、かゆみの誘発などの観点から、避けたほうが良い食品、積極的に摂ったほうが良い食品、普通で良い食品に分けてみましたので、これを参考に毎日いろいろな献立を考えてみてください。アトピー性皮膚炎に良い食事は家族全員の生活習慣病の予防にも良いのです。大人や兄弟が食べて、患部だけががまんするのは困難です。また、誕生日、クリスマス、忘年会、正月などの行事の際に、ついうっかり食べてしまうこともあるので気をつけましょう。
 @避けたほうが良いもの
アルコール、コーヒー、ココア、コーラー、炭酸飲料、ジュース、香辛料、塩分の多いもの、インスタント食品(特にラーメン)、加工食品、添加物の多いもの、脂肪分の多いもの(ハンバーガー、ハンバーグ、ステーキ、焼肉、鶏の唐揚、豚肉など、揚げ物、てんぷら、ラーメン、スパゲティ(ミートソース)、焼きそば、スナック菓子、バターピザ、マーガリン、ドレッシング、マヨネーズ、紅花油、コーン油、綿実油、ウナギ、ニシンなど)、糖分の多いもの(チョコレート、ケーキ、アイスクリーム、アメ、お菓子など)、もち、あられ、パン、あくの強い野菜(たけのこ、山芋、ワラビ、ごぼう、くわいなど)、鮮度の落ちた魚介類(干物)、ドライフルーツ、ソバ、タバコ(受動喫煙を含む)、(栗、とうもろこし、かぼちゃ、さつまいも?)など。
 A積極的に摂ったほうが良いもの
緑黄色野菜(にんじん、小松菜、大根の葉、なばな、みず菜、チンゲンサイ、サラダ菜、サニーレタス、大根、モロヘイヤ、オクラ、、ブロッコリー、ピーマン、パプリカ、グリーンアスパラガス、かいわれ大根、にがうり、セロリ、パセリ、春菊など)、乾物(切干大根、干し椎茸、きくらげなど)、オオムギ、レバー、貝類(カキ、アサリ、シジミ、ハマグリ、ホタテガイなど)、小魚、新鮮な魚(マグロ、カツオ、サケ、サワラ、タチウオ、アユ、アマゴ、ニジマス、イワシ、サンマ、サバ、アジ、ブリ、タラ、カレイ、カジキ、タイ、シタヒラメ、ホッケ、ムツ、キスなど、煮付け、蒸す、焼くなどの調理法が良い)。
B普通に摂って良いもの
米、発芽玄米、めん類、牛乳、チーズ、緑茶、ルイボスティ、ウーロン茶、紅茶、プレーンヨーグルト、とうふ、豆類、卵、赤みのお肉(煮付け、水炊き、網焼き)、ささみ、いか、たこ、かに、えび、海藻類(ひじき、わかめ、のり)、きのこ類、こんにゃく、淡色野菜、ほうれんそう、トマト、いも類、くだもの(いちご、バナナ、メロンは控え目、りんごは皮をむくこと)、植物油(なるべくシソ油、アマニ油、オリーブ油などが良いと思います)。
 ”回転食”といって、毎日同じものをとるのではなく、いろいろメニューを変えましょう。また、最近の野菜は以前と比べ、ビタミン・ミネラルなどの含有量が少なくなって来ているので、なるべく多種類(一日25〜30品目を目標)の食品を摂るようにしてください。
 食品添加物や農薬をできる限り避けましょう。そのためには食事や間食はできる限り家庭で手作りしましょう。なるべく市販のドレッシングなどを使用しないで、しょうゆ、みそ、酢、砂糖(なるべく控え目)、塩、(天然塩)、料理酒、みりん、植物油など、できるだけシンプルな調味料をおすすめします。また、野菜のあくをぬいたり、野菜や米についている農薬を落とすため、ゆでたり、よく洗ったりすることも重要です。
 食物アレルギーとは別に、「仮性アレルゲン」といってかゆみを起こすヒスタミンのような物質を含む食品があります。たけのこ、トマト、なす、、ほうれんそう、山芋、ごぼう、くわい、いちご、りんごの皮などです。これらの食品を一度に多く摂ることは避けてください。 
 「バランスの良い食事」という言葉はよく使われますが、具体的に、どういう食品を、どれくらいとれば良いかというと迷うことがあります。私はバランスの良い食事という際の一つの目安として、アメリカのフードガイドピラミッド(1992)を参考にされることをおすすめします。ただし、主食は日本人の場合は米と考えてください。

まとめ:食事はバランス良く、糖分、脂肪分、塩分控え目、肉より魚、洋食より和食、多様な食品、ビタミン、ミネラル、食物繊維を十分にとりましょう。

(6)ダニ対策をしましょう。
 掃除はダニ対策用掃除機を使った後、拭き掃除を行うと良いでしょう。普段から部屋の換気を充分に行ってください。じゅうたん、カーペット、クッション、ぬいぐるみ、布製ソファ、ペット、観葉植物などはチリダニやほこり(ハウスダスト)の発生源となりやすいので避けましょう。掃除をしやすいように整理整頓しましょう。エアコンのフィルターを週に一回は掃除しましょう。カーテンは時々丸洗いしましょう。
 ふとんに入ると明らかにかゆみが増える場合は、ダニが関与している可能性があります。ふとんにも掃除機をかけましょう。天気の良い日はふとんを干して、ふとんたたきで軽くほこりを落としましょう。特に押入れの奥にしまってあった時(季節の変わり目で寝具を替える時)はこれらのことを充分に行ってください。シーツ、ふとんカバー、毛布カバーなどの寝具もできるだけマメに洗濯しましょう。ただし、ふとんが暖まりすぎると、かゆみのもとになることに気をつけましょう。枕はパイプ枕など、洗えてダニがつきにくいものにしましょう。布団は年一回丸洗いするのが理想的です。
 なお、アトピー性皮膚炎に「いろいろなカビが関与している」という考え方もあります。ダニ対策の他にカビ対策も行ったほうが良いでしょう。カビ対策の基本は高温、多湿を避けることです。例えば、部屋の換気をよくしたり(窓をあける、各部屋のドアーを少しでも開けておく、ドアの下部にルーバーをつける、換気扇を使用する、押入れにすのこを置いて寝具が湿気を帯びないようにする、壁と家具のあいだにすきまをあけるなど)、除湿機を使用したり、掃除をマメに行いましょう。ダニ、カビ対策にいろいろな化学薬品を使用するのは避けましょう。
 以上に述べた、ダニやハウスダストやカビなどを減らす対策は、理想ですが、実際には毎日行うのが困難な場合があります。また、どれだけ行っても完璧とはいえませんし、かえってストレスになる場合もあります。からだに付着したダニ、ハウスダストなどが皮膚炎の悪化の大きな原因となっている場合は、これらを落とすため、掃除の後や朝起きた時にシャワー(入浴)を行ってみてください。それでも改善しない場合は防ダニふとんにかえたり、ベッドを使用すると良い場合があります。
 ダニ対策と矛盾するようですが、乾燥が皮膚炎の悪化の大きな原因になっている場合は、冬など乾燥する季節には加湿器が役に立つ場合もあります。

(7)洗濯の仕方を工夫しましょう
 衣類に被われた部位、特に背部や腰部やおしりの皮膚炎がひどい時は、洗剤の残りや夜間の発汗が関係することが多いので、洗濯の仕方を工夫しましょう。 
 洗剤は合成洗剤よりも天然油脂を用いた粉石けんのほうが良い場合があります。生協やスーパーマーケットで販売されていますので、使用してみてください。これでも合わないときは、入浴用の石けんを使用してみてください。粉石けんは溶けにくいので湯で溶かし、すすぎを標準よりかなり長い時間行ってください。のりづけ、柔軟剤、漂白剤などは使用しないほうが良いと思います。

(8)ストレスを解消する工夫をしましょう
 ストレスはアトピー性皮膚炎の悪化と非常に密接な関係があります。イライラすると思わずひっかいてしまうことが多いものです。また、怒り、あせり、フラストレーションがたまるとかゆみが強くなります。皮膚炎がひどい方が、入院しただけでも皮膚炎が良くなります。これは、普段の生活の中にあるストレスから開放されるからだと考えられています。
 ストレスがなくなったり、転職をしたり、海外に転居すれば薬を全く使わなくても完全になおることがよくあります。あるサラリーマンの人が退職して自営で自分の好きな仕事をはじめたら、何もしなくても完全になおってしまったことがありました。また、外国へ行くと皮膚炎がなおる患者さんにその理由を聞くと「知らない人ばかりだから、人目を気にしなくても良いから」といわれます。個人により良くなる理由はちがうと思いますが、そのような経験をされた人が実際に大勢います。
 また、患者さんの家族、友人、職場の同僚や上司、保育園や幼稚園や学校の先生、医師など、患者さんと接する人みんなの、アトピー性皮膚炎という病気に対する正しい理解と協力は大変重要です。機械があれば同じ病気を持つ人と交流を持つのも良いと思います。そのためには、インターネットの利用や、アトピー・ステロイド情報センターへの入会が役立ちます。
 不安や緊張も皮膚炎の悪化と大きな関係があります。試験や面接(入試や就職)や結婚式の前などに悪化する人が多いようです。少しでも緊張をほぐすには深呼吸をするとよいでしょう。
 また、自分ひとりではストレスの解消が難しいときは、皮膚科医や精神科医による心身医学的治療すなわち抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬などの向精神薬や自律神経調整薬の使用や、カウンセリング(面接による支持的療法)が必要なこともあります。
 日程の決まった旅行や、イベントなど多くの人の集まる所はかえって疲れることが多いものです。自然は人を癒してくれると思います。住まいはなるべく自然の多いところ、車や工場の少ない所がよいでしょう。青い空、広大な海、湖、山、川、四季おりおりに咲く花など、ごく身近にある自然のすばらしさに接するだけでもストレスはかなり取れると思います。ただ単に、一日中家の中でごろごろしているだけでは、ストレスは解消できません。また、趣味を持つことも大変良いことだと思います。

(9)マスコミで得た情報にまどわされないようにしましょう
 特殊な治療法は効く人もあるかも知れないが、悪化することも多いと考えた方が良いでしょう。できれば医師と相談してから行いましょう。
 ”ステロイド皮膚症”の場合や、ステロイドを中止して数ヶ月(乳幼児や顔や首はもっと長い期間)くらいまでは何をやってもすぐには改善しないことがありますが、決してあせってはいけません。後々に副作用を残さない自分に合う治療法がきっとみつかるはずですから、いろいろなことを試してみるのも良いでしょう。
 ”漢方薬”をはじめ、いろいりな”健康食品”などの効果や副作用は個人差が大きいので充分気をつけて使用しましょう。私はこれらの効果は少ないように思っています。むしろ、副作用のほうが心配です。
 海水浴、温泉、入浴剤なども個人差が大きいことを理解した上で試してみても良いでしょう。
 特に海水浴は良くなる人が多いようです。ただし、全員に良いわけではなく、海水浴で悪化する人もありますので、特に初めての時は短時間にしましょう。
 温泉はかゆみが楽になるようなら利用しても良いでしょう。ただし、熱いお湯につかったり、1日に何回もつかったりいい、長い時間お湯につかるとかゆみが強くなる場合が多いようです。
 入浴剤も個人差が大きく、皮膚炎がひどい時は悪化する事が多いので、使用される時は慎重に選んでください。自分に合う入浴剤が見つかれば使用してください。保湿効果のある入浴剤やミネラル配合の入浴剤が合う人もあります。
 いわゆる”民間療法”といわれるものの中には、皮膚炎が悪化したのを”好転反応”といって、体内の”毒素”が出てそれからよい皮膚ができるというような説明を受け、続けているうちにどんどん悪くなる場合があります。漢方薬も含めどんな治療法も、始めてから皮膚炎が悪化するなら止めた方が良いと思います。また、民間療法の中には法外な費用を請求したりする、いわゆる”悪徳商法”もあるので充分気をつけてください。

(10)血液検査について
 若いお母さん方は、お子さんを連れてきて、「アトピーの原因を調べてください」といわれますが、アトピー性皮膚炎は血液検査だけで原因がわかるような単純な病気ではありません。また、アトピー性皮膚炎であるにもかかわらず、血液を調べてもらい異常がなかったからアトピー性皮膚炎ではない」と主張されるお母さんもいます。アトピー性皮膚炎は血液検査で診断するのではなく、あくまで皮疹で診断します。
 乳児検診の際、保健婦さんが皮膚に異常がある子に対して「アトピーかもしれないから一度病院で調べてもらったほうが良い」というようにアドバイスされ、小児科や産婦人科で血液検査を受け、食事制限をし、弱いステロイド外用薬を使用して少し良くなり、ステロイドを止めると悪くなって、そこでお母さんは「おかしい」と気づいて、始めて私の医院に診察に来ることがよくあります。現在行われている乳児検診が、一体どうなっているのか疑問に思ってしまうこともあります。ステロイドを使用してからでは遅いのです。
 血液検査では、抗原(アレルゲンともいい、アレルギー反応を起こすと疑われるもの)に対する抗原価がわかるだけです。あくまでも参考にしかなりません。皮膚炎が体の広い範囲にあり、通常の治療で改善しない場合や、乳児で顔や首に皮膚炎があり食事のあと赤くなるような場合には、血液検査を行ってみるのも一つの方法です。
 しかし、決して血液検査のみでアトピー性皮膚炎の原因のすべてがわかるわけではありません。血液検査は乳幼児や小児にとって、ストレスになります。また貴重な血液を失います。したがって検査は慎重に行ったほうが良いと思います。あくまでも除去、負荷試験の結果で判断します。
 原因を知るには、皮膚炎がどの部位にあるか、どうしたら悪化するか、またどうしたら改善するかを考えることが大変重要です。なお、血液検査をするなら、アレルギーの検査(IgE-RISTやIgE-RAST)だけでなく、貧血の有無、血液像(白血球の種類)、肝機能、脂質、血糖値、血清蛋白、A/G比なども調べてください。
 その他のアトピー性皮膚炎の際行われる検査には、次のような検査法があります。
 「スクラッチ法」は注射の針の先で皮膚に傷をつけ、そこに抗原(アレルギー反応を起こすと疑われるもの)をたらし、その反応の強さを調べます。
 「皮内注射法」は少量の抗原(アレルギー反応を起こすと疑われるもの)を皮膚に注射して、反応が現われるかどうかを調べます。通常15〜30分後と、24〜48時間後の二回、反応の強さ(赤み、しこりなど)を測ります。
 「パッチテスト」は抗原(アレルギー反応を起こすと疑われるもの)をつけた布などをせなかなどの皮膚に24〜48時間はりつけて、反応(赤み、ブツブツ、水泡など)が現われるかどうかを調べます。
 いずれの検査法も血液検査と同様に、これらの検査のみで「アトピー性皮膚炎の原因のすべて」がわかるわけではありません。参考になることもありますが、特に皮内注射法とスクラッチ法は、検査の時、アナフィラキシーショック(重篤なアレルギー反応のこ)を起こすことも考えられますので、慎重に行わなければなりません。

血液検査
 IgE-RISTは、血液中のIgE抗体(免疫グロプリンの一つ)の合計値を測る検査法です。アトピー性皮膚炎の人では一般に高いことが多いのですが、低い場合もあり検査の意義はよくわかっていません。気管支喘息や花粉症のようにハウスダスト(ほこり)、ダニ、花粉などを吸い込んだら数十分以内に発作が起きる即時型アレルギーによるといわれています。
 IgE-ARASTは、血液を採取してチリダニ、ハウスダスト、花粉、カビ、卵、牛乳などの抗原(アレルゲン)との反応をみる検査法です。陽性反応がでた抗原が必ずしもアトピー性皮膚炎の原因とは限りません、負荷、除去試験(例えば、卵を食べれば症状が悪化するか、食べなければ良くなるか)のほうが原因を知るのに有意義だと思います。抗体価が高いアレルゲンがみつかった場合は、2週間位をめどにそのアレルゲン避けてみて(除去試験といいます)皮膚炎が改善し、避けなかった場合(負荷試験といいます)には再び皮膚炎が悪化すれば原因の一つと考えてよいでしょう。

(11)合併症に気をつけましょう
 アトピー性皮膚炎の人は白内障、緑内障、網膜剥離などの目の合併症に気をつける必要があります。また、細菌やウイルスの感染を受けやすく、特に単純疱疹ウイルスによるカポジ水痘様発疹症は、発病の初期に正しい診断と適切な治療を行わないと、生命の危険にかかわるほど重要な病気です。また、円形脱毛症もよく合併します。
 @目の合併症
 アトピー性皮膚炎の人は、白内障、緑内障、網膜剥離などになりやすい傾向があります。自覚症状がなくても定期的に眼科を受診することをおすすめします。

白内障
 白内障は眼のレンズである水晶体が白くにごる病気で、進行すると視力が低下します。初期には自覚症状がありませんので定期的に眼科で診察を受けてください。
 アトピー性皮膚炎の人は体質的になりやすいようです。また、眼のまわりの皮膚炎がひどく、まぶたを強くかいたり、こすったり、たたいたりすることと関係があるともいわれています。顔に症状の強いアトピー性皮膚炎の10%位に合併します。
 ステロイドとの関係はm、はっきりしません。一般に長期間ステロイド内服薬を使用すると白内障が生じやすいが、ステロイド外用薬の副作用として白内障が生じることは極めてまれであるといわれています。ステロイドが開発される前からアトピー性白内障は存在し、白内障の眼科的所見も、老化による白内障の所見とは異なるといわれています。また、ステロイドの副作用の一つに白内障があるといわれている一方、ステロイドの使用を中止した時、(脱ステロイドという)に白内障が発生しやすいともいわれています。

緑内障
 緑内障は一般的には眼圧が上がる眼の病気で、放置すると視野がせまくなります。進行すると失明する場合もあります。初期には自覚症状がありませんので定期的に眼科で診察を受けてください。ステロイドの副作用であるという考え方もあります。
網膜剥離
 網膜に小さな裂け目ができ、ひどいと網膜がはがれてしまう網膜剥離に進行することがあります。そうなると、失明することもあります。ただし、初期には自覚症状がありませんので定期的に眼科で診察を受けてください。眼のまわりの皮膚炎がひどく、まぶたを強くかいたり、こすったり、たたいたりすることと関係があるといわれております。

A細菌やウイルスの感染症
 細菌による病気で多いのが伝染性膿痂疹(とびひ)です。黄色ブドウ球菌によることが多いのですが、連鎖球菌による場合もあります。夏に多いのですが一年中見られます。顔、四肢などに水泡、びらん、カサブタができ、どんどん日ごとにその数がふえていきます。抗生物質(化膿止め)をのみ、シャワーを使用して石けんを用いて全身を洗い、化膿止めの軟膏などをぬりガーゼを当てます。普通は3〜7日間でなおります。
 伝染性膿痂疹(とびひ)とは別に、黄色ブドウ球菌や連鎖球菌の出す”毒素”が皮膚炎を悪化させる場合が非常に多くみられます。カサカサしていた皮膚が急にかゆみが強くなり、赤みを帯び、少しはれたようになり、膿疱(ブツブツ)ができたり、黄色い汁やかわぶたがみられます。消毒療法または抗生物質の内服薬を使用すればたいてい1週間くらいでおさまります。症状がひどい場合は抗生物質の点滴が必要です。まれな合併症に壊死性筋膜炎があります。
 ウイルスによるj感染症には伝染性軟属腫(みずいぼ)や単純疱疹などがあります。
 伝染性軟属腫(みずいぼ)は小さな子供に多い病気ですが、はじめに小さい丘疹(ブツブツ)ができ、だんだん数が増えていきます。わきのあたりによくできますが、四肢、顔などほぼ全身にできますので、毎日皮膚の状態をみてください。主に夏のプールやスイミングスクールで感染します。保育園、幼稚園ではプールと関係なく、感染することもよくあります。とびひのように汁はでません。みずいぼの主意の皮膚はカサカサ、ザラザラすることが多く、これを「みずいぼ反応」と呼んでいます。逆に、このような皮膚の状態であれば、ピンセットでみずいぼを取ったとしても、みずいぼがまだ残っていると考えてください。ステロイド外用薬を使用すると、短期間のちだに小さいみずいぼの数が増えて、ピンセットで取りにくい状態になります。
 単純疱疹は単純ヘルペスウイスルというウイルスによる感染症です。ふつは”熱の吹き出し”とか、”風邪の吹き出し”ともいわれているように、体調が悪いときにくちびるや口の中や陰部や臀部のあたりに数個の水泡ができる病気です。
 ところが、アトピー性皮膚炎の人は同じウイルスであるにもかかわらず、顔、首、胸、背など広い範囲に小さい水疱ができ、リンパ腺がはれたり、熱も38℃以上の高熱が出ることが多く、ときには脳炎を起こすこともあり入院して治療する必要があることもあります。これを「カポジ水痘様発疹症」といいます。しかし、現在では早期に発見すれば、抗ウイルス薬の飲み薬と適切な外用薬の使用および安静のみで、ほとんどの場合なおります。ただし、脱ステロイドの際は、症状も重く入院が必要なこともあります。ステロイドの影響を敏感に受け易い病気ですので、単純ヘルペスウイルスを持っている人は、こういう理由からもステロイドを使用しないほうが良いと思います。
 また、母親が単純疱疹にかかっていると、まもなく子どもにカポジ水痘様発疹症が出ることがよくありますので、母親は軽症でも子供にうつす前に、なるべく早く抗ウイルス薬を飲んで治して下さい。
 大人では過労、風邪、ストレス、スキー、海水浴などをきっかけに単純疱疹やカポジ水痘様発疹が発症します。

(12)自律神経失調症を改善する工夫をしましょう。
 自律神経とは心臓や胃腸などのあらゆる臓器、血管、ホルモンを分泌する内分泌腺、汗腺、唾液腺などの機能を自分の意思とは関係なしに自動的に調節する神経です。
 自律神経には、「交感神経」と「副交感神経」があり、この二種類がバランスをとりあっています。いろいろの原因でこの二種類の神経のバランスがくずれることがあります。これが自律神経失調症です。
 アトピー性皮膚炎の人の多くは自律神経失調症をともなっています。冷え、ほてり、発汗異常、便秘、下痢、立ちくらみ、頭痛、不眠、肩こり、疲れやすい、季節の変わり目に体調を崩す、温度感覚のズレなどいろいろな症状を訴えます。夏のエアコンが効いている部屋での診察の際に、普通の人は寒く感じないのに、自律神経失調症の人は異常に寒く感じてすぐ鳥肌になります。また、脱スロイドの際は、発熱(細菌やウイルスの感染による場合もあります)、悪寒戦慄、発汗異常、温度感覚のズレなどの症状となって現われます。
  自律神経失調症は飲み薬だけではなおりません。毎日の生活習慣、それも赤ちゃんの時からの生活習慣が関係しております。自律神経を安定させないとアトピー性皮膚炎はなおりません。
  自分でできる自律神経失調症を改善する方法を紹介します。

@規則正しい生活、早寝早起きをこころがけ、睡眠不足にならないようにしましょう。
 現在は大人も子供も夜更かしをして、朝おきづらく、その結果朝食を摂らない人が多くなっています。毎朝軽い体操や仕事をして少し体を動かすと朝食もおいしいのですが、実行している人は少ないようです。
 規則正しい生活、早寝早起きは、自然治癒力をたかめるためには絶対に必要な条件です。なぜなら自分の体で自然に生産される成長ホルモンや副腎皮質ホルモンの分泌のサイクルと深い関係があるからです。理想の睡眠時間は大人の場合午後10時から午前6時頃までです。
 夜は家で充分にリラックスして深い睡眠をとりましょう。寝室は一人の部屋をおすすめします。寝る前に毎日決まった静かな音楽を聴くのも良いでしょう。自分に合う方法で、一定の時間に寝るようにしてください。

A疲労は皮膚炎の悪化と関係が深いので疲れをためないようにしましょう。
 仕事の合間に休憩をしましょう。家に帰ったら充分リラックスしましょう。ぬるめのお湯にゆっくりつかるのも良いでしょう。しかし、寝る直前に入浴すると床についてからかゆくなることが多いので、外から帰った時に入浴することをおすすめします。また、疲労は風邪の誘因となりやすく、風邪をひくと皮膚炎が悪化しやすいので疲労をためないようにしましょう。

B胃腸の調子を整えることは大変重要です。
 暴飲暴食を避け、腹八分目をこころがけましょう。単に胃腸薬を飲むのではなく、食事の内容に配慮したり、自分に合う運動をしたり、食後横になったり、仕事の合間に短時間でも良いので休憩をとったり、疲れをためないようにし、ストレスの解消をするなど自分に合う方法で胃腸の調子を整えましょう。特に便秘は皮膚に悪い影響を与えるので、なおす必要があります。

C自分に合う自律神経を強化する体操を行うと良いでしょう。
 例えば、『鶴田光敏氏、藤本憲幸氏、アレルギーに勝つ人、負ける人、文化創作出版 1993年、初版』に紹介されている体操を参考にされるのもよいでしょう。
 現在は子供も大人もほとんどの人が運動不足の傾向にあります。手軽にできる運動としてだれでも知っている『NHKのラジオ体操』や、テレビで紹介される体操などを参考に自分に合うやり方で、無理なく長く続けることができる体操を行ってください。また難しく考えずにウオーキングやサイクリングでも良いし、楽しみながら体を動かすようにしましょう。子供のいる家庭では、親子でできるスポーツをやるのも良いでしょう。
 人目を気にして家の中にこもるのは良くないでしょう。特に、子供は元気に外で遊びましょう。ただし、皮膚炎がひどい時、感染症のある時、リバウンド現象の時は医師の診察を受けながら、外出して良いかどうか決めましょう。

D精神面の問題を解決しましょう。
 「治療のポイント(8)」にものべましたが、ストレスをためないように工夫しましょう。
  子供の過保護や過干渉は良くないです。良好な親子関係、すなわち愛情と信頼関係が大切です。特にかくことをしかってはいけません。一番つらいのは患児なのですから。思春期の患者さんの場合は精神的に自律する事が大変重要です。

E冷えを改善しましょう
冷えがある場合は、半身浴、適度の運動、温泉、温野菜、刺絡療法などが良いでしょう。


第5章
部位別にみたアトピー性皮膚炎悪化の原因
 からだの部位別にみた、アトピー性皮膚炎の悪化の原因をあげてみます。この中には単なる「かぶれ」の原因も含みますが、実際にはアトピー性皮膚炎の症状とかぶれの症状の区別がつきにくいことも多いのです。また、アトピー性皮膚炎の人の皮膚はさまざまな刺激に弱いため、かぶれを起こしそうなものは避けるようにしましょう。

(1)頭…シャンプー、リンス、コンディショナー、整髪料(特にムース)、ヘアスプレー、パーマ、毛染め、ヘアマニキュア、汗、フケ、タバコ、帽子、ヘルメット、ドライヤー、シャンプーをした時に髪の毛が充分乾かないまま寝ることなど。
(2)顔…化粧品、いろいろな外用薬(特にステロイド外用薬やプロトピック軟膏)、汗、日光、スキーに行くこと、シャンプー(特に朝シャン)など頭に使用するもの、髪の毛が触れること、顔を手でさわるくせ、枕および枕カバー、チャイルドシート、タバコ、大気汚染物質、お香、卵や牛乳などの食物アレルゲン(乳児の場合)、パン(パンダ斑)など。

目のまわり…涙、外用薬(特にステロイド外用薬)、化粧品、目薬、ゴーグル、視力矯正のためのパッチ、シャンプー、髪の毛、ハウスダストや花粉など。

口のまわり…汚れ(調味料やパイナップル、サトイモ、キウイフルーツ、トマトなどの食物や鼻水など)、舌でなめること(舌なめずり皮膚炎といいます)、歯磨き粉、リップクリーム、カミソリ(肌にやさしい電気シェーバーのほうが良い)、よだれ、拭くことによる摩擦など。

頬…お母さん(保護者)の衣類でこすれること、お母さんの化粧品や髪の毛が触れること、シーツなど(乳幼児の場合)。

あご…よだれ、離乳食の食べこぼし、拭くことによる摩擦、衣類でこすれることなど(ガーゼやメリヤスのよだれかけが良い)。

耳の周囲…汚れ(乳幼児の場合は涙、汗など)髪の毛が触れること、シャンプーなど頭に使用するもの、電話(主に左の耳の付近)、枕、ピアス、ピアスの消毒など。

耳切れ…細菌感染、衣服の着せ方、脱がせ方、髪の毛など。

(3)首…汗、衣類のえりでこすれること(特にウールやアクリルの衣類、ハイネックのセーター、のり付けをしたシャツ、制服など)、マフラー、ネクタイ、毛布に触れること、髪の毛先がふれること、いろいろな外用薬(特にステロイド外用薬やプロトピック軟膏)、日光、タバコ、シャンプーなど頭に使用するもの、石けん、ネックレス、香水、オーデコロン、吐いた乳(乳児)など。

(4)手…シャンプー、合成洗剤、石けん、水、お湯、学校給食の時に手洗いに使用する消毒液、ゴム手袋、皮の手袋、グローブ、ばんそうこう、かさかさを放置すること、野菜(ニンニク、トマト、たまねぎ、レタス、キウイフルーツ、セロリ、しそ、オクラなど)、植物(菊、サクラソウ、アロエなどのいろいろな観葉植物など)、塩分、魚介類(えび、いかなど)、砂遊び(砂かぶれという)、土、粘土、おもちゃ、車や自動車のハンドル、バット、ゴルフクラブのグリップ、職業の関係で触れるもの(洗剤、水、お湯、消毒液、パーマ液やその他の化学薬品、機械油、ガラス繊維、紙、 ダンボール、チョーク、コイン、紙幣、セメント、花、野菜、肉など)

 なお、アトピー性皮膚炎の人は職業を選ぶ際は慎重に選ばなければなりません。すなわち美容師、調理師、看護師、水や洗剤や化学薬品を頻繁に使用する職種などはできれば避けたほうが良いと思います。これらの職業に就いた人で一部の方は、転職をせざるを得ないことがあります。
 また、主婦手に皮膚炎がみられる場合(主婦湿疹という)は、アトピー性皮膚炎の症状の一つと考えられます。その予防には、台所仕事や洗濯やそうじやシャンプーなどの際、プラスチック手袋や使い捨てのポリエチレン製の手袋を使用してみてください。

(5)手首、足首…汗、衣類の摩擦(袖口にゴムが入った衣類、セーターなどの袖口など)

(6)ひじの内側…汗、ひっかくこと、衣類の摩擦など。

(7)ひざの裏側…汗、ジーンズなどゴワゴワした衣類の摩擦など。

(8)背…夜間にかく汗、ブラジャー、ボディスーツ、衣類の洗濯用洗剤の残り、入浴の際の洗い方(汚れが残る、ナイロンタオルやボディブラシの使用、石けんが残る)下着の素材と織り方(綿100%のメリヤスが良い)、シーツの素材と織り方(タオル地は良くない、綿で平織りが良い)触る癖(嗜癖的掻破)など。

(9)胸…ブラジャー、衣類の摩擦、シートベルトなど。

(10)わき…衣類の摩擦、汗、タンクトップ型の下着(わきの下の汗を吸い取らない、肌をおおう面積が少なくその上に着る衣類の刺激を受けることが多いため)、制汗剤、脱毛ワックスや除毛クリーム、カミソリで剃ることなど。

(11)腹…ベルトの金具やボタンの金属アレルギー、トランクスのゴム、腹巻、ボディスーツなどの衣類のしめつけなど。

(12)おしり…ブリーフの縫い目、ブルマーのゴム、ガードル、パンスト、汗、おねしょ、長い時間座っていることなど。

(13)陰部…尿、汚れ(男の子は排尿の前後に手を洗い、入浴の際奥まで洗うと良い)、生理用ナプキン、触るくせ、ブリーフなど。

(14)足…砂、土、スニーカー(以前はズック靴皮膚炎と呼んでいました)、靴、長靴、サンダル、ソックス(綿で模様のないものが良い)など。

(15)四肢…入浴の際ゴシゴシ洗うこと、カサカサを放置すること、草木との接触、虫さされ、外傷、日光、ソックタッチ、ばんそうこう、ムダ毛の処理(カミソリで剃る、毛抜きで毛を抜く、脱毛用ワックスや除毛用クリームなど)、スポーツの際のすね当て、ジャージ、剣道や柔道などいろいろなスポーツで着用する衣類、特にユニフォームなど。


第6章
良い診療ができるために患者様へのお願い

(1)診察の際、「自分が今一番困っていることは何か」を最初に教えてください。また、薬や病状について疑問に思っていることなど、何でも気軽に相談してください。

(2)全身の皮膚の病状をよく診せてください。「症状がどの別にあるか、また、どの部位にないか」は原因を知るうえで大変重要です。また、体の一部にでも、ヘルペス、おでき、とびひなどの感染症があるかどうかは、前進を診察しないとわかりません。これらの感染症は、アトピー性皮膚炎の場合、大変重要な意味を持っているので、普段と変わったことがあれば早めに診察を受けてください。

(3)使用している薬、市販の薬、化粧品、保湿剤、石けん、シャンプー、入浴剤、食事の内容などをなるべく詳しく医師に伝えてください。情報が多いほど原因が見つけやすくなります。特に初診の方は、生まれてから現在に至るまでの症状や治療の内容について、できるだけ詳しく紙に書いて持ってきてください。
(4)アトピー性皮膚炎を薬のみでなおすことは不可能であることを自覚してください。ステロイド以外の薬はかぶれる可能性があります。内服薬も抗生物質や抗ウィルス薬以外はほんの補助です。本来アトピー性皮膚炎は自然治癒する疾患です。ステロイドやプロトピックなどの自然治癒を促進する方法を一緒に考えましょう。

(5)アトピー性皮膚炎ほど個人差の大きい病気は他にあまりありません。他人が良かったからといっても、自分に合うとは限りません。新しい治療を始まる時は医師と相談してください。

(6)ひどくなったときは通院の数を増やしてください。特に脱ステロイドの際は個人差が大きく、外用薬も大変かぶれやすい状態になっていますので、頻繁に診察を受けてください。また、抗生物質や抗ウィルス薬を使用する時は、医師の指示に従ってください。
 ひどくなった時に自分の判断で転医せず、必ず相談してください。ステロイドを使用しない方針の信頼できる医師を紹介します。私も含めアトピーにステロイドを使用しない方針の医師のネットワークがありますから、例え受診の時点で良い薬がなくても、明日には見つかる可能性がありますので、あきらめずに受診してください。また、どんなに皮膚炎がひどくても入院して治療すれば、たいていの場合ステロイドを使用しなくても皮膚炎は改善します。
 しかし、アトピー性皮膚炎は「自分自身でなおす」という強い意志がないとなかなか良くなりません。

(7)今まで使用していたステロイド外用薬の使用を中止しただけではなおりません。かえって、一時的に悪化すること(リバウンド現象という)が多いことを理解してください。勝手に薬を中止しないで、医師と相談して治療計画をたてる必要があります。

(8)”大きい病院、マスコミなどで有名な医師の治療”が必ずしも良いとは考えないでください。

(9)見ない、触らない、掻かない、塗らないが原則。
 第7章
ステロイドとは何?
 ステロイドはまたの名を「副腎皮質ホルモン」といいます。本来人間が自分のからだの中でつくり出す、生命の維持には絶対必要なホルモンです。腎臓のすぐ上にある副腎という小さな臓器から分泌されます。このホルモンを製造化したものが副腎皮質ホルモン剤(副腎皮質ステロイド剤:通称ステロイド)といいます。1949年にコルチゾンがリウマチ様関節炎に使用され、劇的効果が認められてから、ステロイドが抗炎症薬として発展してきました。
 ステロイドの薬には、内服薬、外用薬、注射薬、点眼薬、点耳薬、吸入薬、痔の薬などがあります。病院、医院、薬局などで炎症性疾患、アレルギー性疾患などに広く使用されています。外用薬は一般に湿疹、皮膚炎、虫さされや口内炎などの治療に使用されています。
 ステロイドをからだの外から”薬”として与えてしまうと、副腎は萎縮してステロイドを作らなくなります。これは、筋肉を使わないと筋力が衰えるのと同じ現象ですい。もちろん、ごく少量や短期間のステロイドの使用ではこのようなことは起こりません。
 しかし、年齢、薬の種類、薬の強さ、使用期間、使用範囲、使用部位、個人差などにより副腎への影響の大きさは変わってきます。残念ながら、ステロイドを薬として使用する際に、安全にしようできる指針(ガイドライン)は今のところありません。
 ステロイドは即効性がありますが、副作用も強く、よく”両刃の剣”にたとえられます。しかも副作用は一般の薬とは異なり、かなり後から出ることが多いので、副作用と気づかないうちに病気が複雑化(病気が化ける)します。
 ステロイドは外用薬はふしぎな薬で、湿疹、皮膚炎、虫さされや口内炎などに効果があるとされていますが、実際にはこれらの疾患に対しても、ステロイドを使用しないほうが早く完治します。うっかりステロイドを使用してしまうと、ステロイド以外の薬がすべて効かなくなったり、かぶれをおこしたりするようになります。また、ステロイドを減量したり、中止した際使用前より症状が悪化したり、今までになかったような症状がでる場合がよくあります。アトピー性皮膚炎はその典型です。また、例えそのときは早くなおったように見えても、日時が経ってから再発して難治性になったり、ウィルス感染症や菌感染症を、招いたりすることが多いのです。
 私は現在、全くといってよいほどあらゆる皮膚疾患にステロイドを使用していません。細菌は、大気汚染やストレスの増加など何らかの理由で、ステロイドの副作用が生じやすい環境になってきているのかも知れません。私は30年間皮膚科の臨床医をやってきて、ステロイドに対する考え方が大きく変わってしまいました。
 なお安保 徹先生の理論はこのような臨床的事実に一致するものです。すなわち、外用したステロイドホルモンは皮下組織に沈着し、自然酸化を受けて変形コレステロールとなり、その刺激に局所炎症が引き起こされるほか、交感神経過緊張によって、全身性の血流障害と顆球増多を招き、新しい病態を形成していたのです。
(絵でわかる免疫;2001年初版、新潟大学教授 安保 徹氏著、講談社)

第8章
ステロイド外用薬の種類
 ステロイド外用薬にはいろいろな種類があります。現在保険診療で使用される主なステロイド外用薬(皮膚および眼軟膏、点眼・点耳及び点鼻、喘息の吸入、痔疾患用、口腔用など)を強さや種類で分けると表3のようになります。
薬の強さ      商品名
@最も強い     デルモベート、ソルベガ、マイアロン、マハディなど。
Aきわめて強い  ジフラール、デイアコート、フルメタ、マイザー、リンデロンDP、メサデルム、スチブロン、デルモゾールDP、アナミドール、ジフアコート、フルナート、ヒフメタ、メインベートなど。
Bかなり強い    アンテベート、ビスダーム、ネリゾナ、テクスメテン、ブデソン、トピシム(E)、シマロン、アドコルチン、アフゾナ、ルーフル、ビスコザール、フルオシノニドなど。
C強い       リンデロンX(G)、ベトネベート(N)、デルモゾール(G)、ムヒベタX、ボアラ、プロパデルム、エクラー、フルコート(F)、パンデル、イトロン、ドレニゾンテープ、トクダーム、アスデロゾン、インファナル、ベストフラン、プロピオン酸ベクロメタゾン、           フルゾン、コリフェート、フルベアンコーワテープなど。
D普通       ロコイド、プランコート、アルメタ、ゲリメサゾン、レダコート、ケナコルト(A),ケナコルトAG、リドネックス、スピラゾン、ビーモン、アボコート、デカドロンエアロゾルーN、デキサA、デキサチョーセイ、デキサン、コルデス、オイラゾンD、デタメタゾン、           トリシノロン、ノギロンX、トリアムシノロンアセトニド軟膏、サンテゾーン眼軟膏、D−E−X0.1%眼軟膏、デキサメゾン眼軟膏など。
E弱い       キンダメート、パルデス、ピータゾン、ミルドベート、キンダロン、ロコルテン、テラ・コートリル、オイラックスH、強力レスタミンコーチゾン軟膏、エキザルベ、ベトノバールG、エアゾリンD、オイリッチ、グラマイコーチゾン、クロマイーP,テトラ・コー           チゾン、テラコースプレー、プレドニン眼軟膏、プレドニゾロン眼軟膏、ネオメドロールEE軟膏、酢酸プレドニゾロン0.25%眼軟膏など。


アトピー性皮膚炎

第8章
ステロイド外用薬の種類
 ステロイド外用薬にはいろいろな種類があります。現在保険診療で使用される主なステロイド外用薬(皮膚および眼軟膏、点眼・点耳及び点鼻、喘息の吸入、痔疾患用、口腔用など)を強さや種類で分けると表3のようになります。
薬の強さ      商品名
@最も強い     デルモベート、ソルベガ、マイアロン、マハディなど。
Aきわめて強い  ジフラール、デイアコート、フルメタ、マイザー、リンデロンDP、メサデルム、スチブロン、デルモゾールDP、アナミドール、ジフアコート、フルナート、ヒフメタ、メインベートなど。
Bかなり強い    アンテベート、ビスダーム、ネリゾナ、テクスメテン、ブデソン、トピシム(E)、シマロン、アドコルチン、アフゾナ、ルーフル、ビスコザール、フルオシノニドなど。
C強い       リンデロンX(G)、ベトネベート(N)、デルモゾール(G)、ムヒベタX、ボアラ、プロパデルム、エクラー、フルコート(F)、パンデル、イトロン、ドレニゾンテープ、トクダーム、アスデロゾン、インファナル、ベストフラン、プロピオン酸ベクロメタゾン、           フルゾン、コリフェート、フルベアンコーワテープなど。
D普通       ロコイド、プランコート、アルメタ、ゲリメサゾン、レダコート、ケナコルト(A),ケナコルトAG、リドネックス、スピラゾン、ビーモン、アボコート、デカドロンエアロゾルーN、デキサA、デキサチョーセイ、デキサン、コルデス、オイラゾンD、デタメタゾン、           トリシノロン、ノギロンX、トリアムシノロンアセトニド軟膏、サンテゾーン眼軟膏、D−E−X0.1%眼軟膏、デキサメゾン眼軟膏など。
E弱い       キンダメート、パルデス、ピータゾン、ミルドベート、キンダロン、ロコルテン、テラ・コートリル、オイラックスH、強力レスタミンコーチゾン軟膏、エキザルベ、ベトノバールG、エアゾリンD、オイリッチ、グラマイコーチゾン、クロマイーP,テトラ・コー           チゾン、テラコースプレー、プレドニン眼軟膏、プレドニゾロン眼軟膏、ネオメドロールEE軟膏、酢酸プレドニゾロン0.25%眼軟膏など。
Fその他      全く説明がないもの、病院や医院での約束処方(WO,RH,ネリプトなど意味不明の暗号で内容不明)など。
眼科・耳鼻科用  アルデシンAQネーザル(耳鼻科用)、リノロサール(眼科・耳鼻科)、フルナーゼ(点鼻液)、ベコナーゼ(点鼻薬)、コールタイジン(耳鼻科用)サンテゾーン(点眼液)、リノコート(耳鼻科用)、リデロン液(眼科・耳鼻科)、日点・SPゾロン点眼             液、オルガドロン(点眼・点鼻)、日点・HCゾロン点眼液、フルメトロン点眼液、デカドロン液(点眼・点耳液)など。
喘息の吸入用   アルデシン、ベコタイド、フルタイド、タウナス、ストメリンD、パルミコートなど。
痔疾患用      ネリプロクト(坐薬、軟膏)、ポステリザンF坐薬、強力ポステリザン軟膏、プロクトセディル(坐薬、軟膏)、ヘモレックス軟膏、リンデロン座剤、ポステリザン(坐薬、軟膏)など。
口腔用       ケナログ、デスパ、アフタシールS、アフタッチ、アフラゾロン、デキサルチン軟膏、サルコート、デルゾンなど。

 参考までに最も多く使用されるCの「強いステロイド外用薬」のリンデロンV(G)軟膏、クリーム(一般名吉草酸ベタメタゾン)の能書(病院、医院、調剤薬局向けに書かれた薬の説明書)を原文のまま紹介します。

【禁忌(次の場合には使用しないこと)】
1.細菌・真菌・スピロヘータ・ウイルス皮膚感染症及び動物性皮膚疾患(疥癬、けじらみ等)[これらの疾患が悪化するおそれがある。]
2.本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者
3.鼓膜に穿孔のある湿疹性外耳道炎[穿孔部位の治癒の遅延及び感染のおそれがある。
4.潰瘍(ベーチェット病は除く)、第2度深在性以上の熱症・凍傷[皮膚の再生が抑制され、治癒が遅延するおそれがある。]

【適応(軟膏、クリーム)】
湿疹・皮膚炎群(進行性指掌角化症、女子顔面黒皮症、ビダール苔癬、放射線皮膚炎、日光皮膚炎を含む)、皮膚そうよう症、痒疹群(蕁麻疹様苔癬、ストロフルス、固定蕁麻疹を含む)、虫さされ、乾癬、掌蹠膿疱症、扁平苔癬、光沢苔癬、毛孔性紅色紕糠疹、ジベルバラ色粃糠疹、紅斑症、(多形滲出性紅斑、ダリエ遠心性環状紅斑)、紅皮症(悪性リンパ腫による紅皮症を含む)、慢性円板状エリトマトーデス、薬疹・中毒疹、円形脱毛症(悪性を含む)、熱傷(瘢痕、ケロイドを含む)、凍瘡、天疱瘡群、ジューリング疱疹状皮膚炎(類天疱瘡を含む)、痔核、鼓室形成手術、内耳開窓術、中耳根手術の術創。
【用法・用量】通常1日1〜数回、適量を患部に塗布する。なお、症状により適宜増減する。

【使用上の注意】
1.重要な基本的注意
(1)皮膚感染を伴う湿疹・皮膚炎には使用しないことを原則とするが、やむを得ず使用する必要がある場合には、あらかじめ適切な抗菌剤(全身適用)、抗真菌剤による治療を行うか、又はこれらとの併用を考慮すること。
(2)大量又は長期にわたる広範囲の密封法(ODT)等の使用により、副腎皮質ホルモン剤を全身投与した場合と同様な症状があらわれることがある。
(3)本剤の使用により症状の改善がみられない場合又は症状の悪化をみる場合は、使用を中止すること。
2.副作用
再評価結果における安全性評価対象例4875例(ローションを含む)中、副作用は166例(3.41%)に認められた。主なものは、毛嚢炎・せつ41例、皮膚刺激感38件等であった。
発生頻度(まれに:0.1%未満、ときに:0.1〜5%未満、副詞なし:5%以上又は頻度不明)
(1)重大な副作用
眼圧亢進、緑内障、後嚢白内障:眼瞼皮膚への使用に際しては眼圧亢進、緑内障をおこすことがあるので注意すること。大量又は長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)により緑内障、後嚢白内障などがあらわれることがある
(2)その他の副作用
1)過敏症:皮膚の刺激感、発疹等があらわれることがあるので、このような場合には使用を中止すること。
2)皮膚の感染症:細菌感染症(伝染性膿痂疹、毛嚢炎、せつ等)皮膚の真菌症(カンジタ症、白癬等)、及びウイルス感染症があらわれることがある。[密封法(ODT)の場合おこりやすい。]このような症状があらわれた場合には、適切な抗菌剤、抗真菌剤等を併用し、症状が速やかに改善しない場合は本剤の使用を中止すること。
3)その他の皮膚症状:長期連用により、ステロイドざ瘡(尋常性ざ創に似るが、白色の面靤が多発する傾向にある)、ステロイド酒さ・口囲、時に顔面全体に紅斑、丘疹、毛細血管拡張、痂皮、鱗屑を生じる)、ストレイド皮膚(皮膚萎縮、毛細血管拡張)、またときに魚鱗癬様皮膚変化、紫斑、多毛及び色素脱失等があらわれることがある。このような症状があらわれた場合には徐々にその使用を差し控え、副腎皮質ホルモンを含有しない薬剤に切り替えること。
4)下垂体、副腎皮質系機能:大量または長期にわたる広範囲の使用、密封法(ODT)により、下垂体・副腎皮質系機能の抑制を来すことがあるので注意すうること。

3.高齢者への使用
一般に高齢者では副作用があらわれやすいので、大量又は長期にわたる広範囲の密封法(ODT)等の使用に際しては特に注意すること。

4.妊婦、・産婦、授乳婦などへの使用
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に対しては大量または長期にわたる広範囲の使用を避けること。[妊娠中の使用に関する安全性は確率していない]

5.小児などへの使用
未熟児、新生児、乳児、幼児又は小児では、長期・大量使用又は密封法(ODT)により発育障害を来すとの報告がある。また、おむつは密封法(ODT)と同様の作用があるので注意すること。

6.適用上の注意
使用部位:眼科用として使用しないこと。
使用時:化粧下、ひげそり後等に使用することのないよう注意すること。


紫斑のストロイド外用薬について
 しっしん、かぶれ(皮膚炎)、虫さされ、かゆみ止め、あせも、ただれと書いてある外用薬に中には、ステロイド(副腎皮質ホルモン)が含まれているものがたくさなります。薬の箱に「ステロイド」と書いてないことも多く、たとえ書いてあっても読まない人がほとんどです。
箱の中の説明書には「ステロイド(副腎皮質ホルモン)」と書いてあっても読まない人が多く、また読んでもわからないことが多いようです。小さな字で、しかも専門用語で書いてあるため理解することはほとんど不可解です。最近では皮炎霜のように海外から輸入されたステロイドもあり、また、インターネットを利用して自由に購入することもできるので、薬の成分をよく調べる必要があります。有効成分として表4のように書いてあるものは「ステロイド」です。実際にはこれ以外にもあるので医師と相談してください。
 
 デキサメタゾン、酢酸デキサメゾン、プレドニゾロン、酢酸プレドニゾロン、吉草酸酢酸プロイドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酢酸(または酪酸)ヒドロコルチゾン、酪酸クロベタゾン

 商品名にはいろいろあって、全部紹介できませんが下のような薬が多く販売されています。

 アピアセクト、アレルギールクリーム(ジェル)、ウナコーワA、液体ムヒS,エスアランD軟膏(クリーム)、エスアランHクリーム、エスジールAE軟膏、エマゼン軟膏(クリーム、ローション)、オイチミン、オイチミンクリーム(ローション)、オイチミンD、オイラックスH、オイラックスG,オイラクッスPZクリーム、オイラックスデキサゲル、オイラックスデキサ軟膏、カユミックS軟膏、強力トリコミイシンG,コーチゾン、サンメディックローションS,シオノギD軟膏、新サニアゾルD、新デキサGゲル、新テシトン軟膏、セロナ軟膏(クリーム、ローション)、セロソフト、ダイヤコーチノンG,タクトクリーム、デキサ・チョウーセイ軟膏、デミスロン軟膏、テラ・コートリル軟膏、テレス軟膏(クリーム)、ナガラベース、ペルデス軟膏(クリーム)、皮炎霜、ピータゾン軟膏、ピロット軟膏(クリーム)、フジアローH、フルコートF軟膏、プレバリンクリーム、プロタッチ、ベトネベートN軟膏(クリーム)、ベリベアー軟膏(クリーム)、マキロン軟膏、ミルドベート軟膏、ムヒアルファーS,雪の元、ラナケインコーチ軟膏、ラリーエイ軟膏(クリーム)、リビメックスコーワ軟膏(クリームローション)、レスタゾン軟膏、リチゾンコート、ロコイダン軟膏(クリーム)、ローヤルエンチクリーム、ワーボンE軟膏、ワーボンプラス軟膏など。

ステロイド外用薬は正しく使用しましょう。
 ステロイド外用薬は、湿疹、皮膚炎、虫さされなどの炎症(かゆみ、赤み、ブツブツなど)をすばやくおさめる作用がありますが、同時に副作用が多い薬なので正しく使用しましょう。たとえ医師が誤診して、本来ステロイド外用薬を使用すべきでない皮膚病に使用すべきでない皮膚病に使用しても、単純疱疹(ヘルペス)以外は急に悪化することは少なく、むしろ一見改善したようにみえるので注意が必要です。つまり、かぶれるのではなく、副作用はかなり後から、しかも徐々に出現してくるために気がつかないのです。また、依存症になりやすいので気をつけましょう。極端ないい方をすれば、「ほとんどの皮膚疾患に使用した際、一時的にせよ症状が改善したように感じられること」が副作用発生の最大の理由なのです。

(1)ステロイド外用薬は正しい診断のもとに使用しましょう(ただし、現在私の医院では全くといってよいほど使用していません)。
(2)薬の種類、使用する部位、一日の湿布回数、使用期間、使用方法を決めて使用しましょう。
(3)特に乳幼児、小児、顔、アトピー性皮膚炎、妊娠の際などに使用すると副作用が出やすいと考えます。
(4)ステロイド外用薬はあくまでも「対症療法」です。病気の原因をみつけ、それを除去することが重要です。特に顔は、原因不明、または、原因がわかっていても除去できない時には使用しないでください。
(5)指先に付着したステロイド外用薬は、すぐに石けんを用いて洗い流しておいてください。

ステロイドの副作用
リンデロンV(G)軟膏(クリーム)の能書きのところに「副作用」という項目がありますが、これを読んだだけでは現実に起こっている副作用を理解することは不可能です。そこで能書からは見えてこないステロイド外用薬の副作用について説明します。
(1)顔に使用した場合
 診断の誤りで、特に単純ヘルペスの場合はすぐに皮疹が悪化しますので、だれでも気がつきます。すぐに使用を中止して、ヘルペスの治療を行えばさほど問題はありません。ニキビや白癬などに誤って使用すると徐々に悪化してきますが、使用を中止してそれぞれの疾患に対する治療を行えばやや日時はかかりますが、まもなくなおります。問題になるのは、顔に湿疹に使用した場合です。ステロイドを使用すると、いったんは紅斑、ブツブツ、かゆみなどの湿疹の症状がおさまります。しかし、まもなく再発し、同じ薬を塗布しても今度は最初に塗布した時ほど効きません。再発、改善を繰り返し、そこではじめて「おかしい」ときづいてステロイドを止めると、カサカサ(鱗屑、かさぶた)や持続性の赤み(紅斑、毛細血管拡張)や強いかゆみが出てきます。体質によってはニキビの丘疹(ブツブツ)やほてりも出てきます。これを「酒さ様皮膚炎」といいます。この治療は大変日数がかかります。ニキビ様のブツブツは普通のニキビと同じような治療をすれば2〜3ヵ月で消失することが多いのですが、赤み、ほてり(暖房の効いた部屋や熱い風呂、日光に当ったときなどに著明)やカサカサは長年続きます。顔はステロイドの副作用ではありますが、誤診の場合と異なって、ステロイドを中止すると一時的に悪化し、逆にステロイドを塗布すると一時的にはかえって楽になりますが、長い目でみればだんだん悪化して行きます。また、この副作用について、いくら説明しても理解できない患者さんが大勢います。その場合はどうしようもありません。
 顔へのステロイド外用薬は、基本的にどんな疾患であっても使用しないほうが良いと思います。原因がはっきりしているかぶれであっても、原因を除去すれば間もなくなおりますし、薬を使用するなら亜鉛華軟膏などで充分です。原因がわからない時や、原因を除去できない時にステロイドを使用するのは大変危険です。

(2)アトピー性皮膚炎の場合
 ステロイドは、最初は皮膚炎に効果があるようにみえても、だんだん効きが悪くなって行きます。これをステロイドの効果の減弱(タキフィラキシス)といいます。一時的に皮膚炎に効果があるようにみえても、長い経過をみれば結果として皮膚炎の範囲が広がり、持続性の赤みが出現し、かゆみが強くなり、細菌やウィルスの感染が起こりやすくなります。
 また、薬を含めいろいろなものにかぶれやすくなります。「眼科用ワセリン(プロペト)という、」という、一般的には非常に刺激の少ない保護剤がありますが、普通は顔のカサカサにぬっても赤くなりません。ただし、眼科用ワセリンをぬって直後からしばらくのあいだは赤くなる人もあります。しかし、翌日も赤みが続く人は私の経験では、現在または過去にステロイドを使用したことのある人のみです。亜鉛華軟膏(通称ボチ)やアンダーム軟膏などの非ステロイド剤を使用した際も、ステロイドを使用したことがある人はかぶれることが多いでのです。
 さらに、ステロイドの使用によって、皮膚はとても敏感になり、ささいな刺激、例えば、異物(ダニ、ホコリ、花粉、大気汚染物質、アクセサリー、さまざまな化学物質など)との接触、衣類の摩擦、発汗、運動、睡眠不足や過労、ストレス、季節の変化、食事(特に甘いもの、アルコール」、刺激物、油っこいもの、アレルゲン、仮性アレルゲン)などにより、かゆみを強く感じ、皮膚炎も悪化しやすくなります。
 私の経験からいえば、特に顔や首にステロイドを使用した人は後になって長時間本当に苦労していますから、これらの部位には絶対にステロイドを使用しないでください。
 顔に首以外でも、ステロイドを使用するのは大変危険です。ステロイド外用薬は、アトピー性皮膚炎にとって一種の”麻薬”のようなものです。ステロイドの影響がいつまで続くのかは、よくわかっていません。
 また、乳幼児、小児といった年齢が低いほど、強いステロイドほど、広い範囲に使用するほど、長く使用するほど「本来のアトピー性皮膚炎の症状」と「ステロイドの副作用」が混在して複雑になり、難治性になると考えます。これが”ステロイド皮膚炎”です。

”ステロイド皮膚炎”
 ステロイド皮膚炎症のはっきりした定義はありませんが、一般には、ステロイド(外用薬」や内服薬)を使用したため生じた難治性のアトピー皮膚炎のことを、本来のアトピー性皮膚炎と区別してこのように呼んでいます。つまり、「本来のアトピー性皮膚炎の症状」と「ステロイドの副作用」が混在している状態です。いわゆる”重症成人型アトピー性皮膚炎”といわれているものも、ステロイド皮膚症です。最近では小児にもみられます。
 ステロイドの副作用でもっとも恐ろしいのが、ステロイドの使用を止めた後にしばしば起こる”リバウンド現象”です。離脱症状ともいいます。
"リバウンド現象”
 ステロイドの使用を中止した際、一時的に症状がひどく悪化することです。ステロイド外用薬を使用したことがない部位にまでも、今までに見られなかった皮疹(紅斑、浮腫、ブツブツ、貨幣状湿疹様の丸い皮疹など)がどんどん広がっていきます。ステロイドを使用していた部位は、強烈なかゆみや痛み、紅斑、浮腫、滲出液、亀裂、かさぶた、落屑(皮が剥げ落ちること)といった症状がかなり長い期間続きます。発熱、悪寒戦慄」、倦怠感、発汗」異常、乏尿、生理不順などの全身症状がでる場合もあります。
 なお、保護剤(特にワセリン)・保護剤などのステロイド以外の外用薬でも同様の症状(リバウンド現象)が起こることもあるといわれております。
 リバウンド現象が起こるはっきりしたメカニズムは不明ですが、安保 徹先生は、リバウンド現象について次のように述べておられます。「多くのアトピー性皮膚炎の子供たちは、ステロイド外用剤が真の治癒をもたらす薬でないことに気づき、独力でステロイド離脱を行うことが多いようです。しかし、(酸化コレステロールを中和するためのステロイドが途絶えると(過去に外用して変性した)酸化コレステロール沈着のためにさらに激しい交感神経刺激症状が現われます。リバウンド現象とか禁断症状ともいわれるものです。
(3)診断の誤りによる場合
 ステロイド外用薬を股部白癬(いんきんたむし)、足白癬(水虫)、体部白癬(ぜにたむし)、カンジダ症などの真菌性疾患、伝染性軟属腫(みずいぼ)、普通のいぼ、単純ヘルペス(熱の吹き出し)、帯状疱疹(おびくさ)などのウィルス性疾患、とびひ、せつ(おでき)など細菌性疾患、尋常性ざ瘡(ニキビ)、疥癬(ヒトダニ)、しらみ症」などに誤って使用すると悪化します。
 ただし、かぶれとは違い、たむしや水虫に使用しても急に症状が悪化するのではなく、かゆみなどはかえって改善しますが、徐々に患部が広がっていきます。診断の誤りが多いのは、疥癬(ヒトダニ)、尋常性ざ瘡(ニキビ)、白癬(たむし)、単純ヘルペス(熱の吹き出し、特に口内炎の場合)などです。
 このように誤診されることは日常茶飯事ですので、外用薬を使用する場合はどんな薬であっても慎重に判断する必要があります。特にみずいぼなどは、誤って使用すると大変難治性になります。
(4)その他の副作用
 ステロイド外用薬のその他の副作用として、多毛(毛深くなること)、ニキビ、色素の異常(赤黒くなったり、白くなったりする)、皮膚萎縮(皮膚がうすくなる、高齢者の皮膚のようになる)、びらん(ただれ、赤ちゃんのおしりに多い)、紫斑(血管が弱くなり、皮下出血がおこり、紫の斑点ができる)、赤み(ステロイド潮紅といい、皮膚がうすくなり、皮下の血管がすけて赤くみえる)、皮膚のきじゃく化(皮膚が弱くなりすぐに傷ができる、その傷がなおりなくくなる)、ヒリヒリ感(特に陰部、くちびる、口の中など)、皮膚のカサカサやゴワゴワ、かぶれやすくなる、化膿しやすくなる、いぼができやすくなる、緑内障、白内障、効果の減弱(タキフィラキシス)、依存症、リバウンド現象(乾癬などアトピー性皮膚炎以外の疾患でも起こる)、感染症の誘発(細菌、ウィルス、真菌などの感染症)などがあります。
 これらの副作用は、徐々に現われてくるため気がつかない場合が多いのですが、少し考えれば、ステロイドを使用する前にはなかった症状が現われてきていることがわかるはずです。
 どんなステロイド外用薬でも年齢、部位、範囲、期間によっては、ステロイド内服薬や注射薬と同じような副作用が現われます。特に最も強いステロイド外用薬のデルモベートは、外用薬であっても内服薬と同じ程度の副作用があります。
 次にステロイド内服薬(セレスタミン、ベタセレミン、セレスターナ、ヒスタブロック、エンペラシン、プレドニン、リンデロン、リネステロン、メドロールなど)や注射薬の副作用についてですが、重大な副作用として、続発性副腎皮質機能不全、眼圧亢進、緑内障、後嚢白内障、感染症の誘発および増悪、消化性潰瘍、糖尿病、精神変調(うつ状態、多幸症、不眠、頭痛、めまい、痙攣など)、血栓症、ミオパチー、その他の副作用として、脂質・たん白質異常(満月様顔貌、野牛肩、窒素負平衡、脂肪肝等)、体液・電解質異常(高血圧症、浮腫、低力リウム性アルカローシス等による網膜障害、眼球突出、筋・骨格異常(骨粗鬆症、自然骨折、大腿骨および上腕骨等の骨頭無、菌性壊死、筋肉痛、関節痛など)、白血球増多、月経異常、膵炎、下痢、悪心、嘔吐、胃痛、胸やけ、腹部膨満感、口渇、食欲不振、食欲亢進、皮膚の異常(ざ瘡、多毛、脱毛、色素異常、皮下溢血、紫斑、線条、掻痒、発汗異常、顔面紅斑、創傷治癒障害、皮膚ひ薄化・き弱化、脂肪織炎)、発疹、発熱、疲労感、ステロイド腎症、体重増加、精子数及びその運動性の増減、頭蓋内圧亢進症状などがあります。
また、連用後、使用を中止すると、発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉痛、関節痛、乏尿、ショック等の離脱症状があらわれることがあるので、使用を中止する場合には、医師の診断を受けながら、徐々に減らす必要があります。
 安保 保先生によると、その他の副作用として、全身性の血流障害(冷え)、生活のリズムが狂う、次第に大量が体調がすぐれない、疲れやすい、動脈硬化を引き起こし老化を促進する、ステロイド精神症(不安感、絶望感)、胸腺の萎縮や末梢のT細胞の死(免疫抑制作用)、顆粒球増多による炎症の悪化や炎症を新しくつくり出す、多臓器不全などがあります。
 私の医院の患者さんですが、今まで全く皮膚に異常がなかったにもかかわらず、突発性難聴の治療のために大量のステロイドを内服した後に、典型的なアトピー性皮膚炎が発病しました。また、別の患者さんですが、長年続いていた結節性痒疹の治療(公立病院の皮膚科)のため、大量のステロイドを内服し、途中で内服を中止した直後に、全身、特に両手、両足、四肢に今までの皮疹とは全く異なる無数の小水泡が発生しました。このようにステロイド内服薬は、ステロイド外用薬の場合と同じで、能書に記載がない副作用もあります。

第11章ステロイドの副作用の出る本当の理由
(1)ステロイド外用薬はたいていの皮膚疾患に使用してもすぐに症状が悪化することはありません。むしろ、かゆみなどの自覚症状は、一時的にせよ改善したように感じられることが多いのです。つまり、かぶれを起こすことはまれです。普通外用薬の副作用として、かぶれが代表的ですがステロイド外用薬は例外です。ステロイド外用薬は、本来かぶれをなおす薬だからです。副作用は、かなり後から、それも徐々に現われてくるために、最初は気がつかないのです。
 患者さんは薬を塗布してするに悪化した場合(かぶれた場合)は「この薬は自分に合わない」といいます。またステロイドを塗布して一時的に良くなった場合は「この薬は自分に合う」といいます。こういういい方をすれば短期的には「ステロイドはだれにも合う薬」ということになります。困ったことにこのことを何度説明しても理解できない人がいます。
(2)ステロイドの副作用はしばしば”依存症”の性格があります。
 特にアトピー性皮膚炎の場合が問題になります。普通、薬の副作用は内服薬であれ、外用薬であれ、薬の使用を止めれば回復に向かいます。ところがステロイドの場合は、使用を中止すると一時的にかえって症状が悪化することが多いので、「副作用」と気づきにくいのです。「アルコール依存症」の時もアルコールを止めると禁断症状が出て、かえって悪化したようにみえますが、アルコールを飲むと一時的に元にもどるのと似ています。ステロイドもアルコールと同じなのですが、正しく理解できる患者」さんは少ないのです。
(3)病院や医院で治療を受けたとき、一般的に、非常に大量のステロイドが処方されることが多く、また一部の医療機関では、ステロイドが処方されても、薬の説明がありません。たとえ説明書をもらっても「炎症を止める薬」としか記載されていないことが多いので、一般の人にはステロイドであるかどうか判断できません。もっとひどい場合はステロイドであるにもかかわらず、「大丈夫だから」といってこっそり処方されている場合があります。この場合の大丈夫という意味は、副作用がないという意味ではなく、「学会で認められている、または多くの医師が処方している」という意味なのです。診察の際いきなりステロイドを塗布されたり、点眼、点鼻、点耳などの処置を受けてしまうことも多いので気をつけましょう。
 また、市販(薬局)で販売されているステロイド外用薬は箱に「ステロイド(副腎皮質ホルモン)」と書いてないものがたくさんあります。箱の中に説明書が入っていても読まない人が多く、また読んでも一般の人にはよくわかりません。つまり、ステロイドと知らずに使用したり、何に使用してよいか、いつまでなら使用しても大丈夫なのかわからないまま使用していることが多いのです。
(4)アトピー性皮膚炎の際は、ステロイド皮膚症や激しいリバウンド現象など他の疾患ではみられないような現象が起こります。副腎皮質の機能不全などが関係すると考えられますが詳しいことはわかっていません。
(5)保険診療で最も多く使用されるステロイド外用薬の一例として、リンデロンV(G)軟膏・クリームの能書(説明書)を記載しましたが、私の個人的な意見ですが、このような副作用に対する注意を払わずに診療を行えば、副作用が出るのは当然といわざるを得ません。実際に皮膚科だけでなく、内科、外科、小児科、産婦人科、耳鼻科、眼科などほとんどの診療科で、このような強いステロイド外用薬だけでなく、あらゆる強さのステロイド外用薬を安易に処方しているために、副作用が発生するのだと思います。
 また、ステロイド含有の内服薬、注射薬(特に蕁麻疹や花粉症の時)、点眼薬、点鼻薬、点耳薬。吸入薬、痔の薬なども安易に処方される傾向があるので、外用薬以外の薬にも気をつける必要があります。自分の身は自分で守るしかありません。

第12章”あやまった”ステロイド外用薬のゆくえ
 病院や医院で治療を受けた時、一般的にあまり多くの量のステドロイド外用薬が処方されます。また、薬局で薬を買った場合も、5〜30gの包装になっています。
 もし、これらの薬を全部使用したら、ほとんどの場合何らかの副作用が発生します。実に恐ろしいことです。
 保険診療で認可されているステロイド外用薬の包装は、普通5gが最小(眼軟膏は3gもある)になっております。私も病院勤務医の時はこの包装単位で処方しております。開業すると、きめこまかな診療ができますので、今日診療した病気の治療に必要で、全部使用しても安全な量のみを処方するようにしていました(ただし、現在は全くといってよいほど使用していません)。勤務医の時はいかに危険なことをしていたか反省しています。もちろん、処方する時は「この薬をどこに、何の目的で、一日何回、何日間使用してください」と説明するのですが、”あやまった薬のゆくえ”まで考えたことはありませんでした。
 患者さんのほとんどの方は、再び同じような症状が出た時に”あやまっていた薬”を使用されます。家族のだれかが病院や医院で診察を受け、その時に処方してもらい、”あやまった薬”を家族の他の方が勝手に使用した知人、友人、近所の人などから「自分が効いたから使ってみたら」と勧められることがあります。これは大変危険なことです。
 「高血圧や糖尿病の薬」ならそのようなことをする人はまずないでしょう。外用薬だから「悪くなれば目に見えるから、他人のを使用してもあまり問題はないだろう」と考えるでしょうか。
 使用して急に悪化すれば、「良くない」と気がつきますが、ステロイド外用薬の副作用はかなり後から出てきます。
 私の開業当時の失敗ですが、顔に5g処方した薬を少しずつ数年間も使用され、酒さ様皮膚炎になって来院された時は本当にぶっくりしました。しかし、その患者さんは「薬をぬるとかゆみが止まるから同じ薬を欲しい」といわれ、副作用の説明に苦労しました。
 ”あやまったステロイド外用薬”がどの家庭にも多く依存することに対して認識を新たにしてもらい、ステロイド外用薬を使用する際はその都度診察を受けられることをぜひおすすめします。患者さんの中には、「たくさんのステロイド外用薬をほしい」と望まれる人がおられますが、副作用の治療には現在の病気をなおすよりも、はるかに長い年月、高い費用、100倍返しともいわれる苦労を要すると説明しています。

第13章 ステロイドの被害は自分自身で防ぎましょう
…実際によくある例
(1)産婦人科で出産すると「赤ちゃんのおむつかぶれに効く」といってステロイド外用薬、それもリンデロんVG軟膏などの強いステロイドが処方」されている場合がしばしばみられます。極端な場合”退院のお祝い”のようにわたされ、この薬は「何にでも効くから」と説明されて、赤ちゃんのおしりや顔にぬって、おしりにカビ(カンジダ)を生やしたり、びらんを生じて皮膚科を受診されます。ただでさえ赤ちゃんの顔は赤いのに、さらに顔が赤くなったり、ニキビ様の発疹を作って来院されます。おしりは治療薬がありますが、顔は何ともなりません。自然にまかせる他ありません。どうか赤ちゃんには極力ステロを使用しないでください。また、乳幼児検診を受けた際、「湿疹」があると、ステロイドが処方される場合が多いので気をつけましょう。
子供の時に軽い皮膚炎があり、思春期にひどく悪化する人は、たいていステロイドの使用歴があります。自分の子供を守るのは親しかできません。決して医者まかせにしてしないで子供が使用する薬は何か関心を未持ってください。
(2)病名がはっきりしないにもかかわらず、医師から「ステロイド外用薬を使って様子をみよう」といわれ、実際に使用したところ、さらに悪化してしまい、しかたなく私の医院に来る患者さんが多いのですが、患者さんへの説明に困ってしまいMす。やはり、現在のところは、患者さん自身の自己責任で医師を選ぶのですから、よく調べてから受診する医師を決めましょう。
(3)多くの皮膚科医院、および多くの外科、内科、産婦人科、小児科などと併記して皮膚科の標榜もしてある医院では、「皮膚病=ステロイド外用薬」と考えて、皮膚炎に炎症(かゆみ、赤み、ブツブツなど)があればみんなステロイド外用薬を処方して、なおられば水虫の薬(抗真菌剤といいます)を処方するという、一定のパターンで診察(?)を行っています。また、皮膚病でも、真菌検査をして菌が証明されないと、実際は白癬でも、真菌検査をして菌が証明されないと、実際は白癬であるにかかわらず、ステロイドが処方されている場合がしばしばあります。
 これはとんでもないことです。なぜなら、病院や医院で使用する薬は市販されている薬より強い薬が多く、さらに悪いことに患者さんは医師を信頼しているからです。
 日本では「医師免許証」さえあれば、「皮膚病」という看板を自由にかかげられるところに問題があります。
 しかも、皮膚病専門医のあいだでもアトピー性皮膚炎などにステロイドを使用するかどうかは、いろいろな考え方があって現在のところ統一されていません。現時点ではステロイドを使用しないというのは極めて少数派です。
(4)”初診の時に処方してもらった薬”の名前を知って、同じ薬を薬局で買って、自分の判断で勝手に使用することは大変です。なぜなら、ステロイド外用薬というのは、使用するとしてもたいていの場合、診察を受けた日からほんの数日間のみしか使用してはいけないからです。医薬分業(院外処方せん)や最近の薬剤情報提供(薬の名前や副作用を患者さんに知らせること)の悪い面ともいえます。
(5)市販薬(薬局で販売されている薬)の中にはステロイド(副腎皮質ホルモン)が入っているにもかかわらず、薬の箱には「ステロイド(副腎皮質ホルモン)外用薬」と書いてない薬がたくさんあります。箱の中の説明書を読めば書いてあると思いますが、小さい字でしかも専門用語で書かれているので、ほとんどの人は読みません。あるいは、読んでもわからないといわれます。


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