手順書

2.基準的な販売の手順

 一般用医薬品の販売については、調剤業務と違い、必ずしも一定の手順が定められていなかった。販売は「商行為」であるとして、薬学的な視線が向けられてこなかったこともその一因かもしれない。
 しかし、リスクの程度に応じた情報提供等が義務付けられるなど、消費者に対して必要かつ適切な対応が求められるようになった今、法的および職能的に、その標準的な業務手順を定めて販売にあたる必要がある。
 以下に、薬剤師が一般用医薬品を扱う際に用いることができる標準的な販売手順を示すので、参考にしていただきたい。
 また、各項では、それぞれの過程について説明する。多忙であるなどの理由から、過程の一部を修正あるいは省略したいと考える薬剤師もいるかもしれないが、適切な販売業務のためには、ここに記述されている主な要素を全てカバーする必要がある。

図2-2.  標準的な販売手順

消費者の来局                                                                      該当者
  ↓
・相談者が本人かどうか、来局理由、既往歴、併用薬があるかどうかなど基本的な情報を収集し、薬剤師または登録販売者がチェックする。→(1)、(2)
  ↓
・得られた情報から、消費者の状況を評価する。
・緊急性、重篤性を考慮しつつ、@一般用医薬品の使用、A受診勧奨、Bサプリメント等の使用も含む生活指導のいずれかを選択し、消費者に提案する。→(3)、(4)
  ↓   受診勧奨
・適切な製品を選択する。
・あるいは同じ製品の継続使用の可否を判断する。→(5)
  ↓
・リスクの程度に応じた情報提供を行う。
・(第一類医薬品は薬剤師が書面によって)医薬品の適正使用に必要な指導・助言を行う→(6)、(7)
  ↓
・販売後モニタリングと事後対応
・相談があった場合の情報提供→(8)

必要に応じて販売記録(薬歴など)やお薬手帳を参照し、記録する


(1) 相談の受付
 消費者が一般用医薬品の購入もしくは相談のために薬局を訪れた場合、様々な内容の相談が予想されるため、薬剤師が直接対応することが望ましい。
重要なことは、消費者に対する姿勢である。すなわち、来局した消費者と一般用医薬品の購入を最初から結びつけるのではなく、「抱えている問題を解決するために支援する」という姿勢で臨むことである。
 一般用医薬品の販売は、相談の結果であり、状況によっては医療機関への受信を勧めるケースのほか、不適切な連用が疑われる場合には販売を自粛するケースや、相談応需や情報提供のみで終わるケースもあり得る。
 消費者から相談を受けるにあたっては、個人のプライバシーを守る工夫が必要である。


(2) 基本的な情報収集と状況チェック
 一般用医薬品の販売にあたり、消費者に確認しなければならない基本的項目(表2-2)と、これをさらに具体化させた標準的な質問(表2-3)をまとめたので確認していただきたい。
 標準的な質問については、これらをどう組み合わせるか、どの項目を選択するのかを、「対面話法例示集」(「資料」の項〈関連資料〉24頁にURLを掲載)を参考として、薬剤師があらかじめ検討して決めておく必要がある。製薬企業によるセルフチェックシート等がある場合には、それらを活用することも有効な手段である。
 また、薬局には、一般用医薬品を求めて、実際に使用する消費者ではなく、その代理人が来局することがある。しかし、使用する消費者の基本的な情報収集は欠かせない行為であることから、まず初めに、その相談者が消費者本人であるか否かを確認する必要がある。もし、代理人であるために情報収集が不十分な場合には、電話などにより、消費者本人への補足的な質問が必要となるケースもあり得る。


表2−2. 消費者に確認する基本的項目

1.相談者の意図の確認
2.相談者の症状の確認
3.相談者の体質、疾病、使用薬等、生活状況等の確認

※代理人である場合には、「相談者」とは消費者本人のことを意味する。


表2−3. 標準的な質問

  質問の分類          具体的な内容
 1.症状の発生部位       どの部位に症状が感じられるか。その範囲は広がっているか。
 2.重篤度             症状はどんどんひどくなっているか、それともおさまってきたか。苦痛はがまんできる程度か。
 3.既往歴             これまでも経験したことのある症状か。それとも初めて経験する症状か。
 4.原因推定            症状発生の原因は何であると相談者は思っているか。
 5.外見              症状発生部位に腫れや発赤など外見上の特徴があるか。
 6.性質              どんな性質の症状か(痛みの例:ズキンズキン、刺すような、にぶい、重苦しい、しびれるような)。
 7.時間              症状はずっと続くか。それとも特定の時間に発生するか。
 8.随伴症状           主訴に伴っておこる症状があるか(頭痛が主訴の例:熱がある、めまいがする、吐き気がする、ものの見え方がおかしいなど)。
 9.現在までの治療       来局する前に薬を使用したり、何か治療したか。それはどんなくすりか。
10.過去の服薬          以前同じような症状が起こった時、どんな薬を使用したか。
11.服薬の効果          その薬は何回くらい使用したか。どの位服用したら回復したか。あるいは回復しなかったか。
12.アレルギー・副作用歴    以前使用した薬でアレルギーあるいは副作用を経験したことがあるか。それは何か。
13.併用薬             他に何か継続して使用している薬があるか。それは何か。
14.既往歴             通院して治療中の病気はないか。たとえば高血圧症やぜんそく、糖尿病など。
15.小児又は高齢者の年齢   年齢の他、場合によっては体重。
16.妊婦又は授乳婦の状態   出産予定はいつか。授乳婦は母乳か人工乳か。


(3) 状況の評価
 薬剤師は、消費者から得られた情報を基に、いくつかの点について状況を評価する必要がある(表2−4)。
 評価については、「対面話法例示集」の中でチェックシートとして一部を例示しているので参考にされたい。このプロセスは、安全かつ有効なセルフメディケーションを支援するための確認行為である。病名を告げるなど、医師の診察行為と混同しないよう注意が求められる。
 また、この確認行為は、症状や状態の「重篤度」や「緊急度」の他に、服用に適した一般用医薬品が存在するか否かという側面からも行わなければならない。

表2−4. 状況の評価

1.一般用医薬品の使用が、消費者本人にてきしているか否か。
2.医療機関への受診を勧める必要があるか否か。
3.生活指導は、どのような内容が必要か。


(4) 受診勧奨
 薬剤師は、消費者からの相談を受けるにあたり、あらかじめ、医療機関への受信勧奨を行う基準を整理しておくこと必要がある。そして、受診勧奨を行う場合には、消費者に対して、「なぜ医療機関への受診が必要なのか」「なぜ一般用医薬品ではダメなのか」ということを分かりやすく情報提供(説明)しなければならない。
 この際、原則として「かかりつけ医」への受診を勧めるが、もし、消費者から受診先の医療機関の紹介を依頼された場合には、口頭または簡略なメモ程度の「紹介状」を作成して渡すなどの方法により、場所、診療時間、連絡先などと併せて情報提供するとよい。


(5) 製品の選択、継続使用の可否
 製品の選択権を持っているのは消費者である。薬剤師の役割は、薬学的知識と専門能力および倫理観を発揮して、消費者が適切な一般用薬品を選択できるよう支援することである。
 製品の選択にあたっては、消費者から得られた情報を基に、該当する製品を探し出す。この際、該当する製品がないと判断される場合には、医療機関への受診勧奨か、もしくは他の方法を提案する。
 以下、適切な一般用医薬品を選ぶ上で考慮すべき点を示す(表2−5)。

表2−5. 一般用医薬品を選ぶ上で考慮すべき点

【相談者の体質や病状、生活習慣など】
 @服用してはならない人(禁忌)
 A服用に際して注意を要する人(服用により現在の病状が悪化するおそれがある)
 B本人又は家族がアレルギー体質の人、薬によりアレルギー症状を起こしたことがある人
 C過去に特定の医薬品で副作用を経験したことのある人
 D従事しないよう注意すべきこと(注意すべき職業内容、行為)
 E授乳中の人
 F妊婦又は妊娠していると思われる人
 G水痘もしくはインフルエンザにかかっている又はその疑いがある15歳以下の小児(小児に服用制限がある医薬品)
 H高齢者(服用年齢に上限がある医薬品)
 I1歳未満の乳児(医療機関の受診を優先させ、止むを得ない場合にのみ服用させる)

【相談者に勧めようとしている製品と、現在服用中の医薬品との関係】
 @服用中は併用すべきでない医薬品(併用禁忌)
 A服用中は注意して併用すべき医薬品(併用注意)
 B授乳中の人は服用してならない成分、あるいは服用するなら授乳を避ける成分


(6) リスクの程度に応じた情報提供と適正使用のための指導・助言
 まず、一般用医薬品のリスクの程度(区分)にかかわらず、販売に際して共通して指導が必要な項目を示すので確認していただきたい(表2−6)。
 そしてさらに、リスクの程度に応じた標準的な情報提供の仕方(販売方法)についてそれぞれ説明する。
 なお、今回の改正薬事法により、リスクの程度に応じた情報提供が義務付けられたが、消費者に提供する情報の内容だけでなく、手順を踏んだ販売を行うことが大変重要となる。処方せん調剤では、処方せん受付から薬剤交付まで、一連の手順を踏んだ業務が行われているが、これは医薬品を間違いなく患者に交付し適正使用を確保するためのリスク管理手順とも言える。
 一般用医薬品の販売においても、処方せん調剤と同様に、リスク管理の視点に基づいた販売方法を業務に導入する必要がある。

表2−6. 一般用医薬品の販売に際して指導が必要な項目(共通事項)

1.主な副作用の内容と、使用上の注意
2.重篤な副作用の内容と、発現時の対処法
3.定められた回数を服用しても症状が改善しない場合の対処法(長期連用に関する注意を含む)
4.小児の用法・用量がある場合の注意点
5.誤飲、誤用した場合の対処法
6.服用により疾病検査の値に影響を及ぼす可能性がある場合、その内容の説明
7.保管および取扱い上の注意

@第1類医薬品
 第1類医薬品に分類されるものは、「『スイッチOTCの市販後調査(PMS)期間中又はPMS修了後引き続き副作用等の発現に注意を要するもの』に相当する成分」(医薬品販売制度改正検討部会報告書より)である。
 以下、第1類医薬品に係る販売手順(初回、2回目以降)を示す。

【初回の販売手順】 (初めて当該製品を販売する場合の標準的な手順)
第1手順 <相談者からの情報収集と確認行為>
(ア)消費者からの要望があれば、該当医薬品の添付文書内容を事前に閲覧できるようにする。
(イ)次に、厚生労働省令で定める事項を記載した書面を用いて、相談者に必要な質問を行い、当該医薬品の服用が適しているか否かを確認する。
(ウ)その際、販売記録簿等(保険調剤の際の薬歴を含む)あるいはお薬手帳がある場合は、それらを適宜参照する。
(エ)確認の結果、該当医薬品の使用が不適当と判断される場合は、他の一般用医薬品に変更するか、状態によってはかかりつけ医等への受診を勧める。

第2手順 <選択した製品に関する情報提供>
(ア)第1手順と同じ書面を用いて、その適正な使用のために必要な情報を提供する。特に以下の点を中心に情報提供を行う。
  (1)起こり得る重篤な副作用や、その発生を避けるために留意すべき事項(服用してはいけない人、併用してはいけない薬剤等)
  (2)一定期間服用しても症状が改善しない、または、悪化した際には、医療機関での診察を受けること(受診勧奨)

第3手順<販売証明と記録管理
(ア)販売者責任を証明するものを貼付または添付し、いつでも相談を受け付ける旨を伝える。
(イ)消費者がお薬手帳を持参した場合には、販売した製品名を記録する。また、相談者の同意を得た上で販売経過を販売記録簿(保険調剤の際の薬歴を含む)に記録する。

【2回目以降の販売手順】 (同一製品を再度購入するために来局した場合)
第1手順 <相談者からの情報収集と確認行為>
(ア)可能な限り、前回販売に従事した薬剤師が対応する。
(イ)薬剤師は、前回販売時から何か変化があったか、また、継続して使用することに問題がないかについて確認しなければならない。
(ウ)確認にあたっては次のような質問を行う。
   「前回服用した際の薬の効果はいかがでしたか」
   「副作用など、気になる不快な症状は起こりませんでしたか」
   「前回購入以降、新しい薬を医師から処方されたり、薬局等で購入しましたか」

第2手順 <選択した製品に関する情報提供>
(ア)第1手順での質問に、1つでも解決を必要とする回答が帰ってきた場合には、改めて消費者の状態を評価しなおす。
(イ)もし問題がない場合であっても、継続使用の可否について評価する。
(ウ)上記の何れについても問題がなければ、2回目以降の販売手続きを進める。
(エ)その場合、相談者の同意を得た上で薬剤師は可能な限り販売記録簿(保険調剤の際の薬歴を含む)にその経過を記録する。
(オ)また、消費者の日常生活が症状や疾病を生み出していると考えられる場合には、生活習慣改善の指導を行うのが望ましい。

第3手順 <販売証明と記録管理>
(ア) 初回の販売手順と同じ


A 第2類医薬品
 第2類医薬品に分類されるものは、「『相互作用』、『副作用』及び『患者背景』のいずれかの項目でリスクの高い成分」(医薬品販売制度改正検討部会報告書より)である。基本的に、販売手順は第1類医薬品と同じだが、情報提供については、薬事法上、1)厚生労働省令で定める事項を記載した書面による情報提供は義務ではないこと、2)適正使用のための必要な情報提供は努力義務であること-という点が異なる。
 しかし、薬剤師は、販売者責任のプロフェッショナルな要件を考慮し、消費者の状況によっては第1類医薬品に準じた対応を行うのが望ましい。
 したがって、第2類医薬品の販売にあたっても、販売した薬剤師の裁量で販売者責任を証明するものを貼付または添付するほか、消費者がお薬手帳を持参した場合には、販売した製品名を記録する。また、相談者の同意を得た上で販売経過を販売記録簿(保険調剤の際の薬歴を含む)に記録する。

B第3類医薬品
 第3類医薬品に分類されるものは、第1類医薬品、第2類医薬品以外の成分で、「日常生活に支障を来すほでではないが、副作用などにより身体の変調・不調が生じるおそれがある成分」(医薬品販売制度改正検討部会報告書より)である。
 薬事法上、積極的な情報提供は課せられないが、薬剤師が情報提供の必要性を認めた場合には、その消費者に適切な情報提供を行うことが望ましい。
 また、不快な症状が発言した場合や、連用の可否に関する相談を寄せられた場合には適切に対応する。
 したがって、第3類医薬品の販売にあたっても、第2類医薬品の場合と同じく、販売する薬剤師の裁量で販売責任を証明するものを貼付または添付するほか、消費者がお薬手帳を持参した場合には、販売した製品名を記録する。。また、 相談者の同意を得た上で販売経過を販売記録簿(保険調剤の際の薬歴を含む)に記録する。


(7) 対面販売の実務と手法(「オーバー・ザ・カウンター」方式の標準的実務)
 一般用医薬品を区分ごとに陳列することが義務付けられたことにより(薬事法第57条の2)第1類医薬品は対面販売が「必須」、第2類医薬品は対面販売が「努力義務」となる。すなわち、第1類医薬品の陳列方法は、いわゆる「オーバー・ザ・カウンター」方式であり、医薬品販売制度改正検討部会報告書でも明記されている(表2−7)。
 最も重要なことは、リスクの程度に応じて区分された一般用医薬品の違いを、消費者が明確に理解できるよう区分して陳列することである(図2−3)。第1類医薬品は第2類医薬品と異なる取り扱いをしなければならず、同様に、第2類医薬品は第3類医薬品と異なるものという意識を、消費者に十分浸透させなければならない。
 具体的には、第1類医薬品の陳列場所は、販売者側のみが手に取れる位置とする。この際、消費者が自ら手にとって確認したいという要望に応えるために、空き箱等をその場所以外に陳列しておくことという方法は、消費者の利益にかなうと思われる。
 また、第2類医薬品の中でも特定の医薬品(注)に関しては、第1類医薬品の取り扱いに準じた陳列方法とする。

図2−3. 薬局における掲示例(一例)

 第一類医薬品
 薬剤師にご相談ください
 ここに陳列されている薬は、安全にお使いいただくため
 購入前、薬剤師に相談が必要な一般用医薬品です。

 第二類医薬品
 ご説明します
 ここに陳列されている薬は、安全にお使いいただくため
 購入時に、薬剤師等が使用上の注意点をご説明する一般用医薬品です。

表2−7. 対面販売について

オーバー・ザ・カウンター
 「専門家が関与した上で医薬品の選択・購入がなされるよう、販売側のみが医薬品を手にとるような方法で陳列を行うこと」

対面販売の原則(抜粋)
 「適切な情報提供」及び「適切な相談応需」が行われるためには、薬剤師等の専門家の関与を前提として、
 ・専門家において購入者側の状態を的確に把握できること
 ・購入者と専門家の間で円滑な意思疎通が行われること
が必要である。
 これらが的確に行われることを担保するには、購入者と専門家がその場で直接やりとりを行うことができる「対面販売」が必要であり、これを医薬品販売に当たっての原則とすべきである。
 ※医薬品販売制度改正検討部会報告書より

 注)第2類薬品のうち、「相互作用」又は「患者背景」において特に注意すべき「禁忌」があり、その要件に該当する者が服用した場合に健康被害に至るリスクが高まるものや依存性・習慣性がある成分等を含む医薬品


(8) 販売後モニタリングと事後対応
 @副作用への対応
 消費者が一般用医薬品を使用した後、副作用あるいは何らかの不快な症状が認められた場合には、薬剤師は、購入者と共にその状態を確認し、適切な判断が必要となる(表2−8)。
 「軽度で消失が期待できる」場合として、一過性の軽い副作用がある。たとえば、抗コリン薬による「口の渇き」、ビタミンB類による「下痢、軟便」などが該当する。このような場合、消費者は慎重に使用を続けて様子を見ることで差支えない。
 「症状が継続または増強する可能性がある」場合は、医薬品の使用を中止させた上で、薬剤師あるいは医師に相談するよう指導する。
 そして、希ではあるが、「重篤」な副作用(アナフィラキシーショックやスティーブンス・ジョンソン症候群など)の場合は、直ちに医薬品の使用を中止させ、かつ、その製品又は添付文書を持参してかかりつけ医等に受診させる。

表2−8. 副作用等に関する確認事項

 1)軽度で消失が期待できるか。
 2)軽度だが、症状が継続または増強する可能性があるか。
 3)重篤か。

<副作用の機序別分類>
 副作用の発生機序を 1)薬理作用の過剰発現、 2)薬物毒性、 3)薬物過敏症の3つに分類する考え方で、副作用の発見及びその対処について薬剤師が判断を行う上で参考になるもの。

 A有害事象報告
  薬剤師には、医薬品の使用後に確認された副作用等(表2−9)の情報を、医薬品との関連が明確でないものを含め、厚生労働省へ報告することが義務付けられている。その際には、医薬品安全性情報報告書を作成し、同医薬食品局安全対策課宛に送付する。なお、前項に示した一過性の軽い副作用などよく知られている軽微なものを除く。
 そして、重篤な症例や新規の症例である場合には、報告を受けた厚生労働省より医薬品医療機器総合機構を通じて当該製薬企業へ連絡されることになるので、後日、当該企業から詳細調査の協力を求められた際には、これに協力する。
 また、日本薬剤師会が実施しているDEM(ドラッグイベントモニタリング)において特定の一般用医薬品が調査対象となった場合などにも、積極的な協力が期待される。
 消費者におきた症状が医薬品の副作用であることを証明するには、極めて困難な問題が生じることが多い。そのため、個々の薬剤師が副作用を評価するのではなく、消費者とのコミュニケーションから得られた「有害事象」の中で、問題となるものを厚生労働省へ報告し、症例数の拡大にお寄与することを薬剤師の役割とする。それが結果的に統計学的にその後の詳細な評価の進展につながり、ひいてはさらなる副作用の拡大回避に結びつくという考え方である。
 なお、現状では、薬局薬剤師から一般用医薬品に係る副作用等の報告が少ない。その原因としては、@消費者が副作用経験しても購入した薬局に相談する習慣があまりない、A相談を受けた薬剤師に副作用報告制度に対する認識と理解が希薄である、
B副作用経験の相談を受けた薬剤師に、使用した医薬品との因果関係を特定してから報告しようという気持ちが働き、報告制度運用にためらいがある‐などが考えられる。
 今回(平成18年6月)の薬事法改正では、登録販売者にも副作用等の報告が義務付けられ(第77条の4の2)、また、第1類医薬品の情報提供は薬剤師に限定された。従って、消費者から副作用等の相談があった場合や能動的に副作用情報を収集した際の薬剤師の役割は、以前にも増して重要となっている。また、薬剤師には、医薬品との因果関係が不明な場合を含めた積極的な報告が求められている。

表2−9. 副作用等の定義

【副作用】 医薬品を使用する際、使用者が期待する作用が主作用で、期待しないものをすべて副作用とする。
【有害反応】 「疾病の予防、診断、治療、または生理機能を正常にする目的で医薬品を投与したとき、人体に通常使用される量によって発現する有害かつ予期しない反応」(WHO;1970)であり、医薬品との因果関係が否定できないもの。
【有害事象】 医薬品の投与中に発現した有害で意図しないあらゆる生体の反応。医薬品との因果関係が明らかでないものも含む。

B事後対応
 「販売者責任の明確化」 (第1章)で述べたとおり、薬剤師は、一般用医薬品の販売後であっても、相談応需の義務やリコール製品への対応など、事後対応の役割を担っている。事後対応とは、概ね2つに大別できる(表2−10)。

表2−10. 一般用医薬品の販売後の対応(事後対応)

T.受動的な事後対応
    消費者が購入した製品について相談をしてきた際に応需する。
U.能動的な事後対応
    1)販売した一般用医薬品の効果、副作用の発現、使用上の不具合などのモニタリング
    2)販売した一般用医薬品との相互作用をもたらす薬剤が、将来その消費者に処方されないかどうかの監視
    3)製品リコールで厚生労働省より回収命令が出た場合の購入者への連絡等の対応
    4)回収命令は出ないが、消費者の安全性を考慮して該当する購入者への情報提供

 このうち、特にU. 1)、2)については、何らかの処方薬を使用しながら生活する割合の多い高齢者にとっても、将来の処方に対するチェックに役立つので、重要な事後対応の業務である。
 また、 U. 4)の具体例としては、学校の保健室に保管されている一般用医薬品の中で、使用上の注意が改訂されたものに関する情報提供などが該当する8かつてに小児用バファリンなど。サリチル酸系製剤とライ症候群との関係から、主成分がアスピリンからアセトアミノフェンに変更された)。
 販売記録簿等(保険調剤の際の薬歴を含む)を残すことは、一般用医薬品販売の個別化に繋がるとともに、販売後モニタリングや事後対応を効率的、かつ、科学的に行う上で不可欠であり、日常の業務で取り組むことが望ましい(表2−11)。

表2−11. 一般用医薬品販売の個別化と薬歴

 これまでの一般用医薬品の目的は、症状の軽減にあり、対象者は特定の個人に限定されていなかった。そのため、自宅に常備し、家族で分け合って服用することが珍しくなかった。
 しかし、今後は第1類医薬品を中心に、その消費者個人に最も相応しいものを、薬剤師が選択・提案することが主流になっていくであろう。たとえば、解熱鎮痛剤の場合、同じ家族でも夫はピリン系、妻はイブプロフェン、子供はアセトアミノフェン―と使い分けることも考えられる。すなわち、一般用医薬品販売の個別化である。個別化とは、個人への販売記録(薬歴など)を残すことでもある。










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