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がん免疫療法のしくみ

手術、抗がん剤、放射線に次ぐ第4の治療法として期待されるがん免疫療法。いくつかの免疫チェックポイント阻害薬の効果が認められ承認されたことで、がん治療におけるがん免疫療法の位置づけは大きく変わりました。今特集では、がん治療の新時代の扉を開いたといわれる、がん免疫療法について、そのしくみや効果に関する基本的な知識、さらにがん免疫療法の最新の情報と課題、そして今後への展望を、慶應義塾大学医学研究科委員長、医学部先端医科学研究所教授の河上裕氏に解説していただきます。



免疫チェックポイント阻害薬の登場でがん免疫療法は新しい時代へ
 がん免疫療法とは、ヒトに備わっている免疫防御機構を使って、がんを治そうという治療法です。がん免疫療法の概念は古く、今から120年以上前の1890年代には、がんワクチンの始まりと思われる事例が見られます。その後も研究が続き、非特異的免疫賦活剤、がんワクチン、サイトカイン療法(サイトカインを注射して免疫細胞に活性化する)、モノクローナル抗体療法(ヒトのがん細胞に対する抗体をマウスを用いて作る)など様々な免疫療法が開発されてきました。非特異的免疫賦活剤やサイトカイン療法は体全体の免疫を底上げしてがんと闘うことを目指すものです。がんワクチンは有名ですが、臨床試験ではフェーズT(副作用などの安全性について確認する第T相試験)、フェーズU(少数の患者さんで、有効で安全な投与量・投与方法などを検討する第U相試験)までは比較的よい結果を出すのですが、フェーズV(多数の患者さんで、有効性を確認する第V相試験)で人数を増やすと有効性の有意差がつかないという歴史を繰り返してきました。そのため、標準治療になるまでは至っていません。モノクローナル抗体療法は患者さん自身が作る抗体ではないですが、Her2やCD20やVEGFに対する抗体が標準がん治療となっています。
 そうした状況が大きく変わるきっかけになったのが、免疫チェックポイント阻害薬の登場です。1990年代に入り、免疫細胞ががん細胞を攻撃するメカニズムが次々と明らかにされると、がん細胞特異的ながん免疫療法の研究がすすみました。なかでも注目されたのが、免疫チェックポイント阻害薬です。2000年代に入って臨床試験が始まると、当初の想定を超えてフェーズVでも明確に効くことが示され、一躍注目を集めました。最初の臨床試験は抗がん剤が効かなくなった悪性黒色腫(メラノーマ)の進行がんに対して行われ、治療効果を表す奏効率は約30%ありました。しかも、最初の悪性黒色腫に対する臨床試験では、持続的な治療効果も報告されました。進行した悪性黒色腫であっても約2割に長期生存がみられたのです。米国の臨床試験では、免疫チェックポイント阻害薬の1つであるCTLA-4阻害拮抗体薬(イピリムマブ)では10年生存率は薬20%、抗PD-1抗体薬(ニボルマブ)の5年生存率は34%で、3人に1人は5年以上生存できるという奏効率が得られています。
 がん免疫療法が注目されている理由としては、@他の薬が効かなくなった様々ながんの患者さんも一定の割合(10〜30%)で明確な治療効果を示す、Aしかも人によっては比較的持続的な効果が得られるかもしれない、という2つが挙げられます。従来のがん免疫療法における腫瘍縮小効果はきたいできないが、標準治療後の再発予防や延命ぐらいならば可能かもしれないという考え方から、本当に効くがん免疫療法は進行がんに対しても有効であるおとが明らかになり、臨床の場でのがん免疫療法の位置づけが一変したのです。今多くの製薬メーカーは、免疫療法の開発に力を入れ始めました。10年前には考えられなかったことです。
 ただその一方で、免疫療法が効くというのが強調されすぎることによる誤解や弊害が生じています。現時点でも多くのがんでの奏効率は10〜30%であり、実は効かない症例のほうが多いのです。より効果を上げるためにはどうしたらよいか。世界中で今、研究が進められています。

まずは免疫について知ろう!
自然免疫と獲得免疫とは?

 まずは、免疫のしくみについて説明しておきましょう。
 免疫とは、病気を引き起こす細菌やウイルスなどの異物から体を守る仕組みの総称です。ヒトの免疫は、自然免疫系と獲得免疫系に大別されます。まず自然免疫系が働き、その後に獲得免疫系が働きます。

□獲得免疫
 獲得免疫で重要な役割を担っているのは、リンパ球のT細胞とB細胞です。抗原特異性と多様性、免疫記憶と呼ばれるメモリー機能を持つことが特徴ですが、抗原特異的なリンパ球が爆発的に増えて強力な効果を生みだすことが重要です。
 なかでもがん免疫療法のしくみに深く関わるのはT細胞です。T細胞はその細胞表面にT細胞受容体(T cell receptor:TCR)を持っており、このTCRを介して細胞やウイルスなどの異物が持つ目印(抗原)を認識することで活性化します。この目印に特異的な反応を「抗原特異的」と呼びます。また、私たちの体内に存在するT細胞はそれぞれ異なるTCRを持ち、その数は10の十数乗にも呼ぶとされます。これが「多様性」で、ありとあらゆる抗原に対応できます。「免疫記憶」は予防接種を考えるとわかりやすいでしょう。こどものころに麻疹ワクチンを接種しておけば、大人になっても麻疹にかからずに済みます。これは、麻疹ワクチンを目印として記憶したT細胞(メモリーT細胞)が、長期間にわたって体の中に存在し続けることからと考えられています。ある感染症に一度かかると二度とかからないのは免疫記憶があるからです。
 B細胞はその細胞表面に抗原特異的に反応するB細胞受容体を持ち、それが細胞からはずれて抗体となり、様々な異物に反応します。例えばインフルエンザの抗体はウイルスを除きます。

□自然免疫
 自然免疫系を担っているのは、好中球、マクロファージ、樹状細胞などの貧食細胞やNK細胞などです。細菌やウイルスなどの異物が入ってくると、まずは自然免疫系が働き、好中球などの白血球が食べて異物を排除します。食べて全部排除できればよいのですが、それだけでは抑えられないので、その後に獲得免疫系が働きます。その際、自然免疫と獲得免疫の橋渡し役になるのが樹状細胞です。樹状細胞は体のあちこちにあり、がんであれば壊れたがん細胞の破片を取り込み、攻撃するべき細胞の目印(抗原)をT細胞に提示するという役目を担っています。

がんと免疫の関係
免疫監視機構を逃れてがん化!
 この免疫防御機構を単にどう効かせるかが問題です。細菌やウイルスなど外から入ってきた異物に対しては強い免疫反応が起こるので排除できますが、がん細胞はもともと自分の細胞が遺伝子異常(人間の体の設計図であるDNAに傷がついたり〔塩基配列の変異〕や遺伝子の発現異常が起こる)を起こして増殖したものです。通常、正常な細胞は互いにくっつくと制御し合って増殖が止まります(接触阻害)が、DNA異常でその調節がきかなくなると、その細胞は無限に増殖するがん細胞に姿を変えていきます。体内ではがん細胞の元になる遺伝子の異常をもつ細胞が生み出されています。
 遺伝子異常が起こる原因としては、紫外線、放射線、タバコ、発がん物質などの外因性要因と、細胞分裂時に偶然起こるDNAのエラーや活性酸素によるダメージなどの内因性要因があります。一般的には、がんは喫煙や紫外線など外因性要因によって起こると思われがちですが、DNAのコピーエラーなどの内因性要因によるものが多いとの報告もあります。
 さて、私たちの体内では、遺伝子異常をもつ細胞が生まれていますが、それがそのままがんになるわけではありません。遺伝子修復などの様々な体の防御機構がありますが、その一つとして免疫監視機構と呼ばれるしくみが、がんの発生を防いでいます。樹状細胞はがん細胞の一部を貧食すると、がん細胞内のたんぱく質をアミノ酸薬10個からなる短いペプチド(抗原)に分解し、それをHLA(ヒト白血球抗原)と呼ばれる細胞表面分子を介して、細胞外に提示させます。T細胞上のTCRは抗原べプチドを細胞表面で提示させます。T細胞上のTCRは抗原ペプチドを細胞表面で提示するHLAとの複合体を認識し、活性化します。がん細胞の場合、ペプチドはがん抗原と呼ばれ、それに反応するT細胞ががんを攻撃するキラー細胞となります。
 一方、がん細胞も生き残りをかけて巧妙な罠を仕掛けてきます。T細胞に認識されるたんぱく質を出さずに獲得免疫を逃れたり、免疫にブレーキをかけるたんぱく質を作って、免疫の働きを抑えたりします。こうしてがん細胞が増殖していきます。さらに、がんが増殖するにつれて、がんの組織内でがん細胞自体も変化して、免疫による排除や治療が難しくなっていきます。
 通常、体は異物が入ると反応して免疫が活性化されますが、活性化されたままだと体が壊れてしまうので、普通の状態に戻るための免疫抑制機構(ブレーキ)があります。また、免疫が自分の体を壊さないように抑えるシステム(自己免疫寛容)も備えています。これがうまく働かなくなって起こるのが自己免疫疾患です。がん細胞は、本来有害な免疫反応を抑えるためのブレーキである免疫抑制機構を働かせて、免疫防御機構から逃れていることがわかってきました。がん細胞は、体に備わっている免疫を抑える機構を「悪用している」のです。実際、臨床で見られるがん細胞は免疫抵抗性や抑制性を獲得していることが観察されています。
 
 免疫チェックポイント阻害薬
その仕組みと効果は?
 がん免疫療法は大きく分けると2種類あります。@がんに対する免疫を強める「アクセルを踏む」方法と、Aがん細胞がかけた免疫の「ブレーキを外す」方法です。前者にはがんワクチン療法、サイトカイン療法、培養T細胞を用いた養子免疫細胞療法(後述)などがありますが、ごく一部のサイトカイン療法や非特異的免疫賦活剤以外には、有効性や安全性が確立されて標準治療になっている方法はありません。明確ながんに対する治療効果が明らかになっている免疫チェックポイント阻害薬は後者です。
 免疫のブレーキ役の1つが、免疫チェックポイント機構です。免疫チェックポイント機構に関わる分子には、T細胞上に発現するPD-1、CTLA-4などがあります。がんは、免疫から逃れられるような特殊な環境(がん微小環境と呼ばれる)を形成しており、その微小環境を構成するがん細胞やマクロファージなど細胞表面には、PD-L1という膜タンパクが発現することがあります。PD-1とPD-L1は鍵穴と鍵のような関係にあり、結合するとT細胞の機能にブレーキがかかってしまいます。CTLA-4とペアになるのは抗原提示細胞上のCD80/86という分子です。
 免疫チェックポイント阻害薬として使われているのは、免疫チェックポイント分子に結合してブレーキをかける機能を阻害するモノクローナル抗体で、抗PD-1/PD-L1抗体、抗CTLA-4抗体があります。これらの抗体が免疫チェックポイント分子同士の結合を阻害することで、免疫に対するブレーキを解除し、T細胞ががん細胞を攻撃できるようにします。
 PD-1/PD-L1阻害薬治療では、最初は悪性黒色腫のみだった適応は、肺がん、腎細胞がん、ホジキンリンパ腫、頭頸部がんへと広がり、さらに胃がんなどさまざまながん種で臨床試験が進んでおり、一定の治療効果が示されつつあります。
 最近は、免疫チェックポイント阻害薬がどんなに効くかも徐々にわかってきました。DNAの異常は大きく分けて、@遺伝子に傷がつくパターン、まる2エピジェネティクスといって、環境などによってDNAの塩基配列の変化を伴わずに遺伝子の発現が変わっていくパターンの2つがあります。このなかで、遺伝子に傷がついてアミノ酸が変わったためにがん細胞にだけ発現するペプチド抗原が、がんを攻撃するT細胞の標的として重要であることがわかり、免疫チェックポイント阻害薬の効果にも関係します。
 遺伝子に傷がつく場合、がんの増殖、浸潤、転移に関わる「ドライバー変異」と、がん細胞の蔵書kなどとは直接関係のない「パッセンジャー変異」に分けられます。例えば、分子標的薬はがんだけに起こっている遺伝子異常に対して、それをピンポイントで叩くように作られます。分子標的薬の開発者は、ドライバー異変のような、がんの増殖に関与する遺伝子を見つけて、そのタンパクに対する阻害薬を開発します。一方、パッセンジャー変異は、傷はたくさん付いていても、その傷自体は竿房の異常増殖にあまり関係がなく、昔はゴミのような、何もしていない変異と考えられていました。ところが、免疫チェックポイント阻害薬によってパッセンジャー変異が改めて注目を集めることになりました。免疫チェックポイント阻害薬を投与した後、がんに特異的なT細胞が増え、それががん細胞を排除してくれます。そのターゲットはいろいろありますが、なかでも重要なのが、パッセンジャー変異が起こったところのタンパク質であることがわかってきました。最近はこれを「ネオ抗原」と呼んでいます。今まではなかったが、DNAがきずついたせいで新しくがん細胞特有のタンパクが作られ、それが免疫チェックポイント阻害薬を投与したときに標的になって、T細胞が活性化されます。逆に言うと、ネオ抗原を持っていない人には免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい可能性があります。前述したように奏効率は悪性黒色腫で、10〜30%、他の多くのがんではたかだか10〜20%です。効かない人のほうが多いのです。

 免疫チェックポイント阻害薬が効かない人への対応が課題
 このように免疫チェックポイント阻害薬が効く人の理由が一部わかってきました。一つは遺伝子にたくさん傷がついて、T細胞のターゲットとなるネオ抗原が多いタイプが効きやすいことです。同じがん種でも、患者さんによってDNA変異の数は個人差があります。変異が10個しかない人もいれば、3000個ある人もいるなど千差万別なのです。たとえば肺腺がんの場合、喫煙者はDNA変異が多く、こういう人はT細胞のターゲットもたくさん持っているので、免疫チェックポイント阻害薬が効きやすい傾向にあります。
 逆に効きにくいのはDNA変異が少ないがんです。肺がんでは、非喫煙者の肺腺がんで、EGFR遺伝子やALK遺伝子変異などのドライバー変異で起こったがんは、喫煙や炎症などによって長い期間をかけて多くのDNA変異をもつ肺扁平上皮がんと異なり、DNA変異が少ない場合が多く、免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい場合が多いです。逆に、このようながんでは、ドライバー変異をターゲットとしたゲフィチニブなどの分子標的薬が効きます。
 その一方で、遺伝子に傷がたくさんあっても必ずしも効かないこともわかっています。傷、すなわちT細胞のターゲットが存在しても、他の因子のためにがんを攻撃するT細胞ががんの中に入ってこれない状態などの問題があり免疫チェックポイント阻害薬が効かない場合も多いことがわかっています。その問題の仕組みはさまざまで、これをうまく除く方法があれば、それを併用することによって、免疫チェックポイント阻害薬を効くように変えることができるかもしれません。肺がんの薬80%、悪性黒色腫の約60%は、がん細胞に対するT細胞が十分に誘導されていないので、この場合、免疫チェックポイント阻害薬に他の治療法をプラスする(複合がん免疫療法)ことで、免疫チェックポイント阻害薬単独では効かない人を効くようにしようという研究が世界中で行われています。すでに米国を中心に数百の臨床試験が進行中で、一部では併用による治療効果の増強が認められています。

単剤免疫療法kら複合的免疫療法へT細胞利用免疫療法も期待
 抗がん剤治療では多剤併用療法が一般的ですが、免疫療法も複合免疫療法によりさらに高い効果が得られることが期待されています。現在、臨床試験で明らかになっているのが抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用です。悪性黒色腫の場合、抗PD-1抗体単独で治療すると奏効率は3割程度でしたが、抗CTLA-4抗体を併用すると奏効率は6割程度になったと報告されています。これは、免疫に対してブレーキを解除する薬同士の組み合わせです。
 免疫療法同市だけでなく、従来の標準がん治療である、化学療法、分子標的薬、放射線治療との併用も多数試みられています。これらは、投与の量や方法によって、単にがん細胞を障害するだけでなく、免疫反応を活性化させる作用のあるものも報告されています。現在、さまざまな複合免疫療法で、治療効果が上がる可能性が報告されており、今後、さらなる評価により、承認されていくと考えられます。
 一方、免疫チェックポイント阻害薬が効かない症例や苦手とするがんでは、がんを特異的に認識するT細胞を体外で培養して投与する養子免疫細胞療法も進められています。悪性黒色腫と子宮頸がんでは、腫瘍浸潤T細胞を培養したTIL療法の効果が示されていますが、他のがんではうまく行かず、がん抗原を認識する受容体を人工的に作成して、その遺伝子を導入したT細胞(TCRT,CART)を用いた養子免疫療法の開発も進められています。

がん免疫療法は副作用が問題
今後の課題は?
 がん免疫療法で問題になるのは副作用です。免疫チェックポイント阻害薬は免疫のブレーキ機構を解除する治療法なので、がんに対する免疫力は上がりますが、場合によっては自己免疫疾患のような副作用が起こります。そのため、抗がん剤治療とはまったく違った副作用が多く観察され、あらゆる臓器に様々な自己免疫反応による症状が生じる可能性があります。間質性肺炎、心筋炎など重篤な副作用もあり、大腸炎、重症筋無力症、甲状腺機能異常、T型糖尿病などさまざまな自己免疫反応が起こり、臓器を障害します。今までの抗がん剤と全く違う副作用が予測不可能で起こるので、早期発見、抗体の中断、免疫抑制剤の使用など早期の対応が必要です。そこで免疫チェックポイント阻害薬を使うときは、患者さんも含めて医療従事者が免疫のしくみの概略を勉強し、なぜこのような副作用が起こるのかを理解したうえで使用し、対応することが大切です。
 現在、免疫チェックポイント阻害薬が効く可能性が高いのかどうかなど、がん患者さんの免疫状態がどのような状態にあるのかを評価できるようなバイオマーカーの研究が世界的に進められています。がんは人によって免疫の状態が違います。免疫チェックポイント阻害薬が効きにくい人に投与しても無駄になり、効く人にはしっかり使えばよいので、そのためにも効く人と効かない人を見分けるバイオマーカーの開発が重要課題となっています。またいつまで投与すべきかを判定する指標を見つけることも課題になっています。
 がんの薬物ちりょうではすでに、その人に合った薬を使う「個別化医療」が進んでいますが、がん免疫療法も同じで個別化医療の実現が重要と考えられます。同じがん種であっても患者さんごとに生じている遺伝子変異が異なります。がん細胞の遺伝子変異は免疫療法の効果にも関係します。患者さんごとにがん免疫状態を評価して、より適切な免疫療法を行えるようになることが今後の目標です。


免疫チェックポイント阻害薬の副作用として予測される症状
頭痛(下垂体炎、下垂体機能低下症)
めめい(投与時の急性反応)

目の痛み、充血、視力低下、飛蚊症、光を過度にまぶしく感じる、
涙が出る(ぶどう膜炎などの眼障害)
視野が欠ける(下垂体)

甲状腺の腫れ(甲状腺機能亢進症)

咳、息切れ、呼吸困難(間質性肺炎)
動悸(甲状腺機能亢進症)

食欲減退、吐き気・嘔吐

腹痛、下痢、排便回数の増加、血便(大腸炎・消化管穿孔)

手のふるえ(甲状腺機能亢進症)

倦怠感、悪寒、発熱
(間質性肺炎、肝障害、下垂体炎、下垂体機能低下症、甲状腺機能低下症、副腎機能不全、1型糖尿病、投与時の急性反応)

汗をかく、体重減少、不眠(甲状腺機能亢進症)

かゆみ(皮膚障害、肝障害)
皮疹、白斑、紅斑(皮膚障害)

むくみ、(甲状腺機能低下症、腎障害)

リンパ球や白血球の減少

片側あるいは両側の脱力感、感覚異常、知覚障害、筋力の低下(重症筋無力症、末梢神経障害)


よりよい服薬指導のための基礎知識
COPD(慢性閉塞性肺疾患)
吸入デバイスの使いたかが治療の正否を握る

慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、主としてタバコ煙を吸入曝露することで生じる肺の炎症性疾患だが、全身の炎症性疾患として捉える視点が重要である。高齢者で喫煙歴があれば糖尿病や骨粗鬆症、心血管系疾患の背後にCOPDが潜んでいる可能性がある。併存疾患が多いCOPDでは、非専門医や保険薬局の薬剤師が潜在患者を拾い上げ治療につなげる努力が求められる。一方、薬物療法ではβ2刺激薬、抗コリン薬を導入するが、吸入デバイスの使い方が治療ポイントの1つにあげられる。今回は、日本大学医学部付属板橋病院呼吸器内科准教授の権寧博氏ら、COPDの治療と管理に造詣深い専門家に、COPDの病薬連携、吸入指導、禁煙指導などについて解説していただいた。

COPD患者の90%に喫煙歴があり、COPDによる死亡率は非喫煙者より10倍高い。

持続的な喫煙による健康被害は全身に及び、併存疾患が多いのが特徴。
呼吸器系に関係ないと思われる疾患の背後にCOPDが潜んでいる可能性がある。

主要薬剤は気管支拡張薬で薬理作用と副作用のバランスから吸入療法が推奨される

喘息合併例ではCOPDの重症度にかかさらず吸入ステロイドを用いる

多種多様な吸入デバイスの操作には若干の技術を必要とする。
正しい吸入を行うためには、繰り返し操作方法を指導することが大切である。



デバイスの正しい指導で服薬アドヒアランスを維持・向上
日本大学医学部附属板橋病院呼吸器内科准教授 権 寧博氏

潜在患者が多いCOPD
患者堀起こしが急務

 COPDの最大の原因は喫煙である。COPD患者の約90%には喫煙歴があり、COPDによる死亡率は、喫煙者では非喫煙者に比べて約10倍高い。タバコ煙は肺の中の気管支に炎症を起こし空気の流れを低下させるだけでなく、気管支の奥にあった酸素と二酸化炭素を交換する肺胞を破壊する。これが進行すると酸素の取り込みと二酸化炭素の排出機能が低下し、これらの変化は治療によっても元に戻ることはない。
 COPDは数%の割合で非喫煙者にもみられる。日本大学医学部板橋病院呼吸器内科准教授の権寧博氏は「大気汚染物質と体質などから考えられるが、副流煙による可能性は高い」と指摘する。
 日本では40歳以上の8.6%(約530万人)、70歳以上では約210万人がCOPDに罹患していると推定されているが、約90%の患者は見過ごされている可能性が高いとみられる。
 厚生労働省は「健康日本21」でDOPDの認知度を2022年に80%とすることを目標に掲げて普及を図っているが、日本呼吸器学会あるいは専門医らの努力にもかかわらず、COPDのリスクは一般に広く浸透していない。COPDは併存疾患が多いことから、非専門医や保険薬局の薬剤師らが呼吸器疾患とは関係ないと思われる疾患でも喫煙歴や自覚症状を確認したうえでCPODを疑う目を持つことが大切だ。
 「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン」(2014年版)は、COPDに併存症が多くみられるのは炎症が肺局所にとどまらず、全身性にも認められるかだた指摘する。増悪気だけでなく安定期の患者でも血中のTNF−α、IL-6といった炎症性メディエーターやCRP(炎症時に血清中に増加するC反応性タンパク)が増加しており、全身性炎症を反映した所見が認められるという。同タイドラインではCOPDを全身性疾患として捉え、全身性炎症の抑制を目的とした治療を行う必要があるとしている。
 加えて、近年、気管支喘息にCOPDを合併した患者の管理が問題になっている。気管支喘息とCOPDはいずれも気道炎症を基本病理としているが、炎症の性質が異なり、ステロイド薬に対する反応性も違うといわれている。しかし、両疾患の臨床症状には類似点も多く、「喘息患者で喫煙習慣のある患者さんではCOPDを合併しやすく、気管支喘息-CPODオーバーラップ症候群(ACOS)では、喘息のないCOPDに比べて重症で予後が悪い」(権氏)という。
 受診患者に長期の喫煙歴があり、慢性的に咳、喀痰、労作時呼吸困難を訴えたらCOPDを疑い、気管支拡張薬吸入後のスパイロメトリーで1秒率(FEV1/FVC)が70%未満ならCOPDと診断する。さらに確定診断で気流閉塞をきたすほか疾患を除外する必要がある。
 多くのCOPD患者が受診するのは地域の診療所だが、スパイロメトリーを常備していないケースも多く、確定診断できなければ専門医に紹介する。権氏らの呼吸器内科では紹介患者も含めて300〜400人のCOPD患者を管理しているが、その多くは60歳以降の患者で、軽症、中等症だという。しかし、軽症でも息切れを訴える者もいて、1秒率からみた病期分類だけで重症度と判断することはできないと権氏は指摘する。
 CPODの管理目標は、症状及びQOLの改善、運動耐容能と身体活動性の向上・維持、増悪の予防、疾患の進行抑制、全身併存症と肺合併症の予防と治療、生命予後の改善である。
 専門医が治療方針を決めた後、地域の診療所で治療を継続するとき、最も大切なことの1つは吸入薬のデバイスが正しく使えているかどうかを確認すること。多種多様な吸入デバイスの中には使い方に注意や技術を必要とするものが少なくないからだ。もう一つ大切なことは重症度の判定だ。増悪を繰り返して重症度が変わると治療薬の選択も変わる。
COPD患者が増悪する原因としてまずあげられるのは感染症だが、インフルエンザ感染はとくに要注意で、インフルエンザワクチン接種は、前述のガイドラインによれば、COPD増悪による死亡率を50%低下させるという。肺炎球菌ワクチンも高齢COPD患者では有用性が高いので、インフルエンザや肺炎球菌ワクチンの接種が強く求められている。
 患者の訴えを聞くとき注意しなければならないのは、患者は病状を過小評価する傾向があること。いつもと異なる強い息切れを「年のせい」「このくらいの症状はいつものこと」を考えて増悪を医師や薬剤師に報告しない例が少なくない。COPD患者を管理する医師は、単に患者の訴えだけで判断せず、臨床検査に基づいて増悪時の重症度を総合的・客観的に評価すべきであり、薬剤師もできるだけ具体的な質問を心がけたい。治療によって呼吸機能が改善しても、息苦しくなるのを嫌って外出を控える患者もいる。治療前と同じような生活態度を続けていると、治療による呼吸機能改善のメリットをQOLに反映できず、薬剤の効果も実感できない。「これは薬剤の中断につながるので呼吸機能が改善したら身体活動性を高める生活指導が大切になる」と権氏は話している。

吸入薬は比較的安全に使えるが、合併症によっては注意すべき副作用も
 COPDに処方される薬剤の一覧を表1に示した。末梢気道の拡張作用や呼吸筋力の増強作用などが報告されている経口の徐放性テオフィリン薬もあるが、薬理作用と副作用のバランスから吸入療法が推奨される。また、図1に安定期COPDの治療手順を示した。図1ではまず、必要に応じて短時間作用性気管支拡張薬を用いるとあるが、これは短時間作用性の薬剤は労作時のみ息切れする軽症例に使われることが多いためで、「単剤から開始すれば長時間作用性でも短時間作用性の薬剤でもどちらでもよい」と権氏。吸入ステロイド薬は中等度以上の気流閉塞があり、増悪を繰り返す症例に用いられるが、ACOSの対してはCOPDの重症度にかかわらず、基本薬として用いる。
 抗コリン薬は前立腺肥大症や緑内障合併例で使用に注意すべき場合があるが、一律に禁忌というわけではない。前述のガイドラインによると閉塞隅角緑内障では禁忌だが、開放隅角緑内障では問題なく使用できるので眼科に相談する。


表1 COPD管理に使用する薬剤

1.気管支拡張薬
 抗コリン薬
 短時間作用性(SAMA)
 臭化イプラトロビウム

 β刺激薬
 短時間作用性(SABA)
 サルブタモール
 テルブタリン
 プロツカテロール
 ツロプテロール
 フェノテロール
 クレンブテノール

 メチルキサンチン
 アミノフィリン
 テオフィリン

 長時間作用性(LAMA)
 チオトロピウム
 グリコピロニウム
 アクリジニウム
 ウメクリジニウム

2.長時間作用性β2刺激薬/吸入ステロイド薬配合薬(LABA/ICS)
 サルメテロール/フルチカゾン(プロピオン酸エステル)
 ホルモテロール/ブデソニド
 ビランテロール/フルチカゾン(フランカルボン酸エステル)

3.長時間作用性β2刺激薬/吸入ステロイド薬配合薬(LAMA/LABA)
 グリコピロニウム/インダカテロール
 ウメクリジニウム/ビランテロール
 チオトロピウム/オロダテロール

4.喀痰調整薬
 ブロムヘキシン
 カルボステイン
 フドステイン
 アンブロキソール
 アセチルシステイン


前立腺肥大症では稀に排尿困難症状が改善するが、薬剤を中止すれば症状はすみやかに改善する。








































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