婦人癌

早期発見こそ子宮ガン対策のすべてです

子宮頸ガンは女性のガン死亡順位の第二位。だがこの二十五年間で死亡率は半減しています。治療法もクスリもたしかに進歩しましたが、もっとも効果のあったのが早期発見≠ネのです。

 わが国における女性のガンによる死亡原因の一位は、男性と同じく胃ガンですが、二位は子宮ガン(子宮頸ガン)です。このように死亡順位としては二位ですが、年を追って死亡率をみてみると、年々減少の傾向(ここ二十五年に半分以下)をたどっています。
 これはどう考えたらよいのでしょうか。「治療法やクスリが進歩したから・・・・・」というのは正しい回答とはいえません。確かにわが国の子宮ガン治療技術は世界のトップレベルですが、本当は「早期ガンの発見率が高まったため」に死亡する人が少なくなってきたというのが正しいのです。
 死亡率が減少しているという結果だけに安心してはいけません。あとで詳しくお話しますが、早期発見・早期治療はあらゆるガンに共通した鉄則。
 なかでも子宮ガンはこの大原則が非常に重要な意味をもっていることを忘れないでください。

●“子宮ガン”は2種類ある
−頸ガンと体ガンの違い−

 ひとくちに子宮ガンといっても、子宮頸ガンは子宮の入口にできるガンであり、子宮体ガンは子宮内部の内膜から発生するガンです。
 欧米人(黒人を除く)は子宮体ガンの発生率が高いのですが、日本人の場合の発生率は頸ガン90%に対し、体ガン10%と大きな開きがあります。したがって日本人の場合、子宮ガンといえば、ふつう子宮頸ガンのことを指すといってもよいわけです。しかし、このところ体ガンは少しずつふえる傾向にありますので、油断は禁物です。
 年齢的にいうと、頸ガンは比較的若い世代(30代〜50代)に、また、体ガンは高年齢世代(50代〜60代)に多くみられるという違いがあります。


子宮頸ガンは若い人にもふえてきました
中年以降の病気≠ニいう考えは昔のもの。アメリカでは20代後半から30代前半に集中し、やがてわが国でも同じ傾向をたどりそう。とにかく30歳になったら、何ともなくても疑ってみてください。

子宮ガンの検診率はアメリカの50%に比べ、わが国は10%。もっとも若い人が受けることです。

 10年ほど前までは、「子宮頸ガンは中年以降の病気」という考えが一般的でした。事実、子宮体ガンは50歳以降に多く、子宮頸ガンも40〜50歳以降に多く、子宮頸ガンも40〜50歳代がピークでしたから、これには別に誤りではなかったわけです。しかし現在では、この考えは通用しません。体ガンは以前と同様ですが、頸ガンが以前いわれていた年齢よりずっと若い世代(20〜30代)でも発見されるようになってきたからです。
 1980年にアメリカガン協会が政府に提出したレポートによると、子宮頸ガンの発見される率の高い年齢層は「20代後半から30代前半」となっています。思った以上に若い年齢層に集中していることに驚かれるでしょう。
 これは一言でいうと、若い世代の受診率が高まり(20歳代以上の婦人の60%が受診しているといわれている)、その結果、発見率も急上昇したためです。検診数の増加に伴って進行ガンが減少し、初期段階の子宮頸ガン(0期)の発見がふえ、その結果、「年齢が若くなった」とも考えられます。

『異形上皮』の発見のピークは30〜34歳。30歳になったら、とにかくキケン年齢なのです。

 アメリカやカナダでは、子宮ガンの検診は大変熱心で、すでに検診率は50%に達しているというのに、日本ではまだ10%にも達していません。こうした受診率の低さもあってか、私たち日本人の場合、子宮ガン発見のピークは30代後半から40代にかけてとなっています。
 しかし、初期の子宮頸ガンである『0期』の、さらに前の段階ともいうべき『異形上皮』の場合は、最も多く発見されるピークが30〜34歳で、0期の場合よりさらに若くなっていますから油断は禁物。
 もちろん異形上皮はそのすべてが子宮頸ガンになるわけではありませんが、約30%は2〜4年のうちにガンに移行するとされています。
 こうしたことを考え合わせてみると、日本もやがてはアメリカやカナダと同じように、かなり若い人でも子宮頸ガンが発見される時代がやってくるかもしれません。
 実際に、現実の段階でも20代、30代の若さで、かなりの人が子宮頸ガンを発見されていることを思えば、以前のように頸ガンは中年以降の病気などといってはいられないはずです。
 50、60、70歳代の年輩婦人には相変わらず子宮体ガンという敵があり、一方、若い婦人には子宮頸ガンがあることを考え合わせると、結論としては、年齢に関係なく子宮ガンに注意しなければならないことになるでしょう。
 現実問題としては、あとでも詳しく説明しますが、少なくとも30歳になったら、何の異常を感じなくても「子宮ガンの疑いをもつ」慎重さが必要です。


症状なし≠ェ特徴 とにかくこの段階で発見を
 出血とか帯下とか、確かに子宮頸ガンにも症状はありますが、出血したからといって子宮ガンとは限りません。それに、もっと大切なのは、そうした症状の出る以前に検診を受けることです。

0期やT期では、自覚症状のないのがガンの特徴なのです。

 他のガンにも共通していることですが、子宮ガンは急に高熱が出て苦しむといった急性の病気ではありません。したがって、ふつうは症状らしい症状はないといっても差し支えないのです。
 子宮頸ガンはその進行の度合により『第0期』『第T期』『第U期』『第V期』『第W期』までの五段階に分かれています。
 このうち最も初期の段階である『第0期』は、子宮の入口の粘膜の中にできたガンがゆっくり広がってゆく時期であり、「症状のない」ことが特徴です。
 症状のないのは次の初期『第T期』でもいえることですが、この第0期から第T期にかけては集団検診で発見されることが多い段階です。つまり、自覚症状はないけれど念のため受けておこうという集団検診で発見されるということは、その特徴(症状がないこと)をよく表わしているといえましょう。

出血や帯下があったからといって、必ずしも子宮ガンとはかぎりませんが・・・・・。

 しかし、100%の人がまったく自覚症状をもたないわけでもありません。全体の10%以下の人は「よく考えてみると、ここ数か月か一年くらい何かあったようだ。」と答えています。
 その自覚症状とは不正出血とかピンク色の帯下(おりもの)などで、これらの中でも主体となるのは「接触出血」、つまり性交時に出血することです。これは子宮の入口にできたガンの部分がもろくなっているため出血しやすくなっているからです。
 帯下は正確にいえば出血の一種ですが、これも初期の場合はにおいもほとんどなく、無色の場合もあります。出血が少量だとピンク色、また茶褐色になることもあります。
 『第U期』に入ると、80%以上の人が出血をみます。『第V期』以降になると出血にプラスして「くさい、水のような帯下」が出てきます。しかし、ここ数年こういう症状がでるまで気がつかない人はかなり少なくなってきました。
 初期のガンでは「痛み」はありません。ガンが進行して神経をおかさない限り、痛みはないからです。また出血や帯下があったからといって、必ずしも子宮ガンとは限らないことも覚えておいてください。
 たとえば子宮膣部ビラン、子宮膣部の炎症、老人性膣炎、トリコモナス膣炎などの場合では子宮膣部にビラン(ただれ)を生じやすく、炎症のため充血して出血しやすくなることがよくあります。
 ただ、出血や帯下があったら、婦人科医の診断を受けることが大切です。専門医なら子宮ガンとこれらの病気をすぐ見分けることができるからです。

●性生活と子宮ガンの関係は
 性生活と子宮ガンの関係については、外国のデータがよく引用されます。日本にはこの種のデータはほとんどありません。
 その関係とは「子宮ガンは既婚婦人に多く未婚婦人に少ない。初回の性交年齢が低いと若いうちに発生しやすい」といったものですが、従来はこれを疑問視する向きが強かったものです。
 しかし実際に患者さんの動向をみているとやはり既婚(正確には性経験者)の人はそうでない人よりも子宮頸ガンの発生が高いようです。またアメリカの場合などでは、年々性経験の年齢が低下し、それにつれて頸ガンの発生年齢も若年化する傾向にあります。こうした事実はやはり無視できないといってよいでしょう。


0期で見つければ100%完全に治ります
早く発見するほど治る見込みは高まります。ことに子宮ガンはその傾向が顕著。第T期、第U期と進むにつれて、治療率はどんどん低下します。ここでも早期発見の重要さがわかるはずです。

0期なら100%治るものが、第T期の後半になると90%になってしまいます。

 「ガンにかかったら絶対治らない」と思い込んでいる人は多いものです。確かに以前はそうでしたが、発見および治療技術の進歩した現在では、決して不治の病≠ニいうことはありません。とくに子宮ガンの領域では、早く発見できれば治る確率が非常に高いのが特徴となっています。
 子宮頸ガンは進行の度合いにより五段階に分かれていることはすでにお話しましたが、このうち初期の段階である0期で発見されれば「100%完全に」治ります。
 次に第T期ですが、これは詳しくいいますとTa期とTb期とに分かれます。第T期の中でも初期であるTa期の場合は、まれに再発することはあるとしても、ふつう0期と同じく100%治るといってもよいのですが、Tb期になると治癒率は少し落ちて90%くらいになります。
 さらにこの次の段階である第U期に入ると治癒率は60〜70%くらいに、また第V期に入ると40%前後に落ちてしまいますし、最終段階であるW期では10%にも減少します。

30歳すぎたら子宮ガン年齢であることを、もう一度、自覚していただきたいのです。

 こうしたことからいえるのは、「子宮ガンは第T期までに発見できれば、こわいものではない」ということです。早期発見の重要さは、こうした数字にキチンと表われているわけです。
「早く発見できればそれだけ治る見込みも高まってゆく」のがガンの実態であり、とくに子宮ガンにあっては、そのパーセンテージが段階ごとに大きく変わってゆくのが特徴です。
 第0期から第T期に移行してゆくのには、早い人で半年、遅い人だと二年くらいです。ということは、つまり「できれば半年に一回少なくとも年一回」は検診を受けていれば、まず絶対にそれ以上の段階にまで、子宮ガンを進行させないですむということになるわけです。
 このあたりが早期発見のポイントでしょう。なにしろ自覚症状がほとんどない(初期では)のですから、症状のあるなしにかかわらず、「30歳からは子宮ガン年齢である」ことを肝に銘じて、キチンと検診を受けてもらいたいものです。
 現在の30〜40歳代の婦人の受診率は、意識が高まったといいながらも、全体のわずか10%程度。アメリカやカナダの5分の1であることはすでにお話しましたが、これを早く外国並みのレベルにもってゆくこと、いや100%受診にもってゆくことが、子宮ガンで死亡しない条件となるのです。


1分足らずの細胞診検査で正確に診断できます
子宮の入口あたりから細胞をこすりとって顕微鏡で見るだけで、きわめて正確に子宮頸ガンの診断がつけられます。痛みも出血も全くなし。とくに準備の必要もなし。気軽にこの検査を受けてください。

洗浄したりしないで検査を受けること。0期から異形上皮まではっきりわかります

 子宮ガンを発見する方法として、現在世界中で広く行われているのがアメリカで開発された『細胞診』という方法です。これは文字どおり細胞をみて診断するもので、ヘラで子宮の入口や頸管の中をこすって細胞をとり、これを顕微鏡でみるものです。
 時間にして一分足らず、痛みも出血もぜんぜんありません。自分で細胞をとる自己採取法もありますが、これは正確度に欠けることもあり、また医療機関で細胞診が簡単にできることから、最近は自己採取法はあまり行われなくなりました。
 この検査を受ける場合、とくに準備はないのですが、一応注意したいことは「生理中はさけること」、それに「膣の中は洗浄しないで病院にきてほしい」ということです。つまり、ふだんのままで受診するのがいちばんよいことなのです。

子宮体ガンの発見には、頸ガンの場合とはまた別な検査が必要です。

 この検査は非常に正確度が高いので、第0期はもちろんのこと、その前段階である異形上皮もハッキリとらえることができます。こんなにスピーディで簡単、そして正確な細胞診ですから、積極的に受けてもらいたいものです。
 もう一つの検査法は、『コルポスコピー』です。これは子宮頸部を10〜20倍の一種の拡大鏡でみる方法です。この方法のメリットは、どこに、どの程度の大きさのガンが発生しているかをズバリとみきわめることが可能な点です。
 ですから子宮頸ガンの発見には、細胞診とコルポスコピーの併用が万全ということになります。しかし通常は、先にあげた細胞診で、まずたいがいのものは発見できるといって差し支えありません。
 ところがこのすぐれた方法も、子宮体ガンの場合にはあまり役に立たないのが困った点で、発見率は50%以下です。体ガンの発見は子宮腔内から細胞を採取する方法を行わなければならないことになります。
 閉経後の婦人で、太っていて高血圧、糖尿病のある人−といったタイプを対象としますが、さらには「子宮の内部から不正出血している人」も体ガンの疑いをもつ必要があります。したがって、このような症状をもっていたなら、あらかじめ医師に告げて、体ガンの検査も受けておくことが望まれます。

●清潔もほどほどに
 外陰部を清潔にするのは大切ですが、それではと清潔を気にする余り、ビデなど市販されている膣洗浄器を使ってまできれいにするのは考えものです。
 膣にはそれ自体“自浄作用”があり、たいていの雑菌は殺してしまう能力があるからです。あまり洗いすぎると、この自浄作用が失われ、かえって雑菌におかされやすくなってしまうこともあります。また検査の際、正しい診断ができなくなることもありますので、あまり神経質になる必要はありません。


治療の中心は一に手術、二に放射線です
とくに日本で開発された広汎性子宮全摘除術が、世界でも高く評価され、頸ガンの治療にすぐれた効果を発揮しています。初期のものであれば、ふつう、手術だけで放射線療法は併用しません。

子宮ガンの治療には、とくに初期の場合はクスリは使わないのがふつうです。

 子宮ガンの治療の主体となるものは『手術』です。これは他のガンとも共通した治療法ですが、術後の経過・再発の可能性などを考えると、目下のところ最高の方法といってよいと思います。
 手術はガンにおかされた部位を切除してしまうもので、実際は、再発を防ぐため転移の可能性のありそうな部分もきわめて広く切除するようにしています。この方法はとくに子宮頸ガンについては、世界の中でも高い評価を受けている、日本の開発した広汎性子宮全摘除術が一般に行われています。

子宮ガンは、こうすれば防げるといった、決め手になる予防法はまだありません。

 手術以外の方法としては、やはり他のガンと同様『放射線照射』、それに『化学療法(クスリ)』があります。子宮ガンに対する放射線照射は、日本では進行ガンが減少したため最近では少なくなりました。クスリは他のガンほど使われていません。子宮ガンの場合はとくに初期ではクスリを使わないのがふつうです。
 つまり、わが国の子宮ガン治療は一に手術、二に放射線ということであり、必要に応じてクスリも加え、これらの併用などでガン細胞の除去に努めているわけです。
 早期に発見するほど治癒率が高いのはすでにご承知のとおりで、初期であれば手術のみで、放射線療法は併用しないのがふつうです。「日常の注意や予防」については関心をもっている人がたくさんいます。しかし実際問題としては、これといった注意、予防策はないのが本当のところです。いまだに子宮ガンの原因はわかっていませんから、こうすればガンにならないとはいえないのです。
 現段階では「早く発見して早く治療する」―――それだけが唯一の有効な方法です。つまり、定期的にキチンと検査を受け、その結果、異常があればすぐに手を打つことが何よりの注意点であり、また予防法になるわけです。

●卵巣ガンと卵管ガン
 子宮ガンに比べると、数の少ない婦人科のガンが卵巣ガンと卵管ガンです。卵巣ガンで子宮ガンの10%以下、卵管ガンともなれば、全国でもまだ数十例を数えるていどですから、あまり気にする必要もないわけですが、卵巣ガンが子宮体ガンと同様に、このところ少しずつふえているのは気になります。
 いずれにせよ両者に共通したことは、発見のむずかしいことでしょう。異常を感じたときには手遅れだったというケースが多いのもそうしたことが原因です。初期症状がないので、念のためにみてもらう慎重さが必要でしょう。発生してしまうと、他に転移しやすいのもこれらのガンの特徴です。


乳ガンの早期発見はあなた自身でできること
生活の欧米化に伴い乳ガンはふえる一方。しかしご自分の乳房に関心をもってさえいれば、その早期発見はきわめて簡単。40歳代になったら、自分で触れたり観察したりする習慣をつけてください。

欧米婦人では子宮ガンを抜いて乳ガンがトップ。わが国でも次第に欧米スタイルに近づいてきました。

 集団検診を実施すると乳ガンの疑いのある人が千人に二人くらいの割合でみつかります。0.2%です。これは子宮ガンが同じく千人に三〜四人の割合でみつかるのと比べると、ちょうど半分ほどのパーセンテージですが、このところふえつつあるのが気がかりです。
 乳ガンはわが国の婦人のガン死亡率からいうと、胃ガン、子宮ガンについで三番目となっています。欧米婦人は乳ガンがトップで子宮ガンよりも多いという特徴がありますが、こうしたことを考えてみると、少しずつ欧米化してきているといってよいかもしれません。
 実際にこうした事実を裏づける談として、「食事の欧米化」をあげる学者もいます。つまり、従来淡泊だった日本食にとってかわり、欧米風の脂肪の多い食事をするようになったために乳ガンがふえてきたのではないか、というものです。食事の他にも、女性ホルモンやウイルス説をあげる人もいます。
 乳ガンになりやすい年齢は40歳代がいちばんで、50、60歳代になると減ってきます。10代、20代では非常に少なく、40歳代がピークというのは、欧米と同じです。

わざわざ専門家にみてもらわなくても、しこりがあるかないかは、自分でわかります。

 ところで乳ガンにはハッキリ断定できることが一つあります。それは「乳ガンの早期発見だけは本人の責任」ということ。なぜなら乳ガンは日常自分の眼で見、触れることができるからで、子宮ガンのように専門的にみてもらわなければならないというものではないからです。
 次ページで具体的な方法を詳しく説明しますが、自分で行う『自己検診法』は目下厚生省でも力を入れているところで、非常に有効な手段ですから、しっかりマスターしておいていただきたいと思います。
 自治体の行う集団検診でも、子宮ガンといっしょに乳ガンの検診も行うところがしだいにふえてきました。一人の人が子宮ガンと乳ガンの二回、検診に出向くことなく、一回ですんでしまうのですから、はなはだ能率的といってよいでしょう。
 いずれにしても、女性である以上は、大いに自分の「乳房」に関心をもつことが、乳ガンの早期発見につながる最良の道ということができます。とくに、乳ガン年齢の40歳代に入ったなら、入浴時や着物の脱ぎ着の際には、必ず乳房に触れたり鏡に写してみる習慣をつけたいものです。
 そうしたふだんの注意を怠り、検診で医師に指摘され、おどろいたり恐れたりすることのないようにしたいものです。

●男性でも乳ガンになる
 乳ガンというと女性の専売特許と考えがちですが、実際にはちゃんと男性にもあらわれます。日本では年間30人くらいの男性が乳ガンで死亡しているのです。
 女性と異なるところは年齢の点でしょう。女性は40歳代が主流となりますが、男性の場合は50〜60歳代となります。40歳以下の男性はまず例外中の例外といっても差し支えありません。
 乳ガンは女性のもの――という意識が強いせいか、当の男性が気づくのはたいてい遅れがちで、このため手遅れになったり、再発しやすかったりするのも特徴です。


こうすれば簡単にできる 乳ガンの自己検診法
さわってみて、鏡に映してみて、とにかく自分で調べるのですから、考えようによってはきわめて簡単な検査法。しこりと分泌物を手がかりに、定期的に自己チェックを試してみてください。

 現在、広く一般に行われている自己検診の方法はアメリカの医学者・ハーゲンセンの考案した触知法です。これだと簡単に、しかもかなりの精度で乳ガンの有無を感知することが可能です。しかし、いいかげんなやり方では見逃すことになりますから、コツをよくのみ込んでからやってください。
 まずブラジャーをはずしてから平らな床面に寝ます。このとき肩の下に低いマクラかタオルのたたんだものなどを入れて、乳房が平らに均等になるようにします。ソファやベッド上などでは重心が動いて均等化が図れないので注意してください。
 こうしておいてから、乳房を外側と内側とに分け、順次さわってゆくのです。この場合2、3本の指の腹でさすったり圧迫したりして内部のシコリをみつけてゆきます。決してつまんだりしてはいけません。あくまでも軽くさすったり圧迫したりするだけで調べることが肝腎です。
 乳ガンはたいていの場合シコリを伴うのでこの方法が有効になるわけです。触れ方さえ誤らなければ、どこからさわろうと別にかまいませんが、「平らに、しかも組織(乳房の)全体が均等になること」だけは十分注意してください。でないと正しい診断はむずかしくなります。
 もう一つの方法は「乳房を鏡に映してみる」ことです。胸全体が映る少し大きめの鏡を用意して、全体の形をよく観察してみます。
 以前と形の変わったところはないか、どこか引きつったような部分はないか、またへこんでいないか――といった点をよく注意してください。
 腕を上下させて、乳房の形状をよくみることも大切です。ガンが皮膚と癒着すると引きつれやへこみが出るからです。
 この鏡による診断法は、どちらかというと中年向きで、若い人の場合はわかりにくいことが多いので、いずれにしても触知法とともに行って総合的な判断を下すのがよいでしょう。
 また、これとは別に、「乳房からの分泌物」も乳ガンについての有効な手がかりの一つになります。乳液状の分泌物であれば心配はないのですが、血液混じりやタール状の黒いもの、また透明なものなどは、乳ガンの疑いが濃いといえるからです。
 さわってシコリがあったり、気になる分泌物があったときは、ただちに外科医か婦人科医でその原因を調べてもらってください。
 ただ注意したいことは、乳房の触診や視診を行う場合は「必ず月経後に行うこと」。これは月経中(前も)には、乳房が痛んだり、あるいはシコリのように硬かったりすることがあり、これを乳ガンの症状とまちがえやすいからです。
 閉経後の人はこの点は関係ありませんが、こうしたことからも「乳房のチェックは月一回、月経の終わったあとで」と決めておくと合理的で正確な診断ができることになります。
 子宮ガンと同じで、乳ガンもたいていは自覚症状がありません。ですから、定期的な自己チェックが唯一の発見法です。「シコリと分泌物」を二大手がかりとして、自分の責任である自己チェックを励行する習慣をつけてほしいものです。

乳ガンの自己診断法
 @乳ガンを自己診断するときの触診の方向と範囲→脇から胸、胸から脇
 A鏡に向かって立ち、左右の乳房を比べてみます
 B少し前かがみになって乳房がたれるようにして左右を比べます
 C仰向けに寝て右手を頭の上にあげ、乳頭の通る線の内側を手のひらで調べます
 D次に右手を下げて、乳頭を通る線より外側を、同様に調べます
 E右側が終わったら、同じように左側も触診します


手術後も一定のペースで検診を
 乳ガンの治療は「乳房切断術」が原則となります。つまり患部のある乳房を切り取ってしまうわけです。
 女性のシンボルともいうべき乳房を切り取ってしまうのですから当の本人にとっては、こんなつらい話はないわけですが、これが以後の再発防止という点からも、現在考えられるもっとも確実な方法なのです。
 また手術後、美容のために胸部に皮膚移植したり、シリコンパッドをつめる方法などを行うことが外国ではけっこうあるようですが、再発の防止や発見の容易さという意味からはおすすめできかねる方法です。
 手術を受けたからといって、次後100%安全かというと、そうもいえないのが乳ガンの特徴です。これは国立がんセンターのデータによっても明らかで、術後5年間たっても生存していた人は80%、つまり10人に2人は再発により死亡しているわけです。
 その理由は乳ガンの中に生育の非常に遅いものがあり、せっかく乳ガンの組織を取り去っても、5年、10年後にそれらが芽を吹き成長してくることがあるからです。
 したがって、乳ガンは手術後10年間くらいは十分注意していなければなりません。


欧米の乳ガンは日本女性の約6倍!
 欧米では女性のガンといえば、すぐに「乳ガン」という答えが返ってきます。それほど乳ガンが恐れられているわけで、アメリカ、イギリス、デンマーク、スコットランドでは女性のガンのトップにランクされています。
 これは日本人の約6倍に当たりますが、その日本も着々と乳ガン人口が増加しています。
 とくに乳ガンの最も多く発見される45〜49歳、その次の40〜44歳の、つまり40歳代婦人は十分な注意が必要です。

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