漢方治療の実際

同じ病名でも漢方では薬が異なる!!
 西洋医学では、風邪をひくと、誰もが同じような薬をのむことになりますが、漢方では、人それぞれに異なる薬を飲みます。漢方の場合、どのような薬を使うかの判断は、患者ひとりひとりの体質、体力、症状を見て決めます。こうした個人差を「証」といい、この証に応じて、その患者に適応した薬を処方するのです。数多くある漢方薬の中から、あなたにあった薬を見つけましょう。
 
自分の症状、体質を正しく知る
 漢方薬の使い方の基本は、患者の証(体力・抵抗力・体質など)に合ったものを選ぶことです。症状の現れ方も証を知るうえでのポイントになります。
 基本的な証として、体質、体格的に分けた実証、虚証、中間証があります。実証の人は、がっしりした体格で、体力もあり、肌にもはりがあります。虚証の人は、やせ型で青白で、内臓が弱く、虚弱体質的な感じです。この実証と虚証の間が中間証の人です。これは、一応の目安ですから、自分の証を知るために、一度、専門医に診断してもらっておくのも、よい方法といえるでしょう。
 自分の症状と証を知り、それに適応する薬を選ぶということが、漢方治療の第一歩であり、もっとも重要なことです。
 知人が、あの薬で治ったから、自分もと、自分の証や症状に合っていない薬を飲むと、場合によっては、病状の悪化を招くことにもなります。漢方薬は自分だけのオリジナルな薬ともいえます。

この章の使い方
 この章では、各病気ごとに、実証、中間症、虚証に分けています。さらに各証の中に、それぞれの症状の現れ方と、その症状に適応する漢方薬名を表示してあります。左記の要領で、あなたに合った薬を見つけてください。
@あなたがかかっている病気が出ているページをさがします。
A病気の中で、あなたの証の所を見ます。もし、あなたが、実証の高血圧症ならば、高血圧症の実証の欄を見ます。
B証の欄には、いくつかの症状の現れ方があるので、その中から、あなたと同じ症状のものを見つけます。
Cその症状の後ろに表示してる漢方薬が、あなたに合った薬ということになります。 
 また、自分が実証なのか虚証なのかわからないという人も多いと思います。その場合は、あなたの病気のページを見て、自分の症状の現れ方と同じものを見つけるようにします。
とくに、いくつかの病気があれば、症状の現れ方から自分の証を知ることもできます。
 しかし、実証や虚証などに分けるだけが、漢方診療のすべてではないことも知っておいてください。


高血圧症・高血圧随伴症
 高血圧症は、血圧が標準値より高い症状をいいます。動脈硬化なども原因となって起こります。
 高血圧随伴症は、高血圧に伴って頭痛、頭重感、めまい、肩こりなどの不快な自覚症状が起こることをいいます。
 漢方では、高血圧、高血圧随伴症、動脈硬化などを改善して、血圧を下げる治療をします。

実証
 頭の中に充血感がある
 頭の中に血液が充満しているような感じがあり、イライラして、いつも気分がサッパリしないという症状をもつ人。そして便秘や不眠傾向の強い人には、
■三黄瀉心湯

胸や肋骨弓下の痛みと、イライラ
 みぞおちから、肋骨弓の下にかけて、抵抗と圧痛がある。さらに、不眠やイライラなどの神経症状が強い。口の中が粘ついて苦く、便秘傾向がある人には、
■柴胡加竜骨牡蛎湯


中間症 
 明け方からの頭痛、肩こり
 明け方から起床時にかけて、ひどい頭痛、頭重、肩こりに苦しんでいる人、さらに、もの忘れがひどい人には、
■釣藤散

だるさ、肌荒れがある
 最低の血圧が高く、体がいつもだるくて、疲れやすく、肌荒れのある人。とくに、細動脈の硬化によって起こった高血圧症の人には、
■七物降下湯


虚証
 フラッとするめまいがある
 歩いているときなど、フラッとするめまいを起こしたり、体がだるく疲れやすく、排尿量が少なく、手足が冷え、下痢しやすい人には、
■真武湯
【成分=茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子】



狭心症・心筋コウソク
 冠状動脈の硬化がまだ軽く、閉塞の一時的なものを狭心症、また動脈硬化が進み、閉塞によって心筋の壊死が起こった場合を心筋コウソクと、西洋医学では区別し、異なった療法を行います。漢方では区別せずに、同じ薬を使用します。ただし、患者の胸や心臓の痛みの状態で、薬の使い方が異なります。しかし強い発作の場合は、ただちに入院が必要で、漢方は控えたほうがよいと思います。

実証
 のどが渇き、尿の出が悪い
 みぞおちにつかえ感があり、のどの渇き、胸痛、息切れ、尿の出が悪い人には、
■木防已湯
【成分=防已、石膏、桂枝、人参】


中間症
 胸から左腕にかけて痛みがある
 みぞおちにつかえ感があり、胸が痛む。胸骨の中央、または心臓部から左肩をとおり、左上腕先端にまで痛みが広がっている人に
■括呂薤白白酒湯
【成分=括呂実、薤白、白酒】


虚証
 みぞおちから胸に痛みがある
 顔色が悪く、貧血傾向。みぞおちから胸の中央にかけて、突き上げてくるような痛みがある人に
■当帰湯

みぞおちに圧痛がある
 のどの渇きはない。みぞおちにつかえ感がある。息切れ、胸苦しさ、胸痛があり、尿の出が悪い人には、
■茯苓杏仁甘草湯



心臓神経症
 心臓神経症とは、心臓疾患といった心臓の病変がなんら認められないのに、動悸、息切れ、胸痛、呼吸困難の症状が起こる病気です。
 この病気は、精神的なストレスがきっかけで起きたり、神経症になりやすい性格の人に起きたりします。漢方的には、比較的治しやすい病気といえます。

実証
 肩がこり、便秘がち
 不眠、よく夢を見たり、動悸、イライラなどの神経症状が強く、肩こり、便秘がち。みぞおちのつかえ感、肋骨弓下の抵抗と圧痛が強い。また、背中が熱くなったり、寒くなったりすると症状が現れる人などに
■柴胡加竜骨牡蛎湯


中間証
 へそ下から何かが突き上がる
 へその下から胸へと、急に何かが突き上げてくるような感じがあり、動悸がする人には、
■苓桂甘棗湯

 のぼせ、たちくらみがある
 のぼせ、立ちくらみ、胃に水がたまったり、頭重感がある人。また、これらの症状に加えて、尿の出が悪い人などに
■茯桂朮甘湯


虚証
 へその上下を押すと拍動がふれる
 イライラなどの神経症状があり、のぼせやすくて、へその上下一センチのところを指で押すと、大動脈の拍動がふれる人には、
■桂枝加竜骨牡蛎湯



感冒・インフルエンザ
 風邪はもっともありふれた病気でありながら、西洋医学では、いまだ風邪そのものに対する治療薬は発見されておりません。漢方では、2000年近くも前から、風邪そのものを初期段階から治していく薬が数多く考え出されてきました。漢方薬を用いる時期が早ければ早いほど、速効性があり、ひきはじめで風邪をくい止めることができます。

実証
 頭痛、発熱、悪寒のこり
 風邪の主症状である頭痛、発熱、悪寒があり、肩、首の後ろ、背中がこって、汗が出ないという人には、
■葛根湯

 関節が痛み、汗が出ない
 風邪のおもな症状に加え、関節が痛み、汗が出ないという人には
■麻黄湯

 高熱、発汗、のどの渇き、多尿がある
 高熱と発汗が続き、のどが渇き、尿の出が多い人に、
■百虎加人参湯


中間症
 セキとタン、くしゃみ、鼻水が出る
 頭痛、発熱、悪寒に加え、肩、首、背中がこり、セキと泡のような薄いタンが出たり、急にゾクゾクと寒気がして、鼻づまり、激しいくしゃみと鼻水が出るような人に、
■小青竜等

 熱が出たり、ひいたりする
 風邪をひき、三〜四日たって熱が出たりひいたりし、上半身が汗ばみ、口の中が粘つき、セキが出る人には
■柴胡桂枝湯


虚証
 のどの痛みと背中の寒気
 顔色が悪く、頭痛、発熱、悪寒に加えて、のどの痛み、セキ、背中全体に、不快な寒気が出てくる人には
■麻黄附子細辛湯
【成分=麻黄、細辛、附子】

 多汗で脈が弱まっている
 頭痛、発熱、悪寒に加えて、汗が出る傾向があり、鼻がぐずつき、脈拍が弱まっている人には
■桂枝湯



気管支炎
ひどいセキが、何日も続いているような気管支炎は、西洋医学的にも漢方的にも、なかなか治しにくい病気です。上気道の炎症に続いて、下気道、気管、気管支に炎症がおよび、セキやタンが出るわけです。漢方では、セキやタンの出かただけに重点をおくのではなく、体質改善を含めた、全身的治療をします。


j実証
 のどが苦しく、セキが出る
 汗をかきやすく、口やのどが渇き、のどがゼーゼーとして、激しいセキが出るような人には、
■麻杏甘石湯

 のどにつかえ感がある
 体がだるくて、疲れやすく、しかも口の中が苦く粘つき、のどにつかえ感があり、感情不安定のような人には、
■柴朴湯


中間証
 悪寒、発熱がある
 悪寒や発熱があって、胃のあたりを軽くたたくと、水音がする。くしゃみ、鼻水、鼻づまりをして、セキと薄いタンが出るような人には、
■小青竜湯

 上半身に汗をかきやすい
 みぞおちと肋骨弓下に弱い抵抗、圧痛があり、口の中が苦く粘ついたり、のぼせやすく、上半身に汗をかきやすいような人には、
■柴胡桂枝湯


虚証
 のどがいがらっぽい
 のどにいがらっぽい感じがあって、セキと粘り気のある濃いタンが出るような人には、
■麦門冬湯

 のどがチクチクと痛む
 悪寒、発熱があって、顔色が悪く、体がだるくて疲れやすく、頭痛や頭重が起こる。それに、のどがチクチクと痛んで薄いセキが出るような人には、
■麻黄附子細辛湯
【成分=麻黄、細辛、附子】



気管支ゼンソク
 気管支ゼンソクは、西洋医学、漢方医学のどちらでもなかなか治療がむずかしい病気です。それでも、漢方の場合は、全治に近い効果が現れている例は、約60%に達しています。
 これは、漢方薬が、気管支のケイレン、収縮を起こしやすい体質を改善するように働くからです。

実証 
 呼吸困難にセキを伴う
 呼吸困難があり、ときにはセキを伴い、また口の中やのどの渇きや発汗があるような人には、
■麻杏仁石湯

 のどのつまり、喘鳴を伴う
 口の中が粘ついて苦く、気分が沈み、のどがつまる感じがあり、ヒューヒューという喘鳴やセキを伴い、肋骨弓の下に抵抗と圧痛があるような人には、
■柴朴湯


中間証
 呼吸困難、セキ、タンが出る
 胃の中に水がたまり、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、呼吸困難が激しくて、ときにはセキを伴い、泡のような薄いタンがでるような人に、
■小青竜湯

呼吸困難で苦しみ、嘔吐がある
 発作が起こると呼吸困難が激しくて、顔を真っ赤にし、目をカッと見開いて苦しがる。最後には胃の内容物を吐いたりする症状の人には、
■越婢加半夏湯
【成分=麻黄、石膏、生姜、大棗、甘草、半夏】


虚証
 体が温まるとセキが出る
 のどがいがらっぽく、夜、ふとんの中に入って体が温まってくると、激しいセキが出たり、濃いタンが出る。しかもタンのきれが悪い傾向の人には、
■麦門冬湯


体力が落ちて寒がる
 体力が落ち込んでいて、顔色が悪く、体がだるい。頭痛、頭重、セキと薄いタンが出て、寒がる傾向が強い人には
■麻黄附子細辛湯
【成分=麻黄、細辛、附子】



漢方薬の使われ方で知る現代病気事情
どんな漢方薬が使われているか
 漢方薬は現在、薬膳とともに、ちょっとしたブームになっていて、利用する人が年毎に増えています。
 では、どのような漢方薬が使われているのでしょうか。薬の使われ方をみることによって、現代の病気事情が浮かび上がってきます。
 そこで、漢方製剤にかぎってですが、国内出荷金額順に、十傑を見てみましょう。
1位 小柴胡湯、2位 猪苓湯、3位大柴胡湯、4位当帰芍薬散、5位八味地黄丸、6位柴胡加竜骨牡蛎湯、7位 補中益気湯、8位 五苓散、9位 加味逍遥散、 10位 柴胡桂枝湯の順です。
 11位以下は、乙字湯、十味敗毒湯、六君子湯、半夏厚朴湯、桂枝加朮附湯、半夏瀉心湯、防已黄耆湯、六味丸の順になっています(いずれも『昭和62年薬事工業生産動態統計年報』第21表特掲医薬品出荷金額数量による)。
 どの薬も、漢方治療でよく使われているものばかりですが、ここで、十傑までの薬はどんな病気に用いられているのか見てみましょう。
第1位の小柴胡湯は肝臓病に使用
 1位に小柴胡湯がきているのは、とくに肝炎の特効薬のためのようです。
 西洋医学では、この肝炎に対する的確な治療法や薬がないため、かかった人の多くは漢方治療を受け、小柴胡湯を服用するようです。飲酒の機会が多いため、肝炎になる人も増加していることもあるでしょう。
 猪苓湯は尿の異常の場合に用いる薬で腎臓病、腎盂炎に使います。大柴胡湯は肥満、肝炎に用います。当帰芍薬散は、女性の月経不順、月経痛に多く用いられます。八味地黄丸は糖尿病、白内障に使われています。柴胡加竜骨牡蛎湯は高血圧症や、精力減退、補中益気湯は風邪や病後の衰弱、五苓散は腎炎、頭痛、下痢など、加味逍遥散は月経異常、更年期障害、便秘など、柴胡桂枝湯は、肝炎、腎炎、虚弱体質などに、使われています。
 このように見ていくと、肝臓病のように西洋医学では、決め手となる治療法がなく根治できない病気、成人病、そしてむかしから治りにくいとされている病気、女性特有の病気に、漢方薬がおもに使用されているのがわかります。



急性・慢性胃炎
 西洋医学では、胃炎を萎縮性胃炎、無酸性胃炎、胃酸過多性胃炎など、いろいろな分類をしていますが、漢方では、そうした病理学的分類によって胃炎を区別しないで、脈、舌、腹などをはじめとする自他覚症状によって薬を選び、治療していきます。

実証
 腹がはり、痛みがある
 おなかの上部がはり、ときには中心部の底のようから強く痛みが走り、便秘を伴っている人には、
■黄連湯

 胃のもたれ、はりがある
 食欲がなく、胸焼け、げっぷ、胃がもたれている感じがあり、ときにははってきて苦しい感じがする。しかし痛みはそれほど強くないような人には
■平胃散


中間証
 腹が鳴り、ガスが出る。
 食欲がなく、おなかがゴロゴロと鳴ったり、ガスの出が多く、ときには吐き気や嘔吐があり、下痢をしやすい人には、
■半夏瀉心湯


虚証
 胃のもたれ、胸焼けがある
 胃がもたれて痛みがあり、おなかがはって、胸焼けをするような人には、
■安中散
 
 食欲がない、食べられない
 食欲がない、あるいは食欲があっても食べられないような人には、
■六君子湯

 血色が悪く、疲れやすい
 血色が悪く、疲れやすい。腹痛や動悸があり、鼻血が出やすい人には、
■小建中湯


胃・十二指腸カイヨウ
 胃カイヨウと十二指腸カイヨウとでは、病態的に異なっている点が多くありますが、漢方では、両者を同じものとみなします。この病気の場合、疼痛を訴えることが多いので、痛みをとる薬を中心に、痛みの程度、出血の程度などをみて薬を使用します。漢方では、得意分野です。

実証
 便秘がちで、腹がはる
 便秘傾向があり、おなかの上のほうがはり、ときにはおなかの中心部が強く痛むような人には、
■桂枝加芍薬大黄湯

 みぞおちがつかえ、口が粘る
 みぞおちにつかえ感、肋骨弓下に抵抗と圧痛があり、口が粘り、肩こり、首や背中がはり、吐き気がして、便秘がちである人には
■大柴胡湯


中間証
 のぼせやすい
 多少のぼせやすく、みぞおちがつかえる感じがあり、肋骨弓下に抵抗と圧痛を伴う。そして口の中が粘つき苦く、上半身に汗をかく症状を伴うような人には、
■柴胡桂枝湯


虚証
 腹が鳴り、ガスが出る
 おなかがゴロゴロと鳴ったり、ガスが多く出て、ときには吐き気や嘔吐があり、ときには下痢のある人には、
■甘草瀉心湯

 血色が悪く、疲れやすい
 貧血傾向で、血色が悪く、体がだるく、疲れやすい。腹痛や鼻血がひんぱんにあるような人には、
■小建中湯



胃下垂症・胃アトニー
 胃アトニーという病気は、胃壁の緊張力がなくなった状態をいいます。したがって、胃アトニーにかかると胃下垂症を伴う場合が多いので、同一症状としてあつかいます。
 西洋医学では、手術的に胃をつり上げる方法を除いては有効な治療方法はありませんが、漢方では、証にあわせて薬を用いると、比較的早いうちに快方へむかいます。

実証
 胃もたれ感がある
 食欲がなく、胃がもたれ、ときにははって苦しい感じがする。しかし、痛みはさほど強くないような人には
■平胃散


中間証
 胃のあたりで水音がする
 胃のあたりを指で軽くたたくと、ポチャポチャと水音がし、寝起きが悪く、頭痛がある。立ちくらみやのぼせ、動悸がある人には
■苓桂朮甘湯


虚証
 胃がもたれ、食事後に吐く
 尿の出が悪く、みぞおちがつかえる感じがある。胃がもたれたりつかえたりして、食事の後に嘔吐する。しかし、吐くときは、とくに苦痛は伴わないような人には
■茯苓丸

 胃のつかえ、腸がうごめく
 顔色が悪く、胃につかえ感があり、体がだるく疲れやすい。腸がモクモクとうごめく感じを持つ人には
■大建中湯



過敏性腸症候群
 過敏性腸症候群は、心理的なものが、かなり影響するとみなされている病気で、代表的な心身症のひとつです。
 西洋医学では、腸管の運動を抑える副交感神経遮断剤や精神安定剤などがおもに用いられますが、一度は治まっても再発しやすい傾向です。漢方では、初期ならば半夏瀉心湯、病気がかなり進んでいれば真武湯がよく用いられ、有効であることが多いといえます。


実証
 腹がはり、腹の中心が痛む
 お腹の上部がはり気味で苦しく、ときには、腹痛やみぞおちのあたりが痛むような人には、
■桂枝加芍薬大黄湯


中間証
 腹が鳴り、下痢をしやすい
 食欲がなく、おなかが鳴り、下痢をしやすく、ガスの出が多い。ときには、吐き気や嘔吐が伴うような人には、
■半夏瀉心湯


虚証
 座っていてもめまいがある
 歩いているときに、フワッとしためまいが起きたり、座っていてもクラッとすることがある。疲れやすく、手足が冷え、下痢を伴っているような人には
■真武湯
【成分=茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子】

顔の色が悪く、薄い唾液が出る
 食欲不振、下痢傾向、顔色が悪く、胃がもたれ、よく薄い唾液が出る人には
■人参湯


慢性肝炎
 慢性肝炎は、西洋医学では今のところ治療の決め手があまりない病気です。
 漢方には、小柴胡湯という慢性肝炎の特効薬ともいえる漢方薬があります。この薬は、西洋医学の分野でも、効能が認められています。西洋医学との併用なども含め、注目されているものです。

実証
 便秘傾向で胸が苦しい
 便秘傾向があり、みぞおちのつかえ感、肋骨 弓下に抵抗と圧痛があり、口の中が粘ついて、肩こりのある人には、
■大柴胡湯

 便秘傾向はなく胸が苦しい
 便秘傾向はなく、みぞおちのつかえ感、肋骨弓下に抵抗と圧痛があり、口の中の粘り、肩こりなどが、大柴胡証よりやや軽い人には、
■小柴胡湯


中間証
 のぼせやすく汗がでる
 のぼせやすく、汗が出やすく、肋骨弓下に抵抗と圧痛があり、口の中が粘ついて不快感のある人には、
■柴胡桂枝湯


虚証
 首の上に汗をかきやすい
 みぞおちあたりから肋骨弓下に抵抗と圧痛があるがとても軽い。へその上か下に拍動をふれる。口の中が粘ついて苦く、たいへん疲れやすく、首の上に汗をかきやすい人には、
■柴胡桂枝乾姜湯

 口角に泡のようなツバがたまる
 体力の衰えがひどくて、疲れやすい。口内にツバがあふれ、唇の端に泡のような薄いツバがたまる人には、
■補中益気湯



胆ノウ炎・胆石症
 漢方では、胆ノウ炎も胆石症も、とくに区別しないで治療します。胆石は、よほど大きな石でないかぎり、漢方薬を用いることによって、石が溶けて排出することがあります。ただし、治療機関は、人によってまちまちです。また、多くの場合は内服をはじめると、痛みの発作がしだいに減っていきます。

実証
 みぞおちのつかえ、肩こりがある
 みぞおちのあたりにつかえる感じがあったり、肋骨弓下あたりに抵抗や圧痛が中程度にある。口の中が粘ついて不快感が伴い、肩こりがある人には、
■小柴胡湯


中間証
 のぼせやすく、上半身に汗をかく 
 やや軽いみぞおちあたりのつかえ感や肋骨弓下に抵抗や圧痛がある。口の中が粘ついて不快で、のぼせやすく上半身に汗をかきやすい人には、
■柴胡桂枝湯

右上腹部に発作的な痛みがある
 右上腹部に、しばしば発作的な痛みがあり、へその斜め右上に抵抗と圧痛があるような人には、
■良枳湯
 【成分=茯苓、桂枝、大棗、甘草、枳実、良姜】


虚証
 疲れやすく首から上に汗をかく 
 みぞおちあたりのつかえ感、肋骨弓下に軽い抵抗と圧痛がある。へその上と下に拍動があり、口が粘りついて苦く、疲れやすく、首から上に汗をかきやすい人には、
■柴胡桂枝乾姜湯

 激しい腹痛があり、だるい
 しばしば激しい腹痛があり、へその斜め左上に抵抗と圧痛を伴い、体がひどくだるいような人には、
■解労散
 【成分=柴胡、芍薬、別甲、茯苓、大棗、枳実、甘草、乾生姜】



下痢・消化不良
 漢方では、下痢を大きく二つのタイプに分けています。便に色や臭いがない危険な状態と、その逆の状態のもので、前者の場合は、とくに早期治療が必要になります。どちらの場合でも、適応する漢方薬がそろっていて、さらに細かく診断した後で、患者に合った薬を選びます。

実証
 激しい下痢、首の後ろがこる
 激しい下痢を起こして、首の後ろがこる。悪寒、発熱するといった症状が伴う人には、
■葛根黄連黄ごん湯

 発熱し、激しい下痢
 発熱し、それと同時に激しい下痢をするといった人には、
■黄ごん湯


中間証
 のどが渇き汗が出やすい
 吐き気または嘔吐がある。のどが渇き、汗が出やすく、尿の出が悪い人。子供が寝冷えをし、一日に何度も下痢をしたり、吐いたりした場合には、
■五苓散


虚証
 一日数回の下痢、げっぷが出る
 一日数回の下痢が起こり、おなかが鳴り、胸焼け、げっぷが出たりし、まったく食欲がわかないような人には、
■生姜瀉心湯

 毎日の下痢でめまいがある
 毎日のように下痢があるため、歩いているときにフラッとめまいが起こったり、ときには座っていてもクラッとする。手足の冷えの症状もある人には、
■真武湯
【成分=茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子】



腹痛
 腹痛は、消化器疾患によって起こるものばかりでなく、いろいろな疾患に伴って現れます。どの臓器の、どの部位の病変によるのか不明瞭な腹痛は、一般に腸管の緊張が原因の場合が多いと考えられています。また、にわかに起こる原因が定かでない急激な腹痛の場合には、漢方治療の前に検査をして、原因を確かめる必要があります。

実証
 下腹の左側が痛み、強度の便秘
 手足や腰、下腹部が冷えやすく、下腹の左側がよく痛み、強い便秘を伴う人には、
■大黄附子湯
【成分=大黄、附子、細辛】

 腹の上下がはる
 おなかの上下がはって苦しく、ときにはみぞおちが痛み、便秘がちの人には、
■桂枝加芍薬大黄湯


中間証
 のぼせやすく、胸、肋骨弓下に痛み
 多少のぼせやすく、みぞおちがつかえて、腹が痛み、やや軽く肋骨弓下に抵抗と圧痛があり、口の中が粘ついて苦く。上半身に汗をかきやすいという人には、
■柴胡桂枝湯

 みぞおちが重く、吐き気がある
 体力がいくぶん落ちていて、腹痛が強く、みぞおちが重苦しく、吐き気などがあるという人には、
■黄連湯


虚証
 上複部がはって苦しい
 おなかの上のあたりが、はって苦しく、ときどき痛みがある人には、
■桂枝加芍薬湯

 胃がもたれて痛む
 食欲がなく、胃がもたれて痛み、胸焼けがあるという人には、
■安中散

血色が悪く、疲れやすい
 ひんぱんに腹痛が起こり、血色が悪く、鼻血が出やすく、疲れやすい人には、
■小建中湯


 時代によって由来が変わる漢方薬の名前
漢方薬名には、古方と後世派のものがある
 漢方は、古代中国で発達した医学で、とくに後漢のころ、「傷寒論」という漢方治療の集大成ができ、完成をみました。この傷寒論を中心とした派を「古方」といいます。金・元の時代に、傷寒論とは別に、「後世派」と呼ばれる漢方の流派が起こりました。ただし、古方、後世派とは日本だけの呼び名です。
 わが国に、漢方が入ってきたのは、最初がこの後世派で、中国が明といわれていた宝町時代の後期のことです。
 この後世派は、江戸時代に入ってから一般に広がり、日本全土をおおいましたが、漢方の元祖はもともと傷寒論であり、後世派に対応するかたちで古方も台頭しました。
 したがって、現在のわが国の漢方薬の名前は、この古方と後世派のものが混合してあるのです。
古方は成分、後世派は病態を示す薬名
 さて、古方と後世派の漢方薬名の違いを次にあげてみましょう。
 まず、古方の漢方薬名から見てみます。
 甘麦大棗湯、桂枝加厚朴杏仁湯、麻黄附子甘草湯、白虎加人参湯など、漢方薬に含まれている主成分がそのまま薬名になっている場合がほとんどです。
 甘麦大棗湯には、甘草、大麦、大棗。桂枝加厚朴杏仁湯は、桂枝、厚朴、杏仁。麻黄附子甘草湯は、麻黄、附子、甘草。白虎加人参湯は、白虎湯の知母、粳米、石膏、甘草に加えて人参の成分が含まれているというわけです。薬に、どんな成分があるのか薬名だけで、おおよその見当がつくのです。 
 後世派の漢方薬名の特徴は、薬名からどんな症状に効くかがわかるようになっています。
 建中湯の場合は、中がおなかの中心のおへそのまわり、中が建つ(元気)の意で、消化器の病気に効果があるとわかります。
 潤腸湯は、文字どおり腸を潤す薬で、便秘に効果があるとわかります。
 頓嗽湯の場合は、嗽は口の中がさっぱり、頓は落ち着く意で、セキや喘鳴に効き目があることがわかります。
 なお、薬名に漢数字のある漢方薬もたくさんありますが、これはそれぞれの薬の歴史的な意味づけがあり、解釈はまちまちなので、必ずしも薬名どおりの意味ではないことに注意してください。


便秘
 便秘は、大きく分けて緊張性便秘と弛緩性便秘の二つがあります。緊張性はおなかが鳴ったり、はったりする症状が著しく現れる便秘で、精神的な不安や過労、冷えなどによって起こります。弛緩性は、腸管のぜん動が弱まることで起こり、腸管を刺激することによって治ります。漢方的治療ではもっとも得意とする分野で、服薬により半年から1年で消失することも可能です。

実証
手足が冷え、腹の左右片方が痛む
 手足、腰から下が冷え、おなかの左右どちらかが、しばしば痛むという人には、
■大黄附子湯
【成分=大黄、附子、細辛】

 おなかがはって苦しい
 いつもおなかの上下が、はっていて苦しい。ときには、みぞおちが痛む人などには、
■桂枝加芍薬大黄湯


中間証
便秘しやすいだけ
 日ごろから便秘しがちですが、それ以外とくに変わった症状のない人には、
■大黄甘草湯

冷えがちで尿が近い人
 体力はあまり強いほうではなく、多少冷えがちで尿が近く、皮膚が乾き、疲れやすく、しかもがんこな便秘の人には、
■麻子仁丸


虚証
 体力がなく便秘しがち
 老人などのように体力のない人。皮膚はカサカサとしてうるおいがなく、便もウサギの糞のように、コロコロとしている症状のある人などには、
■潤腸湯


糖尿病
 糖尿病は、インシュリン依存型と非依存型に分けられますが、いずれも遺伝的な体質が背景にあるやっかいな病気です。
この病気はコントロールすることはできても、一生治ることはないとされていますから、漢方療法によって根治できるかどうかは、現在の段階では結論を出すことができません。しかし、漢方の治療によって尿糖や血糖が正常値に戻ったり、根治したと思われる例はたくさんあります。

実証
 のどが渇き、汗や尿が出る
 体力が充実していて、のどが渇いて、汗や尿がたくさん出る症状の人には、
■白虎加人参湯


中間証
水を飲むと吐く
 汗をかきやすく、口の中やのどが渇く。しかし、水を飲むと吐いてしまう、尿の出が悪いというような人には、
■五苓散

口の中が粘って苦い
 のぼせやすく、口の中が粘っていて苦い感じがある。そのほか、疲れやすく、食欲不振、多汗、軽いみぞおちのつかえ感などのある人には、
■柴胡桂枝湯


虚証
下腹部に力がなく、夜間尿が多い
 のどの渇きや、夜間の排尿が多くなり、夜、排尿のたびに水を飲む。おなかの上部の力に比べ、下腹部の腹力が衰えているような人には、
■八味地黄丸

体力が低下し、強いのどの渇き
 体力がやや低下し、のどが渇き、皮膚もカサカサに乾き、セキやタンが激しく出るような人には
■竹葉石膏湯

◎病気が治ると薬がまずくなる
 漢方薬は普通、証にあっていれば、口にしっくりと合い飲みやすいものです。飲むのが苦痛という薬は、証が合っていない場合が考えられます。ところが、今まで飲みよかったのに、急に飲みにくくなったということがあります。これは病気が治り、証が変わったためです。この時期を転方といい、変わった証に合う薬に改めます。



肥満症
 肥満は、糖尿病、高血圧、心臓病などいろいろな病気にかかりやすく、最近では、肥満そのものも病気として扱われます。特殊な例を除いては、食べすぎと運動不足が原因で起こります。
 漢方でも、西洋医学と同様に、薬だけでは肥満を治すことはできません。やはり食事制限と運動と、それに適切な薬が加わることによって、成功をおさめます。


実証
 ビール樽のように腹がふくらむ
 へそを中心にして、おなかがビール樽のようにふくらみ、便秘がちという人に、
■防風通聖散

 肩こりがあり、便秘がち
 みぞおちにつかえ感があり、肋骨弓下に抵抗と圧痛がある。口の中が粘って苦い。さらに肩こりや便秘がちという人には
■大柴胡湯


中間証
 中間証のタイプの人は、中肉中背が多いので、肥満の対象外となるため、適応する症状や漢方薬はありません。


虚証
 汗が出やすく、腹から下が重い
 水太りでしまりがなく、ブヨブヨした感じ。汗が出やすく、腰から下が重い、膝から下が痛むという症状もある人には、
■防已黄耆湯


甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰による代謝亢進から発汗や心臓の動悸などをもたらす病気です。
 西洋医学では、手術療法がふつうで、またその成功率も近年ますます高まってきています。しかし、漢方治療によって根治または根治に至らないまでも、症状が好転する場合が多いので、手術前に、漢方治療をためすのもよいでしょう。


実証
 不眠、イライラが強い
 肋骨弓下に抵抗と圧痛があり、へその上か下に拍動を感じ、不眠、多夢とイライラなどの神経症状が強い。口の中が粘ついて苦く、便秘傾向が強い人には
■柴胡加竜骨牡蛎湯


中間証
 首の前、側面が腫れる
 首の前面、または側面の腫れが強い。そのほか、気分が沈んできたり、動悸などの症状が伴う人には
■十六味流気飲
【成分=当帰、川きゅう、白芍薬、人参、桔梗、肉桂、白し、黄耆、木香、烏薬、厚朴、枳実、檳椰子、防風、紫蘇葉、甘草】


虚証
 皮膚が乾燥し、疲れやすい
 皮膚が乾燥し、はなはだしく疲れる。だるさや、動悸、息切れ、脈の結代、のぼせなどの症状がある人には
■炙甘草湯


ネフローゼ症候群・急性、慢性糸球体腎炎
 ネフローゼ、慢性腎炎は、西洋医学でも難病とされています。症状は、たんぱく尿、むくみなどが現れたり、急性腎炎では発熱、頭痛を伴う場合があります。漢方でも治しにくく、西洋医学の療法と併用することにより病状が好転したり、根治に至ることも少なくありません。


実証
 腹水、むくみ、尿の出が悪い
 腹水があり、おなかがふくらんでいたり、尿の出が悪くなったり、むくみが現れたりする人には、
■分消湯

 首や肩のこりがある
 肋骨弓下に中程度の抵抗と圧痛があり、首や肩がこったり、手足がほてる。便秘傾向はない人には、
■小柴胡湯


中間証
 下痢や嘔吐を伴う
 下痢や嘔吐を伴い、のどが渇いて、汗がたくさん出る。尿の出が悪いという人には、
■五苓散

 のぼせやすく、上半身に汗をかく
 多少のぼせやすく、軽度のみぞおち、肋骨弓下に抵抗と圧痛があり、口の中が粘ついて苦く、とくに上半身に汗をかきやすい人には
■柴胡桂枝湯


虚証
 顔色がすぐれず、首上に汗をかく
 ごくわずかだが、肋骨弓下に抵抗と圧痛があり、へその上か下に拍動をふれ、顔の色がすぐれず、口の中が粘ついて苦く、首から上に汗をかきやすい人には、
■柴胡桂枝乾姜湯

 太り気味で、腰から下がだるい
 太り気味で皮膚にしまりがなく、腰から下がいつもだるくで重い。汗がたくさん出る症状を伴う人には
■防已黄耆湯



むくみ(浮腫)
 むくみは、漢方的には「水腫」といい、水毒による病気のひとつと考えます。
 治療の際には、その浮腫の状態が実か虚かをみます。弾力があって、指で押してもすぐに元にもどる浮腫は実。なかなかもどらない場合は虚となります。虚の浮腫は、治療がむずかしいことがよくあります。浮腫をもたらす病気には、腎臓疾患、心臓疾患、老人性疾患、それに、月経前に起こるものなどがあります。


実証
 むくみが強く、尿の出が悪い
 強いむくみがあり、尿の出が悪く、口やのどの渇き、動悸があり、みぞおちがコチコチに硬い人。腎疾患、心臓疾患によるむくみの場合には、
■木防已湯
【成分=防已、石膏、桂枝、人参】

 腹水があり、腹がふくらむ
 尿の出が悪く、腹水があり、おなかがふくらんでいて、腹力があるひとには、
■分消湯


中間証
 下痢や嘔吐がある
 下痢や嘔吐があり、のどがひどく渇くうえに汗がたくさん出やすい。しかし、尿の出が悪いという人には
■五苓散


虚証
 体がいつもだるくて疲れやすい
 体がいつもだるく疲れやすくて、顔色が悪い。セキが出やすく、薄いタンが出る。尿の出も悪いという人。体力のかなり落ちた腎疾患のむくみの場合には
■苓甘姜味辛夏仁湯
【成分=茯苓、甘草、五味子、乾姜、細辛、半夏、杏仁】

 太り気味で腰から下がだるい
 太り気味で皮膚にしまりがなく、発汗しやすく、腰から下がだるく重い人には
■防已黄耆湯


慢性頭痛・偏頭痛
 慢性の頭痛、偏頭痛は、その真の原因は現代医学的にもまだ明らかにされていません。西洋医学では、根治的な療法が確立されておらず、発作を一時的におさえるという治療を行っていますが、漢方で治療すると根治しない例のほうがむしろ少なく、およそ80%の人が根治しています。

虚証
 首の後ろから背中がこる
 脈に力があり、おなかの力もある程度あって、首の後ろから背中にかけてこりやすい。ただし、発汗の傾向はないという人には、
■葛根湯

 のぼせやすく、顔が赤黒い
 のぼせやすく、手足が冷える。顔が赤黒く脂ぎっていて、発作的な激しい頭痛、便秘傾向があるという人。女性の場合は、月経異常がある人などには、
■桃核承気湯


中間証
 水をよく飲むが尿の出が悪い
 口やのどがひどく渇き、水をよく飲むが、そのわりには尿の出が悪い。発作的な頭痛があり、汗をかきやすいという人には、
■五苓散

 朝、起きぬけに頭痛がする
 起きぬけにいつも頭痛があり、肩こりや目の充血があって、気分がうっとうしいという人には、
■釣藤散


虚証
 手足が冷える
 食欲がなく、顔色が悪く、胃がもたれ、手足が冷えやすく、発作的な激しい頭痛がある。発作時には吐き、ますます手足の冷えが強くなるという人には
■呉茱萸湯

 胃腸が丈夫でない
 ふだんから胃腸があまり丈夫でなく、多少のぼせる傾向があり、手足が冷えやすい。頭痛の発作が起こったときには、吐いたり、下痢したりすることもあるという人には
■桂枝人参湯



脳卒中後遺症
 脳卒中のあとは、脳の中の病巣に由来するマヒによるものだけではなく、安静のとりすぎによる各種の機能障害や、筋や骨の萎縮などを起こします。できるだけ早く、リハビリテーションを開始することが必要です。漢方には、マヒの回復を早めるものがいくつかあり、リハビリテーションと並行して、漢方を用いることをすすめます。漢方療法も、早く始めれば始めるほど効果があがります。


実証
 頭にいつも血がのぼっている
 頭にいつも血がのぼった感じが強くあり、みぞおちのつかえ感、イライラ、不眠、便秘傾向のある人には、

 肩こりがひどい
 みぞおちのつかえ感、肋骨弓下に抵抗や圧痛があり、肩こり、口の中が粘ついて苦い感じ、便秘傾向のある人には
■大柴胡湯


 中間証
 運動マヒ、運動障害がある
 みぞおちと肋骨弓の下に抵抗と圧痛があり、運動マヒまたは運動障害がある。体力的には中程度の人に
■続命湯
 【成分=杏仁、麻黄、桂枝、人参、当帰、川きゅう、乾姜、甘草、石膏】

 立ちくらみ、歩行が不安定
 立ちくらみがしやすく、足のマヒや運動障害があって、歩行がしっかりしないというような人には
■苓桂朮甘湯


虚証
 半身不随または運動マヒがある
 続命湯を用いる人より、多少体力的に落ち込んでいて、のぼせやすく、発汗傾向があり、半身不随または運動マヒがあるという人には、
■桂枝加朮附湯

運動障害があり、ふらつく
 体力が落ち込んでいて、やや運動障害があり、下痢しやすく、手足が冷え、ふらついたり、めまいがあるという人には、
■真武湯
【成分=茯苓、芍薬、生姜、白朮、附子】


腰痛
 およそ腰痛の80lまでが運動不足病といわれていますが、そのほか椎間板ヘルニアや老人性脊椎骨の変形などが原因のものがあります。運動不足によって起こる腰痛以外の腰痛は、物理的変化によって起きるものですから、漢方治療が効を奏するとは考えにくいのですが、実際には、そうした腰痛も良転していく場合がたくさんあります。慢性化したものほど、治療はむずかしくなります。


実証
 へその左下に抵抗と痛みがある
 多少のぼせる傾向があり、へその左斜め下1〜2aあたりに抵抗と、さらに押すとひびくような圧痛があるという人には
■桂枝茯苓丸

 のぼせ気味なのに手足が冷える
 のぼせ傾向で、顔色も赤黒く脂ぎっているのに、手足が冷えやすく、便秘がちだという人、女性の場合は、月経異常がある人などには、
■桃核承気湯


中間証
 左右にあるおなかの筋が硬い
 左右のおなかのまっすぐな筋が、全長にわたって硬くなっており、とくに腰の痛みが強いという人には
■芍薬甘草湯

 胸骨突起とへその間に抵抗がある
 肋骨の剣状突起とへそとの中間あたりに大小さまざまな円盤状の抵抗と圧痛が認められる人には、
■桂姜棗草黄辛附湯
【成分=桂枝、生姜、大棗、甘草、麻黄、細辛、附子】


虚証
 腰の痛みが強く、汗が出る
 腰の痛みが強く、汗が出て、足が冷えるという人には、
■桂枝加朮附湯


 腰が冷えて痛む
 薄い尿が多量に出て、腰がひどく冷えて痛んだり、あるいは重い感じがする人には、
■苓姜朮甘湯



神経痛
 神経痛は一般的に、顔や体、手足の神経に沿って発生する痛みのことをいいますが、多くの場合には、原因がよく分からないようです。その治療には、西洋医学的にも鎮痛剤のほか、いろいろとよい薬がありますが、漢方でも比較的治しやすい病気とされています。神経痛の特徴は痛みの激しいものほど早く治り、さほど強い痛みではないもののほうが、かえって治りにくいというものです。

実証
 胸に痛み、みぞおちにつかえ感
 胸に痛みがあり、みぞおちに軽いつかえる感じがある人に用います。肋間神経痛の場合にも
■小陥胸湯
【成分=黄連、半夏、括楼任】

 首や背中がはる
 首や背中がはり、頭痛がする人。なかには、四肢の痛みやこわばり、マヒが伴うこともある人には
■葛根湯


中間証
 首から肩にかけての痛み
 体力は中程度前後あり、首から肩にかけて痛みがある人には
■二朮湯

 おなかの筋が硬く痛みがある
 手足がこわばって痛んだり、マヒし、おなかの左右にある腹直筋が、全体にわたって硬くはり、強い痛みがある人には
■芍薬甘草湯


虚証
 汗をかき、足が冷える
 のぼせやすく、汗をかきやすい傾向にあり、足が冷え、手足の筋肉が痛んだり、マヒしたりする。こわばったり、尿の出が悪いというような人には、
■桂枝加朮附湯


上半身はほてり、下半身が冷える
 食欲がなく、顔色が悪い、上半身はほてって困るほどなのに、下半身はひどく冷え、あちこちが痛むという人には、
■五積散


関節リウマチ
 関節リウマチは、慢性の経過をたどったり、悪化と快方を繰り返し、関節の機能障害に至ったりするものが多いようです。西洋医学、漢方を問わず、根治が困難な病気のひとつとされていますが、どちらかといえば、漢方による治療のほうがすぐれているといえます。関節リウマチは神経痛とまったく別の病気で治療法も異なりますが、「痛み」という共通性から、治療には、共通の漢方薬が用いられます。


実証
関節痛、頭痛、腰痛がある
 関節の痛みをはじめとして、頭痛や腰の痛みが伴い、発熱、悪寒が起こったりする人には、
■麻黄加朮湯
【成分=麻黄、杏仁、桂枝、甘草、白朮】

首の後ろから背への痛み
 首の後ろから背中にかけて痛みがあり、汗をかきやすい人には
■葛根湯


中間証
体全体は熱いのに肩が寒い
 多少ののどの渇き、発汗傾向を伴い、関節が腫れて痛む。頭痛、発熱、悪寒があって、体全体は熱いのに、肩の一部が寒いといった症状が現れる人には
■桂枝二越婢一湯
【成分=桂枝、芍薬、甘草、麻黄、生姜、大棗、石膏】

フケが出て、関節が赤くはれる
 多少のぼせる傾向があって、、頭にフケが出やすい。諸関節が赤くはれて痛む人には
■麻杏よく甘湯


手足の関節がはれて痛む
 手足の関節、筋肉がはれて痛む。手足が冷え、汗が出やすく、尿の出方が少ないという人には
■桂枝加朮附湯


体が冷えて痛む
 顔の血色が悪く、疲れやすい。手足がひどく冷え、諸関節が痛む。寒がる傾向が強い人には
■四逆湯
【成分=甘草、乾姜、附子】



肩関節周囲炎(五十肩)
 肩関節周囲炎は、ふつう、「五十肩」とよばれている。40代後半から50代にかけての初老期に突然起こる原因不明の肩関節痛です。重症の場合は、腕の上げ下ろしもできず、首も回らなくなることがありますが、多くは半年くらいで痛みが消えます。しかし、このときに漢方薬を用いれば、早く症状が軽くなります。


実証
 首や背中がはって、関節が痛む
 首や背中がはり、関節の痛みが強い。頭痛や肩の痛みがあり、汗をかかない人には
■葛根湯


中間証
 体全体は熱いのに肩に寒気
 体全体は熱いのに、関節や肩の一部に寒気を感じる。多少のどの渇きがあり、発汗傾向があるという人には
■桂枝ニ越婢一湯
【成分=桂枝、芍薬、甘草、麻黄、生姜、大棗、石膏】

肩の痛みに適す
体力のある人、ない人にかかわらず、肩の痛む人には
■二朮湯


虚証
肩の痛みが強く、汗が出る

 腰の痛みが強く、汗が出て、足が冷えるという人には
■桂枝加朮附湯

 腰が冷えて痛む 
 薄い尿が多量に出て、腰がひどく冷えて痛んだり、あるいは重い感じがする人には、
■苓姜朮甘湯















































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