関節炎(arthritis)
1.変形性関節症 osteoarthritis(OA)
 変形性関節症は関節に慢性退行性変化と増殖性変化が同時に起こり、関節が変形する疾患で、関節症(炎)または骨関節症(osteoarthrosis)ともいう。変行性関節症一次性関節症と二次性関節症がある。
 一次性関節症は中年以後にみられ、老化現象に加えて関節に力学的ストレスを加えることで発症する。軽度の変行性関節症は75歳以上で80%を超えるほど多くのヒトに見られる。
 二次性変行関節症は若い青年にもみられ、関節の外傷や形態異常、運動器系疾患、代謝異常等、明らかな原因を有するものに続発して生じる。

2.病態
 高齢によって関節液中の酸性ムコ多糖類(mucopolysaccharide)であるヒアルロン酸の濃度が低下すると、関節軟骨がこすれ合う度に磨耗し、その破片(関節鼠と呼ぶ)が滑膜に炎症を引き起こす。変形性関節症(炎)は進行すると骨が露出するようになり、直接摩擦することによって関節の変形と疼痛が起こる。

1)変形性膝関節症
 膝関節が障害された変形性膝関節症では軟骨が磨耗されるため、大腿骨と脛骨が摩擦する際、疼痛が起こる。一次性変形性関節症が多く、高齢者、特に肥満女性に多い。

2)変形性股関節症
 変形性股関節症では関節軟骨の変性磨耗が起こる。二次性変形性関節症が90%以上を占め、トーマステストが陽性になる。
 トーマステストは仰臥位で片足ずつ膝を曲げながら、大腿部前面を胸に近付ける。膝を抱えた時に、もう一方の伸ばしている膝がひとりでに曲がる、すなわち膝が持ち上がれば、股関節屈曲拘縮が示唆される(トーマステスト陽性)。

3)変形性指関節症
 変形性指関節症では遠位指節間関節(Distal Interphalangeal Joint(DIP関節))にヘパーデン結節(Heberdens’node)ができる。屈曲変形、腫脹、疼痛を随伴することがあるが、症状は比較的軽い。ヘパーデン結節は閉経期以後の女性に多い。初期には疼痛があり、発赤を示すことがある。結節は、始めは軟らかいが、慢性になるうちに骨や軟骨が肥厚し、硬い結節になる。硬い結節になると、疼痛は消失する。また、遠位指節間関節は屈曲し、斜指になることが多い。

4)変形性肘関節症
 肘関節は股(大腿骨)関節、膝関節、足関節等の体重がかかる関節(荷重関節ともいう)に比べると、関節軟骨への負担は少ない。しかし、手関節や肩関節に連動して動くため関節軟骨が磨耗して変形性関節症を起こしやすい。したがって振動工具使用者や野球選手等、同じように肘関節を酷使する人達によくみられる。

3.治療
1)変形性膝関節症は炎症が起こり、それにより腫脹、関節液減少といった悪循環が起こるので、優先して炎症を止める必要がある。治療には理学療法としての局所温熱療法、筋肉強化や関節拘縮予防を目的とした運動療法、装具療法、薬物療法等がある。
 薬物療法としては関節液中へのヒアルロン酸の注入と服用、非ステロイド性消炎鎮痛剤投与、ステロイド(Steroid)の関節腔内への注射等がある。機能障害を示す場合は手術療法を行う。
 手術として関節固定術、関節形成術、半月板除去術、骨切除術、人工関節置換術等がある。最近では内視鏡で関節内部をみながら手術する関節鏡視下手術も行われている。

2)変形性膝関節症の局所温熱療法
 関節軟骨の磨耗は急性炎症→腫脹→関節液減少→慢性痛というように進行する。
 急性炎症は冷やすのが有効である。膝に布をあて、その上に氷袋をあて冷やす。炎症は温めると逆効果になる。
 慢性痛症は、炎症は治癒されたが痛みが継続する状態のことで、蒸した布をあてる、または入浴であたたくするのが効果的である。
 薬物療法と漢方療法は関節リウマチの療法を参考にされたい。


4.関節リウマチ rheumatoid arthritis (RA)
 関節リウマチは自己免疫の機序によって起こる慢性関節炎である。
 男女比は1:4で女性に多い。30〜50代の中年層から多く発生し、高齢化するにつれて、動けないほど悪くなる。韓国の全人口の約0.5%、日本の全人口の約0.7%程度と推定されるが、その他にも挙動がよくない老人病がある関係で、確実な統計がないため、患者数はもっと多いと推測される。関節炎は滑膜に対する自己免疫がすべての関節に起こり、多発性、対称性の傾向を現す無菌性炎症である。この無菌性炎症は免疫担当細胞が炎症性サイトカイン(cytokin)(腫瘍壊死因子:tumor necrosis
factor)であるインターロイキンー1(IL−1)を産生し、T細胞が自己組織を障害するために起こる。
 ・免疫担当細胞には好中球、単球(マクロファージ)、好酸球、好塩基球(組織肥満細胞)、ナチュラルキラー(NK)細胞、肥満細胞、樹状細胞がある。
関節炎発症初期には滑膜の炎症だけであるが、進行すれば軟骨、骨の破壊が起こり、関節は変形脱臼し、また骨性剛直によって可動性を失う。特に手指や足趾は変形しやすい。
 関節炎以外には血管炎、心外膜炎、皮下結節、肺線維症等を随伴することもある。血管炎を随伴する型には結節性動脈炎に類似する予後不良の場合があり、悪性関節リウマチ(malignant rheumatoid arthritis)と呼ばれている。

5.症状
 朝起きると、関節を動かすのが苦しく、固い感じがする。このような症状を朝のこわばり(morning stiffness)ともいう。朝のこわばりは診断や治療効果の進展を観察するのに重要な症状である。

6.関節リウマチの診断
 現代医学では各種検査(CRP,血沈、血清γ-グロブリン量)とX線によるRF軟部組織の破壊度の確認、日常生活機能障害度、そしてリウマチ米国学会の診断基準が広く利用されている。1987年改正の基準は、朝のこわばり、多発性対象性関節炎、皮下結節、他の関節X線
 所見等の7項目中、4個項目以上あれば関節リウマチと診断される。

    1987年度改正関節リウマチの診断基準(米国リウマチ学会)
基準項目                  定義
1)朝のこわばり         1時間以上こわばりが持続する
2)3関節以上の関節炎     3個以上の関節に炎症による腫脹
3)手の関節炎          手首、手指のつけ根の関節や第2関節に炎症による腫脹
4)対称性関節炎         対称性に関節炎が発生
5)リウマトイド結節        肘や膝に皮下結節
6)血液リウマトイド因子     正常者では5%以下の陽性率を示す方法で異常値
7)X線上の変化         X線画像で手指関節がRAに典型的な形に変化

 7項目中、4項目以上が陽性であれば関節リウマチと診断され、第1〜第4項目は少なくとも6週以上持続される。関節滑膜への免疫異常により、炎症性サイトカインが異常に放出され、また骨の破壊が起こる。

7.関節リウマチの治療
 関節リウマチの治療では、薬物による内科的治療と、滑膜切除術、関節形成術、関節置換術等の整形外科的手術、温熱療法等の理学療法、運動療法、装具、補助具等によるリハビリテーション治療を、病状、病期によってうまく組み合わせて行う。
 内科的治療ではメトトレキサート、ベニシラミン、金チオリンゴ酸ナトリウム(商品名:シオゾール)等の抗リウマチ薬、ステロイド薬、免疫抑制薬、非ステロイド系抗炎症薬等を使用する。
 
 
          抗リウマチ直接作用薬                   間接作用薬 
 金チオリンゴ酸ナトリウム(商名:シオゾール)    ステロイド薬(プレドニゾロン)
 ペニシラミン(商名:メタルカプターゼ)         免疫抑制薬
 メトトレキサート(商名:リウマトレックス)        タクロリムス(商名:プロトピック)
 シクロスポリン                       アザチオプリン(商名:アザニン、イムラン)
                                 シクロホスファミド(商名:エンドキサン)
 サイトカイン阻害薬                     非ステロイド性炎症薬
 インフリキシマブ(商名:レミケード)           ジクロフェナクナトリウム(商名:ボルタレン)
 エタネルセプト(商名:エンブレル)           インドメタシン(商名:インフリー)
                                 ロキソプロフェンナトリウム(ロキソニン)

8.漢方医学的治療
 漢方製剤は西洋薬剤のステロイド製剤及び合成薬品の副作用を軽減するため、また、補助剤等の併用療法として多く利用される。
 関節リウマチは、経時的に変化する炎症性疾患であるため、漢方の経過弁証により初期の発熱炎症期(陽病期)と慢性期(陰病期)に区分して薬剤を選択するようになる。
 経過弁証:関節の疼痛、運動障害の程度、そして全身症候の病性弁証(寒症と熱症)に対し、初期の『熱症』に対しては、石膏麻黄剤の越婢加朮湯(桂枝二越脾一湯)、慢性期の『寒症』に対しては、附子当帰剤の大防風湯(疎経活血湯、五積散)や牛車腎気丸を段階的に使用するのが原則である。
 体力弁証:体力の余力程度(体力の『虚実』)を考慮して方剤が選択される。
 関節リウマチの管理には麻黄、よく苡仁、当帰、防已、附子等が配合された処方である麻杏よく甘湯、よく苡仁湯、大防風湯、その他に柴胡剤(小柴胡湯、柴胡桂枝湯、柴苓湯)、活血剤の駆お血剤(桂枝茯苓丸、疎経活血湯)、人参湯(補中益帰湯、六君子湯、十全大補湯)や紅参末等も利用されている。

9.併用療法
 最近、合成医薬剤の使用量を減量して副作用軽減するために、合成医薬品と漢方薬製剤を併用して使用する例が増えている。特に日本の場合には医療一元化で西洋医薬と漢方製剤を自由に使用することができるので、その例が多い。韓国においても慶熙大学校属医療院をはじめ大学病院で洋方、漢方合同診療が増えており、良い例をみることができる。

 例1関節炎に多用されているステロイドホルモンを長期間にかけて過量投与すると副作用が起こることはよく知られている。このような副作用を減らすために、ステロイドの化学構造式と、成分の平面化学構造式が類似している甘草を、ステロイドと併用投与すると、ステロイドの量を減量しても効果は増加し、副作用が減少する臨床報告がある。
 ※慶熙医療院 趙教授、斗教授の臨床報告
 例2関節リウマチに漢方製剤療法を、ステロイド剤または非ステロイド剤と一緒に、抗炎症剤(清熱剤)として利用された時から、漢方製剤が併用されてきた。
 よく苡仁湯、、麻杏よく甘湯、防已黄耆湯、桂枝茯苓丸、補中益気湯、柴苓湯、六君子湯、十全大補湯等と西洋薬剤(合成医薬剤)の併用投与に関する報告がある。

参考文献
1.新薬と臨床、30(2).pp.309-316(1981)
2.Current Therapy.3(7),pp.88-94(1985)
3.漢方診療,7(3).pp.88-94(1985)
4.日本東洋医学雑誌,40(2),pp.73-77(1989)
5.現代東洋医学,7(臨増),pp.70-74(1986)
6.漢方診療,7(3).pp.24-29(1988)
7.臨床成人病,18(4),pp.569-572(1988)
8.新薬と臨床,31(9),pp.1555-1557(1982)
9.『現代医療においての漢方製剤』(東洋学術出版社,1986)pp.225-236
10.山田:病態ハンドブック医学芸術者pp.394-405(2005)
11.七川歡次:慢性rheumatoid.代謝,27(6),pp.537-548(1990)
12.谿忠人:現代医療と漢方薬、医薬ジャーナル社.pp.246-260(1991)



骨粗鬆症(osteoporosis,骨多孔症)
 骨粗鬆症は加齢と共に増加し、骨量減少により骨が脆くなって、骨折しやすくなる病態である。骨粗鬆症は女性に圧倒的に多く発生する。特に閉経後に起こる骨量減少により、骨折の危険性が男性より早期に多くなる。したがって骨粗鬆症(骨多孔症)は、認知症と共に女性の老後の『QOL』(quality of life:生活の質)に大きな影響を与える疾患で、老年医学の最大課題とも言える。
 骨は骨の実質と骨髄腔で構成されている。骨の実質は骨の基本となる類骨(骨基質)とリン酸カルシウム等の塩類(骨塩)からなる。これらの全体の絶対量を骨量という。
 ・リン(P)は骨を構築するための素材として不可欠な成分である。
 骨量が減少しいるが、骨の質的変化を伴わない状態を骨粗鬆症(osteoporesis)という。即ち、骨粗鬆症では類骨の量と塩類の量が同じ比率で減少している。また、塩類の量の減少により、骨の強度が減少して骨折しやすい疾患である。
 ・絶対量:類骨の量と塩類の量を合わせて、絶対量という。

1.病態
 骨は絶えず骨吸収(溶解)と骨形成を繰り返している。これを代謝回転(remodeling)という。骨吸収とは、骨に沈着しているカルシウム(Ca)が血液の中に溶け出すことで、骨形成とは骨にカルシウム(Ca)が沈着することを言う。正常な代謝回転は骨吸収と骨形成が平衡を維持していること(coupling)を言う。
 しかし、骨の吸収率と形成率に差異ができると、骨形成率も減少し、骨粗鬆症(骨多孔症)が起こる。原因は加齢による閉経、内分泌性、薬剤性などであるが、遺伝的要因も考えられる。また運動不足、栄養不足、生活習慣等の外的因子の影響も大きい。
 骨粗鬆症はインターロイキン-6(IL-6)、インターロイキン-1(IL-1)、腫瘍壊因子(TNF)等のサイトカイン(cytokine)が関与している。このIL-6、IL-1,TNFは骨吸収(resorption)を行うサイトカインである。これらのサイトカインの産生はエストロゲン(Estrogen)によって抑制される。骨粗鬆症ではエストロゲン(Estrogen Hormone)の分泌率が低下しているため、サイトカイン産生に対する抑制が喪失するため、IL-6,IL-1,TNFの産生が亢進することになる。

2.骨吸収(沈着カルシウム溶解)による骨粗鬆症
1)骨吸収亢進による骨粗鬆症
 閉経後骨粗鬆症(postmenopausal osteoporosis)は、骨代謝(骨吸収)が亢進するために起こるもので、高回転型の骨粗鬆症と呼ばれる。高骨代謝回転型骨粗鬆症、1型骨粗鬆症ともいう。エストロゲンは骨成長因子の感受性を高める役割を持つ。このため、エストロゲンの分泌量が減少すると、骨成長因子の作用が弱くなって骨形成が低下すると同時に、副甲状腺ホルモンに対する反応の亢進が起こる。即ち、エストロゲンの分泌低下により副甲状腺ホルモンを抑制する作用が弱まると、副甲状腺ホルモンの作用が強くなるため、骨吸収(溶解)が亢進する。
 骨形成の低下と骨吸収(uncoupling)の亢進により、骨量が減少して骨粗鬆症が起こる。

2)骨形成低下による骨粗鬆症
 骨粗鬆症で最も頻度の高いものは老人性骨粗鬆症(senil osteoporosis)である。
 加齢に伴い、腎臓での副甲状腺ホルモン(PTH)の反応性が低下すると、骨成長因子の作用が低下する。これが原因となり、骨吸収と骨形成の不平衡を引き起こす。老人性骨粗鬆症(特に高齢女性)は、骨粗鬆症の中で最も高い頻度で起こる。
 骨量は小児期、思春期に増加し、20〜30歳頃に頂点に達する。その後、段々減少し、50〜60歳頃には女性は男性に比べ、閉経後のエストロゲンホルモンの分泌量減少により、骨量が減少する速度が早くなるので、閉経期以後の女性は老人性骨粗鬆症(骨多孔症)が多くなる。

  閉経後の骨粗鬆症
    エストロゲン不足
     ↓      ↓
骨形成因子作用  骨のPTH反応性
  の低下       亢進
   ↓           ↓
骨成長の低下   骨溶解の亢進
      Uncoupling
          ↓
      骨量の低下


  閉経後の骨粗鬆症
       高齢化
    ↓        ↓
骨のPTH反応低下 骨成長因子作用低下
     ↓             ↓
活性VD3生産減少 骨芽細胞の作用低下
     ↓             ↓
腸管Ca呼吸減少   
     ↓
血清Ca値減少
     ↓
PTH分泌量増加
     ↓
骨溶解の増加 骨形成の低下
          ↓
      骨量の減少


3.骨粗鬆症の検査
 骨密度検査は若年者(20〜44歳)の平均骨密度(YAM:young adult mean)を基準にして、その70%未満を骨粗鬆症、70〜80%未満を骨量減少症、80%以上は正常とする。

4.診断法
 骨粗鬆症の診断は、各国ごとの骨粗鬆症の診断基準による。その基準は骨量減少の評価と他の骨疾患との鑑別が基本になっている。
 世界保健機関(WHO)では、脆弱性骨折の既往歴と低骨量を基本とした診断基準を提唱している。

1)X線検査:脊椎老化の骨粗鬆症の鑑別疾患には、変形性脊椎症と脊椎周囲人体硬化症がある。これはX線検査によって鑑別できる。椎骨の側面像で骨萎縮の程度を判定する。

2)骨量測定検査:骨粗鬆症では骨塩量の減少を起こすため、様々な方法により、骨量を定期的に測定している。現在では多くの骨塩定量法が開発されている。

(1)二重エネルギーX線骨密度測定法
 DXA(dual energy X-ray absorptiometry)
 SXA(single energy X ray densitometry)法が使用されている。
(2)単純X線測定法
 MD(micro densitometry)法、CXD(computed X-rayabsorptiometry)法、DIP(digital image processing method)法が開発され、広く利用されている。
(3)最近CTスキャンを利用したQCT(Quantitative computed tomography)法や、超音波によるQUS(Quantitative ultrasound)法も行われている。測定法には各々特性があり、DIP法とCXD法は骨量を定量し、SXA法は骨密度を測定する。

3)血液尿検査
 骨の代謝を把握するための骨代謝マーカー(bone metabolic marker)の測定が可能になった。骨代謝マーカーの測定は簡便で再現性がよく、定量的であるので、今後の臨床で期待されている。

(1)骨吸収(骨からのカルシウムの流出)マーカー
 骨吸収マーカーは、骨の代謝回転状態を高感度で特異的に判定できるので、診断や治療の有力な指標となる。
 尿中カルシウム量の測定は、骨代謝(骨吸収と骨形成)を確認する方法で、その他の尿中無機物(鉄(Fe)、IP(無機リン)、ナトリウム(Na)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、尿素窒素(BUN)量測定は、骨粗鬆症の総合的診断の資料となる。またカルシウムの排泄と加齢、骨粗鬆症との関係性が研究報告によって明らかになった。
 尿中デオキシピリジン:(DPD:Deoxy Phly Dinorine)
 DPDは、骨の中の1型コラーゲン(collagen)分子同士を架橋し、コラーゲンを安定化する物質である。コラーゲンはコラーゲン分子が骨基室内に入って生成される。骨吸収(骨からのカルシウムの流出)時に、コラーゲン分解によって骨外に排出され、体内では代謝されることなく尿中に排泄されるため、尿検査では骨代謝回転、即ち骨吸収の指標になる。
 DPD値-5.9nmol/mmolCr以上の高値の場合は骨吸収が亢進すると見て、すぐにDPD吸収薬を投与し、DPD値5.9nmol/mmolCr未満の場合は骨塩量を考慮して治療薬を選択する。

 (2)骨形成マーカー(marker)
 骨形成マーカーであるBAP(bone alkary phosphatase)は骨芽細胞より分泌される酵素で、骨芽細胞発達とは異なる過程において産出され、活性が高い骨芽細胞の直接的あるいは間接的生成物である。
 BAPは骨芽細胞機能及び骨形成の他の局面を表すため、空腹時に採血して血清中BAP(bone alkary phosphatase)を測定する。

     骨代謝マーカーの基準値
DPD  2.8〜7.6     nmol/mmolCr       (31〜44歳女性)
NTx  9.3〜54.3     nmolBCE/mmolCr   (30〜44歳女性)
BAP  7.9〜29.0    U/L              (30〜44歳女性)

 5.症状と治療
 臨床的に最も問題となるのは老人性骨粗鬆症である。骨粗鬆症は年をとるほど発症率が増大するが、女性においては閉経後に急増する。骨粗鬆症の予防と治療の最終目標は骨折を避けることで骨量減少の予防が重要である。
 予防としては危険因子を除去し、充分なカルシウム(Ca)やビタミンDの摂取と適度な運動を維持して実施することである。また転ばないように日常生活指導が必要である。
 症状は主に腰痛が多く、X線においては錐体の横方向骨梁が減少し、圧迫骨折や魚椎変形が認められる場合が多い。また大腿骨頸部内側骨折は骨粗鬆症の原因になる場合が多い。
 治療中、更年期症状がある場合にはエストロゲンの補充療法が効果的である。骨吸収抑制薬(ビスホスホテート製剤)は、最も確実な治療効果を示す。またビタミンK製剤、カルシウム(Ca)製剤、活性型ビタミンD3製剤、カルシトニン製剤等が使用されている。ここでカルシウム(Ca)の補充が治療と予防に重要であるが、カルシウム(Ca)は活性型ビタミンD3と一緒に服用しないとほとんど腸管吸収されない。また、特に小麦粉にフィチン(phytin)という成分が多く含まれており、フィチン(phytin)は、カルシウム(Ca)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、尿素窒素(BUN)等の生理活性を持っている無機物と結合して不溶性になり、腸管からの吸収を妨害するので、カルシウム(Ca)製剤を服用する時は小麦粉が原料の食物を避けるのが良い。

 6.漢方治療法
 漢方製剤は西洋医学の製剤に比べて基礎研究はできていないが
・閉経後の骨粗鬆症(骨多孔症)に対して桂枝茯苓丸、温経湯、当帰芍薬散
・卵巣摘出骨減少症に対する桂枝茯苓丸と活性型ビタミンD3の併用に関して、骨皮質幅指数、骨髄質幅等の客観的データを用いた報告がある。
 また老人の腰痛、下肢痛、下肢しびれの症状は、八味地黄丸や牛車腎気丸の投薬目標になる症候で、これらの処方も骨粗鬆症に応用されている。その他に症候や体力によって瓊玉膏、雙和湯、真武湯、防已黄耆湯、桂枝加朮附湯が有効だと臨床医たちが報告している。

 7.生活指導と理論的背景
 老人性骨粗鬆症の予防と治療にはカルシウム(Ca)補給のための食事療法も重要である。カルシウム(Ca)を多く摂取することは骨量を維持するためである。摂取するカルシウム(Ca)の量は、カルシウム(Ca)の腸管からの吸収量と損失量が同量、またはそれ以上になるようにし、損失量を量るために尿中カルシウム(Ca)量(消費量)を検査する。また、骨は物理的ストレスを加えると骨吸収(骨からのカルシウム(Ca)流出)が抑制されるので、運動をして筋肉を鍛え、骨に付加を与えないことや、日光によるビタミンD3の合成を促進してカルシウム(Ca)の腸管からの吸収を助けるために、日光浴をすること等の、生活指導が必要である。最も若い頃から骨量を高めておくことが、骨粗鬆症(骨多孔症)を予防するのに役立つことになる。

 1)運動療法
 骨は運動による力学的刺激を受け、成長と形成を活性化させている。したがって、運動不足は骨量減少を促進させる。運動することで慢性病に対する治療効果、体力向上、筋肉増強、さらに心理的、精神的効果を含め、QOL(quality of life:生活の質)の向上が期待される。しかし、個人による身体能力の差があるため、均一でなく、個々に応じたプログラムが必要であり、高齢者ほどきめ細かく対応する必要がある。骨密度は、日常的な生活習慣に運動を取り入れることにより改善するようになる。

 (1)運動能力の維持向上
 骨粗鬆症では腰背部痛や易転倒、筋力の低下、運動の能力低下が問題になる。骨粗鬆症においては骨量の減少により、骨折が発生しやすくなる。骨折は椎体、大腿骨頸部、手関節、上腕骨頸部に起こりやすく、特に大腿骨頸部骨折は90%が転倒に起因する。
 運動としては有酸素運動と筋力トレーニングを合わせた運動が勧められる。心肺持久力維持、向上させる運酸素運動としてウォーキング、自転車、水泳等が挙げられる。また高齢者では筋力が低下していることが多く、腹筋、背筋、下肢筋等目的に応じた筋力トレーニングが勧められる。歩行等移動に必要な筋力や運動機能に余力がないと、転倒しやすく骨折も起こりやすい。さらに、高齢者では疲労をきたさないように配慮する必要がある。休息日設定や、体調不良の場合は運動を休むことも重要である。運動することにより、身体を動かすことの快適さ、楽しさを確認するとともに日常生活動作(ADL)の向上も期待される。

(2)転倒防止の生活指導
 骨粗鬆症の場合、転倒により、骨折しやすくなる。特に骨折は寝たきりの原因となるため、転倒しないような工夫が必要である。転倒の要因は外出時だけでなく自宅においても危険要素がおおいため、できるだけ、バリアフリーなど安全な住まいつくりの工夫、生活環境の配慮が必要である。また転倒を防ぐための身体作りが大事である。まず、生活体力(健脚度)を知ることが必要であり、転倒を防ぐには『歩く』、『またぐ』、『昇って降りる』という3つの移動能力が大切である。その中でも歩くことは基本的動作であり、ウォーキングで転倒しない健康的な体を作る必要がある。運動前にはストレッチをする必要がある。ストレッチによって筋肉や脚等を充分に引き延ばし、柔軟性を高めることにより、運動の危険性を回避することが可能となる。高齢者の転倒には周囲の環境だけでなく、心身機能の低下等多くの要因が関与するため、予防にはこれらの危険因子の除去が必要である。

2)食事療法
(1)カルシウム摂取
 カルシウムの99%は骨に蓄えられ、血液中には1%存在する。カルシウムは神経情報伝達、血液凝固等生命維持に関わるため、不足しないよう、骨に大量に蓄えられ、カルシウム摂取が不足すると、骨からカルシウムを溶出して血液中の濃度を一定に保つように調整している。しかし、カルシウム摂取不足による慢性的なカルシウム不足は、骨からのカルシウムの溶出を促して骨量を減少させるため、日常の食事でカルシウムを充分に摂取することを要する。
 日本国民栄養調査によると、総エネルギー、タンパク質、脂肪等主な栄養素の摂取が所要量を上回っている中で、カルシウムだけが不足している。平成12年度の国民栄養調査によると、カルシウム所要量が600mgであることに対し、摂取量は547mgと充たしていない。特に骨形成に重要な15〜49歳の充足率が70〜80%と低く、早期の改善を要する課題となっている。日本のカルシウムの所要量は、成長期の中高生が700mg〜900mg、成人が600mgである。アメリカの摂取量は中高生が1200mg、成人が800mgで、乳製品からのカルシウム摂取が多いのがアメリカの特徴である。
 カルシウム(Ca)は800mg以上/日を摂取しなければならない。成人1日のカルシウム(Ca)の所要量は600mg以上で、老人の場合には800〜1000mg程度を目標にしている。

(2)カルシウム(Ca)の摂取方法
 カルシウム(Ca)食品は、牛乳(カルシウム(Ca):206mg/200ml)、チーズ(カルシウム(Ca):126mg/スライス1枚20mg)、ヨーグルト(カルシウム(Ca):110mg/100g)、イワシのような小魚、大豆、野菜、海老、海草等を挙げることができる。

(3)ビタミンD3の摂取方法
 ビタミンD3ha腸管でのカルシウム(Ca)の吸収を増加させる作用がある。ビタミンDは一般的に、うなぎ、サケ、サバ、イワシ、サンマ、シイタケ等に豊富に含まれている。ビタミンDの前駆体は紫外線を浴びることにより、活性化ビタミンD(ビタミンD3)となって、カルシウム(Ca)の吸収を促進する。したがって、カルシウム(Ca)の吸収にはビタミンDと日光浴が必要である。1日1回は外出し、日光を浴び、ビタミンDを含む食事を摂取する必要がある。言い換えると、いくらカルシウム(Ca)を多く含んだ食べ物を食べたとしても、腸管でカルシウム(Ca)がどれぐらい吸収されるかが問題である。カルシウム(Ca)は単独では腸管吸収されないので、ビタミンD3と一緒に摂る必要がある。ビタミンD3は体内でも合成されるが、青魚等に多く含まれている。カルシウム(Ca)療法の際には、ビタミンDを含む食べ物を多く摂取し、日光浴も行うのが良い方法である。反面、前述した通り、カルシウム(Ca)と結合して腸管吸収を妨害するフィチンが多く含まれる玄米や小麦粉等の食べ物を控える必要がある。

(4)ビタミンK
 ビタミンKはカルシウム(Ca)を骨に吸着させ、石灰化を促進させると共に、骨吸収を抑制する作用がある。ビタミンKは納豆、緑黄色野菜に含まれている。

(5)タンパク質とリン
 充分なカルシウム(Ca)摂取とタンパク質摂取は、骨粗鬆症の予防に重要である。一方、過剰なタンパク質の摂取は、腎臓でのタンパク質代謝産物の排泄と共に、カルシウム(Ca)の尿中への排泄にも繋がるため、骨粗鬆症の危険因子とされる。
 リンはカルシウム(Ca)とともに骨を作る重要な成分であるが、日常の食事で十分に摂取している。しかし、リンが過剰になると、副甲状腺ホルモンが多く分泌され、逆に骨吸収が促進されることが懸念される。加工インスタント食品には防腐、着色、品質保持の目的でリンが多く利用されている。


8.おわりの言葉
 骨粗鬆症の生活指導を行う上では、カルシウム(Ca)の摂取量、他の栄養素とのバランス、運動量および労働量、過去のスポーツ経験等を把握し、個々に適切なプログラムを作って、生活指導を実施するのが重要である。

参考文献
1.山田:Hand Book 医学芸術社、PP.417-420(2005)
2.中島:骨粗鬆症の治療と予防、金原出版(平年12)
3.谿忠人:現代医療と漢方薬 医薬ジャーナル社、PP.238-240(1991)
4.矢内、太田、小山等:閉経後婦人科疾患と漢方、漢方医学、13(6).PP1-12(1989)
5.太田、根本:卵巣全抽出骨塩減少に対する活性型VitaminD3と桂枝茯苓丸の同治併用投与の効果、漢方医学、13(6).PP13-19(1989)
6.日野、田村等:生活習慣病と検査 宇宙堂八木書店、PP.171-179(2003)
7.Journal of Ethnopharmacology 138:PP.723-730(2011)
8.korean J.oriental physiology&pathology 18(2):PP.567‐570(2004)



痛風(gout)
 痛風には高尿酸血症を基盤にして発症する一次性(原発性)痛風と二次性(続発性)痛風があり、一次性痛風が大部分である。一次性痛風の詳細な発症機序は不明であるが、家族の中に痛風患者がいる家系での発病率が高いことから、遺伝素因が関与していると推定されている。しかし家庭料理とも無関係ではない。通風は成人男性に最も多く現れる。
 通風は人間の疾病の中で、最も古くから知られた疾患のひとつである。
 ヒポクラテス(BCS)による記録にも見られ、1679年にLeeuwenhoek(顕微鏡の発明者)が痛風結節中の針状結晶は尿酸であると発表したことから、痛風と尿酸との関係が知られるようになった。昔、ヨーロッパのアレキサンダー大王を始め、多くの有名人達が発病したことから、帝王病あるいは贅沢病であるとも言われた。
 第二次世界大戦前までは、通風は東洋人にはない疾病だと言われてきたが、生活方法の変化及び生活向上により、日本を始め、韓国、中国、台湾にも、痛風患者及び予備患者が、数百万に達するとみられている。
 本疾患は数多い疾患中でもよく解明され、定期的な検査によって予防やコントロールが可能であり、尿酸値の測定が重要である。

1.尿酸代謝
代謝概要:尿酸は核酸プリン(purine)体代謝の最終産物で、非タンパク性窒素のひとつである。
尿酸は
1)体組織の崩壊(細胞核の分解とエネルギー代謝産物9
2)体内で合成
3)摂取食物中に含有しているプリン体等から生成され、尿、便、汗により体外に排泄される。
体内動態:体内の正常尿酸値は、男性約1200r、女性約600mgで、その60%が筋、肝臓等で合成される。また腎臓より尿中に1日400〜600r、便中に約200rが排泄される。腎臓は最も重要な臓器で、尿酸は腎の糸球体で濾過される。
 以上のように血中尿酸値の上昇機序は、産生増加、腎での排泄低下及び両者混合型に分類される。

2.病態
 通風は尿酸結晶が関節腔や腎臓等に蓄積する高尿酸血症を基盤にして起こる。蓄積した尿酸は、プリンヌクレオチド(アデニン酸:AMP、グアニン酸:GMP)の代謝産物(デノボ合成(de novo synthesis)の場合と、サルベージ経路(salvage pathway)では、ヒポキサンチン(hypoxanthine)やグアニン(guanin)がPRPP(5‐phosphoribosyl 1‐pyrophosphat)の活性酵素で再生されることから、尿酸が生成される。高尿酸血症を起こす機序は多様であるが、尿酸生成過剰や尿酸排泄低下、また両者が混在する場合の3つの機序が挙げられる。
 男性は尿酸値が7.0r/dl以上、女性は6.0r/dl以上を高尿酸血症という。特に小児や閉経前女性には一次性痛風は起こらない。
 二次性痛風では細胞崩壊により高尿酸血症を起こす白血病、骨髄腫等がある。また二次性痛風では尿酸排泄低下により、様々な腎臓障害が起こる。

3.症状
 体内に尿酸が過剰蓄積されると、血液中の尿酸濃度もぞうかして高尿酸血症になる。しかし尿酸が体液中に溶解している限り、臨床的には何の症状も現れない。生体内にはナトリウム(Na:塩)があるため、尿酸は体内で尿酸塩として存在している。尿酸塩が結晶として析出すれば、多くの臨床的症状が現れる。また言い換えると、尿酸塩の針状結晶が関節液中に析出すれば、この結晶は生体において異物になるので、急性関節炎が惹起されることになる。このような病態を痛風という。尿酸塩の針状結晶が皮下に析出すれば、反応性肉芽組織が形成され、痛風結節になる。また尿酸は骨や腎臓にも沈着して正常組織を破壊する。しかし、急性関節炎が発病する前に痛風結節になる者はほとんどない。尿中に尿酸が析出すれば、尿路結石ができる。尿路に尿酸結石ができるだけでは痛風と言えないが、通風のすべての臨床症状は、尿酸(塩)が体内で結晶として析出することから起こる。

 1)激痛を伴う急性関節炎(痛風発作)
 痛風には、急性関節炎発作と高尿酸血症がある。ある日、突然、足の親指、足首の関節(中足趾関節)に発赤を随伴する腫脹が見られ、徐々に疼痛を自覚し、2〜3時間以内に疼痛が激しくなり、24時間後には極致に達する。痛風発作は60〜70%が母趾の中足趾節間関節に起こる。その他、足背、距腿関節、膝関節等に発生することもある。この関節炎は、外見上では細菌感染による炎症とほとんど同じで、治療をせずに7〜10日間放置しても自然に消失するのが特徴で、そのために痛風発作と呼ばれる。
 高尿酸血症が改善されないと、痛風発作は繰り返され、不快感や疼痛があり、慢性痛風性関節炎の状態になる。また慢性痛風になると、関節の障害だけでなく、腎臓障害、心疾患を合併する場合がある。

 2)痛症がない痛風結節
 痛風結節は尿酸塩結晶が軟骨の内外、滑膜皮下組織等に沈着して形成される。痛風結節は血流が少ない部位に生じやすく、好発部位は耳介(耳の上部)で無痛性である。最終的に結節は、足趾関節、肘、手指、足背等の伸縮部位に生じやすい。時には神経を圧迫して筋を萎縮し、運動制限および変形を起こす場合もある。

 3)痛風が進行すると骨関節を破壊
 尿酸塩結晶は骨にも沈着する。病期が進行すれば骨が破壊される。また繰り返す炎症により生じた軟骨内結節により、関節軟骨が破壊され、関節裂隙の狭小化あるいは消失を起こす。

 4.痛風の診断
 痛風の確実な診断は、発作時に関節液中の尿酸塩や針状結晶を証明することである。しかし、足趾節関節から関節液を採取することは容易ではない。または結晶が発見されない例もある。
 急性関節炎が発症した場合、臨床的特徴の確認と高尿酸血症の検査が確実な方法で、骨のX線写真から、仮性痛風疾患の区別が可能である。
 痛風の診断の基準には、1961年のローマ、1966年のニューヨーク国際シンポジウム、また1975年の米国リウマチ協会提案等がある。これらの診断基準は、一般臨床診療の参考にもなっている。
 共通的な基準は、血清尿酸値(男性7.0mg/dl、女性6.0mg/dl)、痛風結節の存在、尿酸塩の沈着、関節発作と腫脹およびその部位、臨床的痛症の症状、X線の所見等が挙げられる。

 5.治療
 痛風治療の原則は、まず痛風発作を迅速に寛解することである。
 通風は急性関節炎、高尿酸血症及びその合併症に対し、各々別の治療をしなければならない。言い換えるとその治療の例は次となる。

 1)痛風の急性関節炎は放置しても自然に消退する。しかし疼痛が極まれば、患者の苦痛は大きく、歩行も不可能になるので、できる限り短時間で痛みを緩和させることが重要である。そのために非ステロイド性抗炎症剤を使用する。また痛風の診断が不確定である場合は、次の発作時に、コルヒチン(colchicine)を使用して痛症発作を確認する。急性関節炎では血清尿酸値を変動させないのが重要である。

 2)高尿酸血症の治療は痛風発作消退後から始まる。血清尿酸を低下させる治療剤として、尿酸排泄剤あるいは尿酸生成抑制剤を継続投与する。これらの薬剤は血清尿酸値を7.0mg以下に維持する最小必要量を使用する。

 3)合併症の場合には両薬剤を併用するようになる。体内の尿酸量を減少させることは、腎臓障害等の合併症だけでなく、急性関節炎も予防することができる。また痛風結節も縮小され、骨に尿酸が沈着していても正常であり、予後も良い。

 4)尿がPH6.0以下の酸性で尿路に尿酸結石がある例には、尿アルカリ化剤も併用する。具体的には医師の指導によって治療することになるものの、治療において患者あるいは家族もある程度、治療の常識を理解することにより、治療に協力できるようになるため記述したが、これ以上の詳細な内容は省略する。

 6.食事療法
 食事と高尿酸血症及び痛風発作との関係は、昔から注目されてきた。プリン(purine)体や分解されプリンになる核酸を継続的に大量摂取すれば、高尿酸血症になる。したがって、高尿酸血症と痛風はプリン体を含む食品と密接な関係があるので具体的に記述する。
 低プリン食の場合、尿中への尿酸排泄量は減少するが、長期間継続すれば血清尿酸値が減少する。例を挙げると、痛風患者が停年退職して食生活等が変化すると、血清尿酸値が低下することが多い。しかし、極端な低プリン食は食事内容を単調にし、患者に精神的苦痛を与えることもあるため望ましくないが、高プリン食を継続的にまたは大量に摂取することを避けるのが適切である。
 プリン成分はすべての動植物の食事成分に含有されているが、プリン体食品とプリン体含有量は次の通りである。

     食品100G中のプリン体含有量
区分    食品の種類                                         プリン体含有量

A   穀類:米、パン、うどん、そうめん、マカロニ、スパゲッティ、小麦、ジャガイモ、     微量あるいは無含有
       野菜類:旬の果実、サラダ油、海草類、牛乳
    加工品:コーヒー、ココア、チョコレート、茶、醋、塩、砂糖、蜂蜜、アメ、肝油

B   魚・肉類:アジ、カニ、太刀魚、カキ、サバ、サケ、マグロ、ドジョウ、ブリ、鶏肉、ハム、 75mg以下
          豆類、アスパラガス、キノコ、ホウレンソウ、 

C   魚肉類:コイ、タラ、ブリ、スズキ、貝類、スルメ、カツオ、ベーコン、牛肉、
         鶏肉スープ、鴨肉、ソーセージ、豚肉、キジ肉、羊肉、七面鳥、鹿肉、兎肉など 75〜100mg

 プリン体食品は栄養分が豊富で、ヒトには有益な食品であるが、痛風患者や高尿酸血症患者においては考慮しなければならない食品である。

 7.プリン体の役割
 1)味覚の根本:ヒトが味を感じるのは、すべて、プリン体という物質が重要な役割をしている。
  新鮮な魚介類には味がある。魚介類のタンパク質が変性すると腐敗状態になるが、腐敗する前から徐々に味が減少する。それは魚肉中のプリン成分が分解されることによる。プリン体は体内で大変重要な役割をし、生体において不可欠な物質である。そのために食物からプリン体を摂取できないとしても生存できるように生体内の肝臓等で合成されている。

               グルコース、アミノ酸より
                    生合成
                      ↓
                     プリン体
                   1.遺伝情報の文字
    動、植物より       2. エネルギー貯蔵
      食事→        3.細胞機能調節
                  4.細胞内情報伝達
                      分解
                     ↓
                     尿酸

 細胞内のプリン体の濃度は一定に維持されるように調節され、余分なプリン体は尿酸に分解されて尿中に排泄される。そのため尿酸の基はプリン体だと言われている。医学用語のプリンの語源は、pure(基)+urine(尿)、即ち、尿の基だという意味になる。

 8.プリン体の骨格を構成する成分
 1)プリン体は遺伝情報を伝達
 プリン体は多用な役割をしているが、第一の役割は遺伝情報を伝達する文字の役割である。これをわかりやすく説明すると、子供が両親に似ているのは、細胞中にある核酸が遺伝情報を伝達しているからである。
  核酸の命令により、様々なタンパク質が合成されるが、それは核酸中にあるアミノ酸の配列が特定の物質を示しているためである。細胞が増殖する時は核酸合成が行われるが、その際、プリン体が必要となる。つまり、細胞増殖はプリン体供給によって調整される。したがってプリン代謝を抑制する物質は、細胞増殖を抑制することになる。

 2)プリン体はエネルギーを貯蔵
 人が生存するためにはエネルギーが必要になる。心臓、消化管等の臓器、筋肉は運動を継続する。また運動や仕事をする時、多くのエネルギーが必要になる。 
 細胞内で核酸やタンパク質が合成されるが、細胞内で必要な物質の流入または逆に不必要な物質を排出する代謝にもエネルギーが必要になる。
 プリン体成分のひとつであるアデノシン(adenosine)に3個のリン酸が結合したATP(adenosine triphosphate)は生体内で生成された遊離エネルギーの貯蔵体で、必要に応じて供給される。また多くの酵素の役割を助けるNAD:nicotinamide adenime dinucleotide やNADP:nicotinamide adenine dinucleotide phosphate:等もプリン体である。

 3)プリン体は細胞機能を調節
 夜になると眠くなるのは、プリン体のアデノシン(adenosine)の脳内濃度が高くなり、神経細胞を鎮静化するからである。
 神経細胞以外の多くの細胞にもアデノシン(adenosine)に対する受容体が存在している。特に動脈平滑筋細胞、心筋細胞、血液中の多核白血球、リンパ球、血小板等の細胞機能に影響を与え、抗炎症作用、免疫抑制作用を示す等、細胞内の情報伝達において重要な役割をもち、細胞機能を調節しているのが明らかになった。

 4)プリン体代謝を抑制する抗癌剤、免疫抑制剤
 核酸を合成するにはプリン体が必要となる。プリン体の供給を抑制すれば、核酸も合成できない。したがって、プリン代謝酵素活性を抑制する物質は癌細胞の増殖を抑制し、免疫機能が抑制される。

 5)プリン体は薬剤に利用
 プリン体の生理活性原理を利用した薬剤が数多く開発されている。
 プリン体の中で最も多用な作用を持っているアデノシン(adenosine)は、発作性心室性頻拍症の治療薬、脳代謝改善剤、冠状動脈拡張剤、高血圧治療剤、肝臓障害治療剤等の治療薬として広く利用されている。

 9.痛風と合併しやすい疾患
 近年、痛風患者の心筋梗塞、脳卒中等による死亡が増加している。痛風患者の約60%が高血圧、肥満、高トリグリセリド(triglyceride)血症を、約30%が耐糖能低下の症状を合併している。これらは動脈硬化の危険因子であるため、適切な治療を要する。また痛風患者の約10%が尿路結石を持っている。結石成分の大部分がシュウ酸カルシウムで、尿酸結石は少ない。
 シュウ酸カルシウムは、ホウレンソウに多く含まれているので、長期間食べるのはよくない。

 10.漢方治療
 漢方では高尿酸血症は肥満、高脂血症、糖尿症と合併しやすいため、食事療法を継続するのが必要だと考えている。このような背景因子は陽実証の場合が多いため、大柴胡湯、雙和湯、防風通聖散等の瀉剤が適している。
 高血圧を随伴する痛風には釣藤散、牛黄C心元、越婢加朮湯を併用する症例も報告されているが、漢方製剤の作用機序は未だに解明されていない。

 11.おわりの言葉
 このような疾病が発病する前に、伝統的な食事を中心とし、1日3回、決まった時間に食事すること、過度な飲酒と喫煙を禁止し、適度な運動を粘り強く実施すること、職場や家庭において常日頃から、悲観的にならず楽しくコミュニケーションをとる姿勢が必要である。最も重要なことは平凡な生活習慣を維持することであり、それが成人病(生活習慣病)を予防する近道である。酒やタバコまた美味しい食べ物は、口は喜んでいても、体には毒であり、行く末は不幸になることを忘れてはならない。

参考文献
1.西田e太郎;痛風、高尿酸血症、日本医師新報社(2001)
2.山田幸宏:病態ハンドブック、医薬藝術社.pp.323-326(2005)
3.日野原等;生活習慣性と検査.宇宙堂.pp.123-129(2003)
4.谿忠人;現代医療と漢方薬,医薬ジャーナル,pp.257-258(1991)
5.Oppenheimer EH:The lowering of blood uric acid by uricase injection.Bull johns Hopkin Hosp,68;pp.190-195(1941)
6.Korean J.Pharmacogn.25(1):pp.51-58(1994)














Ads by Sitemix