耳鼻咽喉・口腔科系-2
めまい、難聴、耳鳴

◆めまい
概念
いわゆるめまいは訴えられる症状から次のように分類される。
(1)真性めまい:運動覚または位置覚の異常を訴えるもの。この中には回転性めまい、浮動性めまいなどがある。
(2)平衡障害:身体の平衡がとりにくいという不安定感、ふらつき、よろめきなど。
(3)仮性めまい:はっきりした運動覚や位置覚の異常でなく、例えば眼前暗黒感、脱力感、軽い意識障害など。

 次にめまいの病変部からは前庭性と非前庭性に分類され、前庭性のそれは中枢性および耳性に分類される。
 中枢性では、脳腫瘍、脳血行障害、脳外傷、脳炎、多発性硬化症、てんかん、片頭痛合併症ほか、末梢性で原因の比較的明らかなものは、迷路炎、迷路外傷、薬物中毒、手術後遺症など。原因はまだ明らかでないが、病変部位が末梢前庭性であるものは、メニエール病、前庭神経炎、発作性異常頭位眩暈など。非前庭性では、鼻性または歯性、視性、内科的、精神医学的、婦人科的などである。
 漢方治療の適応となる病態は、前庭性中枢性では脳血行障害(血暈)、片頭痛合併症など(水暈)、前庭性末梢性(耳性)ではメニエール病、仮性メニエール病、発作性異常頭位眩暈(水暈)などである。非前庭性のかなりのもの(水暈、血暈)などである。

◆難聴
概念
 難聴は外耳および中耳までの障害による伝音(性)難聴、内耳から聴神経を含め中枢の障害による感音(性)難聴、両者の混合した混合(性)難聴に三大分される。
 感温難聴、混合難聴など内耳感覚細胞や神経の器質的変化、老化に伴う変化は、不可逆性のものであるから漢方の治療対象とはなりえない。しかし、きわめてわずかな聴力改善でも患者の受ける感じは絶大なもので、ほかの症状から漢方治療の適応のある場合は考慮すべきである。伝音難聴のうち急性炎症の一部、炎症性耳管狭窄、滲出性中耳炎が治療の対象となる。

耳鳴
概念
 耳鳴とは音響刺激がないにもかかわらず生じる音感覚であって、患者のみに聞こえる一種の聴覚異常感である。ごくまれには、他覚的耳鳴といって患者の聞こえる音を周囲でも聴取可能なこともある。耳鳴の原因は聴神経路を含む聴覚器のある部分に生じた機械的・化学的刺激が誘因と考えられる。しかし、非常に静かな場所では誰でもある種の音を感じるところから、すべてを病的といい切れないこともある。一般に低音性耳鳴は中耳疾患に原因するものが多く、高音性のものは内耳性・中枢性といわれている。そして日常生活で気になって不愉快という場合は病的なものとして治療の対象となる。
 中耳疾患による低音性耳鳴の漢方治療は、原因疾患すなわち中耳カタル、耳管炎、滲出性中耳炎などに対する効果である。
 高音性の耳鳴が不可逆性の変化によって起こっている場合は本質的な治療とはならないが、心因的な意味での随伴症状に対しては治療効果を期待できる。


耳鼻咽喉・口腔科系-3
耳痛、耳漏

◆耳痛
概念
 耳通は外耳道および中耳の急性炎症、慢性炎症の急性増悪などの耳疾患の咽頭、喉頭、口蓋、歯牙およびその周囲組織における急性炎症による放散痛として発来する。
 鎮痛消炎効果は現代医薬の方がよりよいので、漢方を用いるまでもない。しかし、あえて漢方を選択すれば次の薬方がある。

◆耳漏
概念
 外耳道から漿液性、膿性、粘膜性の分泌液が流出している状態である。一般に粘液性の傾向にあれば中耳に病変があると考えてよいが、中耳疾患でも漿液性、膿性になりうる。血性、悪息性などは特殊な場合である。疾患としては、外耳道湿疹、外耳道炎、急性・慢性中耳炎、中耳術後創細菌感染などが挙げられる。
 中耳炎症性疾患で、耳漏の細菌学的検査によって感受性の高い抗生物質を連続投与したにもかかわらず耳漏が停止しない場合は、なんらかの機転で局所分泌機能が亢進していることを意味するから、漢方が効果を示す場合がある。


耳鼻咽喉・口腔科系-4
鼻閉、鼻漏

◆鼻閉
概念
 呼吸気が鼻腔をスムーズに通過しない感を訴える症状であって、多くは固有鼻腔内にそれに見合う変化がある。一般の鼻疾患では鼻甲介や鼻中隔の腫脹によって鼻閉が生じ、海綿静脈叢の血流に関係しているから、経時的に変化して交代性であることが多い。これに対して腫瘍、鼻たけ、異物などで一側だけを機械的に閉塞されてしまうと、その側だけの一側性鼻閉が起こる。鼻アレルギーなどのように発作性に鼻内に変化が起こるものでは両側の鼻閉となる。上咽頭がアデノイドや腫瘍などで閉塞されても自覚的には鼻閉となって訴えられる。鼻閉によって起こると患者が信じている症状、例えば鼾とか鼻声を鼻閉と訴えることもあるから注意を要する。

◆鼻漏
概念
 固有鼻腔および副鼻腔粘膜からの分泌は生理的にも行われ、これが線毛運動によって後鼻孔に向かって移動していく。分泌液の量が多くなって鼻腔内にたまったり、のどに流れるのが自覚されたり(後鼻漏)、前鼻孔から流れ出したり、性状が変化したりすると鼻漏の訴えとなる。わずかな量の後鼻漏をも神経質に訴える患者があり、この治療は困難をきわめるものである。後鼻漏には鼻咽腔炎が合併していることがある。
 漿液性-急性鼻炎、鼻アレルギー
 粘液性-慢性炎症
 粘液膿性(黄色・緑色)-細菌感染
 水様性・漿液性・粘液性鼻漏は水毒として据えられる。


耳鼻咽喉・口腔科系-5
鼻出血

概念
 固有鼻腔、副鼻腔、上咽頭に出血部位があって外鼻孔から出血する場合、あるいは後鼻孔から血液が咽頭に流下する病態を鼻出血という。出血傾向をきたす全身疾患に伴って起こったり、局所に外傷や腫瘍のようなはっきりした原因があって起こる鼻出血を症候性鼻出血という。高血圧症に起因する鼻出血は原疾患の治療を併せ行わねばならない。しかし局所的にも全体的にも原因不明の出血を特発性鼻出血といい、この頻度が高い。一般に鼻出血では出血部位を確認することが困難で、止血操作も難渋をきわめる場合が少なくない。出血部位としてはキーセルバッハ部位が最も多い。女子の無月経に伴って起こる鼻出血は代償性月経とみなされることがある。局所に原因が見い出される鼻出血の多くに対しては漢方治療の対象とはならない。
 血の異常による。原因不明、出血部位不明の場合に用いて効果をみることが多い。衂血という。


耳鼻咽喉・口腔科系6
 くしゃみ、鼻炎、アレルギー性鼻炎

◆くしゃみ
概念
 鼻腔内の異物を排除しようとする防御反射機構で、気道から異物を排除する「せき」と同じような意味をもち、生理的にも起こる。発作性・連続性に起こる病的なものが治療対象となり、多くは水性鼻漏や鼻閉も随伴する。急性鼻炎、鼻アレルギーの主症状の一つである。

◆鼻炎
概念
 急性鼻炎の多くは感冒と関連して鼻かぜのかたちで起こる。鼻内熱感、乾燥感を訴える乾燥期、続いて水様鼻漏およびくしゃみ発作の起こる漿液分泌期、次いで粘液膿性鼻分泌が盛んとなる膿分泌期を経過して治癒する。慢性鼻炎は塵埃、煙、有毒ガスなど比較的長期におよぶ刺激や、急性炎症が遷延して発症するが、体質や生活条件も関係する。鼻粘膜の充血と浮腫が主病変であるが、変化が持続すれば結合織の増殖も伴って不可逆性ともなるし、また逆に萎縮をきたすこともある。鼻閉、時に鼻汁過多を訴える。慢性副鼻腔炎を合併していることが多い。

◆アレルギー性鼻炎
概念
 くしゃみ発作、水様性鼻漏、鼻閉を三主徴とする。このほか、鼻腔内の掻痒感、咽頭、耳の奥、眼に掻痒感を伴ったり、流涙をきたすこともある。抗原抗体反応が鼻に起こる場合で、抗原としては、スギ、ブタクサ、カモガヤなどの花粉類、家のゴミ(コナダニ)、真菌などが知られている。職業に関係した抗原の存在すなわち、調剤室における薬剤粉塵、果樹園における梅・リンゴ花粉などでアレルギー発作が起こる。しかし、抗体の産生には生体の免疫機構が関係するし、発症には化学介達物質の刺激を感受し伝達する局所の過敏性や自律神経機能も大いに関係する。抗原不明例が血管運動性鼻炎ともよばれる理由はここにある。
 水毒が原因と考えられている。


耳鼻咽喉・口腔科系-7
咽喉頭異常感、口臭

◆咽喉頭異常感
概念
 いつもなにか咽にひっかかっている感じを訴えることが多いが、いらいらする感じ、塞がった感じ、虫が這っている感じなどさまざまである。中年の婦人に多い。咽頭に器質的病変がまったくみられない場合もあるが、粘膜の発赤、乾燥、舌根扁桃肥大、口蓋垂の過長、咽頭蓋の異常がある場合もある。しかし一般に変化は軽度で、訴えのすべてを説明するほどではない。癌に対する恐怖、ヒステリー、神経衰弱、更年期障害などを合併していることが多い。治療は器質的な面と心因的な面との両面に対してなされるべきである。
 漢方ではあぶった肉片が咽につかえた感じ(咽中炙臠)、梅干の種子が咽につかえている感じ(梅核気)などと表現している。気の異常とされている。

◆口臭
 概念
 口腔および呼気の自他覚的悪臭は口腔、上気道疾患に由来することが多い。すなわち鼻・副鼻腔疾患、歯周囲疾患(いわゆる歯槽膿漏を含む)、口内炎、慢性扁頭炎、咽頭炎など口腔咽頭疾患が大部分である。そのほか下気道疾患、食道疾患、胃疾患などその原因が多岐にわたることが多い。また自覚症状として強く訴える場合は原因疾患を特定できないこともある。


耳鼻咽喉・口腔科系-8
嗄声

概念
 声帯の異常状態によて起こる音声障害で、声帯に病変がある場合、声能運動を支配する神経(半回神経)麻痺で起こる場合、機能性な障害で発声異常をきたす場合とがある。
 急性喉頭炎、慢性喉頭炎などが対象となる。


耳鼻咽喉・口腔科系-9
唾液分泌異常

概念
 唾液分泌過多の状態、すなわち@流涎症は薄い唾液がとめどもなく流れ出てきて気持ちが悪いと訴える。A無唾液症は唾液分泌の減少または涸渇状態を呈し、口腔粘膜、咽頭粘膜が乾燥状であって、いくら水を飲んだり含嗽しても乾燥感が消失しないと訴える。唾液腺の大部分が加齢などにより脂肪変性を起こしている。また機能的な異常と考えられる病態もある。


耳鼻咽喉・口腔科系-10
メニエール病

概念
 めまい発作を繰りかえしながら慢性に経過する非炎症性内耳疾患。耳症状は多くは片側性で、耳鳴、難聴に回転性めまい発作で発症する。頭痛、嘔気、嘔吐など自律神経失調症状を伴う。長年月にわたって発作を反復するうちに、しだいに内耳機能が低下する。難聴は典型的な内耳性障害で、気導聴力とともに骨導聴力も低下する。全身的には自律神経系の失調、アレルギー素因の合併をみることがある。誘因としては物理的ないし精神的ストレスが挙げられるが、生命に対する予後は良好である。病理学的には内リンパ水腫(迷路水腫)の所見がみられる。これは内リンパ液の分泌、循環、吸収などに障害があると推定される。水暈という「水毒」は水分の偏在と解釈されていることと考え併せ、はからずもその病態に類似点があることは興味深い。


耳鼻咽喉・口腔科系-11
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

概念
 副鼻腔の慢性炎症であるが、特殊な細菌感染とか、特殊な解剖学的特徴とかいうような慢性化の原因を明らかにできることは少ない。いつの間にか慢性化していることが多く、それゆえに両側性、多洞性である。そのうち両側上顎洞、篩骨洞粘膜の炎症が最も多い。鼻閉、粘液膿性鼻漏、頭重感、頭痛を主症状とする。嗅覚障害も時に起こり、注意不能、易疲労、消化器障害を訴える。慢性気管支炎を併発している場合はせき、喀痰などの下気道症状も訴え、これを副鼻腔気管支症候群とよんでいる。鼻たけは上顎洞粘膜、篩骨洞粘膜、中鼻道粘膜などの浮腫性変性の結果であると考えられ、鼻腔内へとポリープ状に突出してきている。上顎洞内から発生し、自然孔ポリープとよばれる病態を呈する。鼻漏は前鼻孔だけでなく、後鼻漏として中咽頭後壁に付着している場合をみとめることがある。後鼻漏を訴える例には慢性蝶形骨洞炎、慢性鼻咽腔炎が合併している場合が少なくない。小児の副鼻腔炎は薬物療法によく反応することが多い。
 手術非適応例、手術例で鼻閉、鼻漏を訴える例が漢方の適応となる。鼻たけは適応とはならない。


耳鼻咽喉・口腔科系-12
咽頭痛、扁桃炎

概念
 咽頭や喉頭の疾患でしばしば痛みを訴えるが、その程度は異常感程度の軽いものから、激烈なものまである。急性炎症、潰瘍性疾患ではとくに強い疼痛を伴う。なにもしなくても痛む場合が自然痛である。嚥下時には咽頭筋の収縮が起こって炎症や潰瘍のある軟部組織が働き、痛みはさらに増強される。これを嚥下痛という。
 疾患としては、急性咽頭炎、急性扁桃炎、急性鼻咽腔炎、扁桃周囲炎、扁桃周囲膿瘍、急性喉頭蓋炎などが挙げられる。
 急性咽頭炎、急性扁桃炎、急性鼻咽腔炎、扁桃周囲炎などで、抗生物質、消炎鎮痛剤などに過敏性を示す例に用いる。
 漢方では喉痺といい、咽喉腫脹し、嚥下困難をきたす病態を指す。現代医学では扁桃周囲潰瘍、急性喉頭蓋炎などであろう。


耳鼻咽喉・口腔科系-13
口内炎

概念
 口腔粘膜の所見によって分類する。発赤が主体のカタル性口内炎、口腔舌各所に潰瘍が発生した潰瘍性口内炎、アフタの発生がみられるアフタ性口内炎がある。部位によって分類すると、舌炎、口唇炎、歯肉炎などになる。口内の疼痛が主症状でであるが、ときに嚥下困難、会話困難、流涎などが起こる。習慣性アフタは全治しにくい。


耳鼻咽喉・口腔科系-14
急性唾液腺炎、唾石症

概念
 ムンプウイルスによる流行性唾液腺炎が最も多いが、細菌感染による化膿性炎症としては反復性片側性耳下腺炎、急性顎下腺炎がある。急性顎下腺炎は唾石症に合併することが多い。唾石症では摂食時に疼痛や腫脹が起こることを唾液疝痛、唾液腫脹という。




 

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