アレルギー系

アレルギー系-1
アレルギー系疾患の漢方治療について

 近年アトピー性皮膚炎に対する漢方治療が注目を集めているが、そのほかカタル性結膜炎、アレルギー性鼻炎、慢性蕁麻疹、気管支喘息と、各種アレルギー疾患は時代とともに盛衰はあっても、一貫して青少年の疾患群の中で大きな比率を占め、また漢方治療の対象となってきた。
 こうしたアレルギー疾患については、これまで主にアレルゲンの確定と除去、あるいはアレルギー反応の抑制といった方向で検討されてきたが、アレルギーを起こしやすい家系が目立ち、遺伝的な体質傾向がベースにあり、何らかの外因によって誘発されることが窺える。 
 一般に低血圧の人が多く、漢方的には気虚証に相当する。こうした気虚体質者は、外因、あるいは内因により生体防御機構すなわち免疫系が破られ、血管の透過性が高まって浮腫を発生しやすい。これが水湿、痰飲で、鼻炎や結膜炎では粘膜に、喘息では気管支に、アトピー性皮膚炎では皮下に蓄積し、長びくとびらんを伴う炎症を引き起こす。これが湿熱といわれる病症である。そして、こうした炎症が長期化、反復すると結合識の増殖とともに組織の肥厚、角化、硬化が起こるが、この状態を陰虚といっている。
 こうした変化を念頭に置きつつ、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹についての漢方治療の概要を説明するが、それぞれに同一あるいは類似処方が使用されることが多いのは、以上の理由からである。


アレルギー系-2
花粉症、アレルギー性鼻炎

 概念
アレルギー性鼻炎にも種々の段階があるが、ある季節に一過性の鼻閉や軽い鼻漏を起こすものが多く、スギやブタクサあるいはカヤ類など禾本科植物の花粉がアレルゲンとして浮かび上がってくるため花粉症とよばれる。
 ただこれにも程度の差があり、人によっては微熱を伴い顔面部全体が腫れて、激しい鼻漏が続くこともあり、また永年にわたって鼻炎症状が続く場合は慢性鼻炎として区別されている。またX線写真やCTで副鼻腔に変化のみられるものは副鼻腔炎といわれるが、いずれにしても漢方治療の対象となる。
 以下順を追って、処分を紹介する。


アレルギー系-3
アトピー性皮膚炎

概念
 アトピー性皮膚炎にも種々の段階があり、皮膚面に小発疹のできる水疱期、皮下全体が腫脹する浮腫期、これに炎症、びらんを伴う湿熱期、そして硬化の進む隠虚期とに分けられる。ただ、いずれの時期においても外因によって急激に症状が変化するため治療は困難で、過去の症例報告をみても単一疾患として、最も多くの処方が挙げられており、どれか一つに特定することは困難である。ただ一応ここではそのうち代表的な処方を選んで紹介しておく。


アレルギー系-4
蕁麻疹

概念
 いわゆる蕁麻疹は、食物アレルギーの症状として急激な発疹を生じる。これに対して一般的には、下剤の入った清熱剤が用いられる。つまり消炎と瀉下である。しかし漢方外来を訪れる患者の多くは、とくにこれといった原因もなしに、慢性的に蕁麻疹を反復するいわば慢性蕁麻疹が多く、大抵は低血圧で水湿を伴い、補気利湿の剤が適応する。以下に各々の処方を紹介するが、対象を虚実に分けて見分ける必要がある。



膠原病系

膠原病疾患の漢方治療について

膠原病は、1942年Klempererによって提唱された病理形態学的疾患概念にその起原をもつ。現在臨床的には、膠原病は多臓器性の全身性炎症疾患の中で自己免疫病に属する一連の疾患群を指す。その真の原因はいまだ不明といわざるをえないが、免疫学的検査の診断への応用などにより早期診断も比較的容易となり、軽症例も増加しつつある状況となっている。治療においてはステロイド剤、免疫抑制剤、腎透析、腎移植、抗生剤、降圧剤などの導入、使用方法の改良により、生命予後も飛躍的に改善されている。
 無論漢方医学には膠原病という疾患概念はない。しかし漢方医学的理念に基づいた治療方法が膠原病に対して一つの有力な治療手段となりうる。軽症例に対する漢方薬単独治療、重症例に対する併用療法にて良好な経過をたどるものもまれではなく、症例ごとの漢方医学的診断治療方法の慎重な吟味が期待以上の効果をもたらすこともある。
 膠原病に漢方薬治療を試みる場合、一つ一つ病名単位よりはむしろ全身的な漢方医学的状態、ステロイド剤をはじめとする西洋薬治療の状況を考慮した病態把握がより重要となる。すなわち、六病位、気血水、寒熱、陰陽などの基礎理論を見据えた治療が必要である。さらに疾病の本質、より根源的な部分を治療対象と考えた本治法、現在もっとも表面に現われた症状を治療対象としようとする標治法など治療の効率化の手段を縦横に駆使した治療が要求される。


膠原病系-2
シェーグレン症候群

概念
 シェーグレン症候群(Sjogren's syndrome,以下SjS)は、涙腺や唾液腺を中心とする全身の外分泌腺に慢性炎症性変化をきたす自己免疫疾患の一つである。眼乾燥症状や口腔乾燥症状が特徴的症状であり、乾燥性角結膜炎・唾液腺分泌機能低下が認められる。
 Sjogrenの報告以来多数の症例の蓄積があり、1972年にはわが国においても診断基準が発表されているが、いまだその発病原因、病態など解明に至っていない。
 臨床症状としては発熱、多関節炎、レイノー現象、耳下腺腫脹、紅斑などの頻度が高い。臨床検査所見では免疫グロブリンの上昇、リウマトイド因子、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗サイログロブリン抗体、抗マイクロソーム抗体、抗リンパ球抗体などの自己抗体が高頻度に出現する。また種々の臓器病変が知られており、腎尿細管性アシドーシス、悪性リンパ腫の合併、慢性甲状腺炎の合併、薬剤アレルギーなどは比較的高頻度である。およそ半数の症例では慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、混合性結合組織病とのoverlap群である。
 SjSを漢方医学的に考えると羅病期間が短く、腺組織の破壊が軽度の場合、病期は太腸病期から少陰病期までみとめられ、実証、虚証、お血、水毒、気虚、気滞とこれもさまざまである。乾燥症状そのものをみれば、これは、一種の燥証と考えられ滋潤剤とよばれる一群の漢方薬が適応する。進行して腺組織に破壊がすすむとお血、腎虚などの症候が顕著となり八味地黄丸に代表される補腎剤が適応となる場合が多い。SjSを疾患全体として治療の対象にした場合には、漢方医学的な証の精密な診断を必要とする。
 SjSの腎障害など器質的内臓病変の進行が懸念される場合、副腎皮質ステロイド剤が使用される場合がある。このステロイド剤投与時には、効果の増強と副作用防止を目的に柴胡剤が使用される。


膠原病系-3
慢性関節リウマチ

概念
 慢性関節リウマチ(以下RA)は多関節炎を主病変とし、表面的には関節滑膜というきわめて限定された部位の疾患と思われがちであるが、実は全身性の消耗性疾患である。RAの臨床症状は多彩であり、その根底にある全身の免疫異常を見逃してはならない。
 RAに対する西洋医学的な薬物治療として、第一に滑膜炎に起因する関節炎の緩和を目的とした非ステロイド剤系抗炎症薬(NSAID)や高度の疼痛、炎症に対する副腎皮質ステロイド剤などがある。免疫異常という面からはメソトレキセートを代表とする免疫抑制剤のほか、寛解導入剤とよばれる一群の薬剤があり、近年RAの薬物療法中心的存在の位置付けが与えられ、かなり早い段階から使用されるようになってきた。
 一方漢方医学では古来痺証、歴節病などどよばれ、さまざまな治療が試みられている。

Ads by Sitemix