筋骨格系
1.筋骨格系疾患の漢方治療
2.しびれ
3.頸痛、上肢痛、肩こり
4.腰痛、下肢痛、椎間板ヘルニア
5.慢性関節痛
内分泌・代謝系
1.内分泌、代謝系疾患の漢方治療について
2.口渇、口乾
3.肥満
4.やせ
5.甲状腺肥大、甲状腺機能こうしん、低下症
6.高脂血症
7.糖尿病
8.痛風
神経科系
1.神経系疾患の漢方治療について
2.失神、めまい感とめまい
3.痙攣、付随意運動
4.脳血管障害
5.顔面神経麻痺
6下肢麻痺.脱力感
7.自律神経失調症
8.パーキンソン病
9.頭部外傷後の愁訴
眼科系
1.眼科疾患の漢方治療について
2.老人性白内障
3.眼底出血
4.眼精疲労(不定愁訴)
5.結膜炎、角膜炎
6.仮性近視(調節痙攣)
7.ブドウ膜炎
8.緑内障
9.視神経疾患
10.中心性網脈絡膜症
耳鼻咽喉・口腔科系
1.耳鼻咽喉科疾患の漢方治療について
2.めまい、難聴、耳鳴
3.耳痛、耳漏
4.鼻閉、鼻漏
5.鼻出血
6.くしゃみ、鼻炎、アレルギー性鼻炎
7.咽喉頭異常感、口臭
8.嗄声
9.唾液分泌異常
10.メニエール病
11.慢性副鼻腔炎(蓄膿症)
12.咽頭痛、扁桃炎
13.口内炎
14.急性唾液腺炎、唾石症
産婦人科系
1.産婦人科疾患の漢方治療について
2.冷え性
3.骨盤内うっ血症候群
4.更年期障害
5.婦人科疾患
6.不妊症
7.産科疾患
小児科系
1.小児科疾患の漢方治療について
2.小児の微症状
3.虚弱児
4.乗り物酔い
5.小児の下痢症
6.小児の神経症、てんかん
7.小児の気管支喘息、喘息性気管支炎
8.小児の腎疾患
9.小児の起立性調節障害
10.夜尿症
11.小児の自律神経失調症
12.小児の肥満
13.小児のアトピー
外科系
1.外科系疾患の漢方治療について
2.術後・術前の異常
3.打撲傷
4.熱傷、火傷
5.化膿性疾患、下腿潰瘍
6.虫垂炎
7.イレウス
8.腫瘍
9.癌の化学療法と放射線療法の副作用、癌患者のターミナルケア
10.リンパ管炎、リンパ節炎、リンパ浮腫
11.ダンピング症候群、胆嚢摘除後症候群
アレルギー系
1.アレルギー系疾患の漢方治療について
2.花粉症、アレルギー性鼻炎
3.アトピー性皮膚炎
4.蕁麻疹
膠原病系
1.膠原病疾患の漢方治療について
2.シェーグレン症候群
3.慢性関節リウマチ
4.全身性エリテマトーデス(SLE)
5.混合性結合組織病、強皮症
6.ベーチェット病
7.膠原病に関連した肺症・腎症
心療内科系
1.心療内科疾患の漢方治療について
2.チック
3.過換気症候群
4.思春期摂食障害
5.神経性胃腸炎
6.口腔内異常感症
7.起立性調節障害
痛み・ペインクリニック系
1.痛み・ペインクリニック系疾患の漢方治療について
2.胸痛、背部痛
3.顔面痛、歯痛
4.頭痛、三又神経痛
5.急性関節痛
6.急性神経痛
7.帯状疱疹後神経痛
神経科系
1.神経科疾患の漢方治療について
2.不眠
3.うつ、不安
4.物忘れ、痴呆
5.せん妄
6.神経症
7.てんかん
加齢疾患・在宅医療系
1.加齢疾患・在宅医療系漢方治療について
2.高齢者のうつ
3.高齢者のカゼ
4.高齢者の肺炎
5.高齢者高血圧症
6.高齢者の糖尿病
7.骨粗鬆症
8.痴呆







骨格


筋骨格系-2
しびれ

概念
 “しびれ”とは、あくまでも患者の自覚症状の一表現であり、それが知覚の鈍麻や脱失、異常な感覚など、知覚神経に関する場合と、筋力の低下や筋のこわばりなど、運動神経に関する場合とがある。いずれも重大疾患の、前駆症状やほんの表面的な一症状でありうるので、その原因を調べることが優先される。
 しびれや麻痺に対する漢方治療は決して容易ではないが、西洋医学的治療でも効果がない場合に、根気よく漢方治療を続けてみる価値がある。


筋骨格系-3
頸痛、上肢痛、肩こり

概念
 頸椎やその周辺組織の老化現象によるもの(頸部脊椎症など)が、原因となることが多い。器質的な変化を特定できない頸や腕の痛みは頸肩腕症候群とよばれるが、きゃしゃな体つきの女性によくみられ、筋の過労も大いに関係する。最近ではコンピュータの普及で、モニター画面(VDT)を凝視する職種が増え、頸肩腕痛を訴えるVDT症候群も散見される。
 俗にいう“寝ちがい”は、なんらかの原因による頸〜項筋の攣縮状態で基礎に頸椎や椎間板の変性があることもあるが、必ずしもそうでないこともある。これに似た状態で、小児の特発性斜頸がある。これは、突然顔を斜に傾け、痛みのために頸を真っ直ぐに戻せない状態をいい、頸喉部周辺に炎症がある場合の炎症性斜頸とは違い、はっきりした原因がわからないことが多い。寝違い的な急性の痛みには、強力な西洋薬が有効だが、いろいろな理由で西洋薬を投与しにくい場合、漢方薬を試すこともよい。
 肩こりは内臓疾患の一症候でもありうるが、器質的疾患が否定できる頑固な肩こりには、体質などを考慮しながら漢方治療を試みる価値は大いにある。
 筋緊張という観点で薬能(漢方薬理)から葛根、芍薬、甘草を中心にした処方のなかから選択するといった考え方も実効がある。


筋骨格系-4
腰痛、下肢痛、椎間板ヘルニア

概念
 一口に腰〜下肢痛といっても、その原因は多種多様で、現代医学が優先される場合があることを常に念頭に置いておく必要がある。
 変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、静力学的腰痛(いわゆる腰痛症)、ギックリ腰など、腰痛(しばしば坐骨神経痛を伴う)に対する傷病名はさまざまであるが、長期に続く腰痛や坐骨神経痛には、患者一人一人の体質の違いなどを重視し局所にのみとらわれない漢方治療が適している。


筋骨格系-5
慢性関節痛

概念
 慢性関節リウマチ以外で慢性に続く関節痛の代表的なものは、変形性関節症である。変形性関節症とは、関節の骨・軟骨などの退行性変化と増殖性変化のため関節が変形したり、痛みをきたしたりする疾患である。
 なかでも膝の変形性関節症がほかの関節よりも圧倒的に多い。これは、膝関節が常に体重を支えているうえに、捻挫など外傷にさらされる機会が多く、また、球形の膝関節と違い、構造的にもやや不安定だからである。膝以外では、手指遠位指節間関節の疼痛と変形で有名なへバーテン結節、近位指節間関節のブシャール結節がある。
 変形性関節症の初期症状は、動作開始時の疼痛である。
 例えば膝では、歩き慣れると緩和し、さらに歩行を続けると再び痛くなるという傾向がある。また、正座の後の立ち上がりが痛んだり、そのうち正座が困難になったりする。階段の昇降にも痛むが、とくに下りに疼痛が強い。一定期間痛んだ後、自然に症状が軽快することもあるが、徐々に悪化し、関節の可動域制限が著明になり疼痛も激しくなる例もまれではない。
 指の場合は、体重がかからないだけに、変形が進んでも長期的にみると疼痛は自然に消失する傾向がある。



内分泌・代謝系


内分泌・代謝系-2
口渇、口乾

概念
 口渇や口乾は種々の疾患に随伴してくる一般症状であり、内分泌、代謝系疾患に特徴的な症状とはいえない。しかしこの症状は漢方医学では証の決定に重要な症状である。生理学的には、口渇は口腔粘膜の乾燥感を大脳が感受して生じてくる現象であるが、生体内部の水分欠乏や水の偏在を是正するために生じてくる防御的な生理調節反応による症状といえる。口渇をきたす原因としては以下のものが考えられる。
 すなわち@水分摂取不足、A水分過失過多、B唾液分泌減少、C過度のNaCl摂取、D電解質の不均衡、E神経質などである。
 漢方では口と渇いて飲水を欲する場合を口渇とよび、口は渇くが飲水を欲しない場合を口乾とよんでいる。いずれの場合も熱があると考えるが、実証の場合に口渇が多く、虚証の場合口乾が多い。


内分泌・代謝系-3
肥満

概念
 肥満は身体の脂肪組織に中性脂肪が過剰蓄積した状態である。摂取カロリーが消費カロリーを長期間にわたり上回るために生じるものである。肥満は標準体重に対する過剰体重の割合で判定する。すなわち標準体重に対し20%以上の超過を肥満とし、10〜20%の増加は体重増加とし、±10%を正常範囲内とするのが一般的に用いられている判定法である。
 肥満は症候性肥満と単純性肥満に分けられる。症候性肥満はクッシング症候群や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患に伴うものが多く、肥満症の1〜2%ぐらいで日常外来ではほとんどみることはない。ほとんどの肥満症は単純性肥満で一般に中年ぶとりといわれるものである。
 肥満そのものはとくに問題とはいえないが、これが動脈硬化の促進、心臓疾患、脳血管障害、糖尿病などの発生と深く関係しているところに問題がある。
 肥満そのものを漢方治療で改善することは不可能である。あくまでも積極的な食事療法、運動療法が主体となる。漢方治療の適用は肥満の改善というよりも肥満に伴って生じる種々の疾患の予防と改善に効果があるといえる。例えば高脂血症の予防と改善、動脈硬化進展阻止、脂肪肝の予防と改善、肥満により生じる倦怠感、易疲労の改善などである。

やせ
概念
やせは身体の脂肪組織の中性脂肪が減少した状態である。やせには基礎疾患の明らかな症候群のやせと、体質的なやせ(単純性やせ)の2種類がある。
疾患症のやせには、甲状腺機能こうしん症、アジソン病、やせ型糖尿病などの内分泌疾患、神経性食思不振症などの精神性疾患、消化器疾患、その他慢性の消耗性疾患などが挙げられる。
疾患性のやせの場合は原因疾患の治療が必要なことはいうまでもないが、体質的なやせの場合はとくに治療の必要はない。現代はむしろ、過剰栄養による身体の失調や病気のほうが重要である。ただやせている人は胃腸が弱い、食欲がない、疲れやすい、身体がだるい、根気が続かない、カゼをひきやすいなどと種々の不調を訴えることが多く治療が必要なことがある。
やせの場合一般に脾虚症が存在すると漢方では考え、人参剤が主体的に用いられる。

甲状腺肥大、甲状腺機能こうしん・低下症

概念
 甲状腺肥大でよくみられるのは甲状腺機能こうしん症である。そのほかに単純性甲状腺種や慢性甲状腺炎などが挙げられる。また悪性腫瘍も最近では増えてきている。これらの疾患は西洋医学の治療が主になるべき領域である。漢方治療がこの領域で存在意義があるのは西洋医学治療の副作用の軽減、あるいは西洋医学治療の治療効果を高める目的で用いる場合である。また主訴の軽減にも漢方治療はかなり有用であり、西洋医学の領域ではあるが、漢方治療の有用性もあるといえる。
 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンによる治療が主であり、漢方の比重が低いのでここでは機能こうしん症に対する治療を述べる。
 甲状腺機能こうしん症は主症状としては甲状腺腫、眼球突出、心悸こうしんが挙げられる。ほかに易疲労、多汗、食欲異常こうしん、やせ、手首の振るえ、さらに精神不安、興奮のしやすさ、不眠などをきたす。この状態を漢方では陰虚陽こうとよぶ。患者の訴える症状により適応処方も変わるので症状をよく聞くことが大切である。

高脂血症
概念
高脂血症とは一般に血清中のコレステロールとトリグリセライドの両方あるいはいっぽうが異常に増加した病態のことである。高脂血症は原発性と続発性の二種に大別される。原発性高脂血症には遺伝的な原因によって生じる家族性高脂血症がある。続発性高脂血症にはネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、閉寒性胆道疾患、糖尿病などにより生じてくるものがある。
 高脂血症は疫学的にみて発症に食習慣が深く関与することが知られており、現在では生活習慣病の一つにも挙げられている。高脂血症は肥満症、脂肪肝、動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞などの疾患の発症あるいは増悪と深く関係している。とくに高コレステロール血症は動脈硬化症の進展に関係しており、冠動脈疾患や高血圧症などの重大な危険因子とされている。
 高脂血症の治療における漢方薬の作用機序には不明な点が多いが、薬理実験の上で、コレステロール低下効果をみとめるとの報告もあり、やがて明らかにされると考えている。

糖尿病
概念
 糖尿病はインスリン作用の不足により生じる疾患である。これにはインスリン依存性糖尿病と、インスリン非依存性糖尿病とがある。日本人の大多数はインスリン非依存性である。このタイプは依存素因と深く関係し、成人に多く、過食、美食、偏食、運動不足、肥満、ストレスなどが発症や病状の悪化に関係している。とくに肥満との関係が重要視されている。
 糖尿病は腎症、網膜症、神経症をはじめいろいろな合併症が生じてくるが、これらの治療が困難である。治療は西洋医学が主となるべきであるが、漢方治療を併用することにより、食養生などが容易になる例が多く、また合併症の治療および予防に漢方治療は適している。

痛風
 概念
 痛風はプリン代謝異常によって生じる高尿酸血症を特徴とする疾患で、急性の関節炎発作、腎障害、腎尿路結石を発す。
 高尿酸血症には尿酸生産過剰型と尿酸排泄低下型がある。前者の大部分は食餌性のもので、尿酸クリアランスは特異的に低下している。
 関節炎発作は高尿酸血症から析出する尿酸塩結晶に対する生体反応により生じる。第一中足趾関節が好発部位で急性に発症するのが特徴である。
 痛風の発生は日本人の約.0.5%と推定されている。高プリン食摂取者、アルコール過飲者に多く、高血圧、耐糖能異常、高脂血症、肥満と関連がある。
 尿酸塩の沈着による慢性間質性腎炎、腎細胞脈硬化症をきたし腎不全に陥る場合もある。
 尿酸塩析出による尿路結石症も10〜30%にみられる。
 高尿酸血症の改善に対し、漢方治療がどの程度効果があるかは現在のところ不明であり、治療は西洋医学が主体になる。漢方治療は関節炎発作の改善と再発防止などを目的として西洋医学治療と平行して行われることが望ましい。

神経科系-1
神経科系疾患の漢方治療について
 神経という語は本来漢方医学にはなく、この語の誕生は江戸時代に杉田玄白がオランダ語から訳した「解体新書」の中で初めて使用したといわれている。漢方医学的には一部の神経疾患の原因を、風、寒、湿などの外邪による侵襲ととらえてきた。例えば、中風(風に中る)という語があるが、これは「傷寒論」の中では急性の軽症良性熱性疾患を指すが、「金匱要略」などでは脳卒中やそれによって生じる半身不随の状態などを指してきた。顔面神経麻痺や急性神経障害なども風や寒などの外邪によるとしてきた。
 また、五臓のうちの肝は筋と密接な関連があるとし、肝の機能の失調によって痙攣などの筋肉の異常が生じると考えてきた。さらに、運動麻痺は血の不足(血虚)によって生じるとしてきた。最近の研究でも、微小循環障害お血との密接な関係が明らかとなり、脳血管障害や微小循環障害に由来する末梢神経障害に対するお血の視点からの治療が重要視されている。以上のような漢方医学的概念に沿って、神経系疾患においても治療がなされるわけである。
 もちろん、漢方治療のみで神経疾患全般に対処できるわけではなく、近代医学的検査を動員して西洋医学的治療を優先すべき病態を見逃さないようにする姿勢は重要である。しかし、病態によっては漢方治療単独あるいは西洋医学的治療と併用することでより治療効果を上げられる場合も少なくない。以下に代表的な病態、疾患に対する漢方療法について述べる。

神経科系-2
失神、めまい感と、めまい
 概念
失神は脳の一過性の循環不全によりもたらされ、その背景には起立性低血圧、頸動脈洞過敏症候群、心伝導障害、心調律異常、血管運動神経失調症などがあり、循環器学的、内科学的な精査を必要とする病態である。
 真正めまい(vertigo)は「自分自身あるいは周囲が回転したり運動したり、動揺したように感じるある種の錯覚または感覚」と定義され、前庭器官とその求心路に障害があると考えてよい。患者はこれを「くるくる回る」「ぐるぐる回転する」「地面がゆらゆら傾く」などと表現する。
 漠然としたふらつき感、倒れそうになる感じ、気を失いそうになる不安感をめまい感として訴えられることが多い。この病態の背景には不安神経症、過換気症候群、ヒステリー性神経症など心因要素をみることが多いが、起立性低気圧、血管運動神経失調症でこの病状を呈するものもある。
 漢方医学的にはめまいを水滞(水毒)の徴候ととらえる場合が多い。実際には、めまい感の訴えの背景として神経症的要因が見られる場合が多く、そのときには”自律神経失調症”の項にでてくる処方も参考にしていただきたい。

神経科系-3
痙攣、付随意運動
概念
痙攣とは運動神経系の異常な放電の結果もたらされる、全身あるいは一部の骨格筋の急激な攣縮をいう。神経系内外のさまざまな原因によって生じうる。画像診断、脳波、血液学的検査などで原因を確定する努力が必要であるが、原因不明のものも少なくない。
 舞踏運動、アテトーゼ、ヘミバリスムス、ミオクローヌス、チック、振戦などを総称して付随意運動という。肝臓や腎臓の機能不全の際にはasterixis(俗にいう羽ばたき振戦)がみられる。これは肺疾患、Wilson病でもみられることがある。
 痙攣や付随意運動は、漢方医学的には肝の異常あるいは血虚の徴候としてとらえるこたが多い。

神経科系-4
脳血管障害
概念
 脳血管障害は通常、虚血性と出血性のものに分類される。虚血性脳血管障害は、血栓あるいは寒栓によって発生する。脳血管の動脈硬化を主体とする原発性血栓病が頻度的には最も多い。寒栓症は遠隔由来の物質による血管閉塞であるが、寒栓となる]物質は心臓の壁内血栓によるものが最多である。虚血による脳の巣症状が一日以内で消失する場合を一過性脳虚血発作(TIA)と呼ぶ。出血性脳血管障害でよく出会うものは、高血圧性脳実質内出血と動脈瘤、または動静脈奇形によるくも膜下出血である。
 脳血管障害の治療における漢方治療は、急性期より亜急性期、もしくは慢性期に主眼が置かれる。近年CTやMRIなどの画像診断機器が普及し、症状がない無症候性脳梗塞という病態も診断可能となってきた。このような新たな病態に対しても、その進展や脳卒中の発症の予防に漢方治療は有効と考える。
 脳血管障害は、漢方医学的にはお血という視点から治療を行うとよいことが多い。

神経科系-5
顔面神経麻痺
 概念
 顔面神経麻痺には2型がある。顔面神経核より中核でも障害による中核性と、核より末梢い障害のある末梢性のものである。症候群的には、末梢型は顔面一側の表情筋がすべて麻痺するのに対して、中枢性では麻痺側においても前額部に皺を寄せることが可能である。中枢性障害で最も頻度の高い病変は脳血管障害であるが、多発性硬化症、脳腫瘍、脳幹脳炎などによることもある。末梢性障害で最も頻度の高いのは、いわゆる特発性顔面神経麻痺(Bell麻痺)である。このほかに、ギランバレー症候群、糖尿病、MCTD(混合性結合織病)、延髄橋角部腫瘍などに伴うこともある。
 漢方医学的に顔面神経麻痺は、風、寒、湿の外部による侵襲ととらえられてきた。近代科学的には末梢性顔面神経麻痺の病因として局部の虚血や付随する浮腫が原因と考えられており、漢方医学的にもお血や水滞の視点からの治療も考慮される。

神経科系-6
下肢麻痺、脱力感
概念
 対麻痺(両側の下肢麻痺)は胸髄レベル以下の脊髄横断性障害、対称性の馬尾神経障害、多発性神経炎型の各種ニューロパチーで生じる。遺伝性疾患のうち、シャルコ・マリー・トゥース病では対称性に前脛骨格が侵される。脊髄小脳変性症の一型で痙性対麻痺の型を呈するものもある。一側背性の下肢麻痺は錐体路障害、末梢神経障害、下肢血管障害などが考えられる。系統的な筋疾患では下肢のみ侵されることはまれであるが、発症初期では神経原性の下肢麻痺と紛らわしい症例もある。種々の補助検査によって診断を確定すべきである。
 脱力感は抑うつ状態などの精神的要因、内分泌・代謝異常・電解質異常などさまざま」な病態に付随して出現する。ここでは原因の不明な、いわゆる不定愁訴の一部を形成するような脱力感を中心に記すことにする。
漢方医学的には下肢麻痺や脱力感は、血虚や気虚、あるいは腎虚としてとらえられることが多い。
神経科系-7
概念
 交感・副交感神経系のバランスの崩れによる身体的、精神的な異常状態を自律神経失調症とよびならわしている。しかし、この種の患者の呈する愁訴がすべて自律神経系の機能異常にのみ帰せられるか否かについては疑問があり、研究者によって不定愁訴症候群とよんでいるものもある。
 漢方医学的にはこれらの病態は気の失調が主体で、それに血や水の異常がからんでいると理解される。また、五臓では肝や心の失調ととらえられることが多い。
 




 

Ads by Sitemix