内分泌・代謝系


内分泌・代謝系-1
内分泌・代謝系疾患の漢方治療について

 内分泌・代謝系疾患とひと口にいってもいろいろな疾患が挙げられる。例えば内分泌系疾患では巨人症あるいは小人症のような脳下垂体の異常による疾患、バセドウ病に代表される甲状腺の異常による疾患、副甲状腺の疾患、副腎系の疾患など非常にバラエティに富んでいる。代謝系疾患では糖代謝異常、脂質代謝異常、蛋白代謝異常、尿酸代謝異常による痛風、各種のビタミン欠乏症その他の栄養異常などが挙げられる。
 こららの疾患の多くは慢性で難治性で西洋医学的にも治療が困難なものも多い。
 これら疾患に対する漢方治療について一概に述べることはできないが、いずれの疾患においても西洋医学的治療を主にして、それの足らざるところを漢方治療で補うようにするのが原則である。なかには漢方治療だけで著効が得られたという報告がある疾患もあるが(例えば軽症の糖尿病や痛風)、漢方漢方治療がこの領域で西洋医学的治療に取って代われるほどの力はないと考える。
 この領域の疾患は自覚症状もよくみとめられる。漢方治療は症候学的治療を行うのが基本であり、治療方針決定に自覚症状をとくに重要視している。自覚症状が明らかな疾患ほど治療方針がたてやすく効果をみとめることも多いのであるが、この領域の疾患に限っては漢方の治療方針が明らかであっても西洋医学治療を併用することが必要である。


内分泌・代謝系-2
口渇、口乾

概念
 口渇や口乾は種々の疾患に随伴してくる一般症状であり、内分泌、代謝系疾患に特徴的な症状とはいえない。しかしこの症状は漢方医学では証の決定に重要な症状である。生理学的には、口渇は口腔粘膜の乾燥感を大脳が感受して生じてくる現象であるが、生体内部の水分欠乏や水の偏在を是正するために生じてくる防御的な生理調節反応による症状といえる。口渇をきたす原因としては以下のものが考えられる。
 すなわち@水分摂取不足、A水分過失過多、B唾液分泌減少、C過度のNaCl摂取、D電解質の不均衡、E神経質などである。
 漢方では口と渇いて飲水を欲する場合を口渇とよび、口は渇くが飲水を欲しない場合を口乾とよんでいる。いずれの場合も熱があると考えるが、実証の場合に口渇が多く、虚証の場合口乾が多い。


内分泌・代謝系-3
肥満

概念
 肥満は身体の脂肪組織に中性脂肪が過剰蓄積した状態である。摂取カロリーが消費カロリーを長期間にわたり上回るために生じるものである。肥満は標準体重に対する過剰体重の割合で判定する。すなわち標準体重に対し20%以上の超過を肥満とし、10〜20%の増加は体重増加とし、±10%を正常範囲内とするのが一般的に用いられている判定法である。
 肥満は症候性肥満と単純性肥満に分けられる。症候性肥満はクッシング症候群や甲状腺機能低下症などの内分泌疾患に伴うものが多く、肥満症の1〜2%ぐらいで日常外来ではほとんどみることはない。ほとんどの肥満症は単純性肥満で一般に中年ぶとりといわれるものである。
 肥満そのものはとくに問題とはいえないが、これが動脈硬化の促進、心臓疾患、脳血管障害、糖尿病などの発生と深く関係しているところに問題がある。
 肥満そのものを漢方治療で改善することは不可能である。あくまでも積極的な食事療法、運動療法が主体となる。漢方治療の適用は肥満の改善というよりも肥満に伴って生じる種々の疾患の予防と改善に効果があるといえる。例えば高脂血症の予防と改善、動脈硬化進展阻止、脂肪肝の予防と改善、肥満により生じる倦怠感、易疲労の改善などである。


内分泌・代謝系-4
やせ

概念
 やせは身体の脂肪組織の中性脂肪が減少した状態である。やせには基礎疾患の明らかな症候性のやせと、体質的なやせ(単純性やせ)の2種類がある。
 症候性のやせには、甲状腺機能亢進症、アジソン病、やせ型糖尿病などの内分泌疾患、神経性食思不振症などの精神性疾患、消化器疾患、その他慢性の消耗性疾患などが挙げられる。
 症候性のやせの場合は原因疾患の治療が必要なことはいうまでもないが、体質的なやせの場合にはとくに治療の必要はない。現代はむしろ、過剰栄養による身体の失調や病気のほうが重要である。ただやせている人は胃腸が弱い、食欲がない、疲れやすい、身体がだるい、根気が続かない、カゼをひきやすいなどと種々の不調を訴えることが多く治療が必要なことがある。
 やせの場合一般に脾虚証が存在すると漢方では考え、人参剤が主体的に用いられる。


内分泌・代謝系-5
甲状腺肥大、甲状腺機能亢進・低下症

概念
 甲状腺肥大でよくみられるのは甲状腺機能亢進症である。そのほかに単純性甲状腺腫や慢性甲状腺炎などが挙げられる。また悪性腫瘍も最近では増えてきている。これらの疾患は西洋医学の治療が主になるべき領域である。漢方治療がこの領域で存在意義があるのは西洋医学治療の副作用の軽減、あるいは西洋医学治療の治療効果を高める目的で用いる場合である。また主訴の軽減にも漢方治療はかなり有用であり、西洋医学の領域ではあるが、漢方治療の有用性もあるといえる。
 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンによる治療が主であり、漢方の比重が低いのでここでは機能亢進症に対する治療を述べる。
 甲状腺機能亢進症は主症状としては甲状腺腫、眼球突出、心悸亢進が挙げられる。ほかに易疲労、多汗、食欲異常亢進、やせ、手指の振え、さらに精神不安、興奮しやすさ、不眠などをきたす。この状態を漢方では陰虚陽亢とよぶ。患者の訴える症状により適応処方も変わるので症状をよく聞くことが大切である。


内分泌・代謝系-6
高脂血症

概念
 高脂血症とは一般に血清中のコレステロールとトリグリセライドの両方あるいはいっぽうが異常に増加した病態のことである。高脂血症は原発性と続発性の2種に大別される。原発性高脂血症には遺伝的な原因によって生じる家族性高脂血症がある。続発性高脂血症にはネフローゼ症候群、甲状腺機能低下症、閉塞性胆道疾患、糖尿病などにより生じてくるものがある。
 高脂血症は疫学的にみて発症に食習慣が深く関与することが知られており、現在では生活習慣病の一つにも挙げられている。
 高脂血症は肥満症、脂肪肝、動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞などの疾患の発症あるいは増悪と深く関係している。とくに高コレステロール血症は動脈硬化症の進展に関係しており、冠動脈疾患や高血圧症などの重大な危険因子とされている。
 高脂血症の治療における漢方薬の作用機序には不明な点が多いが、薬理実験の上で、コレステロール低下効果をみとめるとの報告もあり、やがて明らかにされると考えている。


内分泌・代謝系-7
糖尿病

概念
 糖尿病はインスリン作用の不足により生じる疾患である。これにはインスリン依存性糖尿病と、インスリン非依存性糖尿病とがある。日本人の大多数はインスリン非依存性である。このタイプは遺伝因子と深く関係し、成人に多く、過食、美食、偏食、運動不足、肥満、ストレスなどが発症や病状の悪化に関係している。とくに肥満との関係が重要視されている。
 糖尿病は腎症、網膜症、神経症をはじめいろいろな合併症が生じてくるが、これらの治療が困難である。治療は西洋医学が主となるべきであるが、漢方治療を併用することにより、食養生などが容易になる例が多く、また合併症の治療および予防に漢方治療は適している。


内分泌・代謝系-8
痛風

概念
 痛風はプリン代謝異常によって生じる高尿酸血症を特徴とする疾患で、急性の関節炎発作、腎障害、腎尿路結石を発す。
 高尿酸血症には尿酸生産過剰型と尿酸排泄低下型がある。前者の大部分は食餌性のもので、尿中の尿酸排泄量も増加している。後者では尿細管の尿酸分泌が低下し、尿酸クリアランスは特異的に低下している。
 関節炎発作は高尿酸血症から析出する尿酸塩結晶に対する生体反応により生じる。第1中足趾関節が好発部位で、急性に発症するのが特徴である。
 痛風の発生は日本人の約0.5%と推定されている。高プリン食摂取者、アルコール過飲者に多く、高血圧、耐糖能異常、高脂血症、肥満と関連がある。
 尿酸塩の沈着による慢性間質性腎炎、腎細動脈硬化症をきたした腎不全胃陥る場合もある。
 尿酸塩析出による尿路結石症も10〜30%にみられる。
 高尿酸血症の改善に対し、漢方治療がどの程度効果があるかは現在のところ不明であり、治療は西洋医学が主体になる。漢方治療は関節炎発作の改善と再発防止などを目的として西洋医学治療と平行して行われることが望ましい。







 

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