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心に働きかける治療法
(精神療法、または心理療法)
 心の病気の治療には、薬物療法と並行して行われる精神療法が不可欠です。精神療法とは、おもに言葉による治療法であり、患者さんが治療者(精神科医やカウンセラー)の前でみずからの内面を語り、治療者がそれを受容し支持していくことによって、心の問題が徐々に軽減されていくような方法をいいます(支持的受容的精神療法)。
 精神療法には色々な種類があります。ただし、最初にあげる「カウンセリング」は、悩みや症状そのものを直接解決するというよりも、物の考え方や行動を変え、心の問題に対処できるよう、精神的な自立・成長を促す最も基本的な方法です。そのため、すべての精神療法にとって普遍性を持つものと言えます。

カウンセリング
 カウンセリングは、患者さんが精神科医やカウンセラーなどの治療者に悩みを話し、心理的な援助を受けるうちに、みずから物事の見方や考え方、行動を見直し改めることにより、問題を解決する能力を身に着けていくことを目的をしています。その際カウンセラーは、患者さんが直面している問題をどう解決するのか、また、解決のための具体的な方策を与えるといったアドバイスはしません。あくまでも患者さんみずからが自己洞察し、成長する手助けをしていきます。一般的に広く心の病気に用いられますが、治療の基礎作りとしての役割が大きいでしょう。
 きちんとしたカウンセリングは、1回1時間ぐらいの時間をかけて行います。短時間のカウンセリングでは十分な話はできません。そのために、カウンセリング専門の医療機関では、完全予約制のもとで行っています。一方で「カウンセリング」と看板を立てて「10分〜15分話をきくだけ」という「にわかカウンセリング」を行っているところもあります。専門的なカウンセリングを希望するときは、「誰が行い、どのくらい時間をかけているのか、料金はいくらか」を、事前に確認することです。

家族療法
 家族の中の一人に現れている精神症状や問題行動を、その人を取り巻く家族関係(人間関係)の中で起きてくる現象だと考え、治療者のアドバイスのもとで、「患者さんと家族が、ともに治療する」ための方法です。これは、家族が持っている力を引き出し、将来に向け「どのように力を結束させていけば問題が解決されるか」という点に力が注がれます。
 家族内の力関係、各家族成員の役割変化、家族成員ひとりひとりの内的変化がうまく起こることによって、いちばん問題になっていた患者さん本人の症状が改善されていきます。また、当の患者さん本人が受診を拒否している場合でも、家族だけが通院することによって、よい効果が生まれることもあります。
 広義の家族療法には、心の病気すべてが対象に含まれますが、家族療法を実施している専門機関はまだ少なく、保険の対象外のため、すべて予約制・自費診療になります。しかし患者さん個人のみに対する治療(個人精神療法)だけで問題解決すると考えるよりも、家族全体の問題としてとらえることが、心の病気では非常に大切なのです。

精神分析的精神療法
「人間の心には、自覚することのない無意識の部分があり、この働きが夢の内容や意識にも影響を及ぼし、症状も本音が無意識の中に抑圧されることによって現れる」。
 精神分析療法は、有名な精神科医フロイトの、この理論をもとに始められた治療法です。
 患者さんは長椅子(カウチ)に横になった状態で、心に浮かんでくることをすべて言葉にして、医師に伝えます。(自由連想法)。これを続けることで、患者さんの無意識の中に抑圧されたメッセージが意識に現れ、言葉として語られるといわれます。
 現在は、これをもとに、修正された精神分析的精神療法を行うことがほとんどです。ただし、精神分析にはいろいろな流派があり、治療者によって考え方に多少の差があることを知っておきましょう。
 精神分析療法は原則的に1回50分位、週4回以上と決められていましたが、現在では、1回30分〜60分、週に3回以下というところが多くなっています。対象となる病気には、解離性障害、持続性疼痛障害、恐怖症、強迫神経症、うつ病、一部の人格障害などが含まれます。

指示的精神療法
 精神分裂病など、妄想や幻覚を伴う精神病に用いられます。これは、病気が回復に向かい、実社会に復帰する過程で起きる現実的問題に適応していくための援助法です。
 患者腺が現実に直面したために起こる混乱や葛藤を、治療者が受け止めて、友好的な態度で緊張をほぐし、じっくり話を聞きながらひとつひとつの現実的問題に指示を与えていきます。

森田療法
 精神科医、森田馬博士により、大正期に創始されたため、この名がついています。特に対人恐怖症の患者さんに有効な場合があり、たとえば赤面恐怖に対しては「人前で赤面する」といった症状をなくすのではなく、心と症状のすべてを受け入れ、赤面してしまう心のからくり(精神相互作用)を打ち砕くという目的です。原則としては入院して受ける治療法ですが、外来でも実施しているところがあります。
※精神分析的精神療法、森田療法は保険の適用になりません。費用は治療者によって異なりますが、精神分析の場合、1回1万5000円〜2万5000円程度です。

認知療法
 うつ病の患者さんは、物事をすべて否定的に捉えます。「なぜ、こんなこともできないのだろう」と考え、次に「それは自分がダメな人間だからだ」と、はじめに浮かんだ考えを悪い方に悪い方に転がしていきます。
 認知療法は、気持ちが下向きになるたびに立ち止まり、心の軌道修正を行いながら、気持ちを上向きにするという治療法です。
 気持ちが動揺したら「なぜ、このように否定的に考えるのか。否定的に考えることのメリットはあるのか」と自分の考えたことを追及します。それでも、否定的な考え方がぬぐいきれないときは「だったら、どんなひどいことが起きるのか。別の行動をすれば、何か困難なことが起きるのだろうか」と自分自身を客観的に考えるようにします。最後は「別の考え方がないだろうか」と柔軟な考え方を見つけ出すようにします。

行動療法
 行動療法では、患者さんの問題をされる症状や行動が、これまでの生活体験の中で獲得したものだと考えます。そこで患者さんに、どのようなものが身についているのかを解明して、今後どんな体験を与えると望ましい考え方や行動を身につけて、症状や問題行動をなくすことができるかを考えます。おもに、薬物依存症、アルコール症、恐怖症などに用いられます。

認知行動療法
 苦手なことをしなければならないとき、ペースが落ちたり、はじめからあきらめたりすることがあると思います。認知行動療法は、こうした「苦手だ」という問題の起因になる考え方を修正することを基本に、問題解決能力をつけていく方法です。

集団精神療法
(グループ療法)
 同じ病気を持つ患者さんが、3〜4人から10人ぐらいの小グループを作り、1〜2人の治療者が参加します。そこで患者さんは自分の病気や悩み、性格、考え方などを自由に話します。
 こうすることで、じぶんだけが悩んでいるのではないこと、自分の話や考え方が他人の助けになることなどを体験します。そして苦しみを共有し、理解者が他にもいあることを認識することにより、自分の殻から抜け出る、治療に意欲的になるなど、多くのプラス要素が引き出せます。精神分裂病、アルコール症、薬物依存症、恐怖症、うつ病、摂食障害など、多くの病気に用いられます。

芸術療法
 言葉で自分の状態をうまく表現できない児童・年少者、言語的精神療法に不向きな患者さんなどに対して行う、自己表現促進法のひとつです。芸術という方法を通して、患者さんの内面にあるものを外に出し、精神的な効果を得る療法です。
 自己表現したものを改めて見直すことで、自分の持つ問題をクリアにして客観的に捉え、なぜ、その問題が起きているのかを考える道筋にもなります。また、表現することで表に出なかった感情を開放することができ、喜びや充実感も得られます。芸術療法には絵画療法、箱庭療法、音楽療法、ダンス療法、書道療法などといった技法があります。
 また、絵や箱庭などの作品は、治療者によって分析され、症状を知る上での大切な情報となります。

自律訓練療法
 ひとつの公式にのっとりながら行うリラクゼーション・トレーニング。疲労回復、精神安定、集中力のアップ、不安、不眠の解消などから、体の冷え、肩こりなどの身体的症状や、慢性的なストレスにも効果的です。次の方法で、実際にやってみましょう。

作業療法・リハビリ
 作業療法はおもに入院中の患者さんが社会復帰を目指し、職業に就くために必要な集中力、規律、持続力を高めるために行われる治療法です。多くは病院内でさまざまなプログラムのもとに行われ、園芸、土木、喫茶店などのサービス業体験や動物飼育などを通して、現実認識を担い、やる気を持たせ、社会に順応できるように心身を活性化させていきます。退院後も、病院の外来や保健所、精神保健センターや障碍者福祉センター、家族会が運営する施設などに通所しながら、ケースワーカーなどの指導のもとで同様のことが受けられます。
 また、これとは別のタイプのものになりますが、将来、就職ができるようにするために、就労援助を目的にした「精神障害者作業所」も地域に設けられています。精神障害者作業所には、パン屋、喫茶店などのサービス業を展開しているところや、藍染め、竹細工などを作る作業所などがあり、患者さんは通所し、職場の疑似体験をしながら、社会復帰を目指します。
 この他に、精神病院やメンタルクリニック、保健所や精神保健福祉センターなどで実施しているデイ・ケア(リハビリのための通所のグループ活動)と呼ばれるものもあります。デイ・ケアは、スポーツや音楽、ゲーム、料理教室、小旅行など、各種レクレーションを通じた仲間作りなどのリハビリ的な役割と、生活指導や相談を受け、指導するといった福祉的な役割を併せ持っています。参加を希望する場合は、治療を受けていた医療機関や保健所などに問い合わせ、相談してみましょう。


心の病気の自己治療法(養生法)
 これまでは、おもに医療機関で受けられる治療法について述べてきました。しかし、心の病気は、患者さん自身の治ろうとする力なしでの回復は難しいといえます。ここでは、治療中や回復後に自分でできる治療法(養生法)について説明しましょう。はじめは基本的なことからです。

薬は指示通り飲む
 一般に心の病気の治療は、回復したり、悪くなったりを繰り返しながら、根気よく続けられます。少し良くなったからといって、急に薬をやめてしまったり、飲んだり飲まなかったりでは、治療の意味がなくなり、せっかくいいところまで回復していても、スタート地点に戻ってしまいます。また、長期の薬物療法では、病気の具合によって薬の量を減らしたり、(減薬)、一時薬を中止してしまう(休薬)ことが可能の場合もあるので、続けて薬を飲むことへの不安や副作用への心配などは、率直に精神科医に相談することが大切です。睡眠薬などでは「飲まなくても寝られそう」と感じることもあるでしょう。そうしたときは、精神科医に必ず相談して、指示をもらうようにしましょう。

受診は定期的に
 内科的な病気でも、定期的な診察は欠かさず、時には検査を行い、治療の効果を確認しながら治療を続けます。心の病気も同じです。心の病気は、まずは、患者さんの顔を見て、会話をすることが何よりも大切ですし、それが治療の成果を見る大切な指針となります。少し調子がいいからと受診をサボることのないように。「医者の顔でも見に行くか」「今の自分には、受診は仕事のひとつ」という気持ちで、足を運んでください。

生活習慣
 心の病気の多くが、「夜眠れない」「朝方早く目が覚める」「夜、寝なくても疲れない」という症状を伴います。そのため、昼間ウトウトして、夜起きている人が多いものです。しかし、無理に生活パターンを朝型に変える必要はありません。はじめのうちは、昼間眠いのなら、好きな時にゆっくり眠っても構いません。まずは、一日のうちのどこかで、十分な休息をとり、少しずつ夜眠れるような生活に変えていけばいいのです。生活パターンの改善は、かかっている病気の種類や病状により方法が異なりますから、治療を受けている精神科医に相談してみましょう。

軽い運動をしてみる
 気分がいいと感じたときでよいので、少し体を動かしてみましょう。立ち上がって、両手を頭の上で組んで、左右に体を曲げる、前に体を倒すといった、簡単なストレッチで構いません。天気がよければ「歩く」ことがいい運動になります。家の周囲を軽く散歩してもいいですし、ひとりが不安ならば、家族と一緒に散歩をしてみてはどうでしょう。体を動かすことが「気持ち良い」と感じるようになったら、少し速度を速めて、歩く時間も少しずつ長くすると、負担になりません。景色を見て、空気に触れ、季節を感じながら歩いてみましょう。軽い疲労感は、夜の眠りを誘導してくれます。
 ただし気持ちが落ち込んでいたり、不安が続いているときなど、症状が出ているときは、無理に体を動かす必要はありません。

回復期の過ごし方
 治療の成果があがり、気持ちも安定し、そろそろ社会に戻れそうな頃になると、急に張り切ってしまう患者さんがいます。もともと、心の病気になりやすい人は、まじめで、几帳面な人が多いので「回復」と聞いただけで、すぐに100%の力を出そうと無理をしようとします。
 どんな病気でも、病み上がりには「慣らし」が必要です。仕事に復帰するのなら、少しずつ時間を増やすなどにして、はじめは30%ぐらいの力から、徐々に時間を増やすようにしましょう。新しい仕事に就こうとする場合は、主治医によく相談することも大切です。
 また、仕事ばかりでなく、趣味の時間を持つようにするのもよいでしょう。絵を描く、あまり頭を使わないゲームをやる、植物を植えるなど、なんでも構いません。小ことがなごむものを見つけて、始めてみるとよいでしょう。

予防・治療に役立つ
リラクゼーション法
 自宅で簡単にできるリラクゼーション法は、心と体の緊張をほぐし、健康に役立ちます。いくつかの方法を紹介しますので、思いついたときにためしてみましょう。また、病院などの施設で開催しているデイ・ケア(レクリエーションやゲーム)などへの参加も、気分転換になります。機会があれば、参加してみるのも一法です。

【腹式呼吸法】
 私たちは、ふだん胸のあたりで浅い呼吸を繰り返しています(胸式呼吸)。しかし、心の病気に本当に役立つのは腹式呼吸です。腹式呼吸は、中国の気功師、スポーツ選手、音楽家などが必ず行うことからもわかるように、リラックスするための基本的な方法です。1日、2〜3回でも、時間のあるときにやってみましょう。
 また、腹式呼吸は、恐怖症などで心臓がドキドキする、パニック障害で二酸化炭素が過剰に排出され、けいれんなどが起きる(過換気症候群)など、発作のときにも役にたちます。ぜひ覚えておいて、発作が起きたときは、心の中で「腹式呼吸」と言い、焦らず実行してください。また、普段の腹式呼吸では、目を閉じて心地よい情景を思い浮かべる「イメージ法」を組み合わせると、さらにリラックスがはかれます。

【音楽・アロマテラピー】
 音楽や香りは心の緊張をほぐし、活性化させるために役立ちます。いい香りが漂う中で、音楽を聴いて、一息入れる習慣をつけるだけでも、ストレス解消には役立つものです。最近は、癒し系の音楽を収録したCDもたくさん売られています。好みに合うものがみつかれば、利用してもよいでしょう。しかし、いくら「癒し系」と書かれていても、自分の嫌いな楽器の音や曲の場合は、逆にストレスになります。これはアロマテラピーでも同じことがいえます。いくら「リラックスを誘う香り」とあっても、自分の嫌いな香りならば効果はありません。よく選んで、あくまでも自分の好みに合うものを買うようにしましょう。

【ヨーガ】
 ヨーガとは腹式呼吸と姿勢、瞑想を組み合わせて、心身の緊張をほぐし、心の安定をやすらぎを得るものです。ぜひ覚えて、やってみることをおすすめしますが、ヨーガの技法にはいろいろなものがあり、また、独学でコツをつかむのは難しいといえます。まずはヨーガ教室などを探し、指導を受けながら練習しつつ、少しずつ自宅で試みるのが早道です。 
 特に心気症、パニック障害、種々の心身症などに効果があります。

【レクレーション・スポーツ】
 病院などの施設では、おもに精神分裂病などの回復期にみられる「無関心・無感動」を改善する目的で行っています。方法はゲームやスポーツなどですが、「ルールと結果に対し患者さんがどれだけ刺激を受け、意欲的に取り組めるか、成果に対する喜び(報酬効果)、単調な日常生活にメリハリをつけ気分転換をはかる、などに主眼が置かれます。
 また、体を動かすことが、心身のリラックスを招く効果があります。回復後も、無理のない程度でこうした行事に参加するとよいでしょう。


ドメステック・バイオレンス(DV)
 配偶者や同居中のパートナーから暴力を受けることを「ドメスティックバイオレンス(DV)」と呼びます。日本では、家庭内だけに留めようとする風潮から社会の中で潜在化が続き、たとえ公になったとしても「単なる夫婦ゲンカ」と捉えられ、暴力をふるわれたほうは、どこにも逃げ場のない状態が続いていました。
 しかし、1980年代後半ごろより少しずつ社会問題化され、民間のシェルターができはじめ、2001年にようやく法律(いわゆるDV防止法)ができ、ようやく法律で裁かれるようになりました。DVには身体的暴力、精神的暴力、経済的暴力、社会的暴力、性的暴力などがあります。DVを受けた人は、うつ病や外傷後ストレス障害など、精神的に重大な影響を受けることがあります。

パートナーから暴力を受けたら…
 激しい暴力を受けた場合は、警察に通報することです。暴力を行った方はほごされます。また、非日常的暴力に悩んでいる場合は、地域の福祉総合相談所や民生委員に相談するのも方法です。DVは必ずしも男性が加害者で女性が被害者というわけではありませんが、男性から女性への暴力については各都道府県に設けられている女性相談所や福祉相談所の婦人相談員に相談するとよいでしょう。暴力の程度によっては、シェルターを紹介してくれることもあります。シェルターとは運営スタッフが相談を受けてくれたり、場合によっては一時保護もできる施設です。

加害者の治療
 外国では、DV加害者の治療を本格的に取り組んでいる施設がありますが、日本でも最近になってようやく取り組む治療者が登場してきました。
 DV加害者には、アルコール、薬物依存症、人格障害など、心の病気を患っている人が少なくありません。また、被害者の中にも暴力を受ける以前から心の病気を抱えている人もいます。

ドメスティックバイオレンス(DV)の種類
身体的暴力
・なぐる、蹴る、首を絞める、
・刃物で切る・組み伏せる
・床に投げる・髪を引っ張る・物を投げる
・子供の前で暴力をふるう

精神的暴力
・「教養がない」「バカ」「食わせてもらっているくせに」「不能者」などとののしる
・相手の好きなものを傷つける、壊す
・一方的にまくしたてる
・無視する

社会的暴力
・家にいれない・外出を禁止、制限する
・行動を監視する・友達や親と連絡をさせない
・郵便物を隠す、勝手に開封する

経済的暴力
・生活費を入れない・ギャンブルなどで生活費を使い込む
・借金を続ける・家事を放棄する

性的暴力
・セックスを強要する・性病のリスクがあるのに予防しない
・避妊に協力しない(妊娠しても自分の子ではないと言う)



自律神経失調症

 社会が複雑になり、価値観が多様化してきた現在、女性にとってはどう暮らしていけばいいのか、選択に迷う問題がどんどん多くなっています。
 家庭で、職場で、夫や子供のこと、上司や同僚、部下のこと、はたまた介護、新しい機器の使いこなしなど、枚挙にいとまがないほどです。このような環境のなかで、心もからだも疲れ切っている人が増えています。
 さらに女性特有のホルモンの影響が拍車をかけて、心やからだは大きなストレスを受けています。
 その結果、病院で検査を受けてもほとんど異常が認められず、めまい、肩こり、頭痛、動悸、げりや便秘、慢性的な疲れ、気分の落ち込みなど(不定愁訴)のつらい症状を繰り返し起こすことになります。
 このような症状に悩む女性が、最近、とくに増えています。これは、『自律神経失調症』といわれる心身の異常で、この病気を治すためには、心とからだの両面からの治療が必要なのです。

ズバリ!つらい症状とその治し方
 〈全身症状〉
 疲れやすい疲れがとらないだるい(倦怠感)
 睡眠障害
 微熱
 かぜをひきやすい
 めまい立ちくらみ
 食欲不振
 のぼせる ほてる
 息苦しい 吸いにくい
 動悸

 〈部位別症状〉
 頭痛
 眼精疲労
 耳鳴り
 のどの渇き 口渇
 のどの異物感 食堂がつまった感じ
 首・肩のこり
 手足の冷え
 腹部の張り
 便秘
 下痢
 頻尿
 皮膚の乾燥・荒れ

〈女性特有の症状〉
 月経前緊張症
 月経痛
 性欲減退
 
〈心の症状〉
 不安感 
 憂うつ感
 イライラ感

   
「自律神経」
とはどんな神経なのでしょう!?

●無意識的にからだの働きをコントロールする「自律神経」
『自律神経失調症』を理解するためには、「自律神経」という神経が、どのような働きをしているのかを知っておきたいものです。
 私たちの神経系は大きくふたつに分類されます。ひとつは木の幹に当たる「中枢神経」(脳および脊髄)もうひとつは木の枝にあたる「末梢神経」です。
 末梢神経はさらにふたつに分類されます。意志によって動かすことのできる「体性神経」これは「動物神経」ともいわれます。そして、人間の意志とは関わりなく身体機能の調整を担っている、無意識的な神経でる「自律神経」のふたつです。
「自律神経」は無意識的な活動をするため、動物神経に対して「植物神経」ともいわれます。
 そして、この「自律神経」は「交感神経」と「副交感神経」の2種類から成り立っています。この2種類の神経がお互いにバランスをとりあって、身体の内部環境の「ホメオスターシス」(生体の恒常状態を維持する機能)を担っているのです。
 簡単にいうと、「自律神経」はビデオカメラの微調整機能のような働きをしています。画面の明るさ、ピント、色彩、音量などを自動的にベストの状態で撮影するコンピュータのような役目をするのです。

●緊張とリラックスが調和してからだの働きがスムーズに!
「自律神経」は交感神経と副交感神経のふたつから成り立っていることは先程お話ししましたが、このふたつの神経についてもう少しお話ししていきましょう。
 交感神経は”活動する神経”といわれます。仕事や運動をする時に、心臓の拍動や血圧を高める働きをして、緊張の状態をつくり、精神活動を活発にさせます。
 副交感神経は”休む神経”といわれ、内臓や器官の働きをリラックスさせる神経で、休息や睡眠などをとる時に働きます。からだをスムーズに働かせるために、このふたつの神経は、お互いにバランスを取り合っているのです。ビデオカメラの微調整機能でいうと、交感神経と副交感神経は一方がより明るい、もう一方がより暗い画面にしようと働きます。明るすぎる場所、暗すぎる場所であっても、より見やすい状態でビデオに録画されるわけです。

感情の変化と「自律神経」の働き
●平穏、休息
 交感神経と副交感神経がバランスよく働く
●驚き、突然の恐怖、激しい怒り
 交感神経が極度に興奮する
●持続的な不安、緊張、怒り、興奮
 交感神経と副交感神経の両方がバラバラに興奮する
●失望、抑うつ、憂うつ、悲哀、疲弊状態
 交感神経と副交感神経の両方の働きが抑えられる

脳のしくみと「自律神経」
 人間の大脳は、外側より「大脳皮質」「大脳辺縁系」「視床下部」という構造になっています。「自律神経」の中枢は一番内側の視床下部というところにあります。
 人間の高度な精神活動は、いちばん外側の大脳皮質が行っています。その下の大脳辺縁系は、喜怒哀楽、食欲、性欲、集団欲(同じ仲間と集団をつくりたいという欲求)などの、動物に欠かせない本能的な欲求を生みだします。
 私たちが日常、心に思い信じること、心の支えにしていることは大脳皮質が行い、腹を立てたり、泣いたり、仲の良い友達と集まることは大脳辺縁系が行っているというわけです。なんだか改めて意識してみると、とても不思議な感じさえしますよね!
 そして、大脳辺縁系で出された欲求は、視床下部から「自律神経」に伝わり、最終的には循環器や呼吸器、消化器などに伝わっていきます。

脳の働きと「自律神経」
 大脳皮質…知、情、意など高度な精神活動をつかさどる

 視床下部…生命活動をつかさどる。「自律神経」と内分泌の中枢

 大脳辺縁系…食欲、性欲、集団欲などの本能、喜怒哀楽などの情動をつかさどる

大脳辺縁系から出された欲求は、視床下部を通って「自律神経」に伝わるが、大脳皮質の働きによって欲求を抑えているうちに「自律神経」の働きが乱れてくる

『自律神経失調症』になってしまうと…

●『自律神経失調症』が起こるメカニズム
『自律神経失調症』とは、交感神経と副交感神経がバランスよくくずした状態です。「自律神経」は、体内の臓器や器官が円滑に働くように、常時コントロールをしているわけですから、「自律神経」のバランスがくずれてしまえば、全身のいたるところに、さまざまな症状があらわれてきます。
 では、なにが原因となって「自律神経」はバランスをくずすのでしょうか。
 ひとつは、その人が生まれつきもっている体質(交感神経と副交感神経の作用のバランスのくずれ)が大きく影響しています。また、その人の性格や精神状態、環境、心理、社会的ストレスなども大きく影響しています。
 主として昼間働く交感神経、夜間働く副交感神経のリズムが、狂ってしまうのです。

●いくつもの不快な症状が一度にあらわれることも!
「自律神経」のバランスがくずれてしまうと、倦怠感、めまい、不眠、食欲不振などの全身症状が、とくにあらわれやすくなります。また、肩こり、頭痛、耳鳴り、便秘など部位別症状や、不安感、イライラ、憂うつなどの心の症状があらわれることがよくあります。しかも、これらの症状が一度に重なることもよくみられます。
 『自律神経失調症』の症状の特徴として、全身症状や部位別症状、心の症状が、ある時には単独で、ある時には重なり合って、からだのあちこちに、突然、現れたり消えたりします。そして、このような症状が、何度も繰り返されるのです。症状は多種多様で、個人差が大きく、現れ方も、人によって異なることが多いようです。

●原因不明の倦怠感やめまいに要注意!!
 全身に不快な症状が起こり、医師の診察、検査を受けても、とくに病的な異常が見つからないことがあります。
 このような症状を総称して、一般的に「不定愁訴」といいます。
 『自律神経失調症』では、この不定愁訴が善意sンのいたるところにあらわれます。
 健康な人でも、日常生活のなかで不定愁訴と同じような症状を訴えることがあります。激しい運動のあとの動悸、疲れた時の倦怠感、悩みのある時の不眠、不安。
 しかしこれらは原因がはっきりしている場合が多いので、病気とはかぎりません。
 要チェックなのは、これらの症状が思い当たる原因がないのに起こる場合です。なにもしていないのに何日も疲れがとれない、めまいがする、からだがふらつくなどの場合は要注意です。

原因不明の不快症状は要注意!!
疲れやすい、いつもからだがだるい
気分が落ち込む
よく眠れない、寝起きが悪い
不安でしかたがない
動悸が激しくなる
フラフラする、めまいがする
無気力、脱力感がある
頭痛、肩こりに悩まされている

第一荻窪大森クリニックのカルテより〜商社勤務、26歳の女性の場合〜
 26歳の商社に勤める女性が動悸、食欲不振、便秘、慢性疲労を訴えて来院されました。総合病院で精密検査を受けたそうですが、主治医から「異常なし」といわれただけで、薬も出なかったそうです。彼女のライフスタイルは、朝起きて朝食もとらず、メイクもそこそこに家を出る、長時間の通勤時間、職場では以前より多い仕事量、自宅に持ち帰っての仕事で眠りにつけません。午前1時を過ぎても長時間続く緊張、欲求や感情の抑制、生活リズムの大きな変化が交感神経と副交感神経のアンバランスを促進させ、『自律神経失調症』と発症させる要因になっていたのです。

『自律神経失調症』には4つのタイプに部類されます
●本態性自律神経失調症
 このタイプの人は、生まれつき「自律神経」の調節機能が乱れやすい





























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