筋肉・関節の症状と異常

肩こり・頸肩腕障害

◎ストレスで増幅される
 長時間同じ姿勢を続ける仕事などでおこる首や肩のこりは、精神的なストレスや緊張感などが強いとさらに増幅されがちです。


肩こりになりやすいタイプ
@姿勢が悪い人(猫背など)。
A運動不足の人(肩の筋力低下)
B自律神経機能が不安定な人。
C神経質・きまじめ・内気な人。
D首の骨に先天的奇形のある人。

 こうした首や肩のこりは、」日常誰にでもおこり、通常は一定の休息を」すれば治まります。
 しかし、なかには首や肩のこりは症状が強く出やすい人や、なかなか治らない人、短期間治ってもすぐ再発する人などもみられます。
 コンピューターやワープロの操作などをしている人は、職業的な筋肉疲労が過度に蓄積し、肩や上腕部の筋肉痛が慢性化しがちです。しびれや冷感を伴うこともあります。この場合は、「頸肩腕障害」とも呼ばれます。
 また、「頸肩腕症候群」と呼ばれるケースもあります。
 「頸肩腕症候群」は、首や肩、腕などに、こりやしびれ、痛み、血行障害などがおこるものの総称でもあり、頸肩腕障害も「頸肩腕症候群」の一種といえます。
 「頸肩腕症候群」は、さまざまな原因でおこりますが、症状のおこり方の違いによって幾つかのタイプに分けられています。
 よくみられるのは、胸郭の出口で神経が圧迫される症状がおこるもの(胸郭出口症候群)や、頸椎の後ろを通る神経が圧迫されて症状が現れるもの(変形性頸椎症)などです。


肩こりをおこしやすい職業
●キーボード操作従事者。
●出産・育児の負担感が強い若い主婦。
●ノルマやタイムリミットにおわれる仕事の人。
●緊張感の強い職場にいる人など。


◎かぜの初期の肩こりにも漢方薬
 首や肩のこりは、何らかのはっきりした「身体病」が影響しておこることも多いので、十分注意する必要があります。このような場合は、まず原因疾患を正確にみつけ出し、その治療を行わなければなりません。
 はっきりした異常がないのに、首や肩のこりがあるような場合は、漢方療法が優れた効果を示します。
 首や肩のこりが一過性のものか、時々しかおこらない時は、西洋薬のハップ剤(貼付薬)などでも十分ですが、頭痛を伴ったり、かぜのひきはじめの時ならば葛根湯が効果的です。

◎慢性的な肩こりには柴胡剤
 慢性化した肩こりの場合は、体力があって、首の後ろから肩・背中にかけてこりがあり、関節痛などを伴っていれば葛根湯、疲れやすくて食欲不振で口臭があるようなら四逆散、それと同様の症状で便秘があれば大柴胡湯などを用います。
 また、肥満体で頭痛・胸焼け・便秘などがあれば防風痛聖散を用います。
 体力がふつうなら、臍下の抵抗感と圧痛があり、頭痛・のぼせ・足腰の冷えなどを伴えば桂枝茯苓丸、こりが強い時は芍薬甘草湯などを用います。
 体力がなく、貧血・冷え症・頭重・腹痛があれば当帰芍薬散、虚弱体質の女性や高齢者で、肩こりや神経症状があれば香蘇散などを用います。


◆慢性肩こりに用いる主な処方チャート◆
主要症状
肩こり・首のこり・腕のこり・疼痛・しびれ・冷えなど

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       虚弱体質や高齢で神経症状も強い        香蘇散・釣藤散
                   貧血・冷え症・頭重・腹痛              当帰芍薬散 苓姜朮甘湯

ふつう(中間証)         肩や首、腕などのこりが強い            芍薬甘草湯
                   脇下の抵抗と圧痛・頭痛・のぼせ・冷え      桂枝茯苓丸

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       肥満体・頭痛・胸やけ・便秘気味          防風痛聖散 三黄瀉心湯
                  疲れやすい・食欲不振・口臭・便秘あり       大柴胡湯・続命湯
                  疲れやすい・食欲不振・口臭・便秘なし       四逆散
                  首の後ろから肩や背中にかけてのこり・関節痛  葛根湯


肩関節周囲炎
(五十肩・四十肩)

◎肩関節の老化でおこる
 肩関節周囲炎は、肩関節の腱が老化して傷つき、肩の関節部に炎症がおこる病気です。40〜60歳頃に発症することが多く、「五十肩」とか「四十肩」などとも呼ばれます。
 典型的な場合は、強い炎症と痛みがおこる急性期を経て、炎症部位が癒着し、肩関節がこわばって運動障害をおこす慢性期に移行します。
 急性期の炎症や疼痛は、突然おこることが多いのですが、あまり気づかないうちに徐々に肩の痛みが強くなってくることもあります。
 いずれの場合も、ひどくなると痛みで腕を動かせなくなり、「シャツを脱ぐ」「帯を結ぶ」というような動作ができなくなります。
 急性期の症状は、通常は大体2〜4週間程度で始まります。
 しかし、慢性期のこわばりや運動障害はしばしば半年〜1年くらい続きます。

◎肩の負担を軽くして温める
 肩関節周囲炎の治療では、漢方薬が優れた効果を示します。
 この場合、漢方薬と温熱療法を併用すると、効果が高められることが少なくありません。
 肩関節周囲炎の温熱療法では、肩のこわばりを防ぐために、入浴などでよく温めることが大切です(一時的に三角布で上腕を固定することも必要)。
 無理に運動することや、重い物などで肩や上腕に負担をかけることが一番いけません。

◎五十肩に有効な処方も多い
 肩関節周囲炎の漢方療法は、肩の痛みを和らげ、治癒を促進するもので、急性期だけでなく、慢性的にも治療効果が得られます。
 「実証」タイプで、首や背中のこわばりもある時は葛根湯、「中間証」で比較的急性に痛みがおこった場合は桂枝二越婢湯、慢性化してかなり経過した場合は麻杏よく甘湯などを使います。 
 「虚証」タイプの場合は、肩の痛みが強く、発汗・手足のひきつり・尿量減少などを伴えば桂枝加朮附湯、上半身のほてりと下半身の冷えなどを伴えば五積散などを用います。


◆肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)に用いる主な処方◆

 証      目安となる症状                    処方名

実証    項・肩・背中などが硬くこって痛む           葛根湯
実証    肥満体で便秘する人の五十肩             桃核承気湯

中間証  比較的急性の痛み・頭痛・発汗             桂枝二越脾湯
中間証  慢性化してかなり経過・のぼせ・肌あれ        麻杏よく甘湯
中間証  肩の痛み(実証〜虚証まで有効)            二朮湯
中間証  慢性で治りにくい肩の痛み                よく苡仁湯・烏薬順気散
中間証  急激な痛みに頓服的に使用・けいれん性疼痛    芍薬甘草湯

虚証    慢性化してかなり経過・発汗・尿量減少        桂枝加朮附湯
虚証   上半身がほてり下半身が冷える人の五十肩     五積散


腰痛症

◎慢性腰痛が増えている
 腰痛には、種々の原因があります。
腰痛の原因を大別すると、@主に筋肉・靭帯の炎症によるものや不定愁訴的な腰痛、Aぎっくり腰(腰椎捻挫)・椎間板ヘルニア・変形性脊椎症・脊椎分離症・すべり症などの骨・関節部の障害によるもの、B内臓疾患や全身性の病気・異常の影響によるものなどに分けられます。


専門医の検査・治療が必要な腰痛
●1週間以上経過しても、痛みが軽減しない。
●我慢できないほどの痛みが次第に強くなる。
●疼痛部位が移動する。
●足が動かなかったり、排尿・排便障害がでる。
●知覚まひがおこる。


腰痛予防のための生活上の注意
●正しい姿勢(背骨をのばしてあごを引き、両肩は自然に下げる)。
●同じ姿勢を長時間続けない。
●硬めの寝具に、膝の裏側にクッションを立てて寝る。
●日頃、背筋と腹筋をきたえる。
●車の運転は、運転シートをあまり後ろへ引かず、背もたれも倒さない。
●重いものを持ち上げる時は無理せず、腰を下ろして、持つ物を身体に近づけて持ち上げる。
●無理な運動、特に体幹をねじる運動をひかえる(ゴルフやテニスは左右均等に振るようにする)。
●ハイヒールは履かない。
●椅子はやや硬めに。
●腰を冷やさないように注意する。
●太り気味の人は減量する。
●牛乳などでカルシウム・蛋白質を充分に摂り、野菜からビタミンを充分に摂る。偏食は厳禁。


 日常最も多いのは、@の主に筋肉・靭帯の炎症によるものや不定愁訴的な腰痛です。
 このタイプの腰痛は急性で一時的なものもありますが、慢性化するケースが少なくありません。慢性化したものは、「腰痛症」という呼び方をされることもあります。
 こうした慢性腰痛は、デスク・ワークの人や運動不足の人などに急増しています。しかし、西洋医学の治療でははっきりした効果が得られないことも多く、漢方療法を行うケースが増えています。

◎激烈な腰痛にも漢方を併用
 一方、Aの骨・関節部の障害による腰痛では、腰椎捻挫(ぎっくり腰)・椎間板ヘルニア・変形性脊椎症によるものが多く見られます。
 腰椎捻挫は、重い物を持ち上げた時などに、背骨の一部である腰椎の周辺組織や、腰椎と腰椎の接続部の組織(椎間板)などが一時的に損傷されるもので、激しい腰痛がおこり、まともに立っていられなくなります。
 また椎間板ヘルニアは、腰椎(腰骨)と腰椎の間の衝撃を吸収するクッションの役割を果たしている椎間板が、老化したり傷んだりして変形し、付近を通る座骨神経などを圧迫するようになっておこります。
 若い人にも多く、発症すると激烈な腰痛がおこります。
 腰椎捻挫や椎間板ヘルニアなどは痛みが強烈で、治療は西洋薬の鎮痛剤と安静が主体となります。ただし、漢方を併用すると治療効果や再発予防が高められることが少なくありません。

椎間板ヘルニアのおこり方

A 正常の椎間板
B 線維輪に水けがなくなって裂けめを生ずる
C 髄核が裂けめを通って後・外側の方に飛び出してくる
D 髄核が繊維輪から脱出して神経の根もとを圧迫する

※椎間板は、腰椎(腰骨)と腰椎の間にある組織で、繊維論と髄核で構成されている。正常時は弾力性が強く、腰椎と腰椎の間のクッションの役割を果している。

◎漢方薬は予防効果も得られる
 変形性脊椎症は、椎間板が老化などによって変成し、その影響で腰椎の突端などが変形しておこるもので、動作の開始時に鈍痛などがおこります。
 老人性の病気で、軽症なら放っておいても軽快しますが、漢方薬などを使えば予防効果も得られます。重症化した場合は、整形外科的な治療が必要になります。
 脊椎分離症・脊椎すべり症は、脊椎の先天的な奇形や外傷などでおこりますが、無症状のものも少なくありません。




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