today's
今日の治療指針
私はこう治療している

消化管疾患
 逆流性食道炎・食道潰瘍、バレット食道、食道裂孔ヘルニア
 機能性ディスペプシア
 胃切除後障害
 腸管癒着症
 偽性腸閉塞、巨大結腸症、鼓腸、呑気症
 むねやけ、げっぷ、もたれ感

膠原病および類縁疾患
 シェーグレン症候群
 繊維筋痛症と慢性疲労症候群

神経・筋疾患
 血管性認知症
 慢性硬膜下血腫
 パーキンソン病の内科的治療
 球脊髄性筋委縮症(Kennedy‐Alter -Sung病)
 筋クランプ(こむら返り)

精神疾患
 アルツハイマー型認知症
 非アルツハイマー型変性認知症
 統合失調症(初回エピソード)

泌尿器科疾患
 後腹膜腫瘍、後腹膜線維症
 男性不妊

皮膚科疾患
 凍瘡

産婦人科疾患
 月経困難症
 更年期障害、ホルモン補充療法
 更年期のうつ
 子宮内膜症

小児科疾患
 小児の慢性腎炎症候群
 被虐待児症候群(子どもへの虐待)

耳鼻咽喉科疾患
 滲出性中耳炎
 咽喉頭異常感症
 嗅覚障害
 味覚障害

介護に関わる問題
 昼夜逆転患者のケア



逆流性食道炎・食道潰瘍、バレット食道、食道裂孔ヘルニア

T逆流性食道炎
病態と診断
 逆流性食道炎は胃食道逆流性(GERD)のうち、潰瘍・びらんなどの粘膜傷害を伴うカテゴリーに位置づけられ、びらん性GERDともよばれる。粘膜障害を伴わない非びらん性GERDと区別されるが、両者を併せたGERDは「胃内容物の食道への逆流によって不快な症状や合併症を起こした状態」と定義されている〔モントリオール定義(2006)〕。逆流する「胃内容物」は、ほとんどの場合胃酸であり、胃酸以外の逆流(胆汁など)が主因となることはまれである。「不快な症状」とはむねやけ、呑酸、非心臓性胸痛が典型症状であるが、慢性咳嗽、嗄声などの食道外症状もある。H.pylori感染と負の相関がある。
 逆流性食道炎の診断は、上部消化管内視鏡検査で行う。粘膜傷害の程度によりgradeA-Dに分けられる(ロサンゼルス分類)。食道裂孔ヘルニアは胃内容物逆流の危険因子であり、合併率が高い。合併症として、狭窄、出血、癌化がある。日本消化器病学会の「胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン」(2009)参照のこと。
 「むねやけ」症状は逆流性食道炎を疑うきっかけとなるが、患者が訴える「むねやけ」が真のむねやけが否かを問診で確認することが重要である。「むねやけ」を感じる部位を示させ、前胸部下部正中(剣状突起より上部)であれば真のむねやけ、心窩部(剣状突起より下部)であれば偽のむねやけ(胃・十二指腸疾患を疑う)と診断する。


U食道潰瘍
病態と診断
A.感染症
 免疫能の低下した患者に発生することが多く、カンジダが代表的だが、サイトメガロウイルスなどの再活性化によって、潰瘍を形成することもある。白色の小隆起の多発、あるいは融合した地図上の隆起を内視鏡的に認めれば、カンジダ食道炎(潰瘍を形成することはまれ)と診断できる。食道痛や嚥下困難などの症状がある場合は薬物治療が必要である。

B.薬剤性
 服薬薬剤が食道壁に接着するか滞留し、溶解して化学的毒性を発揮する。溶解すると酸性になる薬剤に多い。内視鏡所見として、錠剤形の打ち抜き潰瘍を認める場合や、急性胃粘膜病変のような不整形の多発びらんを形成する。食道痛、むねやけ、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)があるが、近年、バイアグラでも報告されている。

C.腐食性
 強酸(工業用)や強アルカリ(トイレ洗剤など)の誤飲や自殺企図での飲用で、食道の組織損傷とその後の瘢痕狭窄が生じる。ウォッカなどの強いアルコール飲用でも生じることがある。

D.炎症性
 腸管ベーチェット病、クローン病などの部分症として、食道に潰瘍をみることがある。診断は内視鏡所見と胃・腸管の類似病変の存在、特徴的症候による。結核性のものは、縦隔リンパ節結核から穿破してできる場合が多い。


Vバレット食道
 バレット食道食道はGERDが原因で生じる病態で、腺癌発生の母地となる。内視鏡で診断される。必要があれば生検を行い、dysplasiaがあれば、その程度に合わせて内視鏡検査のフォロー期間を決める。PPIによる治療が神効を抑制するという報告がある


W食道裂孔ヘルニア
 食道裂孔ヘルニアそのものは、高度(upsidedown stomachなど)にならない限り放置可能でるが、逆流性食道炎のリスク因子である。上部消化管の内視鏡またはバリウム検査で診断する。逆流性食道炎を伴うときは、その治療を行う。


機能性ディスペプシア
functionala dyspepsia(FD)

病態と診断
 機能性ディスペプシア(FD)とは上腹部に慢性的に、あるいは繰り返して不快な症状が出現し、症状の出現が食事の摂取と関係することが多いが、症状出現の原因と考えられる器質的疾患がない状態を示している。FDの定義には現在世界統一基準であるRome V基準が用いられ、3カ月以上にわたって食後の胃もたれ、胃飽満感、心窩部痛、心窩部灼熱感が持続することが必要とされる。しかし、この定義は完全なものではなく定期的に改訂、修正が行われており、日常診療では症状の種類とその持続期間については、より広くとらえてFDの診断を行っている。このためFDは「「慢性胃炎に伴う上腹部愁訴」「症候性慢性胃炎」「胃下垂」「神経性胃炎」などと類似したものと解釈されている。
 診断は、症状、臨床経過、そして器質的疾患の除外診断を組み合わせて行う。症状のみからではFDと胃癌、膵癌や潰瘍などの器質的疾患を鑑別することはきわめて難しいため、できるだけ血液検査、尿検査、便潜血検査、内視鏡検査、超音波やCT検査を適切に行って器質的疾患を除外することが必要である。50歳以上、体重減少、貧血などのある場合には器質的疾患の存在リスクが高いため、上記の検査は必須と考えるべきである。
 病態は、十分には解明されておらず多因子性であると考えられている。Helicobacter pylori(H.pylori)感染、胃の適応性弛緩の障害、胃排出能の低下、十二指腸の胃酸感受性亢進、知覚過敏などが提唱されているが、それぞれがFDの原因として占める重要性については明らかとなっていない。


胃切除後障害
postgastrectomy cisturbances

病態と診断
 胃には食物貯留、胃内容排出調節、逆流防止、食物の殺菌・消化や呼吸に関するさまざまな機能がある。胃切除後障害は、胃切除後の容積減少、迷走神経切除や内分泌機能低下が複合的に関与して生じるさまざまな症状の総称で、機能的障害(ダンピング症候群など)と器質的障害(逆流性食道炎など)を含んでいる。術式(切除範囲、再建方法など)により、生じる障害の内容や程度が異なるため、病態に応じた適切な予防と治療が必要である。以下に代表的な病態について概説する。


腸管癒着症
intestinal adhesion syndrome

病態と診断

A.病態
 腸管癒着症は腸腔内の組織障害における創傷治癒反応として、腸管と腸管、腸管と復壁もしくは実質臓器との間に瘢痕組織を形成して両者の癒着を生じることにより、腸管の狭窄や屈曲をきたして腸管内容の通過障害を引き起こし、腹部膨満感、腹痛、便秘などの症状を生じるものである。癒着の原因としては、腹膜炎、虫垂炎などの腹腔内炎症、鈍的腹部外傷などがあるが、大部分は開腹手術によるものであり、出血、腸管漿膜や腹膜の損傷、腹腔内汚染、縫合糸、ドレーン、膿苔、腹腔内膿瘍などが癒着のリスクファクターとなる。ほとんどは小腸に発生し、大腸での発生はほとんど認められない。

B.診断
 診断は、問診が重要である。慢性的に上記の症状のほか、悪心、嘔吐、下痢などを訴える場合に、鑑別診断として過敏性腸症候群、通過障害をきたしうる小腸大腸の腫瘍性病変、炎症性腸疾患、薬剤性腸管麻痺などを念頭におきながら、開腹歴の有無、食事摂取に伴う症状出現の有無、既往歴、内服歴の聴取を行い、画像診断で腫瘍や狭窄などの消化管の器質的病変、炎症性腸疾患などを否定することにより診断を行う。
 また画像診断では、腹部単純X線検査や腹部超音波検査にて鏡面形成像や局所的な腸管拡張および腸管内容物の貯留所見が診断補助となる。近年では消化管造型検査に加えMD-CTやMRIなどで癒着部位が特定できることがある。


偽性腸閉塞、巨大結腸症、鼓腸、呑気症
intestinal pseudo-obstruction,megacolon,meteorism and aerophagia

T偽性腸閉塞
 病態と診断
 偽性腸閉塞とは消化管に機械的閉塞機転がないのにもかかわらず消化管閉塞症状をきたす疾患の総称で、その罹患部位は食道から直腸まで全消化管に及び、一般に腸管が罹患部位になる場合を偽性腸閉塞とよび、急性と慢性に分けられる。

A.急性偽性腸閉塞(Ogilvie 症候群)
 種々の全身疾患、特に術後に続発する。大腸に高度の拡張を生じる。治療は減圧などの保存的治療で軽快する。

B.慢性偽性腸閉塞(chronic intestinal pseudoobstruction:CIPO)
 消化管内容物の輸送障害が生じる結果、腹部膨満、嘔吐、腹痛などの腸閉塞症状が起こり、進行例では腸管の著明な拡張により粘膜の変性をきたし、あるいは腸管切除による短腸症候群などで消化吸収能の廃絶が起こる(いんてsちなぁふぁいぅれ)。ミトコンドリア脳筋症や全身性硬化症などに続発する場合がある。6カ月以上前から上記の腸閉塞症状があり、そのうち12週は腹部膨満を伴い、腹部X線検査、腹部CT検査などで腸管拡張または鏡面像を認め、消化管造影検査や内視鏡・CTなどで腸管の器質的狭窄を除外することにより診断される(厚生労働省研究班診断基準)。小腸運動の異常の診断にはシネMRIが決め手となる〔詳細は厚生省研究班ウェブサイト(http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/〜cipo/index.htmlを参照〕。


U巨大結腸症
病態と診断
 慢性の難治性便秘で結腸の拡張を伴い、腸閉塞症状などもなくほかの疾患が鑑別されたもの。症状は慢性の便秘を認め(2週〜3カ月に1っ回の排便)、症状は軽微で腹部膨満を訴える程度である。


V鼓腸
病態と診断
 消化管ガスによる腹部膨満を指す。高栄養価の食事由来の成分が大腸まで到達して異常増殖ガス産生を起こすこと。腸管運動の低下で本来は増殖することができない小腸で細菌が増殖すること、または結腸の蠕動が慢性便秘や硬便などで阻害されガスがたまることなどによる。


W呑気症
 空気嚥下による呑気症はきわめてまれである。多くの例は偽性腸閉塞や巨大結腸症であるのに呑気症と間違って診断されていることが多いので、十分な鑑別が重要。精神疾患によるものが多く、治療は精神科重心が望ましい。


むねやけ、げっぷ、もたれ感
heartburn,belching and dyspesia

病態と診断
 「むねやけ、げっぷ、もたれ感」は上腹部症状として非常に頻度の高い症状である。日常診療でよく遭遇する症状であり、まずは内視鏡検査などの器質的疾患の除外が必要となるが、不安や抑うつなど精神的なものが関与していることも少なくない。また、これらの症状がオーバーラップしていることも多い。
 「むねやけ」は心窩部や胸骨下部の焼けるような不快感を指し、胃の内容物の逆流によって起こることが多い(胃食道逆流症、GERD).逆流性食道炎のないものを非びらん性胃食道逆流症(NERD)とよぶ。
 「げっぷ」は胃や食道内のガスが口から排出される現象で、空気嚥下に伴うことが多く、その原因として早食いや心理的な要素も多い。げっぷは日常的なものであるが、高頻度になったり、むねやけが合併した場合は治療の対象となる。
 「もたれ感」は消化管蠕動低下や胃排出低下などの主に運動異常によって生じる上腹部の不快感、重圧感である。内臓知覚異常や心理的な要素の関与も考えられている。


シェーグレン症候群
病態と診断

A 病態
 シェーグレン症候群(SS)は涙腺、唾液腺を中心にリンパ球浸潤を主とする慢性炎症が生じる自己免疫疾患である。男女比は約1:14であり、発症のピークは50〜60歳代である。潜在性の発症様式が多く有病率は報告によりばらつきがあるが、欧州では0.5−4%と報告されており、本邦においても10万人以上の患者がいると思われる。他の自己免疫疾患の合併がないSSを原発性SS、関節リウマチ(RA)や全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫疾患に合併するSSを2次性SSと分類し、その頻度は約半数ずつといわれる。
 涙泉と唾液腺の障害が最も多く、これらは腺症状であり、前者は眼乾燥(ドライアイ)で後者は口腔乾燥(ドライマウス)としての主症状を形成する。それ以外の臓器障害は腺外症状として現れ、関節痛、リンパ節腫脹、高ガンマグロブリン血症に伴う紫斑、間質性肺炎、間質性腎炎や尿細管性アシドーシス、神経障害、リンパ増殖性疾患などの多彩な臓器病変とそれに伴う症状を呈する。SSではリンパ腫の相対危険度が健常人より約40倍と高く留意が必要である。

B 診断
 厚生労働省や米国欧州コンセンサスグループ(AECG)などから分類基準が出され、シェーグレン症候群国際登録ネットワーク(SICCA)からは新しい診断基準が提唱された。
 臨床実施では、ほかに原因のない眼乾燥や口腔乾燥があり、血液検査におけるSS関連自己抗体(抗RO/SS−A抗体、抗La/SS−B抗体など)。眼他覚所見、口唇小唾液腺生検組織所見などから診断する。
 鑑別診断として最近はIgG4関連疾患であるミクリッツ病にも留意が必要である。こちらに関しては「IgG4関連疾患包括診断基準2011」を参照されたい。


線維筋痛症と慢性疲労症候群
病態と診断

A 病態
1.線維筋痛症(FM) 
 四肢体幹の広汎な慢性の疼痛(wide-spread pain)を特徴とする病態である。痛みの性状は特徴的で、「灼熱様の」、「うずくような」、「脈打つような」、「火薬が爆発したような」痛みなど独特で、かつ多様に表現される。
 原因は不明であるが、機序は末梢刺激に対する中枢神経の過剰反応、つまり疼痛閾値の低下である。すなわち本症はCSS(central sensitization syn‐drome)の1つと考えられている。誘因には、細菌・ウイルスなどによる感染、外傷、ストレス、不眠、ホルモン異常、薬剤、災害などがある。
 当初“fibrositis”とよばれたが、身体所見・一般検査でも炎症徴候は認められないため現疾患名に改称された。中高年の女性に多く、全般的な有病率は約1‐2%(日本では1.66%、比較として有痛性変形性関節症は9%、関節リウマチは0.7%)、家庭医では2.1%、一般病院外来では5‐8%、疼痛疾患を扱うリウマチ外来では14‐20%であり決してまれではない。
 全身の疼痛に加えて不眠・倦怠感や抑うつなど、種々の精神症状を伴う。睡眠障害、全身倦怠感はほぼ必発で、慢性疲労症候群を合併しやすい。

2.慢性疲労症候群(CFS)
 全身倦怠感を主徴とし、微熱、筋肉痛、咽頭痛、頭痛が持続する疾患である。抑うつ気分など精神的ないし機能的要素が強い原因不明の病態である。
 ウイルス感染などやストレスなどが誘因となるなど、疾患の歴史的経過もFMと類似する。疲労が前面に出ているが、FMと類似する。疲労が前面に出ているが、FMと重複する徴候が多く、FMとCFSの両者はしばしば合併する。

B 診断
1.FM
 診断には、1990年の米国リウマチ学会(ACR)の分類基準を用いる。18か所の圧痛点のうち、(4Kgで圧迫したとき)11か所以上に圧痛を認めれば診断できる。
 関節リウマチ(RA)やリウマチ性多発筋痛症(PMR)などのリウマチ性疾患が鑑別となるが、炎症徴候がない点と疼痛の性状が異なるので、診断は困難ではない。まず本疾患を想起することが重要である。ただしRAなどとの合併例はしばしばある。

2.CFS
 診断は、2007年の日本疲労学会の指針を用いる。既存の疾患では説明できない激しい疲労・倦怠感が6か月以上存在し、多彩な身体、神経・精神症状と微熱、リンパ節腫脹、非滲出性咽頭炎などが認められれば診断できる。


血管性認知症
病態と診断

A 病態
 血管性認知症(VaD)は認知機能を営む神経回路網が循環障害によって離断された結果であり、その臨床像は画像や発症様式、随伴症状で特徴づけられる。
 CT/MR画像は病変の広がりを示し、@皮質領域に多発した大・中の梗塞巣、A基底核・前頭葉白質の多発ラクナ、Bびまん性の皮質下白質病変(ビンスワンガー型とよばれる)、C認知機能を営む神経回路網の要所に限局した単一梗塞が代表的なものである。これら病変の本態はアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳梗塞、ラクナ梗塞であるが、Bのみ例外的である。すなわち、高血圧性の小血管病変を基盤とした白質の広範な不全軟化巣で、これに脳の低灌流状態や低酸素状態、凝固・血小板機能の亢進状態が促進的に働く、通常、高血圧に羅漢していた高齢者で過降圧、心房細動や心不全、呼吸不全、高度の動脈硬化症が加わって発症する。
 認知症の発症様式は急速、時に階段状あるいは動揺性で、通常、脳卒中発作後にみられる。この点で変性疾患の発病様式とは明らかに異なるが、A、Bのなかには潜行性に進行するものもある。
 一般に、VaDの随伴症状は、血管性危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動)や重要臓器の循環障害(心筋虚血、下肢虚血)の存在、認知症以外の中枢神経症状の存在、高齢者に好発する脳病変で多彩となる。特に、A、Bでは認知症とともに維体路障害(片麻痺)、維体外路障害(パーキンソニズム)やこれらによる歩行障害、仮性球麻痺(嚥下障害、構音障害)、神経因性膀胱(切迫性尿失禁)がさまざまな組み合わせで随伴し、ADLも低下している。また、高齢者の脳ではアルツハイマー病理が潜行しており、循環障害の累加を契機として認知症が発症(混合型認知症)することも少なくない。

B 診断
 VaD診断の基本骨格(DSM‐IV)は、記憶障害に加えて失語、失行、失認が1つ以上あり、実行機能(計画を立てる、順序立てるなど)が障害されている点〔これらはmini‐mental‐state examionation(MMSE)やclinical dementia rating(CDR)で評価可能〕と既述の随伴症状や症候(腱反射亢進、病的反射)が存在する点であるが、診断にはCT/MR画像が欠かせない。しかし、白質病変については認知症の発病閾値が想定され、白質病変があるからといって必ずしも認知症があるとは限らない。


慢性硬膜下血種
病態と診断

A 病態
 慢性硬膜下血腫は硬膜とくも膜の間に、血液が貯まる疾患である。血腫には被膜があり、その外膜(硬膜側)は厚くしっかりしているが、内膜は薄く手術中に脳が透見できることもある。血腫内膜およびくも膜に破綻はなく、したがってくも膜下出血は伴うことはない。
 この病名が示す通り、外傷後2-4週間くらいたってから発症するものであるが、実際には外傷の既往がはっきりしないこともしばしばある。最近、抗血栓療法を受けている人が増えているため、この疾患の発症も増えている印象がある。
 どうしてこのような血腫が形成されるのかはいまだ不明である。継時的にCT画像を観察できた症例では、頭部外傷後、2週間くらいで少量の血腫がたまり、それが時間の経過とともに増大してくるのがわかる。少量の血腫が、増大しないまま経過し、やがて消失してしまうこともあるが、それを予見することはできない。
 頭部外傷後、最初の受信時にCTを行い、脳萎縮のため頭蓋骨と脳の間にスペースが広くある場合には、その後慢性硬膜下血腫を形成する可能性を考え、フォローすることが大事である。

B 症状
 血腫はゆっくり大きくなってくるため、症状も徐々に現われてくる。初期には自覚症状は頭重感程度であるため、本人は病気に気づかないことが多く、心配した家族に連れられて受信することがしばしばある。血腫が増大してくると歩行障害、軽い半身麻痺などが現れ、高齢者では認知症と間違えられることもある。頭部外傷の既往がはっきりしている場合には診断は容易である。
 外傷の既往がない場合には脳血管障害、脳腫瘍などとの鑑別に迷うこともあるが、急性発症でないこと、経過が長くないこと、症状が軽いが比較的早く進行することなどで鑑別可能である。
 男性、高齢者、酒飲みの人に多いため、このような条件がそろっている人は明らかな頭部外傷がなくても要注意である。

C診断
 頭を他動的にゆすって頭痛の有無をみるjolting headache(振盪性頭痛)のチェックは行ってみる価値はある。ゆすって痛がる場合は血腫を疑う。
 画像診断はまずCTを行う。CTでは頭蓋骨と脳の間に三日月型の高-等吸収域の病変があり、脳へのマスエフェクトが認められる。血腫が両側にあり、脳と等信号の場合には、特に若年者では、わかりにくいことがある。CTでも、よく見ると脳溝が描出されなくなっており、診断可能であるが、疑わしいときにはMRIで確認する。


パーキンソン病の内科的治療
medical treatment of Parkinson disease

病態と診断
A 病態
 パーキンソン病は中脳黒質のドパミン産生神経細胞の脱落を基盤とし、安静時振戦、無動(寡動)、筋強剛、姿勢保持障害の4大症状を呈する疾患である。わが国の有病率は、人口10万人あたり120-150人と神経変性疾患のなかでは認知症に次いで多く、あらゆる診療科で遭遇しうる疾患である。本疾患はL−ドパ補充療法が有効であるため、その診断は重要である。
 最近の病理学的研究では、黒質より先に嗅球、脳幹部、あるいは消化管や心臓の自律神経節にレビー小体が蓄積し、嗅覚低下、便秘、REM睡眠行動異常症(RBD)が運動症状に前駆することがある。また、青斑核(ノルアドレナリン系)、縫線核(セロトニン系)、マイネルト系以外のニューロトランスミッターの中枢にも神経細胞脱落が認められる。このような広範な障害を反映して、本疾患は運動症状のみならず多彩な非運動症状を呈するが、従来治療法が少なくあまり注目されなかった。しかし、近年非運動症状に関しても治療のエビデンスが蓄積され、日本神経学会の「パーキンソン病治療ガイドライン2011」でもとりあげられている。

B 診断
 左右差のある4-6Hzの振戦が主に安静時にみられるが、姿勢時にも認められる。典型的には、指先をこすり合わせる「丸薬丸め型振戦」がみられる。顔は無表情(仮面様顔貌)で、声は小さく、動作は緩慢となる。姿勢は前屈みで膝が曲がり、歩行は小刻みで前方突進現象がみられる。
 診察では、他動的に手関節や肘関節を屈曲・伸展させ、筋強剛の有無をみる。典型的には本疾患では歯車様の抵抗を認めるのに対し、他のパーキンソン症候群では鉛管様の一様な抵抗がみられる。反対の手で物を取らせたり、反復上下運動をさせることにより、手関節の軽微な筋強剛を増強させることができる(フロマンの固化徴候)。さらに、姿勢反射障害が強くなると、方向転換が不安定となり、後ろに引っ張ると足が出ずに倒れてしまう。
 鑑別診断には、頭部CT・MRI、脳血流シンチグラフィーなどを用いて、脳血管性パーキンソニズム、線条体黒質変性症、進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、正常圧水頭症などを除外する。また、MIBG心筋シンチグラフィー(2013年3月保険適用承認)で心臓の集積低下が認識されれば、パーキンソン病(あるいはレビー小体型認知症)である可能性が高い。
 一般にHoehn-Yahr分類が重症度評価に用いられる。I度は症状が片側性、U度は両側性、V度は姿勢反射障害を有志、W度は介助なしになんとか歩行可能で、日常動作は部分介助、X度は日常動作は全面介助で、車いすあるいは寝たきりの状態を指す。公的医療費助成を受けるためには、V度以上である必要がある。


球脊髄性筋委縮症
(kennedy-Alter-Sung病)
spinal and bulbar muscular atrophy (SBMA)

病態と診断
A 病態
 球脊髄性筋委縮症は成人男性に発症する緩徐進行性の神経筋疾患で、下位運動ニューロン変性に伴う、筋委縮(特に近位筋)や線維束れん縮を主症状とする。下肢から発症することが多い。四肢腱反射は減弱または消失する。女性化乳房、睾丸萎縮、生殖能力の減弱、手指振戦(contraction fasciculation)などを合併する。特徴的に顔面筋力低下や舌萎縮・舌線維束れん縮が認められ、物が飲み込みにくいなどの球麻痺症状をきたす。球麻痺症状から筋委縮性側索硬化症(ALS)が重要な鑑別疾患である。症状進行は緩徐であり、生命予後は良好とされるが、誤嚥性肺炎をくり返し呼吸不全に至る症例もある。病理学的には延髄や脊髄前角細胞の脱落、知覚神経をも含む末梢神経の脱髄を認める。

B 診断
 針筋電図で高振幅電位などの神経原性変化を認める。筋生検所見は肥大繊維が散在し、一見筋原性変化と見間違える所見を示すが、基本的には神経原性委縮をきたす。また、筋疾患を思わせる高CK血症を伴う。脂質異常症、耐糖能異常症を合併することがある。
 3塩基くり返し病(triplet-repeat disease)の一つで、アンドロゲンレセプター遺伝子(AR)におけるCAGトリプレットリピートの過剰伸長(>35CAGs)が原因とされ、本疾患の確定診断には、ARのCAGトリプレットリピートの過剰伸長による遺伝子診断が必須である。診断指針としては認定基準(難病情報センターホームページ)を参照
(http://www.nanbyou.or.jp/entry/73).


筋クランプ(こむら返り)
muscle cramp (calf cramp)


病態と診断
 筋クランプは運動中に短時間の収縮が筋に加わったときに生じることが多い。また運動後、就寝中、安静時に急に筋に負荷が加わったとき(身体の向くを変えたときなど)にも生じる。特殊な疾患に伴う筋クランプ以外には、医学的に問題にならず医療機関を受診することは少ない。特に腓腹筋の筋クランプが「こむら返り」である。健常人の筋クランプは睡眠、運動、妊娠に伴う場合が多い。一方、疾患に伴うものは多岐にわたり、神経疾患(運動ニューロン疾患、末梢神経疾患、腰部脊椎管狭窄症、筋疾患など)、内科疾患(血液透析、肝硬変、甲状腺疾患、糖尿病など)電解質異常(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、脱水など)薬剤(β遮断薬、Ca拮抗薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系薬剤など)が筋クランプ(筋けいれん)をきたす特殊な疾患として里吉病(全身こむら返り病)、電位依存性カリウムチャネルに対する自己抗体が関与するIsaacs症候群(末梢神経障害の過興奮)、抗GAD抗体が関与するstiff person症候群が挙げられるが、その頻度はまれである。


アルツハイマー型認知症
dementia of Alzheimer type (DAT)

病態と診断
A 病態
 アルツハイマー型認知症は、初老気、老年期に認知症を生ずる代表的な変性疾患である。潜在性に発症し、緩徐に進行する。記憶障害で発症することが圧倒的に多く、進行に伴い見当識障害や頭頂葉症状(視空間認知障害、構成障害)が加わる。場合わせ、取り繕い反応が目立つ。初期から、局所神経症状を認めることは少ない。比較的初期から、物盗られ妄想が認められることもある。

B 診断
 進行性の記憶障害ならびに記憶以外の認知機能障害(失語、失行、失認、実行機能障害など)により、日常生活や仕事に支障をきたしていることを確認する。まず、せん妄(意識障害)とうつ病を除外する。次に、慢性硬膜下血腫や正常圧水頭症など、根治の可能性がある認知症を鑑別する。そして、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症などを鑑別診断する。現時点では、確実な生物学的マーカーがないため、認知症類似の状態像やほかの認知症の除外診断が重要である。病初期のCT所見としては側脳室下角の開大、MRI所見としては海馬領域の委縮、進行に伴いびまん性の脳萎縮が、病初期のSPECT所見としては後部帯状回の血流低下が重要な画像所見である。


非アルツハイマー型変性認知症
non-Alzheimer type degenerative dementia

レビー小体型認知症
病態と診断
 レビー小体が大膿や脳幹諸核に出現する。主要症状は幻視、パーキンソニズム、意識レベルの変動で、レム睡眠関連行動異常、抗精神病薬への過敏性、転倒、失神、便秘、起立性低血圧、抑打つも多い。脳血流SPECT検査での後頭葉血流低下や、I-MIBG心臓交感神経シンチグラフィーによるH/M比の低下と洗い出し率の亢進を認める(保険適用外)


統合失調症(初回エピソード)
schizophrenia (first episode)

病態と診断
A病態
 統合失調症の病態仮説には、ドパミン仮説やグルタミン酸仮説、あるいは神経発達障害仮説や脆弱性ストレスモデルなどがあるが、いまだに病態や成因は不明である。生物学的な素因(遺伝要因や脳構造の異常など)のうえに、さまざまな環境因子(産科的合併症や心理的ストレスなど)がリスクファクターとなって発症する。幻覚妄想などの明瞭な症状の発現前に、不安、緊張、抑打つ、自発性の減退といったポテンシャルが低下する前駆期には、不登校や引きこもり、昼夜逆転などがみられる。この時期に本症を疑って治療を開始すべきであるが、受診に結びつきにくいのが実情である。

B 診断
 本症の中核的な障害は自我障害と認知障害であるが、診断は症状ないし状態像診断となる。症状診断は、一般には陽性‐陰性の2分法で行われる。陽性症状には幻覚や妄想が、また陰性症状には感情鈍麻や両価性、耳平成、意欲低下などがあるが、臨床経過の観察も診断的価値がある。なお、下記の薬物には内容液や口腔内崩壊錠、あるいは注射剤などの剤形があるので、必要に応じて利用する。


後腹膜腫瘍、後腹膜線維症

retroperitoneal tumor,retroperitoneal fibrosis

T後腹膜腫瘍
病態と診断
 後腹膜腫瘍は副腎や腎の腫瘍を除く後腹膜腔に発生し、半数近くが肉腫で、15-20%が良性腫瘍(脂肪腫、平滑筋腫など)、10%が他部位からの転移、残りは悪性リンパ腫などである。後腹膜肉腫は脂肪肉腫、平滑筋肉腫、悪性線維性組織球腫の順に多く、病因に染色体転座や余剰環状染色体の関与が示唆されている。
 50歳代に好発し、大きな腫瘤を呈することが多い。症状は腹部腫瘤や腹痛が多く、悪心・嘔吐や体重減少、下肢の浮腫がみられる。大血管由来の平滑筋肉腫では下肢の浮腫やBudd-Chiari症候群を呈し、術後生存期間は2年以内と特に予後不良である。
 CT画像で両腎機能、多臓器転移、リンパ節腫大の有無や、根治切除不可を示唆する脊椎神経孔内の腫瘍浸潤について検討する。手術不能例や悪性リンパ腫が疑われる場合には、CTガイド下の針生検を考慮する。

U後腹膜線維症
病態と診断
 後腹膜線維症は、炎症と線維化によって尿管などを圧迫する病態で、初期は炎症細胞や血管増生を伴う線維組織からなり、晩期では線維組織の腫瘤を呈する。一般に第4-5腰椎付近の大動脈周囲を中心に、線維組織が尿管を包み込んで閉塞し、水腎水尿管をきたす。腰背部や側腹部鈍痛が多く、姿勢によって不変で、下腹部や会陰部に放散する。その他、体重減少や食欲不振、悪心、全身倦怠感、発熱などがみられ、両側尿管を閉塞すると乏尿や無尿となる。
 7割は特発性であるが、病因として薬剤(methysergide,麦角アルカロイド、β遮断薬、フェナセチンなど)や悪性腫瘍、放射線照射、腹部大動脈瘤、感染症(結核、アクチノマイコーシス)などがある。
 排泄性尿路造影で中部尿管の内側偏位と狭小化、上部尿路の拡張を認め、CTでは中部尿管や大血管を取り巻く軟部組織を認める。MRIのT1強調では低信号像を呈し、T2強調では炎症の強い初期は高信号を、晩期の線維組織のみでは低信号を呈する。ガドリニウム造影では、炎症が強いほど高信号を呈し、T2強調とともに進行時期と薬物療法の効果判定に有用である。


男性不妊
male infertility

病態と診断
 夫婦間で通常の性交渉があり、12カ月間妊娠に至らない場合を不妊症と診断する。夫婦の約15%は不妊症といわれ、そのうち約半数が、男性側因子が関与していると考えられている。
 多くは精巣の造精機能障害が原因であり、これには、クラインフェルター症候群のような原発性と、下垂体腫瘍のような続発性があるが、60-70%は特発性(原因不明)である。その他、精路通過障害や、勃起障害(ED)や射精障害といった精機能障害も原因になる。
 生殖器の外傷や下垂体疾患などの男性不妊の原因となりうる既往歴の有無や、職業歴、性生活の詳細を聴取し、身体所見から二次性徴の発現程度や、精索静脈瘤の有無、精路狭窄ないし閉塞の有無を把握し、精巣容量を測定する。さらに、精液検査と内分泌検査(FSH,LH,テストステロン、プロラクチン測定)を行う。現在、精子濃度15×10 6/mL、精子運動率40%未満を異常所見とみなす。また、FSH、LHは、原発性造精機能障害の場合は高値を示す場合が多い。一方、精路通過障害の場合には正常である。無精子症や高度乏精子症の場合、染色体検査も行い、さらに最近は、Y染色体上にあって精子形成に重要な役割を果たしていると考えられているAZF(azoospermia factor)遺伝子検査も行うが、保険適用外であり、検査可能施設も限られている。


凍瘡
pernio、perniosis、chiblains

病態と診断
 俗にいう「しもやけ」。寒冷により手足の指や耳・頬など末端部に血行障害と炎症が生じ、かゆみ・灼熱感・痛みを伴う皮疹を呈する。成人以降にみられ丘疹や斑状紅斑を主体とする多形滲出性紅斑型(M型)と学童に好発し紫紅色にうっ血し腫脹する樽柿型(T型)、あるいはその両者の混合型(MT型)に分類される。重病例では水疱や亀裂・潰瘍を伴うこともあるが、凍傷とは異なり組織の凍結は伴わない。
 一般に学童期・女性に多く、家族歴を有することがある。病理組織学的所見では真皮乳頭層の浮腫・リンパ球浸潤・リンパ球性血管炎などがみられる。近年の防寒器具の発達により発症頻度は減少傾向にあり、難治な場合は甲状腺機能低下症の存在やエリテマトーデス(凍瘡状ループス)・クリオグロブリン血症やサルコイドーシスの鑑別が必要となる。


月経困難症
dysmenorrhea

病態と診断
 月経困難症とは月経月経に随伴して起こる病的諸症状をいう、下腹痛、腰痛が多く、腹部膨満感、悪心、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、抑うつなどがみられる。有経女性の約50%にあるといわれる。月経の初日、2日目の出血の多い日に強く、痛みの性質はけいれん性、周期性である。器質的疾患を伴わない機能性(原発性)月経困難症と器質的疾患に起因する器質性(続発性)月経困難症とに分けられる。
 機能性の場合、初経1−2年後、排卵周期が確立されると発症する。月経数時間前か、開始直後より発症し、48−72時間持続する。痛みはけいれん性、周期性で背部痛、下肢放散痛、むかつき、下痢などを伴う場合もある。
 器質性の場合、初経から数年後に発症し、無排卵周期でも起こることがある。症状はしばしば月経1週間前から月経直後数日に及ぶ場合もある。原因としては子宮内膜症、子宮、膣の異常による月経血流出障害(処女膜閉鎖、膣中隔など)、子宮内膜ポリープ、IUD、子宮筋腫、子宮腺筋症、などがある。
 メカニズムとしては、機能性の場合、子宮内膜で産生されるプロスタグランジン類に起因する。分泌期内膜にはこれらの物質が多量に産生されており、プロゲステロンの低下により、COXが活性化し、プロスタグランジン、トロンボキサンがアラキドン酸より産生される。一方、器質的月経困難症では原因となっている疾患によりメカニズムは異なる。
 器質的疾患の検索としては内診、超音波断層検査(思春期患者の場合は経直腸)、場合によりMRI、子宮鏡検査、復腔鏡検査、血液検査、各種感染症除外などを行う必要がある。
 


更年期障害、ホルモン補充療法
climacteric disturbance(disorder),hormone replacement therapy (HRT)

 病態と診断
 更年期症状には多種多様な症状が含まれるため診断に苦慮することが多い。本来、卵巣機能すなわちエストロゲンの低下が主病因であり、主症状は血管運動症状である。“のぼせ・のてり”(ホットフラッシュ)、発汗異常と、外陰部・膣の委縮症状を指し、ほかに睡眠障害や気分の変調も加えられる。さらに関節痛、やる気・集中力の低下などもエストロゲン欠乏に起因している場合がある。診断に際し重要なことは、こらら症状が月経の変調とリンクして発現しているかどうかである。そのため、月経量、出血パターン、月経周期について詳細に問診する。月経周期の異常は一般にまず周期の短縮から始まる。次に不調の時期を迎え、その後月経周期の延長がみられ最後に無月経となる。月経量は少なくなる場合も多くなる場合もある。出血パターンでは月経期間の前半に集中するようになったり、だらだらと続くいわゆる“キレの悪い”月経を経験した後に再び順調な月経が回復することもあり、このことが症状の強弱や変換・逍遥に大きく関係している。子宮だけを摘出した女性では月経がないため卵巣機能の評価は卵胞刺激ホルモンとエスとラジオールの測定でなされ、前者が40mIU/L以上かつ後者が20pg/mL以下をもって閉経と診断される。更年期障害の鑑別に甲状腺機能異常が第1に挙げられるが、月経異常の原因となりかつ症状が類似しているからである。


更年期のうつ
depression in menopausal transition

病態と診断
A病態
 更年期にはうつ病の発症や抑うつ症状の訴えが多いことが知られており、その病因として、エストロゲン之減少が直接的、関節的に影響すると考えられている。直接的にはセロトニン神経活性化との関連であり、中脳縫線核にレセプターが存在することもいわれる。また関節的には、ネガティブ・フィードバックによる視床下部ホルモン中枢の機能亢進と、心理社会的な転換期というストレスの増加が相まって生じる自律神経失調を主体とした不定愁訴の発生によりうつ状態を招く、“ドミノ説”が提唱されている。

B診断
 更年期女性が不定愁訴にて来院すると、その愁訴にみあう甲状腺機能の異常などの器質的疾患がなければ更年期障害と診断されるが、そのなかには非器質的疾患であるうつ病も含まれる。まず時系列に沿った問診で、患者のストーリーを理解する。性格・気質および心理社会的・環境的要因が愁訴と密接に関連していることが多い。
 更年期女性で抑うつ症状がみられる場合、うつ病と診断するには、ICD-10やDSM-IVの診断基準によるが、更年期障害との鑑別は難しい。SDS(うつ性自己評価尺度)などの心理テストも有用である。過去にうつ病の既往のあるものはうつ病の再発と考え、ないものでは抑うつ症状の重症度や持続期間を参考にする。不安や焦躁の目立つもの、妄想を伴うもの、身体症状が主なもの(仮面うつ病)も多い。しかし治療を始める際には必ずしもうつ病という診断が必要なわけではなく、うつ状態であると診断して治療すればよい。うつ状態とは心身ともに疲弊し、エネルギーの低下した状態で、身体感覚を巻き込んだ抑うつがみられる状態である。


子宮内膜症
endometriosis

病態と診断
 子宮内膜症とは、子宮内膜様組織が本来の正常な位置、すなわち子宮腔内面以外の組織や臓器などに異所性に存在し増生するために生じる病態をいう。月経痛をはじめとする疼痛と不妊を主症状とし、性成熟期女性のQOLを著しく損なう。月経痛は約90%に認め、また、月経時以外の下腹痛・腰痛・性交痛・排便痛などの頻度も高い。不妊は約半数に認められる。
 発症機序については、逆流月経血中の子宮内膜片の着床によるものという移植説と腹膜上皮などの子宮内膜様細胞への化生によるという化生説などが唱えられているが、いまだコンセンサスは得られていない。一方、増殖・進展にエストロゲンが関与していることは明白である。
 確定診断は腹腔鏡手術あるいは開腹手術による肉眼所見によるが、日常診療において自覚症状、内診、超音波断層法やMRIなどの画像検査所見、CA125値などから総合的に診断された場合を「臨床子宮内膜症」として取り扱う。
 なお、2010年に日本産科婦人科学会より「子宮内膜症取扱規約 第2部(治療編・診療編)第2版」が発刊されていることを付記する。


小児の慢性腎炎症候群
chronic nephritis syndrome in childhood

病態と診断
 慢性腎炎症候群はWHOによる糸球体疾患の臨床分類の1つで、蛋白尿や血尿が持続し、高血圧、浮腫とともに腎機能障害が緩慢に進行する病態をいう。
 最近は医療費の問題解決と治療法確立の観点から、国際的に慢性腎臓病(CKD)対策が実施されている。CKDは血尿・蛋白尿の存在と糸球体ろ過値で診断される。持続性蛋白尿(尿蛋白/尿クレアチニン比0.5以上が3カ月以上持続)または持続性血尿+蛋白尿(尿蛋白/尿クレアチニン比0.2以上が3カ月以上持続)がある場合は腎生検が必要である。持続性血尿単独の場合は、腎不全の家族歴などアルポート症候群を疑う所見がなければ腎生検の適応は原則的にない。


被虐待児症候群(子どもへの虐待)
child abuse

病態と診断
A 子ども虐待の病態
 子ども虐待の中核的病態は、重度の愛着障害と慢性のトラウマである。
 愛着行動とは、幼児が不安に駆られたときに養育者の存在によって不安をなだめる行動である。愛着障害は、心身を巻き込んだ情動調律の障害であり、対人関係障害のみならず非社会的行動、集中困難、多動性行動障害が生じる。
 慢性のトラウマによって、重度の解離とフラッシュバックが生じる。解離性健忘、解離性幻覚などが普遍的に認められ、さらに言語的、認知的、思考的、生理的フラッシュバックなど心身を巻き込んだ広範な症状が認められる。21世紀になって、慢性のトラウマが脳の器質的な変化を引き起こすことが明らかになった。その程度は、一般的な発達障害よりも重症であることが示されている。

B 診断のポイント
  子ども虐待は周知のように年々増加を続けており、また性的虐待は十分な把握がなされていない。児童の臨床にかかわるものは常に、子ども虐待の可能性を念頭に置いて診療を行うことが求められる。さらに発達障害は子ども虐待の高リスク群であると同時に、子ども虐待はその長期転帰を不良にする最大の増悪因子でもある。
 古くから知られているものは、子どもの側の新旧外傷、発育不全や不潔、親の側の矛盾する陳述などであるが、筆者は直接子どもに被虐待の有無を、親に加虐の有無を尋ねたとき、予想外に両者とも正直に答えることを経験している。親の側の被虐待の既往は非常に重要である。医師は子ども虐待を見いだしたときは、児童相談所への通報が義務づけられている。


滲出性中耳炎
otitis media with effusion(OME)

病態と診断
 小児滲出性中耳炎は耳鼻咽喉科疾患のなかでは多くみられるが、難聴の程度は一般に軽く耳痛などの激しい症状もなく、10歳までに9割以上が治癒するため、全例に集中的な治療を行う必要はない。治療の必要な理由は、@幼小児期の長期にわたる難聴による言語を含めた発達遅滞の防止と、A真珠腫や癒着性中耳炎などの後遺症への発展の防止である。したがって聴力や鼓膜所見によって治療方針を立てなければならない。


咽喉頭異常感症
foreign body sensation of the larynx

病態と診断

A 病態
 咽喉頭異常感症
foreign body sensation of the larynx

病態と診断
A 病態
 咽喉頭異常感症の定義は「咽喉頭異常感の訴えがあるにもかかわらず、通常の耳鼻咽喉科的視診で訴えに見合うだけの異常所見を局所に認めないもの」としている。一方で咽喉頭異常感症は症候名にすぎず、後日振り返ると、種々の原因疾患を含むものとされている。現在は、原因となる要因を明確にできたものを症候性の、精査しても明確な要因を見いだせないものを真性の咽喉頭異常感症とする意見が多い。
 原因となる症候は@局所的要因(慢性咽喉頭炎、慢性副鼻腔炎、咽喉頭腫瘍、甲状腺疾患、胃食道逆流症、咽頭アレルギーなど)。A全身的要因〔抵色素性貧血(Plummer-Vinson 症候群)、糖尿病、内分泌異常、心肥大、大動脈瘤、重症筋無力症、自律神経失調症、更年期障害など〕、B精神的要因(統合失調症、うつ、心身症、不安神経症など)の3つに大別される。局所的要因は約80%を占め、従来、慢性咽頭炎と慢性副鼻腔炎がほとんどとされていたが、最近では、胃食道逆流が40-55%、咽頭アレルギーが12-16%、甲状腺疾患が10%とされている。そのほか、全身的要因が約15%、精神的要因が約5%とされている。

B 診断
 検査法は、局所的検査と全身的検査に分けられる。まずは、局所検査〔局所の視診(ファイバー検査など)と画像検査(CT,MRI,USなど)〕に重点が置かれる。診療の基本は咽喉頭および周辺臓器の悪性疾患を見逃さないことにある。その理由は、咽喉頭異常感を訴え受信する患者の約7割が咽喉頭周辺の癌不安を抱いており、実際、咽喉頭異常感を訴える患者の2.5-4%に関連臓器の悪性腫瘍を認めるからである。
 全身的、精神的要因として挙げられる疾患に対しては、それぞれ対応する血液・尿検査(末梢血一般、血液像、血清鉄、TSH,CRP,ASO,尿蛋白、尿糖など)画像検査(胸部X線、CTなど)、機能検査(血圧測定、心電図など)が行われる。特殊なものとして心電図・R-R感覚変動係数、メコリールテストは自律神経失調に、嚥下圧測定、24時間食道pHモニターは胃食道逆流に、SDS、SRG-Dはうつ病診断の補助に利用される。神経症傾向を調査するにはCMIを参考にする。


嗅覚障害
olfactiry disorders

病態と診断
A 病態
 嗅覚障害はその症状によって
a)量的嗅覚障害:匂いの感覚が弱くなった((嗅覚減退)または全くなくなった(嗅覚脱失)
b)質的嗅覚障害:あるにおいが別のにおいに感じられる(異嗅症)または何もにおいがしていないはずなのににおいを感じる(自発性異常嗅感)
 などに分けられるが、日常臨床で経験する障害は多くが量的障害である。また障害の責任病巣の部位によっては以下の4つに大別される。
a)呼吸性嗅覚障害:鼻孔から嗅粘膜に至る気流の障害により嗅素が嗅粘膜へ届かなくなるために生じる。鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎などの炎症性鼻副鼻腔疾患で生じる。
b)嗅粘膜性嗅覚障害:神経上皮である嗅粘膜の変性により生じる。上気道ウイルス感染後の嗅覚障害(感冒後嗅覚障害)や塩素などの揮発性化学物質、抗癌剤などによる薬剤性嗅覚障害が代表である。
c)末梢神経性嗅覚障害:嗅神経の軸索である嗅糸の障害により生じる。頭部外傷や頭蓋内手術に伴って生じうる。
d)中枢性嗅覚障害:嗅球より中枢側の嗅覚伝導路の障害で生じる。頭部外傷、脳腫瘍、頭蓋内手術によって生じる。また病態が十分には解明されていないが、神経変性疾患にともなって生じる感覚障害もこのカテゴリーに入ると思われる。

B 診断
 原因の検索には問診が重要で、発症の契機とと経過、症状変動の有無、異嗅症の有無、風味障害の有無、既往歴、使用薬剤を確認する。これに鼻内の内視鏡による視診と画像診断を組み合わせる。原因として最も多い鼻副鼻腔炎に伴う嗅覚障害の診断には冠状断副鼻空CTが有用である。また中枢性障害を疑う場合はMRIを施行する。
 嗅覚障害の程度には基準嗅力検査を施行する。静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)は予後の判定に有用性が高い。


味覚障害
teste disorder

病態と診断
A 原因
 味覚障害の原因として亜鉛欠乏性、原因不明の突発性、薬剤性、心因性、鉄欠乏性、感冒後、全身疾患性、外傷後などに分類することができる。近年、薬剤性、心因性が増加してきている。

B 診断
 舌視診にて舌炎、口腔乾燥、カンジダの有無や外来顕微鏡で茸状乳頭の形態、血管走行などをチェックする。採血で亜鉛、鉄、銅などの微量元素を測定する。また唾液量測定や電気味覚検査、ろ紙ディスク法を用いた味覚機能評価を行う。問診では内服薬のチェック、心因性要素の有無、VAS(visual analogue scale)を用いて自覚症状の程度を評価することが重要である。心因性を疑われる場合は心理テストを施行する。


口腔乾燥症
xerostomia,dry mouth

病態と診断
A 病態
 口腔乾燥症とは、唾液分泌低下、粘膜の保湿低下によって生じる口腔の乾燥状態(ドライマウス)の症状名である。
 症状としては、口蓋部や舌背の乾燥、食物摂取困難、咀嚼障害、嚥下障害、言語障害、味覚異常、舌の発赤、平滑舌、口腔粘膜の灼熱感、菲薄化、また齲蝕の発症、歯周病の増悪、義歯の不適合、カンジダ症の出現、誤嚥性肺炎の誘発がみられる。

B 原因
 全身的なものとしては糖尿病、発熱、下痢、嘔吐による脱水、貧血、腎機能障害、甲状腺機能障害がある。神経性のものとしては神経的緊張、ストレスがあり、抑うつ患者にも発現する。薬物性のものとしては抗コリン薬、抗パーキソン薬、抗精神病薬や抗不安薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬、降圧薬の副作用として出現する。
 また、唾液腺自体が原因となるものとしては加齢によるもの、放射線照射による障害、シェ―グレン症候群などの自己免疫疾患によるものなどが考えられる。

C 診断
 唾液腺造影検査、刺激時唾液量測定(サクソンテスト2g/2分以下、ガムテスト10ml/10分以下で唾液分泌量低下)、安静時唾液量測定(吐唾法1.5ml/15分以下で唾液分泌量低下)を行う。
 また、シェーグレン症候群には眼科検査(Schirmer試験で陽性)、血清検査では抗Ro/SS-B抗体を含む自己免疫検査、口唇腺生検などを行う。


舌痛症
glossodynia

病態と診断
A 病態
 視診、触診で器質的な異常や変化が認められないのに、舌や口唇に慢性的な疼痛やピリピリ、あるいはヒリヒリとしてしびれなどの異常感を訴えるものを舌痛症とよぶ。舌劣に認められ、50-60歳代の女性に多く、男性では少ない。日内変動があり、夕方から夜に悪化することもある。食事中や何かに熱中している間は舌の痛みやしびれを感じないことが多く、味覚には変化がない。
 原因は十分解明されていないが、局所の器質的な誘因として、歯の鋭縁や不良補綴装置などによる機械的刺激などが考えられ、カンジダ性口内炎によるものもある。全身的には、唾液腺機能の低下による口腔乾燥症、身体表現性障害、または心身症、神経症、癌恐怖症などの性心疾患が誘因として挙げられ、気分の悪化とともに身体症状としての痛みを訴える心因性疼痛もその1つと考えられている。

B 診断
 舌や口腔内の器質的異常の有無や全身疾患に伴う病変でないことを確認することが重要である。鑑別診断として、鉄欠乏性貧血、口腔乾燥症、ヘルペス性口内炎、カンジダ性口内炎などが挙げられる。血液検査では血清Feを調べ、自己免疫検査(抗SS-A,抗SS-B抗体)、口腔内細菌検査、またはサクソンテストも実施する。


昼夜逆転患者のケア

病態と診断
 ケア現場で遭遇する昼夜逆転の問題は、主として認知症やせん妄に伴うものであり、不規則な睡眠覚醒リズム、あるいは巣規則な活動休息リズムを呈することが多いため、介護者を消耗させる。その際、夜間不眠と夜間の活動性亢進が、単に不眠によるのか、意識変容の結果なのかを確認し、不眠とせん妄を鑑別しなければならない。本人が夜間のエピソードを記憶しているか(ただし認知症で近時記憶障害があれば必ずしも参考とならない)。目がすわっていたり疎通性が変動したりしないか、などに注目すれば、せん妄を疑うことは容易であろう。また、夜間に繰り返される問題を、単に夜間だけの問題としてとらえるべきではない。夜間睡眠は日中の活動性に大きく影響されるため、日中にケア不足になっていないか、昼寝を長時間とっていないかなど、日中の生活状況をよく把握し、1日の生活リズムを大局的にとらえなければならない。

































Ads by Sitemix