透析療法と合併症


はじめに

1.慢性維持透析の現況
 我が国において、慢性維持透析患者総数は年々直線的な増加を示しており、2005年度の慢性維持透析患者総数は257,765人であった。我が国では、世界各国と比べても長期の維持透析患者が多いことが特徴であり、10年以上の患者は59,415人で、このうち20年以上の患者が16,260人となっている。
 これを透析方法別にみると、血液透析患者は96.3%であり、腹膜透析患者は3.6%と少ない。また、2005年度の1年間に新規に透析導入となった患者数は36,063人であり、その平均年齢は66.2歳である。2005年度新規透析導入患者の原疾患は、糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎、腎硬化症の3疾患の頻度が高い。一方、維持透析患者の導入後生存率は導入時年齢によって異なり、当然のことながら高齢者ほど低く、2005年度の年間粗死亡率は9.5%であった。死亡原因の第一位心不全で全体の25.8%、次いで感染症19.2%、脳血管障害9.8%、悪性腫瘍9.0%、心筋梗塞5.1%、その他9.1%などとなっている。

2.透析患者と合併症
 血液透析患者にみられる合併症は、表2に示すように多岐にわたっており、透析中に急激に発症する急性合併症と、腎不全や原疾患を基礎として緩徐に発症し持続する慢性合併症とがある。このような合併症は全ての透析患者に発症するわけではないが、急性合併症のうち低血圧や筋肉痙攣などは比較的発症頻度が高い。また慢性合併症のうち腎性貧血や免疫不全は透析導入時点ではほとんど全ての患者に合併を認めるが、それ以外は維持透析療法が長期となるにしたがって発症の頻度が高くなる。ここでは、代表的な合併症について概略を述べる。特に慢性合併症については、現時点で薬物療法による予防や治療が可能となっているものをとりあげて概説する。


1)血液透析中に発生する急性合併症
(1)低血圧
 腎不全により貯留した細胞外液量を正常化するため、血液透析では限外濾過により循環血漿中より体液を除去する。この際、間質あるいはthird space(腹水や胸水)から循環血漿中(血管内)への体液の移動が血液透析での濾過量より少ないと循環血漿量が減少することになり、心拍出量が低下して低血圧が起こる。しかしこの循環血漿量の減少に対し、末梢血管抵抗の増大や心拍数の増加、静脈収縮による静脈系から動脈内への血液還流の増大などの機序が作動すれば血圧は維持される。
 血液透析中に低血圧となりやすいのは、@目標除水量(ドライウエイト)設定の不適正により細胞外液が正常量以下となるような過剰な除去、A時間当たりの限外濾過量の過大(急速な除水)B酢酸透析液使用や降圧薬服用などによる末梢血管抵抗の低下、C自律神経障害により血圧低下に対する心拍数の増加や静脈収縮の代償機序が作動不良、D心機能障害、などの場合である。


      表1  新規透析導入患者の原疾患(2005年度:日本透析医学会調査)


    疾患名                   人数                %

 1.糖尿病性腎症               14,350              42.0
 2.慢性糸球体腎炎              9,340              27.3
 3.腎硬化症                   3,069               9.0
 4.多発性嚢胞腎                794                2.3
 5.急速進行性腎炎               378                1.1
 6.慢性腎盂腎炎                345                1.0
 7.ループス腎炎                 282                0.8
 8.移植後再導入                219                0.6
 9.悪性高血圧症                218                0.6
10.アミロイド腎                  158                0.5


      表2  透析合併症

 A.血液透析中に発生する急性合併症
  T.比較高頻度にみとめるもの
     1.低血圧
     2.筋痙攣(つり)
     3.悪心、嘔吐
     4.頭痛
     5.胸痛、背部痛
     6.ソウ痒
     7.発熱

  U.低頻度であるが重篤なもの
     1.不均衡症候群
     2.ダイアライザ反応
        Type A (アナフィラキシー)
        Type B (胸痛)

  V. 透析誘発性好中球減少と補体活性化 

  W. 透析低酸素血症


 B.維持透析患者の慢性合併症
  T.透析導入時にほとんどの患者に認めるもの
     1.高血圧
     2.腎性貧血
     3.免疫不全
     4.糖・脂質・タンパク代謝異常
     5.内分泌異常

  U.維持透析療法の期間が長期化するに伴って頻度が増加するもの
     1.腎性骨異栄養症
     2.二次性副甲状腺機能亢進症
     3.異所性石灰化
     4.心機能障害
     5.栄養障害
     6.動脈硬化
     7.アミロイドーシス
     8.免疫不全
     9.嚢胞腎・腎癌
    10.皮膚障害


(2)筋痙攣(つり)
 筋痙攣(つり)は、血液透析時間の後半に起こることが多い。主として下肢に出現し、痛みを伴う強い筋肉収縮が持続的に起こる。その原因は明確にされていないが、限外濾過による循環血漿量の低下と関連していると考えられている。

(3)頭痛
 原因は明らかではない。軽微な不均衡症候群の可能性がある。

(4)不均衡症候群
 不均衡症候群は血液透析での代表的急性合併症として従来より成書に必ず記載されているが、現実には発症頻度は極めて低い。本症は、透析治療により血液中の溶質が除去され血漿浸透圧が急速に低下することで脳細胞との間に浸透圧較差が生じ、水分が血漿より脳細胞内へ移動して脳浮腫が起こることが原因で発症すると考えられている。この他、脳脊髄液のpHの急速な変化も発症機序の一つとしてあげられている。本症は透析中のみならず透析治療終了後にも発症する。軽症では悪心・嘔吐、不安感、頭痛などの症状を呈し、重度では全身痙攣や意識障害を起こすとされている。しかし重度の不均衡症候群は近年まったく経験されないし、軽症の症状は低血圧に伴うことが多いので、純粋に不均衡症候群と診断されるケースはきわめて稀と考えられる。


2)慢性合併症
(1)高血圧
 慢性腎疾患が進行して糸球体濾過量が低下すればするほど高血圧を合併する頻度が高くなる。透析患者では約70〜80%が高血圧を呈する。透析患者の高血圧の主因は尿中への水分・塩分排泄の障害によりこれが体内へ貯留して、細胞外液量増大から循環血漿量増大により心拍出量増大をきたすことによる。さらには、末梢血管抵抗の増大も認められている。透析患者の高血圧は、透析療法自体による除水により細胞外液量増大が解消されないと各種の高圧薬の効果が出にくい場合が多い。

(2)腎性貧血
 赤血球は骨髄で産生されるが、これには腎臓から分泌されるエリスロポエチンが骨髄に作用することが必須である。腎不全のためエリスロポエチンの分泌が著しく低下すると、赤血球の産生が減少して貧血となる。現在のエリスロポエチン製剤が臨床使用できるようになる以前の時代では、腎臓が廃絶した透析患者のほとんど全員が重篤な貧血に陥り、時には輸血を必要としていた。しかし近年では、腎性貧血はエリスロポエチン製剤の注射により健常者に近く良好にコントロールできるようになっている。

(3)腎性骨異栄養症
 ビタミンDは腎臓で活性型に変換されて本来の作用を発揮する。このため、腎不全により活性型ビタミンDの産生が著しく低下すると骨軟化症が○起される。あるいは逆に副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)の作用不足により骨代謝回転の低下した無形成骨を呈する場合もある。腎性骨異栄養症はこれら透析患者に発症する骨疾患を総称したものである。本症が進展すると骨折や骨痛を起こす。近年では活性型ビタミンD製剤の経口あるいは静注や血清リン濃度高値の抑制により、ある程度の予防が可能となっている。

(4)二次性副甲状腺機能亢進症
 腎不全により血清活性型ビタミンD濃度低下、血清カルシウム濃度低下、血清リン濃度上昇により、二次的にPTHの分泌が亢進する。さらにこれが長期化すると、副甲状腺過形成から線腫へと進展する。予防と治療には、活性型ビタミンD製剤の経口あるいは静注を行ない、血清リン濃度高値を透析による除去や食事療法、リン吸着薬服用により是正する。長径10p以上の線腫を認め、血清PTH濃度が著しく高値となり、かつ薬物療法に反応せず、高カルシウム血症や高リン血症を呈する場合には、副甲状腺摘出術もしくは経皮的エタノール局所注入が必要となる。

(5)異所性石灰化
 高カルシウム血症あるいは高リン血症により、Ca×P積が高値となると、骨以外の臓器、特に血管や軟部組織にリン酸カルシウム沈着を主体とした石灰化が生じる。特に動脈に生じる沈着は動脈硬化進行の要因として重要視されている。また皮下軟部組織に腫瘤状の沈着石灰化を生じることもある。二次性副甲状腺機能亢進症の治療のために活性型ビタミンD剤を使用すると腸管からカルシウムとリンの吸収が増大し、これらの血清濃度の上昇を招くというジレンマがおきる。血清リン濃度高値を透析による除去や食事療法、リン吸着薬服用により十分に抑制することが肝要である。



尿路結石


はじめに

 尿路結石は有史以前から存在することが知られている。1901年、エジプトのAbidos附近のEI Amrah村落で、約7000年前の古代エジプトの古墳が発掘された。中には子供のミイラがあり、その骨盤内に巨大な膀胱結石が発見された。結石は帯黄褐色で表面が凹凸不整で顆粒状を呈し、結石の中心核部は尿酸であり、外被はシュウ酸カルシウムおよびリン酸アンモニウム・マグネシウムの混合結石であった。このように古代では膀胱結石が中心であり上部尿路結石(腎結石、尿管結石)は少なかった。このため、遊牧の放浪医が無麻酔で膀胱切石術を行い、死亡率は50%を超えていた。中世には床屋外科医が床屋の傍ら膀胱切石術を施していた。これも死亡率が高く、40〜50%であった。戦前の日本でも膀胱結石の方が多かったが、戦後、食の欧米化が進み高蛋白食を摂るようになって上部尿路結石が飛躍的に増加し、代わりに膀胱結石は激減した。このような現象を結石波(stone wave)と呼んでおり、上部尿路結石は都会派に下部尿路結石(膀胱結石、尿道結石)は農村派に多いと言われているが、我が国ではすべて都会派と考えてよい。

1.疫学
 本邦に於ける戦後の尿路結石の大部分(95%)は上部尿路結石であり、1975年の年間罹患率は10万人当たり53.2人であり、1995年の年間有病率は10万人当たり121.3人であり、増加傾向が続いている。好発年齢は1965年には20歳台であったが、その後徐々に上昇し、最近(1995年)では50歳台に移行している。男女比は2.4:1で戦前(6.9:1)に比べて女性の割合が増加している。これらのデータは
我国の全年齢層および男女の区別のない“飽食の時代”を物語るものであろう。1995年の統計における生涯罹患率は、男子9.4%、女子4.1%であり、日本人男性の10.6人に1人が一生の間に一度は尿路結石に罹患することになる。患者の発生は夏期に多く、冬期には少ない。これは夏期に多く、冬期には少ない。これは夏期には脱水のため尿が濃縮し結晶化が起こりやすいためである。大都会ではカルシウム含有結石の比率が高く、地方ではリン酸アンモニウム・マグネシウム結石の比率が高いが、最近では地方の生活水準も向上したのでリン酸アンモニウム・マグネシウム結石の比率はどんどん都会に近づいている。リン酸アンモニウム・マグネシウム結石は感染結石とも呼ばれ、下部尿路の細菌感染があると生じやすい。

2.病因
 原因は60%が不明であるが、遺伝的要素も強く、結石患者の25%に家族が結石に罹患した既往歴があるという。原因の明らかなものでは、高尿酸尿症(9%)、高カルシウム尿症(8%)、原発性副甲状腺機能亢進症(2%)などの内分泌代謝異常が26%である。その他の原因として尿流停滞(4%)、尿路感染(2%)、長期臥床(2%)などの環境因子(計8%)がある。稀なものとしてアセタゾラミド(ダイアモックス)、副腎ステロイド、トリアムテレン、ケイ酸マグネシウム、インディナビルなどの薬剤による結石形成が知られている。アセタゾラミドは緑内障の治療薬であるが、carbonic anhydrase inhibitorであり、腎尿細管で重炭酸イオンの再吸収を阻害するため、尿中重炭酸イオンが増加し尿pHがアルカリ化する。またリン酸尿(phosphaturia)をも同時に引き起こす。リン酸カルシウムは尿pH>6.8で結晶化するため、この両者が相俟ってリン酸カルシウム結石形成を助長する。副腎ステロイドは骨の脱灰を起こし尿中カルシウム排泄量が増し、その結果、カルシウム含有結石を生ずる。トリアムテレン、ケイ酸マグネシウム、インディナビルは腸管で吸収された後、尿中に排泄され結晶化する。

3.結石形成因子
 内分泌代謝異常、尿流停滞、尿路感染、長期臥床、薬剤による二次的なものなど種々あるが、要するに尿中のカルシウム、シュウ酸、リン酸、尿酸、アンモニウムなどの濃度が高くなり結晶が析出し、それ成長して結石となる訳である。結晶が析出するには、各物質の濃度、尿のpH、温度、細菌感染など種々の要因が複雑に絡んでいる。単に濃度が高いだけでは結晶は形成されない。リン酸カルシウムは尿pH>6.8で析出し始める。シスチンや尿酸は尿pH>7で溶解度が急激に上昇する。シュウ酸カルシウムは尿pHにあまり影響されないなど、結石の構成成分によってその性質は千差万別である。故に、その患者に合った結石予防薬を投与する必要がある。Proteus mirabilis、Klebsiella pneumoniaeなどのウレアーゼ産生細菌(urea‐splitting organism)の尿路感染があると尿素が分解されアンモニアを生じ、尿pH8を超えるようになりリン酸アンモニウム・マグネシウム結石などが形成される。宇宙飛行士は長期間無重力状態に置かれるので骨に荷重がかからず、脱灰が生じ骨からカルシウムが溶出し、尿中カルシウムが上昇することによりカルシウム含有結石が生じやすい。同様に、寝たきりの老人では骨のカルシウムが脱灰し膀胱結石などを生ずる。シスチン尿症は常染色体性劣性遺伝疾患で、尿中にリジン、アルギニン、オルニチンなどのアミノ酸とともにシスチンを大量に排泄する。シスチンは最も難溶性アミノ酸なので、六角板状結晶を生じ結石となる。尿をアルカリ化する代謝性疾患として遠位尿細管性アシドーシス(RTA typeT)があり、常染色体性劣性遺伝によるといわれている。

4.結石形成阻止因子
 クエン酸、マグネシウム、ピロリン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸などが知られている。これらは大部分、シュウ酸カルシウムの形成阻止因子であるが、ピロリン酸はリン酸カルシウム阻止因子である。このほか尿中の高分子物質にも結石形成阻止作用を持つものが多い。クエン酸はカルシウムをキレートすることにより結石形成を阻害する。

5.食事・supplement
 古代や戦前のように低蛋白・低脂肪食を摂っていれば腎結石や尿管結石などの上部尿路結石を生ずる可能性は非常に低くなる。その反面、膀胱結石や尿道結石などの下部尿路結石が増加する。昔は尿酸アンモニウム、リン酸アンモニウム・尿酸、シュウ酸カルシウムなどを主成分とする膀胱結石が多かった。この中で尿酸結石のみが富裕層の結石で他の成分は農民や貧困層で見られた。戦後は高蛋白・高脂肪食となり上部尿路結石が俄然多くなった。一般に肉、チーズ、牛乳を摂取すれば尿中のカルシウム排泄量が増加しカルシウム含有結石が増えると考えられている。しかし、1993年、Curhanらが45,000名の成人男性を追跡し、食事によるカルシウム摂取が平均1,326r/日の群(高カルシウム食)は平均516r/日の群(低カルシウム食)に較べて有意に結石再発率が低く、牛乳をたくさん飲む群の方がほとんど飲まない群よりも再発率が低かった。また、カルシウムをsupplementとして摂った群では摂らない群に対して有意に結石再発率が高かった。Curhanらの言うことが正しければ、平均的日本人はカルシウム摂取量が500r前後であるので、日本人の多数で結石ができなければならないがそうでもない。どうも言わんとするところは食事で摂ったカルシウムや牛乳は結石発生にはあまり悪さをしないが、supplementとして摂ったカルシウムはそのまま尿中に排泄されて結石形成因子となるということであろう。
 この説は一見逆説的ではあるけれども、食事として摂ったカルシウムはリン酸などと必ず結合しているので、無闇に腸管で吸収されない。カルシウムもリン酸も腸管で吸収される時はフリーのイオンとなっていなければならない。これに対してカルシウムsupplementはイオン化したカルシウムとして腸管に接するので容易に吸収され、ほとんどが尿中に出てしまう。同様にビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促すが、余剰のカルシウムは尿中に排泄される。これらのsupplement服用の際、カルシウムと結合するリン酸塩や硫酸塩が服用されたカルシウムに比べて圧倒的に少ないため、カルシウムと結合できず、余剰のカルシウムは血中へと吸収されてしまう。シュウ酸に関しても同様で、ホウレンソウやチョコレートなどのシュウ酸を多量に含む食物を摂取しても、食物中ではシュウ酸はカルシウム、マグネシウムなどと結合しており、あまり腸管から吸収されず、その上、摂取されたシュウ酸の約半分は腸内細菌によって分解されてしまう。故に、尿中シュウ酸の80%は内因性(肝産生)で、そのうち40%はビタミンC由来、40%はグリシン由来である。このような理由で、ホウレンソウをお皿に山盛りに食べた場合でも尿中のシュウ酸排泄量が少量増加するのみであり、尿中シュウ酸排泄量の10%のみが摂取されたシュウ酸を反映する。このように内因性のシュウ酸が多いので、美容などでもてはやされているビタミンCの大量摂取はシュウ酸カルシウム結石の源である。ビタミンCを1日10g以上摂取すると結石形成の可能性が高くなる。また、美容のため太り過ぎを防止する意味で小腸切除や小腸のバイパス手術をすると、吸収不良により腸管内に胆汁酸や脂肪酸が増加する。この結果、摂取されたカルシウムが腸管内で胆汁酸や脂肪酸とミセルを形成し、腸管内におけるカルシウムとシュウ酸の比が極端にシュウ酸に傾き、シュウ酸が大量に遊離するためシュウ酸吸収が増加しシュウ酸カルシウム結石ができやすくなる。

6.結石成分
 シュウ酸カルシウム、リン酸カルシウムなどを主成分とするカルシウム含有結石が85%、リン酸アンモニウム・マグネシウム結石7%、尿酸結石5%、シスチン結石2%である。稀なものとしてキサンチン結石、2.8-dideoxyadenine結石などがある。最近では赤外線分光分析で成分分析を行うので微量の結石の粉末があれば成分が判明する。結石成分分析は今後の治療方針を決める重要な手掛かりとなるので、できるだけ尿中から結石を回収することが大切である。

7.病態生理
 腎集合管で結晶形成が起こり集合管開口部でとどまり徐々に成長し腎結石となる。この現象は多数の腎乳頭に同時に起こり得る。ゆえに結石患者においては10年再発率が約半数となり、非常に高率となる。腎乳頭にぶらさがった状態の小結石が成長し、何らかの衝撃を受けて脱落し尿管を閉塞する。その結果、尿流が途絶し腎盂内圧が上昇し、疼痛を生ずる。尿管は蠕動運動を繰り返すので周期的に痛む。これを結石疝痛とよぶ。膀胱まで下降すればすぐに自然排石するが、前立腺肥大症などがあると膀胱にとどまり膀胱結石となる。

8.病理
 腎結石には必ず核と臍が存在する。核は結石の中心に存在し、シュウ酸カルシウム結石の場合はシュウ酸カルシウムまたは尿酸である。核と被殻の成分は必ずしも一致しない。被殻は何層にも層をなしており、その間に尿中の細菌や高分子物質が入り込んでいる。臍は結石の腎乳頭部への付着部で凹んでおり茶褐色のことが多い。ナイロン糸、針金、体温計などの異物を核として結石を形成することもある。

9.臨床像・臨床経過
 尿管結石では突然の側腹部疝痛で発症する。しばしば嘔気、嘔吐を伴う。外陰部、下肢への放散痛を訴えることもある。結石が膀胱付近に達すると残尿感や尿意頻数などの膀胱刺激症状が現れる。膀胱刺激症状が出現すれば結石は数日中に自然排石する。尿管結石ではときに肉眼的血尿を伴うことがある。一般的に腎結石では痛みを生じない。膀胱結石では排尿終末時痛、尿線途絶、血尿を主症状とする。大部分の結石(80%)は自然排石する。最も注意を払わなければならないのが症状を呈さない結石(silent stone)であり、一般に腎臓に嵌り込んでいる結石は痛みがない。このため、長期間放置され腎機能が廃絶することがある。疝痛発作は氷山の一角とみて慎重に精査すべきである。

10.検査所見
 超音波で水腎水尿管症と結石エコー(acoustic shadow)を確認する。腎尿管膀胱部単純撮影(plain film of kidney,ureter and bladder:KUB)、排泄性腎盂造影(drip infusion pyelography:DIP)を撮り水腎水尿管および結石陰影を確認する。カルシウム含有結石はX線よく写るが、X線陰性結石(尿酸結石、シスチン結石、キサンチン結石、2,8‐dideoxyadenine結石、トリアムテレン結石、インディナビル結石、matrix結石など)では陰影欠損としてみられる。一般にX線陰性結石であってもCT検査では白く写るので結石と判定できるが、インディナビル結石とmatrix結石(尿素分解菌などの細菌感染のある状態で粘液や細胞成分などが固まって泥状になったもの)はCTでも写らないので要注意である。一般的に血算、血液生化学に異常を認めないが、原発性副甲状腺機能亢進症では血中カルシウムが高く、リンが低く、副甲状腺ホルモン(parathyroid hormone:PTH)が高い。

11.診断・鑑別診断
 尿管結石では側腹部疝痛と肋骨脊柱角叩打痛を認め、顕微鏡的血尿、KUBで結石陰影を認めれば結石と診断してよい。その後、超音波検査とDIPをとり確定診断する。無痛生の尿路結石ではDIPをとり診断する。右側の尿管結石でしばしば虫垂炎と誤診されるので要注意である。また胃穿孔などの急性腹症との鑑別が必要である。結石では腹部は平坦、軟であるのですぐに鑑別できる。

12.合併症
 腎盂腎炎、膀胱炎を合併することがある。結石性膿腎症では敗血症に陥ることもあるので、尿管ステント留置や経皮的腎瘻を造設し早急に尿の排液を計るべきである。

13.治療の原則・治療法の選択
 大部分の結石(80%)は自然排石するので飲水や運動負荷により経過観察する。短径8o以下の結石は自然排石するといわれている。3か月以上結石が動かず、しかも直径が約1p以上の結石を手術対象とする。第一選択が体外衝撃破砕石術(extracorporeal shock wave lithotripsy:ESWL)である。しかし、ESWLの3か月完全排石率は約70%で、ESWL後の再発率は年率約10%であり、必ずしも万能とは言えない。ESWLで大部分の結石は破砕されるが、骨盤腔内結石や硬い結石では経皮的腎砕石術や経尿道的尿管砕石術などの泌尿器内視鏡(Endourology)の適応となる。Endourologyも不成功の症例に対してのみ観血的尿管切石術などを考慮する。

14.治療の実際
 尿管結石に対しては、ウラジロガシエキス(ウロカルン6C/日)により自然排石を促す。疼痛時はペンタゾシン(ソセゴン30r)、ヒドロキシジン(アタラックスP50r)を筋注する。疼痛が強度の時は点滴にペンタゾシン15rを混ぜゆっくり滴下すると疼痛はおさまる。自宅での鎮痛にはインドメタシン坐薬(50r)の頓用が効果的である。無痛性結石に対しては泌尿器科医が適宜治療する。

15.予防法
 予防の要諦は水分摂取にある。水分を摂取し、一日尿量を2L以上にするよう努めれば、再発頻度は減少する。飲水による予防法が最も安価で容易であり、継続しやすい。しかし、長期投薬による予防法もある。投薬による予防法としては、シュウ酸カルシウム結石予防にはサイアザイド系利尿薬(ダイクロトライド50r/日)、アロプリノール(アロプリノール100r/日)、ウラリット(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム配合剤3g/日)など、尿酸結石予防にはアロプリノール(100〜200r/日)、ウラリット(3g/日)を投与する。

 以上に述べたように、結石形成には複雑な要因がいろいろ絡まっていて、一筋縄では解決しない場合が多い。しかし、丹念に原因を追求し、その原因を除去するように治療方針をたてれば、かなりの症例で解決が可能となる。もし原因が不明であっても、飲水を促し飽食を避ければ、ある程度再発を予防できる。再発予防の内服薬はあくまでも予防の一助であって、完全に再発を防止するものではない。再発率を半分かそれ以下に低下させる手段に過ぎない。








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