女性の漢方

体・心・肌の不調を治す
女性の漢方バイブル
 キレイで元気に過ごすために!

監修/百枝幹雄(聖路加国際病院 女性総合診療部部長)

体心肌に効く
女性のための漢方とは?

漢方は女性の不調改善が得意分野です!

 忙しい毎日を送り、ストレスの多い現代を生きている女性たち。自分でも気づかないうちに疲れがたまり、体や心、肌に不調を感じることも。
 さらに女性の体は、毎月の月経周期によって女性ホルモンの分泌の波に絶えず影響され、冷えたり、むくんだり、イライラしたり、肌が荒れたり…。
 ホルモンバランスの変化によって左右される体調コントロールの難しさに、悩んでいる人も少なくありません。
 女性ホルモンの変化は、女性の人生にも大きく影響します。特に思春期、妊娠・出産期、更年期はホルモンの分泌が大きく変動し、さまざまな不調が起こりやすい時期です。
 漢方は、そんな現代女性の不調改善を得意とする医療です。日本における漢方医学は、その昔、中国から伝わった伝統医学がルーツですが、日本の風土や日本人の体質に合うように改良され、長い年月をかけ、効果や安全性が確かめられた日本独自の医学です。
 西洋医学が臓器別に悪い部分だけにターゲットを絞って治療をするのに対し、漢方は体全体を整え、自然治癒力を高めることを基本にしています。漢方は、現代を生きる女性にとって大きな助けになるはずです。
 ここでは、女性に多い不調や病気をあげて、それに対する標準的な治療とともに、漢方ができることを紹介しています。それぞれの症状によく使われる代表的な漢方薬もあげました。漢方を正しく理解し、上手に使う参考にしてみてください。現代女性として、キレイに元気に生きるために!

女性に優しい漢方がよくわかる
「Q&A」漢方に対する素朴な疑問をまとめました。

Q そもそも漢方ってどんなもの?
A 西洋医学的に病気ととらえにくい症状が得意。同じ症状でも異なる漢方薬が処方されることも

 西洋医学は、原因がはっきりしている病気への治療が得意なのに対し、漢方医学は、西洋医学では病気とはみなされないような不調対策も得意分野です。西洋医学では同じ病名なら同じ薬や治療が行われますが、漢方医学ではひとりひとりの「証」(体質やタイプ)や症状を診断して漢方薬を処方します。そのために同じ症状でも人によって違う漢方薬が処方されることがよくあります。ですから、医師に正しく診断してもらうことが大切です。

Q 漢方薬って何からできているの?
A 植物などの自然の生薬を組み合わせてつくられています。

 漢方薬は、自然界にある植物を中心に、動物由来のものや鉱物などを原料にした複数の生薬を組み合わせた薬です。古くから、生薬を細かく刻んで混ぜたものを煎じて飲むという形がありますが、現在、多くの病院で処方される漢方薬は”エキス顆粒製剤”。これは、煎じた液を濃縮、乾燥させ、顆粒に加工して飲みやすくしたものです。

Q どんな症状や病気に効くの?
A 検査で異常なしといわれる不調や体質的なものにも効果があります

 西洋医学では有効な治療法が少ない病気や、検査では異常なしといわれる病気や不調にも効果があります。月経に伴って起こる不調やアレルギーなどの体質的なもの、メンタルや皮膚の症状にも効果があります。たとえば、冷え症、肩こり、にきびや吹き出物、月経痛、便秘、むくみ、不眠などに効果的です。未病の段階の不調も改善してくれます。

Q 漢方薬にも副作用があるの?
A 副作用はあります。石の指示を守って服用することが大切

 漢方薬には副作用がないと思う人もいるかもしれませんが、これは間違いです。「証」(体質やタイプ)や症状に合わない薬を使ったり、大量に使い過ぎたり、薬の組み合わせが悪かったりすると、さまざまな症状が起こる場合があります。漢方薬も薬です。入りの指示を守って、正しく服用することが大切。必ず、医師や薬剤師に相談して下さい。

Q 健康保険は使えるの?
A 基本的に医師の処方による医療用漢方製剤は健康保険が適用されます。

 現在、日本では148種類の医療用漢方製剤に健康保険が適用されており、日常診療で広く使われています。また、煎じ薬でも健康保険が使えるものがあります。しかし医療機関によっては、自費診療(自由診療)といって、健康保険が使えない場合もありますので、初めに確認してみてください。

Q どのくらいの期間、飲むと効くの?
A 急性の病気なら数時間〜数日で、慢性なら一ヵ月が目安です。

 漢方薬はゆっくりと時間をかけて効くものと思っている人が多いようですが、風邪などの急性の病気に対して速効性があり、数時間〜数日で効く場合もあります。慢性の症状や病気でも2週間から1カ月くらいで徐々に効いてきます。慢性でも多くの場合、2〜3カ月続ければ、効果を実感できます。


どんな診療をするの?
 漢方薬の基礎知識
 漢方薬で体質をみるオリジナルの”ものさし”が「証」と「気・血・水」です。
 病態だけでなく、体質を重んじて漢方薬は処方されます。

虚・中・実とは?
「証」は体質や体力、病気に対する抵抗力を表します。

虚証 体力がなくやせ型、または水太り。筋肉が弱く、顔が青白くハリがない。胃腸が弱く下痢をしやすい。寒がり。

中間証 虚証と実証の中間のタイプ。

実証 体力がある。ガッチリしていて筋肉質。顔色がよく艶がある。暑がりで、胃腸が強く便秘気味。声が大きい。

寒・熱とは?
冷えがある病態か熱感がある病態かを見極めます

寒 
顔色が青白く、手足が冷え、触ると冷たい。お腹も冷たい。脈が弱く小さい。寒が進むと、下腹部痛、腰痛、頭痛などが起こりやすい。


顔が赤くほてり、口の渇き、尿の色が濃い。上半身が熱く、下半身が冷える場合も。体温が高くなくても、熱がこもった感じがすることも。

気・血・水とは?
気と血と水の3因子で体の要素ができていると考えます


「元気」「気力」「気持ち」の気。気の不調には、「気虚」無気力やだるさなど。「気滞・気うつ」頭重、息苦しさなど。「気逆」のぼせ、動悸などがある。


全身を巡って栄養を与えるおもに血液のこと。血の不調には「お血」月経の異常、肩こり、便秘など。「血虚」貧血、肌の乾燥などがある。


血液以外の体液。水分代謝や免疫システムにかかわる。水の不調は「水毒・水滞」でむくみ、めまい、頭痛、下痢、排尿異常などがある。

冷やす食品、温める食品
食品にも「冷やすもの」「温めるもの」があります。
 体を冷やす食品の多くは、夏が旬で暑い土地でとれる、トマト、きゅうり、なす、セロリ、すいか、バナナ、イチゴ、豆腐、枝豆、牛乳、ビール、コーヒーなど。凉をとるのに適しています。
 逆に温める食品の多くは、冬が旬で寒い土地でとれる、ねぎ、にら、生姜、リンゴ、梅、栗、さんま、あじなど。冷え症の人は温める食品が適しています。
 また中間の性質をもつ食品も多くあります。冷やす食品でも火を通したり、温める食品と食べることで温める性質に変身します。



1 冷え症
   さまざまな不調と関連が。積極的に治療しましょう。

症状
 「手足が冷たい」「体が寒い」「しもやけができる」など、冷えの感じ方も人それぞれ。大人の女性の約半数が冷え症ともいわれています。冬はもちろん、夏でも冷房による冷えに注意が必要。冷えは、肩こり、だるさ、むくみ、下痢、月経不順、不眠ほかの不調も招きます。

治療法
 原因として、貧血、低血圧、女性ホルモンの低下、自律神経失調症、甲状腺機能異常などが考えられます。貧血、甲状腺機能異常などがある場合には、おもに西洋医学的な薬剤を使って治療します。

漢方での対処法
 西洋医学では病気ととらえにくい冷え症も、漢方では治療の対象です。冷えは放置すれば月経痛をはじめ、さまさまな症状につながると考え、冷えの解消を重視します。治療には全身の気、血、水のバランス改善が大事。そのため、その人の”証”や症状、それぞれに合わせた幅広い漢方薬が処方されます。
 また、冷え症は”虚証”に特有と考えがちですが、”中間証””実証”にも、冷えとのぼせが混在するものがあり、症状に合わせた異なる漢方薬が処方されます。単に冷え症といっても、人によって使う漢方薬は千差万別。医師の診断を受けて使用することが大切です。
 生活習慣の見直しも漢方治療のひとつ。入浴、食生活、衣服などの医師からのアドバイスも重要です。

漢方処方例
 足冷えが強く、下腹部痛、月経痛がある場合
 当帰四逆加呉茱萸生姜湯

 手足のほてり、足腰の冷え、月経不順がある場合
 温経湯

 のぼせて、足冷えのある、肩こり、月経痛がある場合
 桂枝茯苓丸

 疲れやすく、イラ立ち感があり、月経不順がある場合
 加味逍遥散



2 にきび
   体質を改善して治します

症状
 毛穴が詰まる白にきび、酸化して黒ずむ黒にきび、炎症を起こす赤にきびなどがあります。便秘や冷え症を同時に抱えている人も少なくありません。
 思春期のにきびは肌の脂っぽさが原因なのに対して、20代以降にできる大人のにきびは、女性ホルモンや生活の乱れ、ストレスなどが原因で複雑に絡み合っています。ホルモンバランスの乱れでも、男性ホルモンの過剰分泌か、排卵機能の低下による女性ホルモンの不足か、によって治療方法は異なります。
 
治療法
 西洋医学では、抗菌薬のクリームや内服薬などを処方します。ケミカルピーリングなどの方法を行う皮膚科もあります。しかし、生活のサイクルを整えたり、食生活の改善をしたりして、体の状態を改善することも大切です。

漢方での対処法
 炎症を抑えたり、原因になる体質を改善することで、にきびのできにくい体にすることを目的とします。気、血、水のバランスを整える処方をします。西洋薬と組み合わせることもあります。
同じストレスによるにきびでも、血の巡りの悪い”お血”の人には「桂枝茯苓丸加よく苡仁」「桂枝茯苓丸」ほかを。顔面の熱を発散できない人には「清上防風湯」ほかが処方されたりと、ひとりひとり異なる場合が多いです。



漢方処方例

月経前と月経時のにきび、手足の荒れに
桂枝茯苓丸加よく苡仁

赤みや炎症が強く脂性肌のにきび、顔面の湿疹に
清上防風湯

発赤や、ときに化膿する急性で初期のにきび、湿疹に
十味敗毒湯

肌が浅黒い人で、炎症反応が慢性化し、化膿傾向を伴ったにきび、副鼻腔炎の人にも
荊芥連翹湯




PMS(月経前症候群)
多くの女性が悩む、月経前の体と心と肌の不調

症状
 イライラ、落ち込み、むくみ、めまい、疲れ、下腹部痛、肩こり、胃の不快感、腰痛、にきび、耳鳴り、便秘、眠気、不眠などなど。月経1週間くらい前から、さまざまな不調に悩まされるのがPMS。月経周期に伴う女性ホルモンのバランスの変化が原因で、ストレスで症状が悪化します。

治療法
 ホルモンバランスを整える低用量ピルで治療することもあります。メンタルの症状が強い場合には、抗うつ剤が有効な場合もあります。また、腰痛や頭痛には痛み止め、不眠には睡眠導入剤と、症状ごとの対処療法になります。

漢方での対処法
 血の滞りや水の滞りに、ストレスや冷えが加わって、ますます血の巡りが悪くなり、水がたまりやすくなります。
ストレスケアや体を冷やさない日常生活のケアが重要です。
 血の巡り“お血”の人には「桂枝茯苓丸」「桃核承気湯」、“水滞”の人には「当帰芍薬散」、ストレスがある場合は「加味逍遥散」「抑肝散」などが代表的。ひとりひとりの体質や症状に合わせて複数の漢方薬を組み合わせることもあります。漢方薬は、PMSの症状への対応は得意分野といえます。

漢方処方例

イライラ、肩こり、眠れない場合
加味逍遥散

頭重、お腹まわりが痛くなる場合
桂枝茯苓丸

のぼせ、便秘、腰痛、肩こりがある場合
桃核承気湯





月経痛
つらい月経痛は月経困難症という病気かもしれません。

症状
日常生活や仕事に差し支えたり、鎮痛剤を飲むほどの月経痛がある場合は、月経困難症という病名がつきます。「月経痛は、月経がある女性なら当たり前」と我慢したり、市販の鎮痛剤だけで対処せず、婦人科を受診しましょう。背後に、子宮内膜症、子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が隠れている場合も。将来の不妊症の原因にもなります。

治療法
 まずは婦人科で、原因となる病気がないかどうかを西洋医学的に検査します。原因となる病気があれば、西洋医学的に確立した薬物療法や手術などで治療します。背後に隠れた病気のない月経困難症には、低用量ピルなどのホルモン剤が有効です。

漢方での対処法
 西洋医学的な検査で特に原因となる病気がない場合は、漢方薬による治療も行われます。
 月経周期が早くなりがちで量が多く、かたまりが混ざるような出血があり、下腹部痛や腰痛がある人は“実証”タイプと診断されます。
 それぞれの「証」や月経痛以外の症状に合わせた漢方薬が処方されます。

漢方処方例

冷え症で疲れやすくむくみがある場合
当帰芍薬散

強い下腹部痛
こむら返りがある場合
芍薬甘草湯

肩こり、のぼせがある場合
桂枝茯苓丸

便秘、のぼせ、肩こりがある場合
桃核承気湯




月経不順
放っておいてはダメ。月経は健康のバロメーターです。

症状
 正常な月経周期は25〜38日です。毎月の月経日がずれても6日以内なら正常です。月経期間は3〜7日程度。これから多少ずれるくらいなら問題ありませんが、月経が1つ気に2回ある、2カ月以上こない、期間が短かったり、いつまでもダラダラ続く、量が極端に多かったり、少なかったりする、などがあったら婦人科を受診しましょう。
 月経はあっても排卵していない可能性もあり、病気が隠れているかもしれません。

治療法
 基礎体温をつけることが大切。基礎体温で、排卵の有無や女性ホルモンのバランスなどもある程度わかり、婦人科受信時の大事なデータになります。婦人科では基礎体温表を参考に、そのほかの検査をして、子宮や排卵の状態を調べます。
 原因は@ストレス、生活リズムの乱れによるもの、A多のう胞性卵巣、B加齢による卵巣機能の低下、C高プロラクチン血症などが考えられます。いずれの場合も、それぞれに適した薬で治療を行います。

漢方での対処法
 西洋医学的な薬と使い分けたり、あるいは単独で、原因に合わせた漢方薬を処方します。ストレスを伴うものには、「桂枝茯苓丸」などが使われます。




不妊症
漢方は男女ともに妊娠しやすい体調に整えます。

症状
 不妊症とは通常の夫婦生活を送っているのに、2年以上妊娠できない状態のことを指します。不妊症の原因は、男性因子と女性因子が同じくらいの割合であります。女性因子の原因は大きく分けて3つ考えられます。
@排卵障害
A着床障害
B卵管障害です。

治療法
 不妊治療の専門病院できちんと診断することが大切です。原因は、ひとつではなく、複数重なっていることも多いので、何より全部を網羅して検査することが重要です。
 女性だけでなく、男性の精液検査も必須です。そして、すべての原因に対して、それぞれに対応する西洋医学的な治療を行います。

漢方での対処法
 さまざまな不妊原因のなかで、女性因子の中の排卵障害や、男性因子でも漢方薬を用いる場合があり、効果が期待されます。
 検査で原因を特定したうえで、そのような原因がある場合には、漢方薬を西洋医学的な治療と複合的に使います。
 また、不妊では子宮内膜症などの痛みを伴う病気を持っていることが多いのですが、それらの病気に有効なホルモン剤は排卵を抑えてしまうので、妊娠を目的とする場合には使えません。
 このような場合には、おもに漢方薬を用います。「当帰芍薬散」や「温経湯」などが使われます。




プレ更年期
原因のはっきりしない体、心、肌の症状

症状
 更年期とは、閉経前後の時期で、一般的に40代後半から50代半ばまでをいいます。更年期は、卵巣機能の低下によって女性ホルモンの分泌が急激に減少する時期。この変化によって、ほてり、発汗、動悸、頭痛、便秘などの体の症状、イライラ、うつ、不眠などの心の症状、乾燥、かぶれなどの肌の症状など、さまざま現れるのが更年期障害です。更年期の少し前(40代前半から半ば)でも、更年期と同じような症状が起こることがあります。それがプレ更年期の症状です。

治療法
 閉経前後に起こるいわゆる更年期障害であれば、HRT(ホルモン補充療法)などで治療できます。けれども卵巣機能が働いているプレ更年期世代の場合は、HRTが使えないため、漢方薬の出番となることが多いです。

漢方での対処法
 女性ホルモンのバランスを整える漢方薬が使われます。漢方的には、気、血、水のバランスを整えるための処方です。
 イライラ、頭痛、肩こりなどの症状は“気” のバランスの乱れ。不眠、疲労感、肌のくすみは“血”のバランスの乱れ。めまい、冷え、むくみなどは“水”のバランスの乱れと考えて漢方薬を処方します。


漢方処方例
貧血気味で、冷え症、めまい、頭重感など
当帰芍薬散

肩こり、イライラ、不眠など
加味逍遥散

強い肩こり、多汗など
桂枝茯苓丸

のぼせ、便秘、イライラ、興奮など
桃核承気湯




腰痛
整形外科だけでなく婦人科的なチェックも

症状
 月経前につらくなる場合や、急性のものと慢性のものがあります。いろいろな病気が潜んでいる可能性があるため、長引く腰痛は、整形外科や婦人科で検査をしましょう。原因が、子宮や卵巣などからきている場合もあります。

治療法
 整形外科では、患部の診察に加え、レントゲン検査、MRI検査などを行います。骨や筋肉に何らかの異常があったり、椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの病気がわかれば、整形外科で治療をします。
 骨や筋肉に異常がなく、長引く腰痛がある場合は、婦人科のチェックも行います。子宮や卵巣の異常があり、原因となる病気がわかれば、西洋医学的に治療します。

漢方での対処法
 西洋医学的検査で異常がない腰痛は、冷えからきている場合もあります。冷えによる腰痛は、漢方薬による治療が期待できます。
 また、PMS(月経前症候群)や月経困難症によって起こる腰痛の場合も、漢方薬を組み合わせることがあります。
 右の漢方処方例以外に、急性の腰痛には「芍薬甘草湯」、慢性では「当帰芍薬散」「桂枝茯苓丸」「加味逍遥散」などが処方されることもあります。

漢方処方例
疲れやすく手足が冷えやすい人の、しびれ、腰痛に
八味地黄丸

手足の冷え、むくみがある人の、頻尿や腰痛に
牛車腎気丸

しびれがある人の関節痛や腰痛に
疎経活血湯

手足の冷え、下腹部痛がある、しもやけや腰痛に
当帰四逆加呉茱萸生姜湯




便秘・下痢
女性の半数以上が悩む症状です

症状
 1日1回お通じがないから即、便秘というわけではありません。排便のペースは人それぞれ。2〜3日に1回でも便の状態がよく、つらくなければ大丈夫。けれども、お腹が張る、痛む、硬くて強くいきまないと出ない、コロコロ便が少量だけ、などのつらい症状があれば治療すべきです。
 また原因不明の下痢が続く場合は、ストレスで起こる過敏性腸症候群という病気の可能性もあるので、検査が必要。便秘と下痢を交互に繰り返すこともあります。

治療法
 便秘や下痢は、生活習慣、食生活のアンバランス、ストレスなどが複雑に絡み合って起こります。長期にわたって、便秘や下痢が続く場合は、大腸ポリープや大腸がんなどの病気が隠れていないか検査します。また、細菌感染や食あたりが原因の場合は、西洋医学的な薬で治療します。

漢方での対処法
 隠れた病気がない便秘と下痢には、漢方薬が効きます。ストレスによる過敏性腸症候群にも漢方薬は効果的です。ただし、食事と運動、冷え解消などの生活習慣の改善が基本です。十分な水分補給と根菜、海藻類、キノコ類、豆類、果物などで食物繊維を欠かさず撮りましょう。
 腸内環境を整えてくれる発酵食品、納豆、味噌、ぬか漬け、キムチ、ヨーグルトなどもおすすめです。

うつ・不眠
ストレスや疲れで“気”が滞ると起こります

症状
 うつには、1日のうちで気分の浮き沈みが激しくなったり、焦りやイライラ、自分を責める、他人の言葉が必要以上に気になるなどの症状が。
 不眠は大別すると4タイプに分かれます。寝るまでに時間がかかる“入眠障害”起きようとしている時間の前に何度も目が覚めてしまう“中途覚醒”、朝早く目覚めてしまう“早朝覚醒”、眠りが浅く熟睡感のない“熟眠障害”などがあります。

治療法
 うつや不眠は、強度のストレスや疲労によって引き起こされることが多いのが特徴です。更年期障害などの女性ホルモンの大きな変動で起こることもあります。
 治療には、精神安定剤や抗うつ剤、入眠剤などが処方されます。
 また、自律訓練法などで、精神面をコントロールする方法や、カウンセリングなども行います。

漢方での対処法
 漢方では、うつや不眠は、“気”の滞りによって、体と心のバランスが乱れて起こる症状と考えます。“気”の巡りをよくするために、ひとりひとりの“証”や症状を考慮して漢方薬が使い分けられます。

漢方処方例
疲れて血色が悪い人の不安に
加味帰脾湯

不安やイライラが強い場合
柴胡加竜骨牡蛎湯

心身が疲れて眠れない場合
酸棗仁湯

イライラ、神経過敏で怒りやすい人の不眠に
抑肝散




頭痛
女性ホルモンが影響している頭痛も

症状
 女性に多い頭痛には、片頭痛、緊張型頭痛、月経に伴う頭痛があります。
 片頭痛は、視野のゆがみや白っぽい光が走る、まぶしいなどの前兆があり、習慣性、反復性があります。放っておくと痛みは増強します。
 緊張型頭痛は、頭全体やこめかみを締めつけるような痛みがあり、首や肩のこりを伴います。
 月経前や月経中に起こる頭痛は、ズキンズキンと脈を打つような痛み方をすることが多いです。

治療法
 一過性の頭痛でなく、何度もくり返したり、痛みが増強したりする頭痛は、脳神経外科、神経内科や頭痛外来を受診します。慢性の頭痛を市販の鎮痛剤で長い間しのいでいると、薬物乱用型頭痛といって、治療の難しい頭痛に変わってしまうことがあります。
 検査をして隠れた病気がないか、どの種類の頭痛かを確認することが大切です。片頭痛の治療にはよく効く西洋薬があります。月経に伴う頭痛は、低用量ピルが効くこともあります。

漢方での対処法
 筋の場合は、鎮痛剤、末梢循環改善剤などに加えて、漢方薬を組み合わせることでよく効きます。漢方薬単独で効果が出ることもあります。過労やストレスを解消し、十分な睡眠をとることも重要です。

漢方処方例
手足が冷えて肩がこり、吐き気の伴う片頭痛
呉茱萸湯

肩こり、緊張型頭痛
葛根湯

のぼせ、肩こりのある頭痛
桂枝茯苓丸

めまい、むくみがある人の頭痛
五苓散




だるい・疲れる
隠れた病気がないか要注意です

症状
 一日中だるい、すぐに疲れる、なんとなく調子が悪いなどは、不調というより怠けグセと考えてしまい、自分を責めたり、無理をしてしまいがち。でも、だるい、疲れるなどの症状は、体と心の健康の注意信号です。
 なかには貧血や胃腸機能の低下、甲状腺の病気、肝機能の低下など、病気のサインの場合も。放っておかず、早めに対処して改善しましょう。

治療法
 長い間続く場合は、病気の可能性もありますので、内科を受診して検査します。病気に応じた西洋医学的な治療を優先します。

漢方での対処法
 原因となる病気がなければ漢方薬の出番です。漢方で、疲労は生命エネルギーの流れに障害が現れ始めたと考えます。
 疲労が強い場合は“気”が足りない“気虚”の状態。これが進むと“血”が足りない“血虚”の状態に。漢方薬は、“気”の巡りをよくしたり、“血”を補うことで、体のエネルギーをアップする処方を行います。
 また、毎日の生活の中で、10分でもいいので、ストレス解消やリラックスできる時間をつくることも重要です。

漢方処方例
精神的なストレスや不眠がある場合
加味逍遥散

心身が疲れて血色が悪く、不眠や不安がある場合
加味帰脾湯

元気がなく、胃腸の働きが衰えている人に
補中益気湯

疲れて、貧血気味で食欲がない人に
十全大補湯




むくみ
冷えを改善することも大事です

症状
 夕方になると脚がパンパン、脚がだるい、朝鏡を見ると顔がむくんでいる…など、女性には不快な症状です。むくみの出やすい人は、同時に冷えやすい人でもあります。疲れがとれにくい、頭痛、めまい、肩こり、汗をかきやすいなども、実はむくみの人に起こりやすい症状。

治療法
 夕片、脚がむくむことは通常よくあることですが、朝になってもむくみがとれない、むくみが長く続くなどは注意が必要。腎臓の病気や甲状腺の病気などが背後に隠れていないか、一度、内科で検査をしてもらいましょう。
 特に隠れた病気がない場合は、西洋薬では利尿剤などが処方されますが、漢方薬や生活習慣で改善できます。

漢方での対処法
 体が冷えると体内の水が流れず、滞ってしまいます。これは漢方では“水毒”“水滞”といい、これがむくみの原因と考えます。むくみやすい体質を改善するためには、適度な運動と入浴、タンパク質とビタミンをバランスよく摂る食習慣が大切。“水”の流れをよくする漢方薬も、むくみにはよく効きます。

漢方処方例
下半身が冷えて、疲れやすい場合
当帰芍薬散

口が渇きトイレ回数が少ない人のむくみ、二日酔いに
五苓散

疲れやすく汗をかきやすい人の、むくみ、関節痛に
防已黄耆湯




花粉症・鼻炎
鼻水、くしゃみは“水”の乱れの表れです

症状
鼻水、くしゃみ、目のかゆみなど花粉の季節につらい症状に悩まされる人が増えています。アレルギー性鼻炎も同様の症状で、ハウスダストやペットなどが原因の場合も。

治療法
 花粉症やアレルギー性鼻炎は、本来、体を病原体から守る役割をする免疫の過剰反応によって起こります。花粉を外敵としてとらえ、体から外へ追い出そうとして鼻水や涙が出ます。
 西洋医学では、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤が処方されます。また、減感作療法といって、アレルゲンとなる花粉やハウスダストを注射などで少しずつ体内に入れて、アレルギー反応をなくす方法もあります。

漢方での対処法
 漢方では、気、血、水のバランスの崩れで起こると考えます。その原因は、冷えだったり、熱のこもり過ぎであったりさまざまです。
 漢方薬で花粉症や鼻炎に最も用いられるのは、「小青竜湯」。ねむくなる成分は入っていないので、運転や危険な作業をする場合でも服用できます。水がたまり過ぎた“水毒”の冷えを改善する処方です。
 手足に冷えがある場合などは、「麻黄附子細辛湯」を使います。
 熱がこもるタイプの人には、「葛根湯加川きゅう辛夷」を使います。

漢方処方例
水っぽい鼻水や痰を伴うせきに
小青竜湯

熱がこもり鼻水が詰まるタイプに
葛根湯加川きゅう辛夷

風のひき始め、鼻かぜや鼻炎に
葛根湯

手足の冷え、悪寒がある人の風邪や、アレルギー性鼻炎に
麻黄附子細辛湯




風邪
ひき始めにも、長引く風邪にも漢方は効果的

症状
 風邪の症状は、寒気、のどの痛み、せき、鼻水、発熱などさまざま。風邪の進行段階によって症状も変わってきます。風邪のおもな原因はウイスル。ウイルスがのどや鼻の粘膜ん感染し、炎症が起こることで、さまざまな症状が起こります。

治療法
 ウイルスを完全にとり除く薬はなく、西洋薬の場合は、のどの痛みをとる、せきを止める、熱を下げるといったそれぞれの症状を抑える薬が処方されます。

漢方での対処法
 漢方薬では、体の抵抗力を高めることによって炎症を抑える、という発想。漢方薬は長く飲み続けないと効かない、という印象を持つ人が多いですが、風邪などの急性の症状にも速効性を発揮します。
 できれば「少し風邪気味かしら?」と感じた初期に漢方薬を飲むと、早く回復できます。風邪の進行段階や症状、体力に応じて、さまざまな漢方薬を使い分けます。
 風邪のひき始めは、おかゆやとろみをつけたうどんなど、温かく消化のいい食べものを食べて、ゆっくり睡眠をとることも大切です。

漢方処方例
発汗がある場合のひき始めの微熱に
桂枝湯

手足が冷え、ときに悪寒のある風邪や気管支炎に
麻黄附子細辛湯

発汗がなく、ひき始めの悪寒や頭痛、肩こりに
葛根湯

のどが痛いときに
桔梗湯




肩こり、頻尿・尿もれ、胃痛・胃もたれ〜その他の症状〜
いずれも女性に多い症状です。長引くときは病院で検査を

肩こり

症状
寝違えや仕事で起こる急性と長引く慢性が。月経前に強くなる人も。

治療法
西洋医学では鎮痛剤の飲み薬、貼り薬が処方されます。
長引く場合は、頸椎症、胸郭出口症候群、頸椎椎間板ヘルニアなどもあるので整形外科で検査を。

漢方での対処法
冷えが大きな原因と考えます。首周りを温める「葛根湯」。ストレスを緩和し、冷えと改善する「加味逍遥散」のほか、「桂枝茯苓丸」などを使います。


頻尿・尿もれ

症状 
急に尿意を感じ、我慢できなくなる化活動膀胱、尿意をもよおしたとたんに、もれる切迫性尿失禁、くしゃみや重い物を持ったときにもれる腹圧性尿失禁など。

治療法
骨盤底筋群を鍛える体操、薬による治療が効果的。重症には手術も。

漢方での対処法
“水毒・水滞”“お血”など、排尿トラブルの背景にある原因を探り、頻尿・尿もれを改善します。「八味地黄丸」「五車腎気丸」がよく使われます。


胃痛・胃もたれ

症状
食べ過ぎ、飲み過ぎだけでなく、ストレスで消化機能が低下し、胃もたれ、胃痛が起こることも。お腹が張る、食欲不振、胸やけがある場合も。長引く場合は病院へ。

治療法
胃潰瘍、十二指腸潰瘍ほか胃の病気がないかを検査し、ただの胃炎なら症状に合った胃腸薬を使います。

漢方での対処法
気の不足“気虚”、水の滞り“水毒”の状態。胃腸を温め、緊張を解く「六君子湯」が第一選択。「人参湯」「安中散」もよく使われています。






























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