女性2

皮膚の症状と異常
湿疹・皮膚炎群

◎痒みが強いのが特徴
 湿疹は種類が多い皮膚病で、患者数も皮膚病全体の30%程度を占めています。多くの場合、湿疹ができた個所の表皮組織には、一種のむくみ状態(浮腫)が認められます(細胞間浮腫と細胞内浮腫)。
 これは、かぶれ(接触皮膚炎)などの皮膚炎と大体同じです。そのため、湿疹と皮膚炎は、「湿疹・皮膚炎群」という呼び方で、同類の皮膚病として扱うのが普通です。
 湿疹・皮膚炎群には急性型と慢性型がありますが、急性型は皮膚が赤くなり(紅斑)、小さな水泡やツブツブ(小水疱・小丘疹・小膿疱)ができて皮膚がジクジク湿っぽく(湿潤)し、カサブタ(痂皮)や、皮膚の粉屑様のもの(鱗屑)なども見られます。
 急性型では、これらの多様な発疹が同時か、時期がずれて現れます。
 また慢性型では、皮膚表面が何となく厚ぼったくなったり固くなったり、ザラついて皮膚の皺が深く鮮明になったりします。(「表皮の肥厚・角質増殖・苔癬化」などと呼ぶ)。
 急性型も慢性型も痒みが強いのが特徴で、掻き壊した個所が慢性化することも少なくありません。

湿疹・皮膚炎群の主な疾患
◎尋常性湿疹(ふつうの急性湿疹)
◎接触性皮膚炎(「かぶれ」)
◎アトピー性皮膚炎
◎脂漏性湿疹(皮脂の多い部位に好発)
◎ビダール苔癬(慢性湿疹の一種)
◎貨幣状湿疹 (    〃     )
◎自家感作性皮膚炎
◎うっ血性湿疹


◎漢方は主に慢性型に用いる
 湿疹・皮膚炎群のなかで、最も多いのは急性湿疹の典型(尋常性湿疹とも呼ぶ)で、急性型の多彩な症状が見られます。一般に、単に「湿疹」といった時は、このタイプを指します。
 そのほか、皮脂の分泌異常などが影響する「脂漏性湿疹」や、物理的刺激やアレルギーなどによる「接触皮膚炎」(いわゆる「かぶれ」)、「アトピー性皮膚炎」(次項参照)などもよく見られます。
 また、原因が不明で、慢性的に皮膚症状が現れるようなケースもみられます(「慢性湿疹」とも呼ばれる)。
 「尋常性湿疹」や「接触皮膚炎」などの急性型の多くは、ステロイド外用剤を使えば短期間で治すことができます。かゆみが強ければ、抗ヒスタミン剤を併用すれば治まります。
 しかし、慢性化した場合は、ステロイド外用剤を段階的に強くしていかざるを得ません。このようなケースでは漢方薬が大変有効です。また、急性湿疹を繰り返すような場合も、体質改善に漢方薬が有効です。

◎ステロイド剤との併用も行う
 湿疹・皮膚炎群の漢方療法では、漢方薬は、皮膚症状がジグジグと湿った「湿潤型」のものと、カサカサとした「乾燥型」に大別して処方を選ぶのが普通です。
 「湿潤型」の場合は、体力があって痒みが強く、局所の熱感があれば消風散、体力がふつうで口渇があり、発汗が多ければ越脾加朮湯、体力がなくて発汗が多いような場合は桂枝加黄耆湯を用います。
 これらの処方は、単独でも効果がありますが、しばしばステロイド外用剤に併用します。
 一方、「乾燥型」の場合は、体力があれば清上防風湯や黄連解毒湯など、体力がふつうなら十味敗毒湯や温清飲を、体力がない場合は黄耆建中湯や当帰飲子、柴胡清肝湯などを用います。
 なお、長年続いている頑固な皮膚炎などの場合は、心身の状態が低下していたり、西洋薬の副作用の影響が現れていることが少なくありません。
 こうした時は、ふつう皮膚病には使わない十全大補湯などで、まず基礎体力の調整・強化を行うことがあります。なかには、この治療だけで皮膚症状が治ってしまうこともあります。


◆湿疹・皮膚炎群に用いる主な処方◆

  型     証        目安となる症状                  処方名
 湿潤型   実      痒みが強い・熱感がある              消風散
 湿潤型   中      口渇・発汗が多い・尿量減少           越脾加朮湯
 湿潤型   虚      上記と同様の症状で、体力がないもの     桂枝加黄耆湯
 乾燥型   実      便秘がち・のぼせ・熱感・赤ら顔         清上防風湯
 乾燥型   実      のぼせ・イライラ・不安などを伴う         黄連解毒湯
 乾燥型   実      肩こり・頭や顔の湿疹・強い炎症と痒み     葛根湯
 乾燥型   中      化膿症・紅斑(皮膚の赤味)・強い痒み     十味敗毒湯
 乾燥型   中      皮膚乾燥・のぼせ・手足のほてりを伴う     温清飲
 乾燥型   虚      疲労感・寝汗などを伴う              黄耆建中湯
 乾燥型   虚      皮膚乾燥・強い痒み・老人・虚弱体質      当帰飲子


にきび(尋常性座瘡)

◎顔面や首、背中に多発

 *「湿潤型」の場合は、ステロイド外用剤との併用が多く、上記処方の他に、体質改善などを目的として大柴胡湯(実証)・柴苓湯(中間証)・柴朴湯(中間証)・柴胡清肝湯なども併用される。


アトピー性皮膚炎

◎西洋薬だけでは完治しない
 「湿疹・皮膚炎群」に含まれる皮膚病で、アトピー体質という一種のアレルギー体質の人におこります。近年は、幼小児のアトピー性皮膚炎が急増しており注目されています。
 ストレスや食事、ダニ、汗などの因子が引き金となり、強い痒みと湿疹症状が現れます。年齢とともに発疹部位が限定されてきて、皮膚が乾燥し、固く厚ぼったくなる傾向があります。
 治療は、ステロイド外洋剤が有効ですが、この薬では完治できず、漢方療法を併用することが少なくありません。

◎漢方薬で体質を改善する
 アトピー性皮膚炎の人は、しばしば気管支喘息などの他のアレルギー疾患を合併しています。このような時は、苓甘姜味辛夏仁湯や六君子湯、八味地黄丸、十全大補湯などで、まず体質を改善するのがふつうです。
 合併症がなく、皮膚症状を特に訴える時は、体力があって赤ら顔で顔面・頭部の湿疹があれば清上防風湯、のぼせ・イライラがあれば黄連解毒湯を用います(チャート図参照)。
 また、強い痒みと局所の熱感などがあれば消風散、口渇・皮膚乾燥などがあれば白虎加人参湯、頭部・顔面のジクジクした皮疹なら治頭瘡一方、肩こり・顔面や頭部の湿疹があれば葛根湯などを用います。
 体力がふつうの場合は、口渇・発汗などがあれば越脾加朮湯、化膿・紅斑などがあれば十味敗毒湯、皮膚が浅黒くて手のひらに汗をかきやすい人なら荊芥連翹湯、皮膚乾燥・のぼせ・手足のほてりがあれば温清飲などを用います。
 体力がない人は、疲労感・寝汗があれば黄耆建中湯、発汗とジクジクした発疹があれば桂枝加黄耆湯、皮膚が浅黒くて神経質、風邪ひきが多ければ柴胡清肝湯、全身倦怠感・貧血・食欲不振があれば補中益気湯などを用います。


じんましん

◎アレルギー性のものが多い
 じんましんは、「膨疹」という赤くて大きく盛り上がった水疱が現れ、強い痒みを伴う皮膚病です。
 発症すると、「膨疹」と強い痒みは数分〜数時間続きますが、やがて跡形もなく消えてしまいます。
 暫くしてから、再び同様の症状が現れてまた消滅し、これを繰り返すこともありますが、こうした状態は、通常は1〜2週間以内に治まります(急性じんましんと呼ばれる)。
 ただし、なかには、じんましん症状の繰り返しが3週間〜1ヵ月以上続くものももられます。この場合は慢性じんましんと呼ばれます。
 急性じんましんは、アレルギー性鼻炎などをおこすのと同様のアレルギー反応が原因となることが少なくありません。
 また、温熱や寒冷、日光などの環境的刺激や、衣服による機械的刺激、精神的緊張などの神経的な影響などでおこることもあります。
 アレルギー性のものは、しばしば食事中の成分が原因にになります。服用した薬が原因になることもあります。

◎慢性じんましんには漢方薬
 じんましんは、多くの場合、原因となった因子を避ければ再発を防ぐことができます。
 ただし、原因がはっきりしない場合は、再発を繰り返すことがあります。
 こうした時は、抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤、ステロイド剤などの西洋薬を用いますが、なかには、「膨疹」の」繰り返しが3週間〜1ヵ月以上続くもの(慢性じんましん)も見られます。
 こうした慢性じんましんには、漢方薬が有効です。
 じんましんの漢方療法では、実証タイプならば十味敗毒湯や茵ちん蒿湯など、中間証タイプならば茵ちん五苓散などの処方がよく用いられます。
 皮膚症状にとらわれずに、胃腸の働きを調整する治療法が有効です。


◆慢性じんましんに用いる主な処方◆

  証        目安となる症状                  処方名
 実証      化膿やオデキができやすい・強い痒み      十味敗毒湯
 実証      口渇・胸苦しい・便秘などを伴う          茵ちん蒿湯
 実証      のぼせ・肩こり・月経異常などを伴う        桂枝茯苓丸
 実証      上記症状で便秘する                大柴胡湯
中間証      口渇・むくみ・強い痒みなどを伴う         茵ちん五苓散
中間証     胸脇苦満感・食欲不振・口中の苦み        小柴胡湯
中間証     皮膚乾燥・のぼせ・冷え・疲労感などを伴う    温清飲
 虚証      虚弱体質・貧血傾向・皮膚乾燥          当帰飲子


にきび(尋常性座瘡)

◎顔面や首、背中に多発
 にきび(尋常性座瘡)は、皮脂が毛孔に溜まり、そこににきび菌が感染して化膿し、炎症をおこすものです。
 ほとんどの場合、性ホルモンの働きが活発になって、皮脂の分泌も盛んになる思春期に発症します。肝機能が低下していたり、便秘がある時などにも、にきびができやすくなります。
 最初に、毛孔に一致した小さいツブツブができ(面皰)、やがて化膿して赤くなります。皮脂腺の多い顔面や、背中、首などに多発します。

◎傷んだ皮膚には手で触れない
 にきびが軽症なら、洗顔などのスキンケアを続けたり、イオウを含むローション剤や抗生物質などを使えばたいていは治ります。
 治りにくいにきびや、便秘体質などでにきびが出やすいような場合は、漢方療法が有効です。
 にきびの漢方療法では、体力がある場合は、月経異常・腹部の抵抗感や圧痛などがあれば桂枝茯苓丸、化膿傾向が強ければ十味敗毒湯を用います。
 また、便秘や冷えが強ければ桃核承気湯、特に化膿しやすければ清上防風湯を用います。
 体力がふつうなら、皮膚が赤黒くて炎症をおこしやすければ荊芥連翹湯、皮膚が乾燥気味でのぼせなどがあれば温清飲などを用います。
 体力がない場合は、冷え性・血色不良などを伴っていれば当帰芍薬散などを用います。


◆にきび(尋常性座瘡)に用いる主な処方チャート◆

主要症状
顔面や首、背中などの毛孔に一致した小さなツブツブ、化膿性の赤みを帯びた丘疹など
                

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない 
疲れやすい(虚証)      赤みの弱いにきび・冷え症・血色不良       当帰芍薬散

ふつう (中間証)       赤黒いにきび・月経時に悪化・下腹部痛      桂枝茯苓丸加よく苡仁

                  皮膚が乾燥気味・腹部に圧痛・のぼせ       温清飲

                 皮膚が赤黒い・炎症をおこしやすい         荊芥連翹湯  排膿散及湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)      便秘や冷えが強い・赤黒い顔・化膿傾向     桃核承気湯

                 先端が尖って赤いにきび・すぐ化膿する      清上防風湯

                 化膿しやすい・肌荒れ・痒みがある         十味敗毒湯

                 下腹部の抵抗と圧痛・月経異常・のぼせ      桂枝茯苓丸

 このほか、多少でも便秘のある人には大黄を適宜追加する。大黄にはニキビの重症化に関与する細菌を殺す働きがある。


シミ・肌荒れ

◎ストレスや過労が誘因になる
 シミは「肝斑」ともいうように、肝機能が低下している時にできやすいほか、妊娠中にできることも少なくありません。その多くは、ストレスや過労などが誘因になっているものの、はっきりした原因はわかっていません。
 一方、肌荒れは、多くの場合、過労や生理不順などの体調の低下に起因しています。しかし、何らかの内臓疾患などがある時にも肌荒れがおこりやすいので、気になる時は、一度専門医を受診してみる必要があります。

◎柴胡剤や「駆お血剤」が効果的
 シミや肌荒れは、何らかの本格的な原因疾患がなければ、漢方療法が有効です。
 シミの漢方療法では、体力がある人で、胸脇苦満感・便秘・肩こりなどを伴っていれば大柴胡湯、のぼせ・肩こり・月経異常があれば桂枝茯苓丸などを用います。
 体力がふつうの人なら、胸脇苦満感・口中のねばり・のぼせ・食欲不振などの症状を目安にして柴胡桂枝湯などを用います。
 また同様の症状で体力がない人は、柴胡桂枝乾姜湯などを用います。
 一方、肌荒れの場合は、比較的体力があるかふつうなら、のぼせ、肌や唇の乾燥などの症状を目標にして麻杏よく甘湯を用います。
 体力がない場合は、手足の冷え・顔色不良・月経異常などがあれば当帰芍薬散、同様の症状で貧血傾向が強ければ四物湯を用います。


◆シミ・肌あれに用いる主な処方チャート◆

主要症状
ストレスや過労によるシミ・過労や生理不順などによる肌あれ

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       貧血気味・冷え・月経異常・めまい       温経湯  四物湯

                   冷え・顔色不良・月経異常・めまい       当帰芍薬散

                  胸脇苦満感・口渇・顔色不良・動悸       柴胡桂枝乾姜湯

ふつう(中間証)         肌あれ・のぼせ・皮膚や唇の乾燥       麻杏よく甘湯

                  胸脇苦満感・口中のねばり・のぼせ       柴胡桂枝湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       のぼせ・肩こり・月経異常            桂枝茯苓丸

                  胸脇苦満感・便秘・肩こり             大柴胡湯

 *胸脇苦満感→肋骨下部に抵抗感と圧痛がある状態をいう。





薬を効果的に使うには食事・運動療法が欠かせません!
薬を飲むだけでは健康的な減量は果たせません。 大切なのは内臓脂肪を減らすこと!

健康に悪い影響を与える内臓脂肪を減らすには、薬と食事と運動を組み合わせて、効率よく体脂肪を燃焼させましょう。 
行動目標⇒まず、毎日の体重測定と記録の実践を! 毎日、同じ時間帯に体重を量って、体重の変化をチェックしましょう。


食事で減らす
食事療法の基本は、摂取エネルギーを消費エネルギーより少なくすることです。脂肪組織1gは約7Kcal、1日100gを減量するには、1日当たり700kcalを減らせば1ヵ月で体重3kg減が果たせる計算です。今までの食事量を減らすために、次の3つを実行しましょう。

●砂糖の摂取を控え、油類を極力減らす
●食前に生野菜を多めに食べて、空腹感を満たす
●1日の食事の目安量は、男性1500kcal、女性1200kcal

 たんぱく質 70g + 果物2個 + ごはん
    ↓                   ↓
牛乳(200ml)1本、卵1個、      男性は1日3膳と
魚80g(刺身5切れ)、肉80g、    いも1/2個
豆腐半丁                 女性は1日2膳

どか食いはやめよう
「どか食い」は、カロリーオーバーにつながります。1日の自分の摂取エネルギーを3度に分けて、適度の食事をとりましょう。

夜8時以降は食べないようにする
就寝前の食事は、太りすぎにつながる悪い習慣ですが、遅い夕食が避けられないときは、量を軽めにしましょう。

早食いにならないよう心がけて
早食いは食べ過ぎにつながります。1回の食事に20〜30分かけて、よく噛んで食べるようにしましょう。


運動
薬に食事療法と運動療法を組み合わせると、基礎代謝が活発になり、減量効果が期待できます。毎日継続することが減量のカギです。

平地を時速10kmで30分 エネルギー消費量⇒144kcal   
30分のウォーキング エネルギー消費量⇒134kcal
プールで水中歩行を30分 エネルギー消費量⇒168kcal
クロールを30分 エネルギー消費量⇒673kcal
平泳ぎを30分 エネルギー消費量⇒354kcal

 ※エネルギー消費量は、40代、60kgの人の場合。日本体育協会スポーツ科学委員会資料より算出。

ストレスをためずに楽しく継続するためには
すぐできる運動からライフスタイルに取り入れましょう。共に行動できるパートナーや仲間を見つけるのが長続きするコツ。

歩数計や距離測定器を上手に活用して
1日の歩行数を記録したり、距離測定器で地図に記録して日本一周をめざしたり、歩数に対応した消費カロリーがわかるなど、便利なダイエットツールがあります。

防風通聖散は、
 体力が充実し、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちで、高血圧や肥満に伴う、どうき・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症を持った方に適しています。

体力があり、太鼓腹で便秘がちなタイプの方の漢方薬です!
 防風通聖散は、肥満症で便秘がちな方によく用いられ、発汗・利尿・便通作用などにより、高血圧に伴う症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満体質、むくみ、便秘などを改善します。

医学的に問題になる「肥満症」とは?
 肥満症とは、BMI(体格指数)*が25以上(日本肥満学会2000年)で、肥満に起因する健康障害を合併しているか、合併が予測される場合で、医学的に減量を必要とする状態のことです。
 *BMIの計算法
  BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

治療が適用になる肥満症の基準は?
 肥満症の人は、標準体重の人に比べ、多くの生活習慣病を伴いやすくなります。治療が必要な肥満症の基準は、次のとおりです。

 1 BMIが25以上の肥満で、かつ内臓脂肪面積が100cm2以上(腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上あり、脂質異常、血圧の上昇、血糖値の上昇のうち2つ以上(メタボリックシンドローム)に該当する人
 2 BMIが30以上の肥満で、変形性関節症・腰痛症、睡眠時無呼吸症候群、月経異常などをもっている人


意発(エキス顆粒)●建林松鶴堂
エバユーススリムF、ココスリム、防風通聖散エキス錠[大峰]●大峰堂薬品工業
コッコアポ(A錠、AP錠)、新コッコアポ(A錠、S錠)●クラシエ
サンワ防風通聖散料・防風通聖散料A(錠、細粒分包、細粒)●三和生薬
ツムラ防通散BF顆粒A●ツムラ
ナイシトール85、ナイシトールL●小林製薬
防風通聖散料エキス顆粒KM(一元製薬・山本漢方製薬)●カーヤ
防風通聖散エキス錠「コタロー」●小太郎漢方製薬
防風通聖散細粒57松浦漢方●松浦薬業
防風通聖散料エキス細粒[勝昌]●東洋薬行
防風通聖散料エキス散●ウチダ和漢薬
防風通聖散料エキス錠N、漢方顆粒-45号●ジェーピーエス製薬
ホノミサンイン錠●剤盛堂薬品
本草防風通聖散エキス錠-H●本草製薬
マスラックU●阪本漢法製薬
モリ カッコミン●大杉製薬
和漢箋 ロート防風通聖散錠●ロート製薬





 わが国における太極拳人口はいまや百万人に達したと言われています。そしてその応用範囲も健康から医療、更には武道や芸術といった実に幅広いものとなっています。日本社会に太極拳はしっかりとその根をおろしつつある、ということはもはや誰もが認めるところでしょう。
 この日本における太極拳の源流を尋ねていくと今からちょうど半世紀前にさかのぼります。当時の周恩来首相と北京で会見した古井喜実先生が「お国には太極拳というすばらしい健康法があるということですが―」と切り出し、周首相は即座に「それなら、すばらしい先生がいる」と答え、簡化24式太極拳編纂責任者の李天驥老師を紹介し、さっそく北京飯店の屋上での指導が始まった。ここから日本の太極拳の水脈が生えそして現在の大河へと成長を遂げてきたのです。
 この50年という節目の年を迎え、改めて「原点」を見つめ直し、かつ今後の健全で力強い発展を展望すべく、日中合同の記念講演会を開催することにしました。二人の学術専門家が論文を発表し、中国から招請した先生方にも見解を発表していただくとともに相互の意見交換をしていただきたいと思っております。また李天驥老師の愛娘の李徳芳先生の表演もお願いしています。

本大会は太極拳を愛好する人々が日頃の練習の成果を発表し、互いの交流の輪を広げ、生涯の健康を目指そうとするものです。個人競技では参加者のレベルにあわせて金、銀、銅のメダルを授与します。
また集団競技では、団体間の交流を目的とし、協調性、技術、構成などについて審査し、上位5チームを表彰します。さらに奨励賞として「古井喜実杯」を授与します。





腹部の症状と異常
便秘

◎常習性のものが多い
「2〜3日以上排便できず、便が乾燥して硬くなり、排便時に苦痛があるもの」や、「便意があってもなかなか排便できないもの」、「毎日排便できるが、排便後にも残便感などを訴えるもの」などを便秘といいます。
 一般に、便秘というと「排便回数が少ない」ことだけを問題にしがちですが、医学的には、排便回数よりも「いつも快便できず、苦痛がある」ということの方が問題になります。
 こうした便秘は、便秘のおこり方の違いなどによって、「器質性便秘(症状性便秘)と「機能性便秘(単純性便秘・常習性便秘など)」に大別されます。
 このうち「器質性便秘」は、大腸癌や子宮筋腫などの何らかの病気の影響で、腸が便を搬送しにくくなっておこります。この場合は、何よりも原因疾患の検査と治療が先決です。
 一方、「機能性便秘」は、特別な病気がないのにおこる便秘で、「単純性便秘」や「常習性便秘」などに大別されます。
 「単純性便秘」は、旅行時などに生活環境・習慣が一時的に急変しておこるもので、通常は普段の生活に戻れば便秘も解消します。
 「常習性便秘」は、特に病気がないのに慢性便秘がおこるもので、便秘に悩む人の多くはこのタイプです。

便秘の主なタイプ

  便秘のタイプ                特徴
器質性便秘(症候性便秘)      何らかの病気の影響でおこる便秘。大腸癌・子宮筋腫などでおこることが多い。原因疾患の検査と治療が先決。
機能性便秘(常習性便秘など)    特別な病気がないのに慢性的な便秘になるもので、便秘に悩む人の多くはこのタイプ。快便できず、苦痛が大きい。

◎あなたの便秘はどのタイプ?
 「常習性便秘(習慣性便秘とも呼ばれる)にもいろいろありますが、通常は「弛緩性便秘」と「緊張性便秘」大別されます。
 「弛緩性便秘」は、腸の働きが悪くておこるもので、太くて硬い便が出ます。体力が充実し過ぎて高血圧もある「実証」タイプに多くみられます。
 また、「緊張性便秘」は、腸が緊張してけいれんし、便を送りだしにくくなっておこるもので、兎の糞のような、小さくてコロコロした便が出るのが特徴です。 
 このような便秘は、体力が不足している「虚証」タイプの人に多く、特に若い女性などによく見られます。
 「常習性便秘」を治療する場合、西洋医学では、女性やお年寄りなどが長期間服用しにくい作用の強い下剤(俊下剤)しかありません。
 これに対して漢方では、「女性を診たら便秘と思え」というのが治療原則のひとつになっています。そのため、便秘に効果のある処方も数多く、漢方が得意とする分野となっています。

◎実証には大黄配合剤を多用
 便秘の漢方療法では、若くて体力がある場合は、強力な下剤作用のある大黄を配合した大柴胡湯や調胃承気湯、大黄牡丹皮湯、三黄瀉心湯、桃核承気湯、防風通聖散などが主体になります(ただし、体力が低下している中高年以上の人には、下剤作用が強すぎるので不向きです)。
 このうち便秘がひどい時は、みぞおちが固ければ大柴胡湯、おなかの張りがあれば調胃承気湯などを用います。
 また、のぼせ・不安・胃のつかえがあれば三黄瀉心湯、下腹部に圧痛があり、口唇や爪が暗赤色なら大黄牡丹皮湯、これに頭痛・肩こり・下半身の冷えなどを伴えば桃核承気湯、肥満体なら防風通聖散などを用います。

◎体力のない人にはマイルドな処方
 体力がふつう以下なら、大黄の作用をマイルドにする生薬が一緒に配合されている麻子仁丸や潤腸湯、乙字湯などの処方を用います。これらの処方は、主に高齢者の常習性便秘に応用され、若い人にはあまり使われません。
 コロコロした便で、多尿・手足の冷えなどがあれば麻子仁丸、それよりさらに体力がなく、皮膚の乾燥などがあれば潤腸湯を用います。また、痔や出血、女性の陰部の痒みなどを伴っていれば乙字湯を用います。
 そのほか、大黄甘草湯も大黄の作用がある程度マイルドにされていますが、この処方は、若い人の便秘・食欲不振などにも用いられます。
 胃腸が弱い人の緊張性便秘には、腸の働きを調整しながら速やかに便通を促進する桂枝加芍薬湯や小建中湯などを用いることもあります。
 胃腸が極端に弱い場合は補中益気湯などを、更年期の女性には加味逍遙散などを用いることもあります。

◆常習性便秘に用いる主な処方チャート◆
主要症状
便秘と下痢を交互に繰り返す・下腹部痛・腹部膨満感など

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       虚弱体質・体力低下 食欲不振・貧血      補中益気湯
                  疲労倦怠感・急激な腹痛・血色不良       小建中湯・当帰湯
                  胃腸虚弱・冷え・腹痛・やや軽度の便秘     桂枝加芍薬湯  大建中湯
                  体力低下・皮膚乾燥・食欲不振・高齢者     潤腸湯

ふつう(中間証)        多尿・手足の冷え・皮膚の乾燥・高齢者      麻子仁丸
                  痔・出血・女性の陰部の痒みや疼痛        乙字湯
                  食欲不振・常習性便秘全般             大黄甘草湯

比較的ある           肥満体・肩こり・胸やけ               防風通聖散
胃腸も丈夫(実証)       下腹部に圧痛・唇や爪が暗褐色          大黄牡丹皮湯・通導散
                  下腹部圧痛・頭痛・肩こり・下半身冷え      桃核承気湯
                  のぼせ・不安感・胃のつかえ感          三黄瀉心湯・大承気湯
                  腹部の張り・大黄甘草湯が効かない       調胃承気湯
                  みぞおちが固い・腹部の張り・肩こり       大柴胡湯 因ちん蒿湯


胃下垂・胃アトニー

◎やせ型や若い女性に多い
 胃下垂は、胃の下部の位置が普通より下がっているもので、X線写真でみると胃の位置が骨盤より下にあるのがわかります。日本人に多いといわれますが、特別な病気ではありません
 しかし、胃下垂の人は、胃壁の筋肉が緩んで無力化し、消化力が低下することが少なくありません。こうした状態を胃アトニーと呼んでます。
 胃下垂・胃アトニーは神経質気質のやせ型の人や若い女性などに多く、食欲不振・胃の膨満感・吐き気・疲労感・イライラなどの症状が見られます。
 ただし、西洋医学的な治療では対症療法が主体になるため、十分な治療ができないことが少なくありません。

◎漢方薬で全身的な機能を改善 
 漢方では、胃下垂・胃アトニーの症状を、体質的な要素が強いものととらえ、人参湯や補中益気湯、六君子湯、大建中湯などの処方で体質を改善し、全身的な機能を回復・強化することを目指します。
 また、胃下垂・胃アトニーの人は、胃部に「水」が溜まっていることが多く、ポチャポチャいう音がすることが少なくありません。
 このような症状が目立つ場合は、茯苓飲や半夏白朮天麻湯、苓桂朮甘湯などの「水毒」に効く処方を用います。

◆胃下垂・胃アトニーに用いる主な処方◆

 証      目安となる症状                    処方名

虚証    体力低下・冷え・食欲不振・胃部停滞感      人参湯
       疲労倦怠感が強い・食欲不振            補中益気湯・桂枝人参湯
       胃もたれ・食欲不振・血色不良            六君子湯
       腹部冷感・胃痛・手足の冷え・腹部膨満感     大建中湯・真武湯
       腹部膨満感・胃のポチャポチャ音・消化不良    茯苓飲・茯苓沢瀉湯
       冷え症・頭痛・めまい・胃のポチャポチャ音     半夏白朮天麻湯
       疲労感・下半身の脱力感・口渇・尿量減少     苓桂朮甘湯


胃炎

◎慢性タイプには漢方が有効
 胃炎は、暴飲暴食・刺激性食品の摂り過ぎやストレス、老化などの影響で胃の粘膜に炎症がおこるもので、急性と慢性のものがあります。
 急性の胃炎は、症状の出方が早く、摂取後2〜3時間くらいで胸やけやもたれ、腹痛、吐き気などを訴えます。
 また、症状が強いもののなかには、胃の粘膜にただれや浅い潰瘍が認められるケースもあります。こうした急性胃炎は、速効的な効果が得られる西洋医学的な治療の方が適しています。
 一方、慢性胃炎は、胃粘膜の表層部に慢性の炎症が見られるもの(表層性胃炎)と、胃粘膜が荒れて薄くなり、胃液を分解する組織が委縮して胃酸の分泌能力が低下するタイプ(委縮性胃炎)に大別されます。
 表層性胃炎は、急性胃炎を繰り返して次第に移行することが少なくありません。また委縮性胃炎は、一種の老化現象ともいえるもので、誰にでもおこる可能性があります。
 いずれの慢性胃炎も、自覚症状が急性胃炎より軽いことが多く、ほとんど無症状のこともあります。通常は、比較的軽い胸やけやもたれ、腹部の鈍痛などを訴えます。
 漢方治療の対象となるのは、これらの慢性胃炎です。
 なお、以前は委縮性胃炎が進展すると癌化しやすいとみなされていましたが、現在は、胃癌との直接的な関係は否定されています。

◎通常は2ヵ月位で症状がとれる
 慢性胃炎のような症状がある時は、まずほかに異常がないかどうかを十分検査する必要があります。
 慢性胃炎だけであることがはっきりしたら、症状や体力などに応じて処方を選びます。
 体力がふつうで、腹痛だけの場合は柴胡桂枝湯などを、腹痛と悪心・嘔吐などがあれば黄連湯、強い腹痛と腹直筋の緊張があれば芍薬甘草湯を用います。

慢性胃炎の二つのタイプ
 表層性胃炎   胃粘膜表層部に慢性の炎症がみられるもの。急性胃炎を繰り返して移行することが多い。
 委縮性胃炎   胃液の分泌腺が委縮し、胃酸の分泌能力が低下する。一種の老化現象といえる。

 また腹部の張りがあり、ゴロゴロ音があれば半夏瀉心湯、下痢・軟便を伴っていれば平胃散などを用います。口渇・悪心・排尿量や回数の減少がある時は五苓散を用います。
 一方、体力がなくて疲れやすい場合は、冷え性で口中に薄い唾がたまるようなら人参湯を用います。
 また胸焼けがある場合は、痩せ型で軟便を伴っていれば安中散、胃の膨満感・尿量減少を伴っていれば茯苓飲を用います。
 全身倦怠感がある場合は、便秘を伴っていれば六君子湯、顔色不良・悪心・嘔吐・下痢を伴っていれば四君子湯を用います。
 これらの処方により、ふつうは2ヵ月位で症状が消えていきます。しかし、症状が改善しない場合は、処方を変えてみる必要があります。

◆慢性胃炎に用いる主な処方チャート◆
主要症状
みぞおち辺りの鈍痛・腹部の張り・腹部が重苦しい・食欲不振・悪心・嘔吐など

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       全身倦怠感・顔色不良・悪心嘔吐・下痢       四君子湯
                   全身倦怠感・便秘                    六君子湯
                   胸やけ・胃部の膨満感・尿量減少           茯苓飲
                   胸やけ・やせ型・軟便                  安中散
                   冷え症・口中に薄い唾がたまる            人参湯

ふつう(中間証)         口渇・悪心・排尿量や排尿回数の減少        五苓散  柴苓湯
                   腹部が張る・下痢・軟便                 平胃散・啓脾湯
                   腹部が張る・腹部がゴロゴロいう            半夏瀉心湯
                   腹痛が強い・腹直筋が緊張している          芍薬甘草湯
                   腹痛がある・悪心・嘔吐                 黄連湯
                   腹痛のみ                         柴胡桂枝湯・四逆散



胃潰瘍・十二指腸潰瘍

◎三大症状に注意
 胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、自分の胃液が胃や十二指腸の粘膜を消化してしまい、ただれや傷孔(潰瘍)ができるもので、胃潰瘍と十二指腸潰瘍を一括して「消化性潰瘍」と呼ぶこともあります。
 よく見られる病気で、日本人の10人に1人がかかるといわれます。特に男性に多く、女性の3倍に達します。
 症状は、@胸やけ・胃のもたれなどの過酸症状、A腹痛、B吐血・下血、の三大症状が見られるほか、吐き気や嘔吐などがおこることもあります。
 但し、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の30%程度はほとんど無症状で、集団検診などで偶然発見されることが少なくありません。
 自然治癒することも多いのですが、進行していくと、次第に胃粘膜や十二指腸粘膜のただれや孔が深くなっていき、やがて孔が粘膜を突き通って筋層に達したりします。

◎消化性潰瘍は再発しやすい
 胃潰瘍・十二指腸潰瘍は、胃液の分泌能力が亢進する一方で、胃液から胃や十二指腸のの粘膜を保護している機能(粘液などによる)が低下しておこります。
 つまり胃や十二指腸の働きのバランスが乱れて潰瘍が発生するわけですが、そうしたバランスの乱れには、遺伝的な体質や性格、ストレス、喫煙などが影響しています。
 治療面では、近年優れた西洋薬(抗潰瘍薬)が開発され、手術しないでも治療できるようになりました。
 しかし、胃潰瘍・十二指腸潰瘍は再発率が非常に高く、西洋薬でも再発を確実に防ぐことはできません。

◎漢方薬が再発防止効果を発揮する
 一方、漢方療法の場合は、単に潰瘍部分を治療するだけでなく、体質を改善して体のバランスの乱れを是正するため、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の再発の防止に優れた効果を発揮します。
 体力があり、「のぼせ・嘔吐・下血・みぞおちのつかえ・腹痛・腹壁緊張」などがあれば桃核承気湯、そうした症状があって「大便が硬く便秘する」ような時は三黄瀉心湯や黄連解毒湯などを用います。
 また、「胸脇苦満感(肋骨下部の抵抗感と圧痛)や食欲不振、舌の白苔」などがみられる時は胃苓湯などを用います。
 体力がふつうの場合は、「強い胃痛・嘔吐・上腹部の緊張」などがあれば黄連湯や柴胡桂枝湯、「軟便・下痢と便秘の反復・胃のつかえ」などがあれば半夏瀉心湯や茯苓飲を用います。
 体力がない場合は、「顔色不良・食欲不振・疲労倦怠感」などがあれば安中散や四君子湯、「強い腹痛・体力低下・顔色不良・動悸」などがあれば小建中湯や帰脾湯を用います。

◆胃潰瘍・十二指腸潰瘍に用いる主な処方チャート◆
主要症状
胃のもたれ・胸やけ・空腹時の腹部痛・下血・吐血・吐き気・悪心・嘔吐など

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       強い腹痛・体力低下・顔色不良・動悸          小建中湯・帰脾湯
                   顔色不良・食欲不振・疲労倦怠感             安中散・四君子湯

ふつう(中間証)          軟便・下痢と便秘の反復・胃のつかえ          半夏瀉心湯・茯苓飲
                   強い胃痛・嘔吐・上腹部の緊張              黄連湯・柴胡桂枝湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       胸脇苦満感・食欲不振・舌の白苔             胃苓湯
                   のぼせ・吐血・下血・みぞおちのつかえ          三黄瀉心湯 黄連解毒湯
                   大便が硬く便秘

                   のぼせ・吐血・下血・みぞおちのつかえ          桃核承気湯
                   腹痛・腹壁の緊張


過敏性腸症候群
◎下痢や腹痛が続く
 腸そのものに、感染や炎症などのはっきりした異常がないのに、下痢や便秘、腹痛などの症状が慢性的に続くことがよくあります。
 これは、精神的ストレスに何らかの誘因が加わって、腸が過敏な状態になり、腸の働きが不調になっているためにおこることが少なくありません。このようなケースを、過敏性(大)腸症候群と呼んでいます。
 過敏性腸症候群は、精神的な要素によって身体的な症状が現れる心身症の典型とされていますが、近年社会的なストレスが増大したこともあり、患者さんの数も目立って増加しています。
 特に20〜30歳代の女性や更年期の女性をはじめ、30〜40歳代の男性に多く見られるようになっています。
 治療面では、西洋医学の場合はあまり効果的な薬がなく、精神安定剤と生活指導などで対応している状態です。

◎西洋医学より優れた効果を発揮
 漢方では、「心身一如」というように、心と体を表裏一体としてとらえています。そのため、過敏性腸症候群のような心身症的な病気に対しては、西洋医学より優れた効果を発揮することが少なくありません。
 特に、下痢と便秘を交互に繰り返すタイプ(不安定型)や、慢性的な下痢が続くタイプ(持続下痢型)、便秘が目立つタイプ(便秘型)などには、漢方療法の方が適しています。
 ただし、便秘に続いて激しい腹痛と粘液便を出すタイプ(粘液分泌型)は、漢方でも十分な効果が得られないことがあります。もちろん、西洋医学でも治療困難とされています。

心身症が疑われる患者の特徴
●病気が長引きやすいとき
●再発が多いとき
●内科や外科の一般的治療で効果が少ないとき
●入院しただけで症状が軽くなるとき
●精神的悩みをもっているとき
●生活が乱れているとき
●働きすぎているとき
●気をつかいすぎる性格
●緊張しやすい性格
●感情が不安定な人
●訴えが多く、不定なとき
●訴えと検査所見が一致しないとき
●不眠を伴うとき
●生活の変化に伴って発病しているとき
●病院の転院、転科が多いとき


◆過敏性腸症候群に用いる主なチャート◆
主要症状
下痢・便秘・ガス症状

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       腹部が張る・下痢・冷え症          人参湯・啓脾湯
                   めまい・フラフラする              真武湯
                   疲労感・倦怠感が強い            大建中湯・清暑益気湯
                   疲れやすい・腹にガスがたまる       小建中湯
                   冷え症・下痢傾向               桂枝加芍薬湯・胃風湯

あなたの体力は?-ない(虚証)-あなたの症状は?-便秘傾向が強い・皮膚が乾燥する-麻子仁丸
あなたの体力は?-ない(虚証)-あなたの症状は?-腹痛・便秘-桂枝加芍薬大黄湯

あなたの体力は?-ふつう(中間証)-あなたの症状は?-皮膚に艶がなく乾燥・便秘傾向が強い-潤腸湯
あなたの体力は?-ふつう(中間証)-あなたの症状は?-腹部が張ってゴロゴロいう-半夏瀉心湯・黄ごん湯
あなたの体力は?-ふつう(中間証)-あなたの症状は?-みぞおち〜脇腹に苦満感・不安・不眠-四逆散
あなたの体力は?-ふつう(中間証)-あなたの症状は?-腹痛が強い-柴胡桂枝湯・柴苓湯
あなたの体力は?-ふつう(中間証)-あなたの症状は?-悪心・嘔吐-大黄甘草湯

●さまざまな漢方処方が使われる

 体力がふつうで、腹痛が強ければ柴胡桂枝湯、胸脇苦満感・不安・不眠があれば四逆散、おなかが張ってゴロゴロ鳴る時は半夏瀉心湯、皮膚が乾燥気味で便秘傾向が強ければ潤腸湯などを用います。
 また、体力がなくて便秘傾向が強い時は、腹痛を伴っていれば桂枝加芍薬大黄湯、皮膚乾燥を伴っていれば麻子仁丸などを用います。

 疲れやすく、腹にガスが溜まる時は小建中湯、疲労倦怠感が強い時は第建中湯、めまいやフラフラする感じがあれば真武湯などを用います。



肝炎・肝硬変

●肝炎の多くがウィルス性
 肝炎は、ウィルスや飲酒、薬物などの影響で肝細胞が破壊され、炎症がおこる病気です。
 肝炎は急性のものと慢性のものに分けられますが、どちらの場合も、ウィルスによるものが多く見られます。(肝炎の80%前後がウィルス性)。

 肝炎をおこすウィルス(肝炎ウィルス)には、A型とB型、C型、その他のタイプがあります。
 A型肝炎ウィルスは、飲食物などから感染しますが、日本ではあまり見られなくなっています。またB型肝炎ウィルスは、輸血や性交、母子間などで感染します。C型は、輸血で感染することが多いのが特徴です。

主な肝臓障害の患者数(推定値/国内)

●急性肝炎⇒20万〜30万人
●慢性肝炎⇒120万〜130万人
●肝硬変⇒20万〜25万人
●肝臓がん⇒約2万人(原発性のもので、肝臓に転移したものではない)


ただし、B型やC型ウィルスに感染しても、多くは体内にウィルスを持ったまま発病しないキャリアになり、一部が急性ないしは慢性肝炎になります。

●B型やC型の一部が慢性化する
 各種の肝炎ウィルスなどで急性肝炎になると、最初はかぜのような症状が現れます。やがて尿が褐色になり、顔や白目も黄色くなる黄疸が現れます。
 また、食欲不振や強い倦怠感なども訴えます。通常は、1ヵ月〜1ヶ月半で自然に諸症状がなくなりますが、肝臓の機能が完全に回復するまでには2〜6カ月くらいかかります。
 また、B型やC型の急性肝炎の一部は慢性肝炎に移行します。
 ただし、慢性肝炎の多くはB型やC型肝炎ウィルスのキャリアの人が、はっきりした急性肝炎症状を自覚しないままいつの間にか発症したものです。
 慢性肝炎になると、通常は肝細胞が徐々に破壊されていく一方で、肝細胞の修復が行われるため、比較的安定した経過を辿ります。
 このような場合は、軽い食欲不振や倦怠感、腹部膨満感などが見られますが、ほとんど無症状のことも珍しくありません。 
 ただし、慢性肝炎でも急激に悪化したり、炎症の活動が活発になったりすることがあります。このようなケースでは、急性肝炎様の症状を繰り返したりして徐々に進行し、やがて肝硬変や肝臓癌を併発します。

A,B,C,型急性肝炎の特徴
    
               A型肝炎               B型肝炎             C型肝炎
感染経路        経口感染            母親からの垂直感染が多い     輸血による感染が多い
             (飲料水や食物など)      (血液による)              (血液による)

発病の年齢      小児、若年者に多い        全年齢                  全年齢

起こりやすい季節   冬〜春                通年                    通年

潜伏期間        15〜40日            30〜90日                40〜100日

慢性化           なし              慢性化するのは10%未満      30〜70%が慢性化

重症化           なし                 あり                    あり

キャリア          なし               あり(人口の2〜3%)          あり(人口の約1%)

症状 発熱         ●                  ×                       △

    倦怠感       ◎                  ◎                        ○

    吐き気・嘔吐    ○                  ○                        △

    食欲不振      ◎                  ○                        ○

    腹痛         △                  ×                        ×

    黄疸         ◎                  ◎                        △

 ●:80%以上、 ◎:60〜80%、 ○:40〜60%、 △:20〜40%、 ×:20%以下


急性肝炎と慢性肝炎の」症状のちがい

急性肝炎    ●かぜのような症状 ― 元気がなくなる、食欲がない   むかつきがある、熱がある
          ●黄疸が出る    ―  白目のところが黄色くなる    皮膚の色が黄色っぽい
          ●尿が濃褐色
          ●便の色が白色もしくは灰色、など

慢性肝炎    ●最初ははっきりした自覚症状がない
          ●なんとなくだるい、疲れやすい
          ●クモ状血管腫が出る 
          ●手掌紅斑(手のひらに赤い斑点)が出る
          ●腹部の静脈が浮き出てくる、など

◎慢性肝炎はまず漢方で
 急性肝炎は、多くの場合、安静にして栄養補給をしていれば自然に治ってしまいます。
 一方、慢性肝炎の場合は、十分な治療効果が得られる西洋薬がまだあまりなく、漢方薬が応用されるようになりました。
 漢方には、西洋医学でいう「肝臓障害・肝疾患」などのとらえ方はありません。しかし、中国医学の古典的書物には、西洋医学でいう黄疸やアルコール性肝障害などを連想させる説明が載っています。
 そのため、慢性肝炎に対する現代の漢方療法でも、そうした古典的書物に記載されている処方を参考にして処方が選ばれています。
 現在、最もよく使われているのは小柴胡湯ですが、この処方に配合されている柴胡にはサイコサポニンという成分が含まれています。この成分には、肝障害を抑制する強力な作用のあることが科学的に確かめられています。
 また、小柴胡湯に配合されている甘草の主要成分であるグリチルリチンには、強力な抗炎症作用などがあることも確かめられています。

◎症状をよく見て処方を選ぶ
 慢性肝炎の漢方療法では、体力あって口渇・尿量減少・胸脇苦満感があれば大柴胡湯などを用います。
 体力がふつうで胸脇苦満感(みぞおち〜脇腹に苦満感がある)があるような場合は、口中が苦ければ小柴胡湯などをよく用います。
 また同程度の体力で、口渇・尿量減少が認められる場合は茵ちん蒿湯、むくみ・黄疸がみられれば茵陳五苓散、おなかが張ってゴロゴロ鳴るようなら半夏瀉心湯、唇が暗紫色で肌があれて便秘がなければ桂枝茯苓丸を用います。
 体力がなく疲れやすい場合は、突然上半身がほてったり、不安・不眠があれば加味逍遙散、言葉や目に力がないようなら補中益気湯、全身倦怠・皮膚の乾燥などがあれば十全大補湯などを用います。

◆慢性肝炎に用いる主な処方チャート◆
主要症状
全身倦怠感・食欲不振・黄疸など

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       全身倦怠感・皮膚に艶がなく乾燥          十全大補湯  人参養栄湯
                   言葉や目に力がない                 補中益気湯  加味帰脾湯
                  突然、上半身がほてる・不安・不眠          加味逍遙散

ふつう(中間証)         唇が暗紫色・肌あれ・便秘はない           桂枝茯苓丸
                  腹部が張ってゴロゴロ鳴る               半夏瀉心湯
                   浮腫・黄疸                       茵ちん五苓散・柴苓湯
                  口渇・尿量が少ない                   茵ちん蒿湯
                  みぞおち〜脇腹に苦満感・口が苦い         小柴胡湯  

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       口渇・尿量が少ない・みぞおち〜脇腹に苦満感   大柴胡湯


◎肝硬変は西洋医学だけでは不十分
 慢性肝炎が破壊されてゆき、やがて肝臓の組織が繊維化して、肝臓が硬くなります。
 これが肝硬変で、肝臓の機能が著しく低下します。それに加えて、肝臓の血流が悪化して、血液の一部が食道の静脈などに流れ込むようになり、食道静脈瘤ができやすくなります。
 肝硬変は、西洋医学の治療だけでは十分な効果が得られないことも多く、漢方薬を併用するケースが少なくありません。
 肝硬変の場合も、小柴胡頭が多用されますが、肝硬変が進行して合併症やさまざまな症状が目立つような場合は、小柴胡湯が多用されますが、肝硬変が進行して合併症やさまざまな症状が目立つような場合は、小柴胡湯に桂枝茯苓丸や五苓散、八味  地黄丸、黄連解毒湯その他の処方を併用するのがふつうです。


◆肝硬変に用いられる主な処方◆

  証        目安となる症状                  処方名
 実証      胸や脇腹が重苦しい・便秘・腹水        大柴胡湯・茵ちん蒿湯
 実証      顔面紅潮・のぼせ・頭痛・不安・イライラ     黄連解毒湯
中間証      胸や脇腹が重苦しい・食欲不振・疲労感    小柴胡湯・補気健中湯
中間証      口渇・排尿量と回数異常・悪心・嘔吐・腹痛   五苓散・茵ちん五苓散
中間証     下腹部の抵抗と圧痛・めまい・のぼせ・頭痛   桂枝茯苓丸
 虚証      下半身の脱力感・夜間尿・冷え          八味地黄丸

 *小柴胡湯以外の処方は、主に合併症治療・軽減目的で使用する。


胆石症・胆嚢炎

◎激しい上腹部痛に注意
 胆汁は、脂肪の消化・吸収に関連する消化液です。この消化液は、肝臓でつくられて、「胆道」という管を通って、胆嚢という袋状の臓器に一時的に溜められ、濃縮されます。
 そして必要に応じて、「胆道」を通って十二指腸に供給されます。
 この「胆道」に、コレステロールや胆汁成分などが固まり、石のようになって(結石)たまるものが胆石症です。
 胆石症の主な症状は、発作性の激しい上腹部痛(疝痛発作)です。その時に、黄色い胆汁の混じった液を吐いたりすることもあります。
 近年、胆石症は増加気味で、成人女性の10人に1人、成人男性の20人に1人程度の割で見られるといわれます。
 ただし、はっきりした胆石症の症状が現れるのはその4分の1以下で、大半は無症状で、本人も気づかないケースが少なくありません。

◎慢性胆嚢炎は上腹部に鈍痛
 一方、胆嚢炎は、細菌感染などによって胆嚢に炎症がおこるもので、胆石症の人に多く見られます。胆石があると、胆汁がうっ滞し、細菌が感染しやすくなるのです。
 胆嚢炎が急性に発症すると、高熱とともに右上腹部痛やみぞおちに強い痛みがおこります。
 また、胆嚢炎が慢性化しているような場合は、右上腹部にシクシクするような鈍痛や不快感などがあります。発熱はほとんどありません。

胆石のタイプ別の特徴

  分類      胆石の主成分                      自覚症状                          備考

胆嚢結石     コレステロール系結石が多い            仙痛発作が主体だが、半数程度は無症状        急増中で、胆石全体の90%程度を占める

総胆管結石   コレステロール結石と一部にビリルビン結石    腹痛以外に、30〜70%に発熱や黄疸が出る      胆石全体に占める割合は低下し、5〜10%

肝内結石    ほとんどがビリルビン結石               腹痛以外に、30〜70%に発熱や黄疸が出る      胆石全体の5%程度だが、治療が難しい

◎胆石症は西洋医学を優先
 胆石症で専門的な診療を受けに来院する人は、胆石症の激しい疝痛発作のある人が大半を占めます。無症状で来院する人は、企業健診などで偶然に胆石が見つかったケースなどで、あまり多くありません。
 激しい疝痛発作などがある場合は、西洋医学的な治療を優先するのが普通です。
 また、症状が比較的軽いか無症状の場合は、結石を溶解する西洋薬などを用いてもよいのですが、漢方薬でも効果が得られることがあります。
 胆石症に用いられる漢方処方には、大柴胡湯や茵ちん蒿湯(いずれも実証向き)、小柴胡湯、柴胡桂枝湯(中間証向き)、柴胡桂枝乾姜湯(虚証向き)などがあります。
 胆嚢炎の場合も急性なら通常は西洋医学の治療を優先します。
 慢性胆嚢炎の場合は、胆石症で用いるのと同様な各種の柴胡剤などが多用されます。


◆胆石症・胆嚢炎に用いる主な処方◆

証       目安となる症状                   処方名
実証  胸脇苦満感が強い・便秘               大柴胡湯
     口渇・胸苦しい・便秘・腹部膨満感・尿量減少   茵ちん蒿湯

中間証 胸脇苦満感がある・食欲不振・疲れやすい    小柴胡湯
     胸脇苦満感が強い・肩こり・口中が苦い      四逆散
     胆石症の疼痛が強い・のぼせ・発汗        柴胡桂枝湯
     嘔吐・心悸亢進・上腹部のつかえ・食欲不振   茯苓飲
虚証  体力低下・頭汗・動悸・口渇・腹痛         柴胡桂枝乾姜湯
     手足の冷え・腹痛・嘔吐・腹部膨満感       大建中湯


膵炎
◎アルコールの過飲も影響
 膵炎は、消化液の一種の膵液や、インスリン(糖尿病の頁参照)というホルモンなどを分泌する臓器です。
 膵炎は、この臓器に炎症がおこるもので、膵液に含まれている消化酵素が自分の膵臓を溶かし、破壊してしまうためにおこります。
 急性のものと慢性のものがありますが、急性の膵炎はアルコールの過飲や胆石・胆嚢炎などがきっかけになることが少なくありません。
 急性膵炎が発症すると、脂っこい食べ物を食べたり、冷たいものを飲んだりした時に上腹部痛がおこり、吐き気や冷や汗なども伴います。
 通常は、あまり危険性はありませんが、急激に膵臓が破壊されて短期間で死亡することもまれにあるため、注意しまければなりません。
 一方、慢性膵炎は、アルコールの過飲による急性膵炎を繰り返して慢性化する例や、大酒飲みが最初から慢性膵炎になる例などがみられます。
 急性のものと慢性のものがありますが、急性の膵炎はアルコールの過飲や胆石・胆嚢炎などがきっかけに」なることが少なくありません。
 急性膵炎が発症すると、脂っこい食べ物を食べたり、冷たいものを飲んだりした時に上腹部痛がおこり、吐き気や冷や汗なども伴います。
 通常は、あまり危険性はありませんが、急激に膵臓が破壊されて短期間で死亡することもまれにあるため、注意しなければなりません。
 一方、慢性膵炎は、アルコールの過飲による急性膵炎を繰り返して慢性化する例や、大酒飲みが最初から慢性膵炎になる例などがみられます。
 症状は、急性膵炎のような症状が、数週間〜数か月おきに繰り返しておきたり、上腹部の鈍痛が続いたりします。
 ただし、全く無症状の場合もあります。
 慢性膵炎は、進行すると膵臓が繊維化して固くなっていき、膵液の分泌能力が低下し、しじゅう消化不良をおこすようになります。
 また、膵臓の中のインスリンを分泌する組織が破壊されると、糖尿病がひきおこされます。

◎再発防止には規則正しい生活を
 膵炎は、最近は受験生をはじめとする若い人にも増えていますが、アルコールの過飲などの明らかな要因がない場合は、不規則な食生活が誘因となっていることが少なくありません。
 治療は、急性膵炎の場合は西洋医学的な治療を優先します。
 しかし、慢性化した場合は、漢方療法も行われます。慢性膵炎で見られる上腹部痛や未消化便の下痢、体重減少などの症状は、漢方的には「脾」が弱っている時におこるとみなされます。
 そこで、加味帰脾湯などの「脾」に効く処方を用いることもあります。
 そのほか、腹痛が強い時は四逆散(中間証向き)や安中散(虚証)、柴胡桂枝湯(虚証)、体力の消耗が激しい時は人参湯や補中益気湯などを用います。
 また食後の吐き気が目立つ場合は、延年半夏湯(実証)や半夏瀉心湯(中間証)、六君子湯(虚証)などが使われます。
 ただし、膵炎の再発防止には、規則正しい生活(特に食生活)を送ることが最も大切です。漢方薬は、それを補助する程度役割といえましょう。

◆慢性膵炎に用いる主な処方◆

  証       目安となる症状                      処方名
 実証      みぞおちが硬い・便秘・頭痛               大柴胡湯
 実証      吐き気・腹痛・足の冷え・左腹直筋の硬直       延年半夏湯
中間証      胸脇苦満感・舌の白苔・口中の苦み          小柴胡湯
中間証      胸脇苦満感が強い・腹痛・腹直筋の緊張       四逆散
中間証      吐き気・上腹部のつかえや軽い疼痛・下痢      半夏瀉心湯
 虚証      嘔吐・腹痛・のぼせ・発汗                 柴胡桂枝湯
 虚証      吐き気・胃のもたれ・食欲不振              六君子湯




◎痔核には漢方薬を多用
 痔には、痔核(いぼ痔)・痔瘻(孔痔)・裂肛(切れ痔)・脱肛などの種々のタイプがあります。最も多いのは痔核で、一般に「痔」といった時は、「痔核」を指すのが普通です。
 痔核は、肛門部の静脈の血行が悪化し、血液がうっ滞してはれものができるもので、はじめのうちは排便時に真っ赤な出血があります。進行すると、はれもの(いぼ)が肛門の外に飛び出すようになります。
 なお、痔瘻は肛門に細菌性の炎症がおこり、膿がたまるもので、肛門周辺に膿の通り道の細長いトンネルができます。また裂肛は、肛門粘膜が切れて傷ができたもので、排便時に強烈な痛みがあります。
 このうち、漢方が多用されるのは痔核です。ただし、進行している場合は、痔核が常時肛門の外に出てしまっている状態になるため、このような段階では外科的手術が必要になります。
 まだ痔核が自然に肛門の中に戻るものが、漢方療法の対象になります。
 なお、痔瘻は肛門に細菌性の炎症がおこり、膿がたまるもので、肛門周辺に膿の通り道の細長いトンネルができます。また裂肛は、肛門粘膜が切れて傷ができたもので、排便時に強烈な痛みがあります。
 このうち、漢方が多用されるのは痔核です。ただし、進行している場合は、痔核が常時肛門の外に出てしまっている状態になるため、このような段階では外科的手術が必要になります。
 まだ痔核が自然に肛門の中に戻るものが、漢方療法の対象になります。
 なお、痔瘻や裂肛、脱肛などの場合は外科的な治療が中心となりますが、これらのタイプでも、漢方薬を比較的短期間使用しただけで思わぬ効果が得られることがあるので、手術前に試みる価値はあります。

◎乙字湯で悪循環を断ち切る
 痔の状態は、肝臓の状態と密接に連動していることが多いものです。あまりお酒を飲んでいないのに痔核が出たりお酒を飲んでいないのに痔核が出たり、痔の状態が悪化したような時は、是非とも肝機能の検査を受ける必要があります。
 痔核の影響で、便秘や宿便がたまっていると、肝臓にも悪影響を及ぼしがちです。
 また、便秘や宿便の影響でニキビや吹き出物が出やすくなるのと同様に、痔核も悪化します。しかも、便が固くなるため、裂肛も誘発されるなど悪循環に陥ります。
 このような悪循環を断ち切るためには、急性、慢性を問わず乙字湯という処方が効果的です。
 乙字湯は、普通の体格の人なら痔一般に用いることができます。痔の漢方療法では、まず第一に選んでみるべき処方といえます。

◎痔核は典型的な「お血」状態
 痔核は漢方的には代表的な「お血」状態であり、漢方療法では、乙字湯のほかに「駆お血剤」が多用されます。
 比較的初期の痔核で、体力がある人なら、便秘・下腹部の抵抗感と圧痛があれば大黄牡丹皮湯、暗黒赤色の出血が目立ち、頑固な便秘を伴っていれば桃核承気湯などを用います(チャート図参照)。
 また痔核に肛門の裂創を合併し、みぞおちが硬く便秘するような場合は大柴胡湯(ひどい出血を伴う時は黄連解毒湯を併用)を用います。
 体力がふつうで、痔の出血がひどく、貧血をおこすような時はきゅう帰膠艾湯、出血しても貧血傾向がなく、のぼせなどを伴う時は桂枝茯苓丸を用います。
 体力がない場合は、乙字湯を使うと下痢がひどくて冷え症・便秘を伴う時は当帰芍薬散、脱肛があって衰弱傾向で食欲不振なら補中益気湯、それよりさらに体力が低下していれば十全大補湯などを用います。
 なお、痛みが強い場合は、甘草と黄柏の湿布とともに、紫雲膏という漢方の外用薬を使います。そして、小柴胡湯などの柴胡剤とともに、「お血」を除く作用のある桂枝茯苓丸や桃核承気湯などを併用します。
 そのほか、化膿性の痔瘻には、抗生物質とともに肉芽の盛り上りを促進する黄耆建中湯や伯州散などが有効なこともあります。

◆痔核に用いる主な処方チャート◆
主要症状
排便時の出血・脱肛・排便時の疼痛・便秘・のぼせ・イライラなど

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)       体力低下・脱肛・食欲不振       補中益気湯

ない
疲れやすい(虚証)       冷え症・便秘・下痢・めまい       当帰芍薬散

ふつう(中間証)         ひどい出血・貧血・下腹部に抵抗と圧痛 きゅう帰膠艾湯

ふつう(中間証)         出血・のぼせ・便秘がない        桂枝茯苓丸

ふつう(中間証)         疼痛・出血・便秘             乙字湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       上腹部が固い・便秘・肛門創合併    大柴胡湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       上腹部が固い・便秘・ひどい出血    黄連解毒湯・四物湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       暗赤色の出血・頑固な便秘       桃核承気湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)      便秘・下腹部の抵抗感と圧痛       大黄牡丹皮湯


                  急性期の強い痛み             甘草湯・紫雲膏(証に関係なく患部に塗布して外用する)


7  泌尿器・生殖器の症状と異常

腎炎・ネフローゼ

◎腎臓は毛細血管の塊
 腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿をつくる大変重要な臓器です。
 腎臓でつくられた尿を尿路から体外へ排出することで、体内の塩分や水分量を、健康を維持するうえで望ましい一定の状態に保つことができます。
 血液を濾過するのは、腎臓の糸球体という毛細血管の塊とそれに続く尿細管で、両者の組み合わせをネフロンと呼びます。一個の腎臓にはこのネフロンが百万個ほどあります。
 腎炎というのは、さまざまな原因で腎臓の糸球体などに炎症がおこるもので、急性腎炎と慢性腎炎があります。
 急性腎炎は、多くの場合、扁桃腺炎や咽頭炎、鼻炎などがきっかけでおこります。これらの疾患の時におこる体内の免疫反応が、一方で腎臓に障害を与えてしまうことがあり、腎炎が発生します。
 急性腎炎になると、まぶたや手足のむくみ・めまい・頭痛・動悸・息切れなどの症状が見られます。

◎蛋白尿や血尿に注意
 一方、慢性腎炎は尿検査で蛋白尿や血尿が一年以上続いているもので、病状が進行しないものや、腎機能が徐々に低下していくものなどさまざまなタイプがあります。
 急性腎炎が完治せずに慢性化するケースと、いつの間にか発病しているケースが見られます。
 慢性腎炎でも急性腎炎のような症状がみられることがありますが、ほとんど無症状の場合も少なくありません。
 その他、ネフローゼ症候群という慢性腎炎に似た腎障害もあります。
 ネフローゼ症候群は高度の蛋白尿と全身のむくみなどが現れるもので、主に糸球体の障害でおこります。
 ただし、単一の病気ではなく、糸球体障害の原因にはさまざまな病気が関与しています。

◎漢方薬で西洋薬を補佐する
 腎臓は、一種の精密機械のような臓器で、炎症などで一度破壊されると元に戻すのは容易ではありません。
 したがって、腎炎やネフローゼの治療は、速効的で作用が強力な西洋薬を主力としなければなりません。
 西洋薬では、ステロイド剤が多用されており、腎炎・ネフローゼの治療に優れた効果を発揮しています。
 ただし、ステロイド剤は副作用が強いため、ステロイド剤を使う時はできるだけ使用期間を短縮し、使用量も抑える必要があります。
 この場合、小柴胡湯や柴苓湯などの漢方薬を併用すると、ステロイド剤の使用量を減らすことができます。またステロイド剤の使用を中止しても、腎炎の症状が寛解(ある程度病状がおさまっている状態)するケースも時にみられます。
 ステロイド剤による治療が成功した場合も小柴胡湯や柴苓湯、六味丸、補中益気湯などを併用すると、蛋白尿や腎炎の再発を低く抑えられることが報告されています。

腎障害の主要症状

症状         疑われる腎障害
むくみ(浮腫)   ◎急性腎炎では、上気道感染症などの後に突然顔がむくむ(特にまぶた)。
           ◎慢性腎炎で腎機能低下が進行した場合には、運動後、塩分の過剰摂取時などに顔面や下肢がむくむ。
           ◎ネフローゼ症候群では、強いむくみが急激に現れることが多い。
           ◎末期腎不全では常にむくみがあり、尿毒症になると頭痛、耳鳴り、吐き気、呼吸困難、乏尿などが見られる。

尿量の異常    ◎急性腎炎の初期や高度のネフローゼ症候群などでは、排尿回数や一回の尿量が減少。
           ◎慢性腎炎で腎機能が中等度低下すると、排尿回数や一回の尿量が増加し、夜間多尿もよく見られる。
           

肉眼でわかる血尿 ◎急性腎炎では、コーヒー色になることが多い、。
            ◎下部尿路疾患(膀胱腫瘍、尿路結石症)などでは、鮮やかな赤ないしはピンク色になることが多い。

尿検査所見     ◎血尿と蛋白尿やが続けば、腎炎の疑いが強い。
            ◎血尿だけの場合は、腎腫瘍、腎結石、下部尿路疾患の可能性がある。
            ◎蛋白尿だけの場合は腎炎の疑いもあるが、生理的蛋白尿、起立性蛋白尿の可能性もある(いずれも一時的なもので、病的なものではない)。


◎漢方薬は腎炎の予防にも効果的
 漢方薬は、急性腎炎などの予防にも効果的です。
 年中かぜをひきやすく、よく熱の出るような子供には、葛根湯や小柴胡湯などの処方で腎炎を予防します。
 この場合、胃腸も虚弱ならば小建中湯を用い、扁桃腺をよく腫らす子供ならば柴胡清肝湯などを用います。
 逆に、腎炎の治療が遅れたりして腎不全に陥り、人工透析が避けられないような場合にも、漢方薬が役立つことがあります。
 温脾湯などを用いて、人工透析を開始する時期を遅らせたケースが報告されています。
 人工透析を受けている場合も、薬用人参を併用することで、透析に伴う不快な症状を軽減できることが知られています。


◆腎炎・ネフローゼに用いる主な処方◆
         処方名             漢方薬の使用目的
補助的  小柴胡湯(中間証)     ◎ステロイド剤に併用することで、ステロイド剤の使用量を減らしたり、使用中止することができる。
補助的  柴苓湯(中間証)    

再発防止 小柴胡湯(中間証)    ◎ステロイド剤による治療が成功した後に漢方薬を使用することで、蛋白尿や腎炎の再発を抑える、。
再発防止 柴苓湯(中間証)
再発防止 六味丸(中間証)
再発防止 補中益気湯(虚証)

予防的使用  葛根湯(実証)    ◎年中かぜをひきやすく、よく熱を出すような子供に漢方薬を使用することで、急性腎炎を予防する。
予防的使用  小柴胡湯(中間証)
予防的使用  小建中湯(虚証)
予防的使用  柴胡清肝湯(虚証)

補助的     温脾湯(虚証)   ◎腎不全患者の透析の導入を遅らせる
補助的     人参湯(虚証)   ◎透析の副作用を軽減する


膀胱炎・尿道炎
◎女性には膀胱炎が多い。
 膀胱炎は、細菌が尿道を通って膀胱に感染して炎症がおこるもので、血尿や尿の混濁、排尿時の痛みなどの症状が現れます。
 膀胱炎は圧倒的に女性に多く見られますが、こらは、女性の尿道が男性より短いため、細菌が入りやすいことが要因になっています。
 逆に、尿道炎は、どちらかというと男性に多く見られます。
 尿道というのは、膀胱から先と尿の排出口までの通路で、尿道炎は、この通路に淋菌やクラミディアなどの種々の病原微生物が感染しておこります。
 尿道炎になると、尿道の灼熱感や、頻尿、排尿時痛、残尿感などの自覚症状を訴えます(初期にはほとんど無症状のこともある)。
 また、尿道口から分泌物や膿が出て下着を汚します。

◎慢性膀胱炎には漢方が効果的
 急性の膀胱炎や尿道炎の場合は、出来るだけ初期に素早く治療することが大切です。
 したがって、抗生物質などによる西洋医学的治療を優先しますが、この場合も、漢方薬を併用すると治療効果が上がります。
 また、膀胱炎・尿道炎は、再発を繰り返す慢性型が少なくありません。こうしたケースには、漢方薬を主体にした治療が有効です。
 慢性膀胱炎・尿道炎の漢方療法では、体力があって血尿・排尿時痛・不安・動悸・便秘があれば大黄牡丹皮湯などを用います。
 また皮膚が浅黒くて、排尿痛が強いような時は竜胆瀉肝湯を用います。
 体力が普通の場合は、排尿困難・排尿痛・血尿などがあれば猪苓湯・慢性的な排尿障害・排尿時痛・残尿感・尿混濁・血尿などがあれば五淋散を用います。
 体力がない場合は、頻尿・残尿感・排尿痛・胃腸虚弱・冷え症・倦怠感などがあれば、清心蓮子飲、高齢者で慢性的な排尿障害や下肢の脱力感や冷えなどがあれば八味地黄丸を用います。


尿路系症状と疑われる疾患
    主な症状                 疑われる疾患
頻尿・排尿痛・混濁尿   急性膀胱炎など
頻尿・排尿痛・血尿     急性膀胱炎、小児出血性膀胱炎、泌尿器系腫瘍・結石など
頻尿・排尿痛・清澄尿   ※急性に症状が出現⇒尿管・膀胱・尿道の結石など
                ※緩徐に症状が出現⇒腫瘍・前立腺肥大症・尿道狭窄その他による慢性複雑性膀胱炎など
排尿痛・排膿その他    尿道炎(患部に圧痛)など
排尿痛・会陰部痛他    前立腺炎(患部に圧痛、時に発熱)など
膀胱充満時の膀胱部痛  腫瘍・前立腺肥大症・尿道狭窄その他による慢性複雑性膀胱炎な
(長期にわたり持続)他  

◆慢性膀胱炎・尿道炎に用いる主な処方チャート◆

主要症状
排尿時痛・残尿感・排尿困難・尿混濁・頻尿・血尿・夜間尿など

あなたの体力は?        あなたの症状は?

ない
疲れやすい(虚証)      高齢者・下肢の脱力感・慢性的な排尿障害・残尿感    八味地黄丸

ない
疲れやすい(虚証)      胃腸虚弱・倦怠感・冷え症                   清心蓮子飲  

ふつう(中間証)        慢性的な排尿障害・排尿時痛・残尿感・尿混濁・血尿   五淋散

ふつう(中間証)        血尿・尿量減少・口渇・排尿時痛                猪苓湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)      皮膚が浅黒い・排尿時の痛みが強い              竜胆瀉肝湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)      排尿時痛・血尿・不安・動悸・便秘                大黄牡丹皮湯


尿路結石
◎激しい疝痛発作がおこる
 この病気は、腎臓・尿感・膀胱・尿道などの「尿路」に石(結石)ができるもので、20〜40歳代の男性に多く見られます。
 尿路の結石は、尿の中の成分などが固まってできたもので、砂粒程度のものからかなりの大きさのものまでさまざまあり、1個〜数個できます。
 腎臓や尿管に発生すると、「仙痛」という、きりでもまれるような激しい痛みがおこります。肉眼でわかる血尿を伴うことも少なくありません。
 一方、膀胱や尿道の結石は、腎臓や尿管の結石が流入してくることもあります。
 また、膀胱で結石がつくられることもありますが、この場合は、排尿時の膀胱痛や頻尿、血尿などの膀胱炎様の症状や、排尿中に突然尿が止まってしまう排尿中絶などが見られます。
 尿道で結石が形成されることもありますが、この場合も、排尿中絶や排尿時痛、血尿などが見られます。

◎漢方薬が予防的効果を発揮
 漢方の古典的書物では、尿に石が出ることを「石淋」とか「砂淋」などと呼んでいました。
 ちなみに、「淋」というのは膀胱や尿道などの病気や結石を指す言葉とされています。
 当然、尿路結石の漢方療法も古くから行われていましたが、現代では、結石が大きい場合や、小さくても症状が激しい場合には、西洋医学的な処置を優先します。
 小さい結石は、半年位のうちに自然に排出されることが多いのですが、そうした自然排出を促し、痛みを緩和させるために漢方薬が用いられます。
 また、大きな結石で西洋医学的な治療を優先する場合でも、漢方薬を併用することで、症状の軽減や再発の予防などの効果が得られます。

◎結石体質を改善する処方もある
 尿路結石の漢方療法では、体力があって下腹部の圧痛・便秘・排尿障害などがあれば桃核承気湯、同様の症状で排尿困難が強ければ大黄牡丹皮湯、排尿時痛が強くて便秘傾向なら防風通聖散などを用います。
 体力がふつうの場合は、口渇・尿量減少・食欲不振などがあれば六味丸を用います。この処方には体質改善作用もあり、結石体質の改善を目的として用いることも少なくありません。
 また、排尿困難・排尿痛・血尿があれば猪苓湯などを用います。血尿が著しい時はそれに桂枝茯苓丸を併用します。
 そのほか、強い疼痛発作や排尿時痛がある時は芍薬甘草湯(実証〜虚証に有効)を用います。
 体力がない人なら、強い腹痛・腹部緊張・嘔吐などを伴っていれば大建中湯、胃腸虚弱・冷え症・貧血などがあれば当帰芍薬散を用います。
 また、血尿が激しい時は、四物湯と猪苓湯を併用します。

◆尿路結石に用いる主な処方チャート◆

主要症状
排尿時痛・残尿感・排尿困難・尿混濁・頻尿・血尿・夜間尿など

あなたの体力は?          あなたの症状は?
ない
疲れやすい(虚証)        血尿が激しい           猪苓湯 四物湯

ない
疲れやすい(虚証)       胃腸虚弱・冷え症・貧血      当帰芍薬散

ない
疲れやすい(虚証)       強い腹痛・腹部の緊張・嘔吐   大建中湯


ふつう(中間証)         強い疼痛発作・排尿時の痛みが強い  芍薬甘草湯

ふつう(中間証)         排尿困難・血尿           桂枝茯苓丸

ふつう(中間証)         排尿痛・血尿・口渇・頻尿・汗が出ない  猪苓湯

ふつう(中間証)         口渇・尿量減少・結石再発      六味丸(結石体質を改善)

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       排尿時の痛みが強い・血尿・便秘傾向  竜胆瀉肝湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       下腹部の圧痛・排尿困難が強い    大黄牡丹皮湯

比較的ある
胃腸も丈夫(実証)       排尿困難・便秘・冷え・のぼせ・肩こり  桃核承気湯


前立腺肥大症

◎六十歳代以上に多発する
 前立腺は、膀胱と尿道括約筋との間にある栗の実ほどの大きさの臓器で、その中央を尿道が通っています。男性だけにあり、精液を分泌しています。その精液で、睾丸でつくられた精子が生きてゆくことができます。
 しかし、60歳頃になってくると、性ホルモンのバランスの失調などの影響で、前立腺の中にこぶ状の腫れもの(腺腫)ができ、前立腺全体が大きくなってきます。
 これが前立腺肥大で、60歳代の男性の60〜70%に見られます。一種の老化現象ですが、前立腺肥大がおこった人の25〜30%程度は肥大が著しくなり、頻尿や排尿障害などがおこります。

◎「駆お血剤」も多用される
 前立腺肥大症は、進行状態により、夜間頻尿・残尿感などの症状が自覚される第1期、排尿障害が進む第2期、残尿が悪化して膀胱拡張や腎不全などがおこる第3期に分けられます。
 第2期の後半以降は、西洋医学の外科的な処置が必要になります。この場合、最近はおなかを切開せずに、内視鏡様の細い器具を尿道から通して、肥大した前立腺を切除する手術法が普及しています。
 この方法(経尿道的前立腺切除術)なら、体への負担が小さく、高齢者にも行えます。そのため、手術件数も急激に増加しています。
 一方、漢方薬は、主に第2期の後半までの比較的軽症のケースに多用されます。また、外科的治療を行う場合でも、症状の軽減や再発防止のためにしばしば漢方薬を併用します。
 漢方では、前立腺肥大を「腎虚」によっておこるものとみなし「腎虚」に効果がある八味地黄丸や五車腎気丸などの処方を多用します。
 ただし、これらの処方は、胃腸の弱い人がむやみに服用すると、かえって食欲不振などを悪化させることがあります。服用する場合は、十分な注意が必要です。
 前立腺の肥大だけでなく、炎症がひどく、排尿痛や尿道炎の症状も伴っている時は、大黄牡丹皮湯や桂枝茯苓丸などの「駆お血剤」が多用されます。

◆前立腺肥大症に用いる主な処方◆
  証         目安となる症状                  処方名
 実証    便秘・排尿困難・頻尿・排尿痛・下腹部緊張    大黄牡丹皮湯
 実証    便秘傾向・排尿障害・手足の冷え・のぼせ     桃核承気湯
 
 中間証   排尿困難・残尿感・血尿・尿量減少・口渇     猪苓湯
 中間証  頻尿・多尿・肩こり・手足の冷え・のぼせ       桂枝茯苓丸

 虚証    夜間尿・排尿後不快感・冷え症・腰の脱力感    八味地黄丸
 虚証    上記症状で、排尿障害や浮腫が特に強い      五車腎気丸


尿失禁
◎尿失禁が急増している
 尿失禁は、自分の意志とは関係なく尿をもらしてしまう状態で、病気というよりは「症状」といった方が適切です。近年、高齢化が進むにつれて、こうした尿失禁が急増しています。
 尿失禁は、さまざまな原因でおこりますが、失禁のおこり方から見ると、「腹圧性尿失禁」「切迫性尿失禁」「反射性尿失禁」に大別されます。
 「腹圧性尿失禁」は、骨盤底部の筋力の低下や、膀胱を支える組織が縮むことによっておこります。くしゃみや咳、大声で笑うなど、腹部に力が入った時に尿が漏れてしまいます。最もよく見られる尿失禁で、特に女性に多いのが特徴です。


尿失禁の種類・原因・対応法

   種類       下部尿路の変化     主な原因                        対応法
腹圧性尿失禁     尿道抵抗低下    ◇多産、難産などによる骨盤底筋の弛緩      ◇尿道括約筋の訓練 ◇漢方
                           ◇前立腺手術後(軽度障害)             ◇薬物療法 ◇外科的治療

切迫性尿失禁    膀胱無抑制収縮    ◇脳血管障害・脳疾患                 ◇膀胱訓練
                           ◇急性膀胱炎・前立腺炎・各種頻尿         ◇薬物療法
                           ◇前立腺肥大症・癌・尿道狭窄            ◇漢方

奇異性尿失禁    尿道抵抗上昇     ◇前立腺肥大症・癌・尿道狭窄            ◇導尿(専用器具で尿を排出させる)
(溢流性尿失禁)   膀胱収縮障害     ◇神経因性膀胱                     ◇外科的療法
                            (糖尿病・骨盤内悪性腫瘍手術)          ◇薬物療法 ◇漢方

反射性尿失禁    膀胱反射性収縮    ◇脊髄損傷・疾患                     ◇薬物療法 ◇神経ブロック ◇導尿 ◇漢方

全尿失禁       尿道抵抗低下     ◇前立腺手術後(高度障害)              ◇外科的治療(人工括約筋埋込み術) ◇漢方(補助)

 「切迫性尿失禁」は、脳血管障害などの影響で膀胱が収縮して起こるもので、突然激しい尿意を催します。
 「反射性尿失禁」は、脊髄の障害などが神経系に影響を及ぼしておこるもので、尿意はないのに、膀胱に尿が溜まってくると反射的に排尿してしまいます。


◎漢方は大部分の失禁に有効
 どのタイプの尿失禁も、漢方療法が有効で、漢方薬の単独使用や、西洋薬との併用、筋肉を強化する体操療法との併用などが行われています。
 最もよく見られる「腹圧性尿失禁」の場合は、意識的に肛門を閉じるなどの体操を繰り返して、尿失禁の原因になっている弱った筋力や組織を強化します。半数以上の人は、この体操を2〜3ヵ月続ければ治ります。
 こうした体操療法の補助薬として、補中益気湯などの漢方薬が使われます。
 また、「切迫性尿失禁」には、猪苓湯と芍薬甘草湯の組み合わせや、清心蓮子飲、竜胆瀉肝湯が、「反射性尿失禁」には八味地黄丸、牛車腎気丸などが用いられます。


◆尿失禁に用いる主な処方◆

  証          目安となる症状                     処方名

中間証〜実証    切迫性尿失禁・浮腫・充血・陰部の痒み      竜胆瀉肝湯
             切迫性尿失禁・胸脇苦満・不眠イライラ       四逆散
             切迫性尿失禁・浮腫・けいれん性疼痛        猪苓湯+芍薬甘草湯

虚証〜中間証    腹圧性尿失禁・切迫性尿失禁・不眠・肩こり    清心蓮子飲
             切迫性尿失禁・下半身脱力感・不眠・不安     半夏厚朴湯+八味地黄丸
             反射性尿失禁・下半身脱力感・冷え・疲労感    八味地黄丸・牛車腎気丸
             腹圧性尿失禁・胃腸虚弱・体力低下         補中益気湯










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